生き残る企業の探し方―成長性・将来性は「進化」で見る!vol.3 海外市場開拓

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日本には、ビジネス環境の変化に柔軟に対応し、さまざまな危機も乗り越えながら、自分たちの事業を進化させて、長く経営を存続させている企業がたくさんあります。
ここでは、そんな進化を続ける企業の見極め方について考えていきましょう。

少子化・人口減少によって国内市場が縮小する中、海外市場の開拓は多くの日本企業にとって急務です。
海外市場の開拓ができるかどうかが、企業の生き残りに大きく影響します。そこでは、国内とは違った新市場創造の工夫が必要になります。

海外で強みを持つ日本のメーカーが登場

商品・サービスの新たな顧客層を獲得していく「新市場の創造」も、企業進化の重要な手段です。
例えば、近年コンビニエンスストアが個食用の総菜や冷凍食品を強化したりすることで、新たな顧客層を開拓しているのもその一例といえます。

ただ、少子化・人口減少により国内市場が縮小しているため、国内での新市場の創造は容易ではありません。
多くの日本企業が、海外市場の開拓に取り組んでいるのもそのためです。

もちろん海外市場の開拓も一筋縄ではいきません。
日本製品の質が優れていても、そのままで海外の顧客に好まれるわけではありませんし、文化の違いもありますから、例えば食品メーカーが日本人向けの加工食品をそのまま輸出してもすぐには売れません。
国内とは違った、新市場の創造のための工夫が必要になります。

キッコーマンはしょうゆを中心とした調味料メーカーですが、海外売上高比率は60%を占め、市場開拓に成功しています。
北米では、アメリカ人が好む肉料理としょうゆの相性の良さをアピールしたり、ドレッシングやスープの調味料としてしょうゆを使ったりなど、地道な需要の掘り起こしを続け、徐々に普及させたのです。

味の素も海外展開で成果を上げてきた企業の1つです。
主力商品のうまみ調味料によって進出すると共に、現地の食文化や経済発展などに合わせて製品を投入していく手法で、長い時間をかけて市場を開拓。
売上高の約半分を海外が占めています。

ユニ・チャームもいち早くアジア展開を進めて成功した例として知られています。
1980 年代から台湾、タイ、韓国、中国、インドネシアと次々にアジアの有力国・地域に進出していきました。
当初、多くの人々は紙おむつに無縁だったはずですが、経済成長に伴って所得水準が伸び、受け入れられる余地が生まれました。

そこで現地の人々に紙おむつの良さを伝えつつ、地域ごとのおむつへのニーズの微妙な違いに合わせた商品開発に取り組み、需要を着実に掘り起こしていきました。
現在はアジア市場でシェア首位の商品を多く持ち、海外売上高比率は約60%を維持しています。

 

インド人のニーズに合った低燃費小型車でシェア5割

欧米では高い評価を得てきた日本車も、そのまま東南アジアの新興国にも通用するわけではありませんでした。
性能よりも価格の安さを重視する傾向があるため、各社とも日本や欧米とは違った新興国向けの戦略車を開発し、シェア獲得を目指して各国メーカーとしのぎを削っています。

そんななか、新興国の自動車市場で成功している代表例として知られるのがスズキです。
同社の子会社であるマルチ・スズキ・インディアは、インドの乗用車市場で約5割のシェアを持ちます。
まだインドがほとんど注目されていなかった1982 年に進出し、軽自動車をベースとして、現地向けに開発した低燃費の小型車を投入。
また販売網も地道に築き上げ、同国内に約3000店の店舗を抱えています。

 

「外国生まれ・日本育ち」のコンビニが再び海を渡る

非製造業では、コンビニの海外展開に注目しましょう。
すでに国内の出店余地が乏しいため、海外市場の開拓が中長期的な成長に欠かせません。

最大手セブン- イレブン・ジャパンはもともと米国発祥であるため、海外店舗数は約75万店(2020年1月時点)と最も多いですが、次いで多いのが以前から海外出店に力を入れてきたファミリーマートで約8000店(2020年5月時点)です。
ファミリーマートは伊藤忠商事の完全子会社となることが発表されました。
今後の海外事業の展開に、伊藤忠が持つ海外調達網を生かしていくと見られます。

一方、ローソンは海外展開に出遅れ気味でしたが、2017年2月に三菱商事の子会社となり総合商社の海外網を生かして、出店を強化。
2020年2月には、中国やタイなどを中心に約3000店までに海外店舗数を伸ばしました。

日本で独自に発展した小売業であるコンビニ業態が、海外でどんな進化を遂げていくのかに注目しておきましょう。

 

各国の景気の影響を受けやすい点に注意

海外進出を積極的に進め、収益の海外依存度が高まれば、各国の景気や現地事情に業績が左右されやすくなる面もあります。
一般的に、自動車や家電は北米市場の依存度が高いため、米国の景気の影響を受けやすいといわれています。

インドの自動車市場で高いシェアを獲得したスズキですが、2019年頃から始まったインド経済減速の影響を受け、販売台数が落ち込んでいます。
他の企業でも、新興国経済の成長鈍化が今後の業績に影を落とす可能性はあるでしょう。
海外でも成長を維持するため、さらなる進化が求められます。

企業の海外売上高比率は、企業のウェブサイトや「Yahoo!ファイナンス」などの企業の財務情報を集めたサイトなどにある「売上構成」を見ることで分かります。
数値だけでなく最近の増減傾向にも注目しましょう。