いま、確実に新卒の就職活動、企業にとっては新卒採用のあり方が変わろうとしている。就職ナビが築いてきたこの市場は、新しいステージへ。

 

就活後ろ倒し、エントリー煽り、インターン増加、ダイレクトリクルーティング。この1~2年で、話題になった新卒採用・就職活動に関するワードは多い。いま、確実に新卒の就職活動、企業にとっては新卒採用のあり方が変わろうとしている。今日まで当たり前だったことが、明日には当たり前でなくなりそうだ。新卒採用市場において潮目が変わろうとしている。

大企業から中堅・中小まで幅広く人材採用のコンサルティングを行い、日本最大級の人事ポータルサイト『HRプロ』を運営するProFuture株式会社の代表 寺澤康介氏と、オファー型新卒採用サイト『OfferBox』を運営する株式会社i-plug代表 中野智哉がこの「変化の時代」について意見を交わした。

 

― 寺澤さんは、新卒採用には多くの課題があるとお考えとのことですが、どのような点に課題を感じていますか?

ProFuture株式会社 寺澤康介氏(以下、寺澤氏):
新卒採用の問題として、一括採用がだめだという論調がありますが、私はそうだとは思っていません。新卒一括採用があることで若者の失業率も抑えられていると思います。

 

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問題になっているのは、就職活動が学業を圧迫していることですよね。この原因は、私は就職ナビの存在だと思います。人気のある企業がめったやたらに説明会をして、そこに多くの学生が行きます。ところが企業は、一部の大学の学生はターゲットにしていますが、そうでない学生は足を運んでも意味がないことも多々あります。それを知らずに学生は足繁く説明会やセミナーに通い、そして書類選考で落ちる。かつての就職活動に比べて、非常に無駄な活動をしている学生が多いように感じます。就職ナビが大量のエントリーを無制限に受け付けて、そのセミナーに行きまくる学生が増えてしまいました。しかも、エントリーを煽り、社会問題化してしまいましたね。
大量のエントリーが一部の大手企業に集中するという構造を作ってしまいました。学業を圧迫し、無駄な作業が増え、落ち続ける学生は心が折れる。悪循環です。その原因を紐解くと、就職ナビが影響しているということが大きいと思います。

 

株式会社i-plug 中野智哉(以下、中野):
新卒一括採用があるから、海外に比べて日本の若者の失業率は低いですよね。それが日本の基盤を作っていると思います。就職ナビがもたらした、「自由に受けたい企業を選択できる」、「選択肢が増えた」ということは良いことだと思います。ただその反面、無駄なことが生まれました。エントリー97社、説明会参加44社、というのがいまの就活生の平均です。多すぎますよね。

私は前職で中途採用の支援をしていたので、その立場から新卒採用市場を見ていて不思議でした。“エントリー”という言葉自体の定義が、学生側、企業側、ナビ運営側で認識がずれていると思います。ナビ運営側は、昔でいう“資料請求”の意味合いにとっているのでは。だからエントリー煽りというようなことも起こる。しかし、企業や学生側からすると“エントリー”です。応募ですから軽い意味合いではありません。

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また今は、簡単にネットで一括エントリーできてしまうので、量をカバーすることはできますが、最終的にリアル=「実際に会う」というところに落ち着くので、量のコントロールをしないと、どこかで破たんしてしまいます。

 

寺澤氏:
昔は、指定校制なんていうシステムもありましたし、企業が学校を選んで求人票を大学に持ち込んでいました。自然にフィルターがかかっていたわけです。学生も自分の大学に求人票が出ていた中から選ぶので、通りやすい。

そんなときにインターネット化が起こった。就職情報会社、いわゆる運営側からすると“情報がオープンになることはいいことだ、差別がなくなる”という気持ちがあったと思います。しかし、インターネットはフルオープンなので、学生が一部の『知っている企業』『大手企業』にしか集まらない。すると集中し、エントリー競争のようになりました。あまりにも選択肢は広く、制限するすべがない。

 

中野:
昨年、エントリー煽りが物議を醸しましたね。それひとつとっても、いまが新卒採用市場において過渡期なのだということだと思います。

 

― その過渡期にちょうど就職活動を迎えている学生に対してどんなことを思われますか?

寺澤氏:
私の息子も少し前に就職活動をしていました。就職ナビを使っていた息子の友達が言うには「セミナーや説明会を入れて、スケジュールが埋まると安心する。就職活動をしているのだという気持ちになる」と。でも、内定は全然決まらない様子でした。当然のことながら、書類選考等で落ちるんですよ。結局、一番大事なときに、しばらく活動を休んでしまって…。本当にもったいないですよね。別の方法で就職活動をしていた息子は「自分が内定もらったことをその友達に言えない」なんて言っていましたね。

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中野:
本当は友達同士で相談して就職活動を進めていくべきなのに、相談相手もいなくなってしまうんですよね。受かることがほぼないような会社にどんどん応募して、落ちて。表情が暗くなっていくので、面談に臨んでも本来の輝きが見せられなくなってしまっている学生も多いと思います。

 

寺澤氏:
そんなふうに落ち続けてしまうと、当然自信もなくなります。藁をもつかむ思いでいろいろ受け続けても、悲壮感が漂って、元気そうに見えても装った感がある。企業側としても採用する気になれないですよね。本当に元気なパワーがあるということを見せることができれば、受け入れられる会社もあると思うんです。それを考えると非常にもったいないですね。

 

【ProFuture 寺澤康介氏②】“母集団”という言葉は、今後意味を持たなくなる に続く

 


2015年3月31日公開 | HR Pro 対談