生き残る企業の探し方―成長性・将来性は「進化」で見る!vol.2 選択と集中

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日本には、ビジネス環境の変化に柔軟に対応し、さまざまな危機も乗り越えながら、自分たちの事業を進化させて、長く経営を存続させている企業がたくさんあります。
ここでは、そんな進化を続ける企業の見極め方について考えていきましょう。

vol.1で見た多角化とは逆に、事業領域を限定し経営資源を集中することで成長を目指すのが「選択と集中」です。

生き残る企業の探し方―成長性・将来性は「進化」で見る! vol.1 多角化

大手電機メーカーを中心に、日本の製造業が新たな進化を遂げるための重要なキーとなっています。

 

ドラッカーが提唱し米GEの成長の原動力に

「選択と集中」とは、自社の事業の中で、成長性の高い分野や自社の強みが生かせる分野を見極め、そこに経営資源を集中すると共に、それ以外の事業は縮小・撤退していくことを指します。

vol.1で見た多角化により事業部門を増やした企業が、事業を選別することでより収益力を高め、さらなる進化を目指すものです。

もともとは経営学者のピーター・ドラッカーが提唱した考え方で、それを初めて本格的に実践したのが米ゼネラル・エレクトリック(GE)社だといわれています。
GEは発明王エジソンが設立した会社を前身とする、創業130 年以上の歴史を持つ会社であり、発電設備や家電製品、医療機器のほか、ジェットエンジンや金融業などまで手掛ける巨大企業です。

1980 年代にCEO(最高経営責任者)に就任したジャック・ウェルチ氏は「世界で1位か2位になれない事業からは撤退」という方針を掲げました。
つまり3位以下であれば、たとえ収益の出ている事業であっても撤退するという大胆な方針であり、これにしたがって事業の大規模な整理を進めたのです。

その結果、同社は成長を維持し、現在も「選択と集中」をキーワードに事業再編を続けています。実際、電力や航空機エンジンなどの分野では世界首位です。

 

製薬業界での生き残りを懸け黒字事業もあえて再編

日本において「選択と集中」の成功例の1つといわれるのが、武田薬品工業が2000 年代前後に取り組んだ医薬外事業の見直しです。

当時の同社は事業の多角化により、動物薬やビタミン、食品など複数の医薬外事業を抱えていました。
いずれも黒字でしたが、当時から製薬業界は世界規模での再編が進み、巨大企業が生まれていました。

本業である医薬品事業でこうした企業との国際競争で勝ち残っていくには、有力な新薬を生み出すための積極的な研究開発投資が重要になります。
そこで同社は医薬外事業を適切に縮小・撤退し、経営資源を医薬品に集中させていくことが必要と判断しました。

そして1999 年以降、図に示したように、動物薬などの事業を順次他社に譲渡。これにより、収益力を高めることに成功しました。

収益の悪化した事業を縮小・撤退する例は多いですが、黒字事業の再編によって収益力を一層高めた例は珍しいといえます。

 

再編する事業・注力する事業の選択が大きな鍵

また近年「選択と集中」に力を入れた国内企業として、大手電機メーカーが挙げられます。

日本の大手電機各社はいずれも多角化により、冷蔵庫やエアコンなど白物家電から、AV機器や携帯電話機、半導体部品などを手掛ける総合メーカーとなっていきました。

なかには業務用発電設備を供給するメーカーもあります。
日本の経済が右肩上がりで成長し、冷蔵庫やテレビ、エアコン、ビデオテープレコーダーなど新しい製品が生まれるたびに次々と売れていった時代には、このように複数の事業を幅広く抱える多角化戦略は有利に働いていました。

しかし、あらゆる電機製品が普及し、国内人口が減少しはじめると、採算の悪い事業が好調な事業の足かせとなり、業績全体を低迷させるようになりました。
さらに韓国や台湾などのメーカーが家電分野で台頭し、それまで収益の柱となっていたテレビ事業などの苦戦が目立つようになりました。

そこで各社が取り組んだのが、選択と集中です。パナソニックは2013 年度にプラズマテレビから撤退、半導体工場も売却しました。
その一方で自動車と住宅関連事業を重点分野として積極的に投資した結果、収益力を回復させました。同社は電気自動車向け電池の生産で世界シェアを大きく伸ばしています。

同様にソニーはパソコン事業の売却とテレビ事業の分社化を実施。成長の柱を、カメラ用の画像センサーをはじめとするエレクトロニクス事業、ゲーム事業、映画・音楽事業として、経営資源を集中させました。
収益力が改善し、16 年6月にはロボット事業への再参入を表明、攻めの経営姿勢を打ち出しています。

このほか日立製作所は社会インフラ事業に注力することで好業績を維持しています。

 

中核事業の見極めが重要 収益悪化につながる恐れも

日本企業の間で「選択と集中」の考え方は広く定着してきましたが、実際には、たとえ赤字であっても長年手掛けてきた事業から撤退するのは容易ではありませんし、収益の中核として注力した事業が思うように伸びず、業績が低迷してしまうケースもあります。

 

電機メーカーではシャープのように、新たな収益の柱と位置付けていた中小型液晶パネルが低迷し、経営危機に陥った例があります。

液晶パネル事業は韓国や台湾など新興国の追い上げが予想以上に速く、シャープは技術的な優位性を維持することができませんでした。結局、新興国勢の製品との価格競争に巻き込まれ、収益が悪化。日本の大手電機が外資系企業に買収される初のケースとなったのです。

 

こうした外部環境の変化も踏まえた上で、どの事業に注力し、どの事業を縮小・撤退させるのかを適切に判断し、自社の成長を支えるような中核事業を構築することができるかが、選択と集中の成否の鍵を握っています。

「選択と集中」のために実施する事業の撤退や売却といった事業再編の話題は、企業サイトのプレスリリースで公表されるケースが多いです。

背景や狙いなどを確認しておくことをお勧めします。新聞でも分析記事が掲載されることが多いので、一読しておくとよいでしょう。