【2020年卒市場動向】大手企業で進むAI活用。ターゲット学生を採用するための戦術とは?

[シリーズ]どうなる?2020年卒新卒採用動向・変化予測 #5

第4回では、テクノロジーの進化などを受けて大学生の多様化(ライフスタイルだけでなく内面的なものも含む)が進み、企業は学生がもつ個別最適ニーズに対応していくことが強く求められるということをお伝えしました。また、経団連の2021年卒採用スケジュールの見直し検討や東京五輪開催を見据えて、2020年卒採用から新しい手法を導入し、独自の採用戦略を構築しようといった企業の動きも散見されるようになってきています。特に、企業の採用活動におけるテクノロジーの活用はこの1年でかなり進むと考えています。具体的には以下のような点が挙げられます。
 

2020年卒採用でさらに進むテクノロジーの活用

  • 母集団形成に膨大な工数をかけている大手企業のAI活用
  • (VR)動画やライブチャットを活用したオンライン説明会
  • 首都圏企業を中心とした地方学生へのアプローチにおけるダイレクトリクルーティング・ツールやWEB面接ツール、録画面接ツールの活用
  • WEB上での学生の行動記録をもとにしたWEB広告の配信や早期にコンタクトした学生へのフォローアップの実施

 

大手企業に異変?内々定の承諾に課題を感じている企業が5割超え

 
採用におけるテクノロジーの進化が進む背景をもう少し考えていきましょう。OfferBoxの利用企業を中心に実施した調査によれば、企業が抱える採用プロセス上の課題において従業員規模別で顕著な差があることがわかりました。
 
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全体では、やはり現在の「人材不足」「大手偏重」の影響から「エントリー」に課題を感じている企業が5割を超えている状況です。
 
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一方で、従業員規模が1,000名以上の大手企業においては採用プロセス上の課題が「エントリー」ではなく「内々定承諾」にあることがわかります。第2回でもお伝えのとおり、従業員規模1,000名以上の企業の大卒求人倍率は基準となる1.6倍を下回っており買い手有利であるにも関わらず、どうしてこのような回答になっているのでしょうか。
 

採用ターゲットの変化に伴う採用競合の変化

 
さらに、従業員規模1,000名以上の企業の課題のあるターゲット学生について見ていきましょう。全体と比較をしてご覧いただくとより大手のターゲット学生がどのあたりにあるのかがわかります。事業のドメインが拡張し、地域が日本からグローバルに広がり、そして直面する課題が高度化そして複雑化する中で、いかにして経営戦略を実現していくかに多くの企業の経営者の関心が向いているわけですが、同時にそれを実現に向けて推進していけるような人材の獲得への優先順位が高まってきています。新規事業やグローバル展開を担える未来を創る人材の採用競争は、これまでのように国内の同業界他社との競争ではなく、国内外の異業界の強者へと変わってきています。トヨタ自動車やみずほ銀行の採用の広告が話題になりましたがそれらはこの変化の象徴だと考えられます。この変化に気付けているか否かは非常に重要で、すでに気づいている企業は動き始めています。
 
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オーディション型採用の効率化、そしてダイレクトリクルーティングなど攻めの採用への転換

 
以前もご紹介しましたソフトバンクのワトソン導入は非常に象徴的な取り組みと考えています。その後、大手企業を中心にAIを活用したES判定、つまりオーディション型採用の効率化、そこで生じたリソースの余剰を「くどく」「フォローする」といった内々定承諾の率改善に影響度の高い採用プロセスに再配分していく取り組みが進んできています。大手企業と言えど、ターゲット学生によっては採用弱者にもなりえます。そこをこのテクノロジーを活用した土俵ずらしによって競争優位性を高めて勝っていこうというのがこの取り組みの本質なわけです。
 
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オーディション型採用におけるAIの活用は、エントリー数が多い企業には特に有効ですが、エントリー数が少ない、あるいは母集団は多いがそこにおけるターゲット学生の含有率が少ない場合、有効であるとは言えません。そういった場合にAI導入と同じように導入が進んできているのがダイレクトリクルーティングなど企業から学生に対してアプローチを行う攻めの採用への転換です。OfferBoxもその1つですが、すでに適性検査などを受け終えている学生データベースの中からピンポイントにアプローチができ、しかも地方や海外、あるいは研究室にこもっている学生や部活で忙しくしているような学生にもオフィスに居ながらアプローチでき、自社の魅力を確実に届けていくことを可能にしています。「エントリー」の課題解決にもつながる手法と言えます。
 
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いかがでしたでしょうか。現在の新卒採用市場は単に「人材不足」という状況ではなく、質的変化が起こってきていることをご理解いただけましたでしょうか。このトレンドは、東京五輪が落ち着いたら終わるようなものでも、日本の景気回復が鈍化したら終わるようなものでもなく、テクノロジーの進化に伴い企業の競争環境そして経営戦略が変化し続ける限り続くものと考えています。この環境下で求められることは、ソフトバンクのように「早く始める」ことではないでしょうか?早く始め、蓄積していったものが2020年代の採用における競争優位性をもたらします。
 


2018年6月29日公開