松丘啓司の気になる人事用語
株式会社アジャイルHR 代表取締役社長
1986年に東京大学法学部卒業後、アクセンチュア入社。同社ではチェンジマネジメントグループを立ち上げ、ヒューマンパフォーマンス統括パートナー、エグゼクティブコミッティメンバーを歴任。2005年にエム・アイ・アソシエイツ株式会社を設立し、代表取締役に就任。以後、パフォーマンスマネジメントなどのテーマでのコンサルティング・研修とHRテクノロジーサービスに従事。2018年に株式会社アジャイルHRを設立し、代表取締役に就任。主な著書として、「1on1マネジメント」「人事評価はもういらない」「論理思考は万能ではない」「アイデアが湧きだすコミュニケーション」「組織営業力」(以上、ファーストプレス)「提案営業の進め方」(日経文庫)などがある。
株式会社アジャイルHR 代表取締役社長
1986年に東京大学法学部卒業後、アクセンチュア入社。同社ではチェンジマネジメントグループを立ち上げ、ヒューマンパフォーマンス統括パートナー、エグゼクティブコミッティメンバーを歴任。2005年にエム・アイ・アソシエイツ株式会社を設立し、代表取締役に就任。以後、パフォーマンスマネジメントなどのテーマでのコンサルティング・研修とHRテクノロジーサービスに従事。2018年に株式会社アジャイルHRを設立し、代表取締役に就任。主な著書として、「1on1マネジメント」「人事評価はもういらない」「論理思考は万能ではない」「アイデアが湧きだすコミュニケーション」「組織営業力」(以上、ファーストプレス)「提案営業の進め方」(日経文庫)などがある。
メンタルヘルス不調を改善する運動
2021.08.31
運動は病気の予防だけでなく気分転換やストレス解消につながり、メンタルヘルス不調を改善するために有効だとされています。
私たちはストレスを感じると、心と体になんらかの反応が起こります。
忙しくなるとイライラしたり、悲しいことがあると眠れなくなったり食欲がなくなるなど、心と体は繋がっています。
そんなストレスを軽減させる方法の1つが運動で、様々な研究でその効果が証明されています。
運動によりストレスを緩和させるホルモン「セロトニン」が分泌され、精神を安定させたり安心感が生まれ気持ちが軽くなると言われています。
メンタルを良好に保つために、日常的に運動を取り入れていきましょう。
アンコンシャスバイアス
2019.10.11
アンコンシャスバイアスとは「無意識の思い込み」を意味します。しばしば、性別や人種などの特定グループに対する「偏見」を指して、ダイバーシティ推進の文脈で用いられますが、その影響は女性活躍や障害者雇用といった分野に止まらず、ビジネスのあらゆる範囲に及びます。
過去の常識や慣例に基づく思考の枠組みを誰もが有していますが、想定外の結果が頻繁に起こるVUCAの環境では、「思い込み」に基づく意思決定はたいへん危険と言ってもよいでしょう。
多様化した世界において適切な判断を行うためには、自分と異なる視点や考え方を排除せずに、オープンな姿勢で最適解を見出そうとするアプローチが不可欠です。そのためには、他者との対話を通じて、多様な人の違いを理解しようとすることを常に心がけている必要があります。
OODAループ
2019.09.30
OODA(ウーダ)ループとは、先が読めない状況の中で成果をあげていくための意思決定のアプローチです。観察(Observe)、情勢判断(Orient)、意思決定(Decide)、行動(Act)の頭文字を表しています。
いわゆるPDCAサイクルが計画を成功させるために、行動の軌道修正を行っていくプロセスであるのに対して、OODAループでは最終的なゴールに向けて、行動しながら臨機応変に打ち手を変えていくところに違いがあります。不確実性の高い環境においては、精緻な計画を立てること自体が困難であり、そもそも行動しなければ意思決定に必要な情報自体が得られないからです。
毎年、代わり映えしない事業計画に基づいて組織運営を行っている企業も少なくありませんが、計画を与えられることに慣れてしまって、現場で機敏に情勢判断を行う能力が養われていないことが懸念されます。
ジェネレーションZ
2019.09.13
いわゆる「ミレニアル世代」が2000年以降に成人になった世代を指すに対して、1990年代半ば以降に生まれた世代をジェネレーションZ、あるいはZ世代(ゼットせだい)と呼びます
この世代の最大の特徴は、生まれた時には既にインターネットが存在したことにあります。つまり、真の意味でのデジタルネイティブなのです。また、インターネットを活用するためのデバイスは、PCよりもスマートフォンが中心で、コミュニケーションの相当の割合をスマートフォンに依存しています。
Z世代は既に社会に出始めており、今後、従業員に占める割合は増加し続けます。この世代に対して企業が従来の流儀を押し付けようとしても難しいでしょう。それよりも、Z世代が活き活きと働けることを重視した、環境整備に力を入れた方が得策ではないかと思います。
プレゼンティーズム
2019.08.30
病気のために会社を休む「病欠」のことを「アブセンティーズム」と言いますが、出勤しているものの、心身の状態が良くないために生産性が上がらない状態を「プレゼンティーズム」と呼びます。
アブセンティーズムよりもプレゼンティーズムの方が企業にとっての損失が大きいとも言われていますが、プレゼンティーズムによる経済的なロスを定量的に測定することが容易でないため、会社をあげた対策が打たれにくいのが実情です。
プレゼンティーズムに対処するためには、1人ひとりのコンディションを常に把握して、ネガティブな兆候があった場合には何らかのアクションを取ることができるようにする工夫が必要です。たとえば1on1を欠かさずに実施して、上司が部下のコンディションに常に気を配るといったことは最低限、求められるでしょう。
オンボーディング
2019.08.14
「オンボーディング」とは船や飛行機に搭乗する際に使われる言葉ですが、それに例えて、入社した従業員が職場や仕事になじむまでのプロセスを表す意味に用いられています。
オンボーディングが昨今、重視されている背景には、採用した人材が短期間で離職するケースが増加しているため、入社から定着化までの過程を現場任せにするのではなく、人事も関わりながらケアしていく必要性が高まってきている事情があります。
さらに定着化だけでなく、新たなメンバーの「戦力化」がより本質的な課題として認識されています。従来のオンボーディングが、会社の組織環境に融合することに主眼が置かれていたことに対して、戦力化に当たっては本人の強みを引き出してパフォーマンスを発揮させるところまでを含めた支援が求められています。
内的動機
2019.07.31
内的動機とは人がどのような状況や物事に対して意欲を感じるかというモチベーションの要因を指しています。その内的動機は一人ひとり皆、異なります。
内発的動機付けの理論は1970年代から提唱されていますが、それが昨今、さらに重視されてきているのは、報酬や昇進といった外発的動機付け偏重のマネジメントが、企業が求める人材開発、組織開発と合わなくなってきているからです。
たとえば、従業員の自律的な行動を促すためには、一律的な制度よりも、一人ひとりによって異なる内的動機を高める働きかけが必要です。また、ダイバーシティ推進で多様な個性や強みの発揮を促すためには、個々人の特性に応じたマネジメントが求められます。
マネジャーとメンバーの1on1の対話に関しても、その主たるねらいはメンバーが仕事を通じてやりがいや成長実感を得られるように、個別の支援を行っていくことにあります。
パターナリズム
2019.07.12
パターナリズムとは、もともとは親が子どもを守ろうとするような保護主義を指しています。そこから転じて、立場の強い者が弱い者の利益を守ろうとするがあまり、本人の意向に関わらず過保護にしてしまうことを意味します。
企業の中でパターナリズムは、主にダイバーシティ推進において、男性上司が女性社員を労わろうと気遣うことが、かえって本人のキャリアを損なってしまうといった場面でしばしば用いられます。
たとえば、「女性には女性らしい仕事を任せた方がよい」とか、「育児期間中の女性には軽めの仕事をさせた方がよい」といった配慮が、女性従業員のキャリア機会を狭めたり、キャリア開発に対する意識を低下させてしまったりするケースがそれに当たります。上司本人に悪気はないと思われますが、組織内に存在する無意識の固定観念を払しょくすることが必要です。
マイクロラーニング
2019.06.28
マイクロラーニングとは直訳すると「小さな学習」ですが、具体的には内容と時間の面でコンパクトに作成されたeラーニングを指しています。通常は1つの学習コンテンツあたり数分程度で、特定のスキルや知識の習得に内容を限定し、PCだけではなくスマートフォンを用いて学習することが可能です。
そのため、場所や時間を選ばずに学んだり、業務において必要性が生じた際にリアルタイムで学習したりすることが可能になります。教材作成ツールを活用すれば、素人でもコンテンツを作ることができるため、内製化も容易です。
マイクロラーニングが注目されている要因は、短サイクルでの知識やスキル更新が求められる業務上の必要性と、若い世代の学習スタイルが合致しているところにあります。マイクロラーニングによるアジャイルな学習の推進は、これからの人材開発担当者の必須の課題となると考えられます。
自律分散型組織
2019.06.14
自律分散型組織は中央集権型組織の対極にある組織形態です。中央集権型組織では組織の上層部が権限を持ち、現場での業務遂行を統率したり管理したりするのに対して、自律分散型組織では権限が現場に委譲され、現場での自律的な意思決定が優先されます。
昨今、自律分散型組織が注目を集めている背景には、環境変化のスピードや不確実性がこれまでとは比較にならないほど増している事情があります。現場における自律性の向上や意思決定の迅速化は古くて新しい課題ですが、中央集権型組織との両立はますます難しくなってきています。
組織内に上下関係が存在しない「ティール組織」のようなコンセプトは理想論に過ぎないと見られる向きもありますが、従来の組織管理の固定観念に縛られていたなら、現場の自律性を高め、意思決定のスピードを迅速にすることは難しいでしょう。
ギグワーカー
2019.05.31
ギグとは音楽の世界では、ライブハウスなどで行われる単発のバンドセッションのことを指しますが、ギグワーカーとは特定の組織に属さないフリーランサーの中でも、単発的に仕事を引き受ける労働者のことを意味しています。
かならずしも、働きたいときに働く人だけを指すわけでなく、同時並行的に複数の企業でギグワークを行う人も数多く含まれます。それによって1つの企業で働くよりも、専門的なキャリアを開発できる機会が増えるからです。
アメリカでは企業とギグワーカーをつなぐ、インターネット上の仲介ビジネスが多数存在することもあって、ギグワーカーを含むフリーランサーの比率が労働者の4割近くを占めています。日本でもギグワーカーは増えていくと予想されますが、雇用が不安定な状態で自律的に働くことが求められるため、会社へのキャリア依存の高さが障害になると考えられます。
オーセンティックリーダーシップ
2019.05.14
オーセンティックとは「本当の自分」を意味します。自分は何を大切にしているのかという価値観や、自分はどこを目指したいのかといったビジョンに基づいたリーダーシップのことをオーセンティックリーダーシップと呼びます。
自分の価値観がぶれるリーダーや、どこに行きたいのかわからないリーダーにつき従いたいと思うフォロワーはいないため、リーダーには「自分が何者か」をしっかりと把握することが求められます。
そのことは今も昔も違わないため、オーセンティックリーダーシップは古くからある概念ですが、昨今、それが注目をあびているのは、VUCAと言われる不確実性が高まっているからです。
何が正解なのかがますます曖昧な環境の中で、リーダーが未来を指し示すためには、リーダー自身が大切にしている軸や実現したいゴールをより明確に持っていなければならないのです。
エンプロイーエクスペリエンス
2019.05.06
エンプロイーエクスペリエンスとは文字通り、「従業員体験」を意味します。もともと、マーケティングの世界における「カスタマーエクスペリエンス」のコンセプトを、企業と従業員の関係に適用したものです。
職場において、従業員は日々、たくさんのことを体験しますが、学びが多く、成長実感が得られ、承認欲求や自己実現欲求が満たされると感じられる体験が豊富な職場ほど、従業員に選ばれ、高いパフォーマンスが発揮されることはいうまでもありません。
従業員を顧客のように扱うことに抵抗のある経営者もいるかも知れませんが、企業の持続的な成長のために発想の転換が求められています。また、カスタマーエクスペリエンスを高めるためにITが重要であったように、エンプロイーエクスペリエンスを高めるためにいかにITを活用するかも、これからの人事にとっての重要な課題です。
ウェルビーイング
2019.04.12
健康経営に取り組む企業が増えていますが、「ウェルネス」という心身の健康にとどまらず、「ウェルビーイング」は個々人が感情的にも社会的にも健全な状態を指しています。昨今、ウェルビーイングが注目されているのは、従業員本人にとって良好な状態にあることが、ビジネスの生産性向上につながることがわかってきたからです。
企業はこれまで、一律的に従業員サービスを提供してきましたが、ウェルビーイングを高めるには個々の従業員の価値観や状態をよく理解し、1人ひとりがベストのコンディションで働けるための取り組みが必要とされます。
企業では「働き方改革」がさかんに行われていますが、そのゴールとして、単に働き方の選択肢を増やすのにとどまらず、1人ひとりが最高のパフォーマンスを発揮できる状態を目指すことが求められているといえるでしょう。
リフレクション
2019.03.29
リフレクションとは、「振り返り」や「内省(ないせい)」を意味する言葉です。社会人の成長の大部分は仕事の経験を通じてなされます。そのため、成長につながるような良質な経験に巡り合うことが重要です。
しかし、どれだけ良質な経験をしても、やりっぱなしでは学習効果が限られます。経験の質と同時に、いかに経験から学ぶかという学習力が問われます。そのために必要とされるプロセスが「リフレクション」です。
リフレクションを行う際には、単に起こった出来事を分析するのではなく、「自分がどう感じたか」「自分にとっての気づきは何か」と、自分の内面に向けて問いかけることが重要です。自分なりの意味づけをしっかりと行った上で、「次はこれにトライしてみよう」と目標を立てて経験を繰り返すことによって、効果的な経験学習ができるようになるのです。
リカレント教育
2019.03.14
リカレントとは「繰り返す」という意味の言葉です。社会に出た後も、教育と就労を繰り返す教育システムのことをリカレント教育と呼び、欧米に比べて日本の態勢が遅れていると問題視されています。
日本においても雇用延長やテクノロジーの急速な進歩などによって、企業にとっても個人にとっても、学び直しの必要性は高まっていますが、求められるスキルを教えられる教育機関の不足とともに、リカレント教育を支援する企業側の対応不足が指摘されています。
しかし、それ以上に、生涯学び続けることに対する個人の意欲の不足を見過ごすことができないでしょう。会社から仕事を与えられるのを待つのではなく、自分のキャリアは自分でひらくといった自律的なキャリア意識を高めることがが、生涯学習の前提として不可欠です。
パフォーマンスマネジメント
2019.02.28
パフォーマンスマネジメントとは、企業内における個人と組織の成長と業績向上のためのマネジメントを指しています。日本ではそれほど市民権を得ている言葉ではありませんが、アメリカの企業では目標管理制度や評価制度に基づいて運営される人と組織のマネジメントのことを、一般的にパフォーマンスマネジメントと呼んでいます。パフォーマンスマネジメントは企業運営のかなめといっても過言ではないでしょう。
年次で目標設定を行い、期末にその達成度に基づいて評価を行うというのが、これまでのパフォーマンスマネジメントの基本的なサイクルでした。しかし、従来の方法では時間軸が長すぎたり、内発的な動機付けが難しかったりするために、パフォーマンスマネジメントのあり方を見直す機運が高まっています。レーティングの廃止や1on1の導入はその見直しの一環といえます。
パルスサーベイ
2019.02.14
パルスとは、脈拍や短時間で変化する信号を意味しています。そのため、パルスサーベイとは短期間での変化を継続的に測定するサーベイのことを指しています。頻繁にサーベイを行うことによる従業員の負荷を減らすために、設問数はどんなに多くても10問以内に止めるのが一般的です。
従業員のエンゲージメントの変化を測定するために、パルスサーベイはしばしば用いられます。数10問に及ぶエンゲージメントサーベイでは、せいぜい年に1回の定点観測しかできません。
頻繁なパルスサーベイを実施することのメリットには、エンゲージメントなどの変化がリアルタイムで把握できることに加えて、動的なデータが得られるという点があげられます。それによって、たとえば残業時間とエンゲージメントには相関関係があるかといったような、さまざまなビッグデータ分析が可能になるのです。
エンゲージメント
2019.01.31
エンゲージメントとは、「従業員が属する組織への主体的な貢献意欲」を意味しています。一般的には従業員サーベイなどの方法によって、定量的な指標として測定されます。
今の組織や仕事に単に満足しているかどうかという「従業員満足度」よりも、エンゲージメントはより個人やチームのパフォーマンスに直結する指標として注目されています。
エンゲージメントを高めるためには、「貢献したい」という内発的な意欲を引き出すことが不可欠です。そのためには、従業員一人ひとりによって異なる「働きがい」を引き出すマネジメントが重要になります。
昨今の働き方改革では、働く場所と時間の柔軟性を高める「働きやすさ」の向上に焦点が当たっていますが、組織のパフォーマンスを高めるために、今後はエンゲージメントを重視した「働きがい」の向上が求められるでしょう。
アジャイル人事
2019.01.11
「アジャイル」とは、日本語では「機敏な」という意味を表しています。もともとシステム開発の方法で、綿密な設計に従って開発を行うのではなく、ユーザからのフィードバックを得ながら短サイクルで改良を繰り返すやり方を指しています。このようなアジャイルなアプローチは、システム開発だけでなく、企業におけるあらゆる業務に取り入れられつつあります。
これまでの人事は、「アジャイル」とは真逆の存在でした。リスクの回避や公平性の担保が優先され、スピードが犠牲にされてきました。けれども、事業部門がアジャイルに変わろうとしている今日、人事が従来のスタンスを維持したままでは変革の阻害要因になってしまう恐れがあります。事業がイノベーションを起こすためには、人事がむしろ率先してトライアンドエラーで人事変革を推進していく必要があるのです。