エントリーシートのポイントって何? 主題を1つに絞る。

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新年が明けてもう2ヶ月半になります。就活生にとっては急に慌しくなってくる時期です。大阪のビジネス街でも彼らの姿をちらほら見かけるようになりました。

一昨年の娘の就活の時には、1月下旬に多くの企業からネットやダイレクトメールを通じて会社説明会の案内が送られてきました。ネットで事前に登録していた会社からのもので、2月末までに30社程度ありました。この時期は大学の期末試験と重なったり、取組んでいたサークルの公演もあって娘はすべての説明会には出席することができなかったそうです。

これから最も労力を要するのがエントリーシート(以下、ES)の作成・提出です。ESとは、志望する会社に対して自己を紹介するシートで採用選考に対する正式の応募になります。締め切りは、2月、3月に集中していて、ネットや書類で提出することが多く、会社説明会に持ち込むように指示する会社もあります。

受け取ったESの取り扱いをどのようにするかは企業側に任されています。大企業では1社への応募者数が1万人を超えるケースもあるので、面接をする前のふるい分けに使うこともあります。また実際の面接の時に使用したり、ほとんど内容を見ない会社もあるようです。

娘の就活に伴走していた時に、市販の本や各会社のHPを見て、ESの質問項目を私なりに整理すると、大きく分けて下記の4点になりました。これらの項目をあらかじめ指定された文字数で書くのです。採用面接で聞かれる質問ともかなり共通しています。

(1)「自己PR」(「セールスポイント」「長所と短所」「あなたの特徴」)(2)「学生時代に取組んだこと」(「力を入れたこと」「自信を持って語れること」「成功体験」)

(3)「志望理由」(「当社の志望理由(動機)」)

(4)「希望部門」(「希望する仕事」「入社後取組みたいこと」)

(1)と(2)は、自分の体験が中心ですし、1枚書けば他の会社にも転用しやすいのですが、(3)、(4)のようなエントリーする会社と自分との個別の関係を書く場合は、すべて各社ごとに作成しなければなりません。まだ働いてもいないのに、その会社でなければならない志望理由などを書くのは結構難しくて作成に手間もかかるものです。

このコラムで具体的な実例まで示すことはできませんが、私なりに考えたES作成のポイントは下記の3点になります。

1)「1つの主題と1つのエピソード」

200字程度の字数制限がありますので、網羅的に書く余裕はありません。主題を1つに絞り込んで、具体的なエピソードを1つだけ入れる気持ちで書くのがいいでしょう。

2)「何ができる、何をしたか」よりも「自分がどう変化したか」

「自分は○○サークルに懸命に取り組んだ」「全国大会で3位になった」というよりも、ある出来事や体験を通して「私はこういうふうに変化した」とストーリー的に書くほうが読み手から見て個性がうかがえる文章になります。以前にお話しした「採用面接は、コンテストではなくてコミュニケーション力が試される場だといってもいいでしょう」というのはここでも同じです。

3)「面接をイメージして自分の得意なネタを探す」

実際に面接者と対面していることを想定して、できるだけ自分の話しやすいシナリオにすることを心掛けるといいでしょう。そうすると面接の事前練習にもなります。

多くの会社説明会に出席しながら、締め切りまでに各社のESを提出するという作業はやってみるとかなり大変なものです。スケジュール管理にも留意するといいでしょう。

また1社で書いたESを他の会社にも転用できるように、企業側がESの質問項目を上記の4つのパターンの(1)や(2)に限定することを検討して欲しいと個人的には思っています。そうすれば就活生の負担軽減にかなりつながるでしょう。

「asahi.com(朝日新聞社)の就活朝日2011」での連載を一部加筆

筆者プロフィール

楠木新(くすのき・あらた)

1954年(昭和29年)、神戸市生まれ。京都大学法学部卒業後、大手企業に勤務し、人事・労務関係を中心に、企画、営業、支社長等を歴任。勤務の傍ら、大学で非常勤講師をつとめている。
朝日新聞be(土曜版)にコラム「こころの定年」を1年あまり連載。07年10月から08年5月までダイヤモンド社のウェブサイトで娘の就職活動をリアルタイムに追ったドキュメント「父と娘の就職日誌」を掲載。
著書に「就職に勝つ! わが子を失敗させない『会社選び』」「就活の勘違い」など。

楠木新さんの主な著書

就職に勝つ!わが子を失敗させない「会社選び」(ダイヤモンド社)
就活の勘違い 採用責任者の本音を明かす (朝日新書)