企業視点で説くインターンシップ実施のメリット・デメリット インターシップを実施する企業、参加する学生数は年々増加の一途をたどっています。今年は本格的にインターンシップに挑戦しようとお考えの採用担当者のなかには、情報はたくさんあるけれど、このまま企画をすることに不安を感じている方もいらっしゃるでしょう。 本稿では、改めてインターンシップのメリットやデメリットを解説し、さらに開催時における担当者の課題・悩みとその対処・解決法などを紹介します。 |いまさら聞けない企業側のインターンシップのメリットとデメリット 本章では、インターンシップ実施の企業側から見たメリットとデメリットを紹介します。 ○企業側のインターンシップのメリットとは ①学生の能力や適性を判断できる=活躍が期待できる人材の発掘 短時間の面接では理解できない、学生の能力や価値観、行動パターンを確認することができます。 ②入社後のミスマッチを防ぐ 会社での仕事の魅力、厳しさを体験し、企業理解を促します。また、実際の社員との交流や社内の雰囲気を感じてもらうことで、入社後のミスマッチ低減につながります。 ③社会人へのあこがれを醸成 学生と社員との共同作業やコミュニケーションを通じて、優秀な先輩社員の魅力が伝わるとともに、こうなりたいという目標(あこがれ)を醸成できます。 ④選考プロセスへの志望度を高める インターンシップ経験の満足度や会社・仕事の理解により、選考プロセスへの志望度アップにつながります。 ⑤学生の斬新なアイデアを得られる 就業型やグループディスカッション・グループワーク型において、新商品開発など学生の斬新な発想・アイデアに刺激を得ることがあります。 ⑥社員の自己啓発を促進する 学生のフォローにあたる先輩社員は、学生と接し、教えることで自らの仕事を振り返り、知識・技術の増強に努めるなど自己啓発を促す効果もあります。 ○企業側のインターンシップのデメリットとは ①インターンシップに協力する社員の負担 就業型など社員が学生のフォローを行う場合、社員の通常業務に支障をきたす可能性もあります。また、受け入れ部門・社員には事前の教育やレクチャーが必要になります。 ②インターンシップ中の学生が起こした事故対応 インターンシップ中に事故、怪我等が起こった場合、保険・損害賠償の対応が必要となります。給与支払いがない場合には、労災扱いにはならないので注意が必要です。 ③事前手続きの増加 大学とのタイアップの場合、プログラム提出や事前打合せ、事後の学内発表会への出席など、前後の手間が増加します。 ④満足度によっては志望度を下げるリスクが伴う プログラム内容や、現場スタッフの対応によってはかえって志望度を下げる結果にもなります。また、比較的導入しやすい1Day仕事体験は、内容が学生のニーズとマッチしなかった場合、満足度が低いまま終わってしまうケースがあります。 |プログラムの内容別でみる企業側のメリットとデメリットとは 企業が採り入れているインターンシップのプログラム形式は主に次の5種類に分類できます。 ①グループディスカッション(グループワーク) ②ロールプレイング ③ビジネスゲーム ④就業型 ⑤講義・レクチャー 本章では、その内容別に企業側から見たメリット・デメリットを紹介します。 ○グループディスカッション(グループワーク)形式 参加者をいくつかのチームに分け、実際の業務に即した共通の課題に対する戦略案・解決策について、グループワーク・グループディスカッション・プレゼンテーションを行う形式。 【メリット】 ①グループワークの進捗を通して、学生の志向(思考)・適性・コミュニケーション力を判断できます。 ②業務に即した課題に取り組むため、業務内容の理解を促せます。 【デメリット】 ①学生は初対面のメンバーとチームを組むため、予定通りに進まないチームが出る可能性もあります。 ○ロールプレイング形式 現場の雰囲気を理解するために、ロールプレイング(疑似体験)を通して実務を体験する形式。 【メリット】 ①営業場面、接客場面など実際に現場で行われているシチュエーションを模倣するため 仕事内容を具体的に理解させることができます。 ②学生のコミュニケーション力、判断力、応用力を引き出せます。 【デメリット】 ①社会(会社)での実務経験のない学生がロールプレイするため、役柄やシチュエーションによっては演じられない学生が出る可能性もあります。 ○ビジネスゲーム形式 既成またはオリジナルのビジネスゲームを行います。コミュニケーションをとりながらゲームに取り組むことで、学びとともに打ち解けた関係が築けます。 【メリット】 ①思考プロセスやコミュニケーション力の判断材料になります。 ②参加者は自分の特性(強み・弱みなど)を発見できるメリットもあります。 【デメリット】 ①ビジネスゲーム単独ではインターンシップとして学生は満足しない可能性があるため、グループディスカッションや就業型のプログラムと組み合わせることをお勧めします。 ○就業型形式 業務範囲、期間の制限はありますが、実際の職場に通って、リアルな業務に従事するプログラム。 【メリット】 ①実務を中・長期にわたって経験するため、リアルに仕事・職場を理解する機会となります。 ②短期インターンではつかみきれない学生の適性・特性(強み・弱み)を判断する材料になります。 【デメリット】 ①就業が長期にわたる場合、給与を支給するケースもあり、コストが発生します。また、労働契約が必要となり、事務手続きが増えます。 ○講義・レクチャー型 担当者・講師が、業務内容・業界の状況などを講義する座学・授業視聴型プログラム。 【メリット】 ①業界研究・会社研究を目的に参加する学生向けで、多くの参加者が見込めます。 ②人事担当者や協力社員の拘束時間などの負担が、他の長期インターンと比較して軽く済みます。 【デメリット】 ①会社説明の講義だけでは学生の満足は得られない可能性があります。先輩社員との交流、社内・工場見学などと組み合わせることをお勧めします。 |インターンシップ実施によくある採用担当者の悩みとは インターンシップ実施にあたり、採用担当者はさまざまな想定外のできごとに頭を抱えることがあります。本章ではそんな悩みごとの例と解決策を紹介します。 ○インターンシップ開催前の悩み ①忙しくてインターンシップの企画に時間が割けないため、開催時期が遅れてしまう 採用活動の早期化で、採用担当者の採用業務の長期化(年間業務)と多様化が顕著になっています。限られた人数で仕事にあたっている場合、「準備が間に合わない」、「開催を断念する」といったこともあるでしょう。 解決策は、採用活動を始める前に「採用計画」をしっかり立て、そのスケジュールに沿って進めることです。また、経営層も含めた全社員に新卒採用の目的・目標を周知し、認識共有の下に協力体制を敷いてもらうことも大切です。 ②参加者が想定より少ない インターンシップのプログラム内容や開催時期・期間と学生の参加する目的・参加しやすい時期との不一致が考えられます。 なぜ行うのか目的を定め、それに沿ったプログラムの企画・開催時期・期間を設定し、学生の参加目的や参加しやすい時期などをすり合わせて企画しましょう。インターン募集のメディア選定、告知内容、発信タイミングも重要なポイントです。 ③インターンシップ中に事故が起こらないか不安 就業形式でインターンシップを行い、給与(報酬)を支払う場合、「雇用契約」(労働基準法第15条1項)になりますので、後でトラブルにならないように契約書を交わすことが必要になります。 【契約書に盛り込む項目】 ・就業期間、時間、場所、内容などの労働条件 ・インターンシップ中の事故などに関する取扱い ・参加者の故意により生じた損害の賠償義務 ・秘密保持義務 最近はインターンシップ用の損害保険もありますので、大学にインターンシップ保険加入の有無を確認しておくことをお勧めします。また、契約書の他に誓約書を取得しておくこともポイントになります。 ○インターンシップ開催中・開催後での悩み ①参加者が選考につながらない 実施後の参加者に対するフォロー、つながりを持続させるための施策に問題があったと考えられます。 参加者全員に対するマス的なフォローとしては、HPに特設ページを設け、定期的に業界や社内情報を発信して思い出してもらう施策を行いましょう。より個別なアプローチとしてはLINEを活用し、個人的に常につながっている状況を演出するのも有効です。 ②参加者のアンケートで「満足」の回答が少ない プログラム内容と参加学生の目的の齟齬が原因と思われます。また、運営・進行上の不備も考えられます。 プログラム内容を明確にして、それを学生に正確に伝える手段を講じれば、参加した学生は「こんなはずではなかった」という思いにはいたらないでしょう。運営上の不備は、あらかじめ協力してもらう社員にオペレーションを周知徹底しておくことが大切です。 ③回線が突然途切れて、リモートで行っていたコンテンツが不発に終わった 通信設備などの不具合は事前チェックを入念に行うことで回避できます。リハーサルはしておきましょう。 |まとめ 今回はインターンシップを開催するメリット・デメリットを改めておさらいし、プログラム内容別のメリットとデメリット、担当者の悩みと解決法を紹介してきました。 インターンシップは単に実施すれば採用結果に効力を及ぼすものではなく、プログラム内容、実施時期などを熟考し企画しなくてはならないことをお分かりいただけたと思います。 本稿を参考にしっかりと効果の出るインターンシップを企画していただければと思います。 Tweet こちらの記事もおすすめです 【2023年卒市場動向】どうなっている?2023年卒の新卒採用の動向・変化を考察 新卒採用でしか得れないメリットを覚えていますか?中途採用と徹底比較して再確認しよう 初めて新卒採用を任された『あなたに知って欲しい』基礎知識