ちょっとだけ、話を聞いてみたいな ——『少人数説明会』で自然と学生の熱量が上がる採用の工夫とは?

「学生との出会いから選考までどうすれば熱量を上げていけるか。」
採用活動をしていく中で、学生と出会って接点を持ち、説明会、インターン、面接などの選考ステップが進むにつれて、いかに相互理解を進めながら、学生さんの熱量(自社への志望度など)を上げていけるか悩みを持つ採用担当者の方もいらっしゃると思います。
今回は、トレンドマイクロ株式会社 採用担当の柿木さんに、ご自身がそのような悩みを経験された中で工夫して考え出したアイデアでもある『少人数説明会』の活用事例を紹介します。
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目次
まだインターンに参加して得られるものが見えづらい状態では、「正直行きづらいな」と
人事ZINE編集部
—— 柿木さんご自身が昨年度に新卒で入社され、現在採用担当者として活動しているとお伺いしています。柿木さんが、学生時代に就職活動で感じた採用する企業側の課題感について教えてください。
柿木さん:
私が比較的直近まで就活生だったこともあり、就職活動中の大学3回生3月当時の気持ちを振り返って見ると、元々教員を目指していたこともあって、大学の周りの友人も教員を目指すような環境でした。就職活動を始めるにあたって、周りに就活生がおらず、自分がどの業界から情報収集していいか分からず苦労しました。
ですので、「この業界ってどんな仕事をするのだろう」と、ちょっとだけ知りたいと当時は思っていました。色々な業界の情報を深く知るよりも、広く浅く知りたいと思うこともありました。
そして、就職活動を進める中で、色々な企業の採用サイトを見て情報収集をしていました。企業概要や募集職種は分かるのですが、実際にどんな仕事をするのか、リアルな部分を知りたいなと思うようになって。
でも、選考が伴う1dayインターンや3dayインターンでは、気軽に深い部分の企業情報がキャッチできないなと、当時課題として感じていました。
加えてインターンに参加したとしても、採用サイトでも知ることができたような、典型的な企業説明会の内容だったこともあり、企業と学生の想いのギャップを課題として感じていました。
私たちがメッセージを送った学生さんに限定して何か特別感のある説明会をできないか
人事ZINE編集部
—— その後、採用担当者になられて、企業と学生の想いのギャップはいかがでしょうか?
柿木さん:
私が人事部に配属された時点では、オファーツールを2つ運用していました。最初は既存の採用フローにならって学生さんとメッセージのやりとりをしていたのですが、その時は『メッセージ(オファー)を送る→承認される→インターンを紹介する』これでやりとりが終了していました。
ここが、かなりもったいないなと自分自身で思っていて。
「もっと学生さんが参加しやすいと感じてもらえるような、相互理解が進むようなコミュニケーションを取れる方法は何かないかな」と最初考えました。
というのも、自分が学生だったら企業からメッセージをもらったら、結構嬉しいことですよね。自分が認められたとも感じると思います。しかしその一方で、広く一般的に公募されているというインターンを紹介されてしまうと学生さんの熱は下がるなと自分は課題を感じました。
—— 確かに、オファーツールで個別にメッセージが来たのに、普通のインターンに呼ばれると学生さんも熱量が下がるかもしれないですね。
柿木さん:
学生さんの熱量を下げない工夫が必要だなと思って、私たちがメッセージを送った学生さんに限定して何か特別感のある説明会ができないかと考えて。始まったのがオファーツール限定の少人数説明会です。
少人数説明会の内容は、1時間30分の枠で、企業説明だけでなく実際の募集職種の働き方やオフィスツアーなど、現時点での学生さんの理解度になるべく合わせて紹介しました。
どういう部署があって、ここの営業はどういう営業方法で、ここのエンジニアはこういう風に働いていてなど、より深掘ったものにしました。加えて、普段のインターンで実施していないオフィスツアーを組み込んで特別感を出したりもして。
だいたい1回あたり5人から8人ぐらいで少人数説明会を実施して、相互理解を進めていった上で、「今度1dayインターンありますがどうですか?」という話をしていきました。
—— 確かに特別感がある少人数説明会なら、オファーされた学生さんも熱量を維持できますよね。
柿木さん:
そうですね。またインターンの内容も工夫をしました。
例えば、エンジニアの場合は実際に自社製品を扱ってもらうこともしました。少人数説明会で深まった業務の概要を、実際体験する内容に今年度から変更しました。
—— すごく濃厚な内容ですね。ちなみにですが、少人数説明会を導入するのにどんな大変さやご苦労がありましたか?
柿木さん:
一番苦労したことは、日程調整かなと思います。
最低でも1回開催するにあたり5人ぐらい集めたいなと自分の中での想いがありました。でも、個々の学生さんとの日程調整に苦労し、最初のうちは1人、2人での開催もありました。後半はスムーズに調整できるようになり、8月後半〜1月前半までで、全41回173名の学生さんに参加していただいました。
先頭に立って情報提供しなくても、同じインターンの学生さん同士で情報提供するように
—— 開始直後は大変苦労されたのですね。少人数説明会を実施してみた結果はいかがでしたか?
柿木さん:
秋の段階で学生さんとの関係強化ができて、その結果学生さんの熱が高まってきているのが見えていました。
学生さんとの『関係作り』 → 『関係強化』に重点を置いて、少人数説明会での関係強化を意識した結果かなと思います。
加えて、今年度からは早期選考を実施し、関係強化した学生さんに参加していただきました。
嬉しいことに面接官からも「今年度の学生さんは例年よりもトレンドマイクロを知った状態で面接受けにきてくれているね。」と、言われるようになりました。

—— 少人数説明会を経由した学生さんの熱が上がっている状態は、柿木さんから見てどこで感じ取られましたか?
柿木さん:
少人数説明会を経由してインターンにきた学生は、私が先頭に立って情報提供しなくても、同じインターンの学生さん同士で「トレンドマイクロでは、こんな業務があるんだよ」って、積極的に情報交流してくれることもありました。
それこそ、運営スタッフのように片付けを手伝ってくれる学生さんもいて、学生さんのコミュニティみたいなものができているように感じました。
こんなことから学生さんの熱が高まってきたと感じました。
—— すごい。学生さんが自分たちで運営するような、おもしろい現象が起きてきたのですね。
柿木さん:
はい。そのような学生さんは普段の素に近い部分も私たちが見ることができるので、選考に合格して内定が出ても、安心して現場に送り出せると、採用担当者としてもありがたかったです。
実は、学生さん同士が情報共有して協力してコミュニティができていくということは、少人数説明会を開始する前に狙った結果ではないです。自然発生で意図せずにできてきました。
少人数説明会を実施して言えることは、やはりインターン、面接などの選考が伴うコミュニケーションだけでは、学生さんも気構えてしまって、比較的企業に合わせることも多くなるので、学生さんの素の部分は見えづらいのかなと思いました。
少人数説明会は、学生さんにとって本当に何もトレンドマイクロを知らない、トレンドマイクロに興味があるかないかを判断する場なので、学生さんは、インターンよりも力を抜いてリラックスして受けていただいたので、採用担当者としてすごく良かったのかなと思います。
学生さんのフォローはファンづくりの一環
人事ZINE編集部
—— 学生さんには、インターンよりも力を抜いてリラックスして参加して欲しかったとのことですが、少人数説明会での学生さんの服装は、スーツではなくて私服で実施したと伺っています。こちらの狙いもそうなのでしょうか?
柿木さん:
はい。やはり、学生さんの素の部分を見たいなという想いがあります。ちなみに少人数説明会だけでなく、トレンドマイクロは面接も私服でOKです。
選考する面接官からも、「もっと学生さんの素の部分を知りたい」という話もあるのですが、学生さんは私服OKだとしても、スーツを着るか迷うと思います。なので、選考を始める前の段階の、少人数説明会やインターンで「私服で来てリラックスして望んでね」と、伝えるようにしています。
一回でも私服で来ると、「この会社って本当に私服で来ても大丈夫なのだな」と、学生さんに思ってもらえるといいなと。
—— 学生さんへのフォロー、気遣いがすごいですね。業務を進める中でコミュニケーションが大変だったのではないでしょうか?
柿木さん:
実は、段々とキャリアアドバイザーの立ち位置になってきて、色々な会社さんの相談とかもされるようになってきました。
私としては、色々な学生さんの意見や生の声を知ることができて、トレンドマイクロの採用活動に反映できたこともあるので、学生さんの相談は、情報収集の1つでもあると捉えていました。

—— 例えば、学生さんからどんなキャリア相談がありましたか?
柿木さん:
学生さんの相談内容は、「このような長所を生かすには、どのような職種が向いていると思うか」「仕事のやりがいを知るためには企業のどんな情報を集めたらよいか」等です。学生さんから相談があれば、可能な限り面談していましたね。
学生さんのフォローはトレンドマイクロのファンづくりの一環かな、と感じています。トレンドマイクロを知ってもらって、その学生さんが社会に出て、それこそトレンドマイクロという会社の製品を使ってくれることもあるのかなと思います。なので、それを踏まえても学生さんのフォローはしっかりするように意識しています。
インタビューを終えて
今回はトレンドマイクロ株式会社 採用担当の柿木さんが、採用業務を実践する中で、より学生との相互理解を向上させ、企業に熱量がある状態で選考に望んでもらえるように工夫した結果である『少人数説明会』の活用事例を紹介しました。
お話を伺う中で、柿木さんが自社の採用の課題感を感じられながら、そのまま放置せず学生さんと企業双方の利益を考えた結果、少人数説明会を実施するに至ったと感じました。
柿木さんのお話にもあった通り、結果だけ見ると少人数説明会は単純に有効な施策かもしれませんが、実践していく上で見えづらい苦労も多々あったのかなと思います。
それでも小さく始め、しっかり行動を積み重ねていく。
採用担当者としての現場の想い、工夫を学ばさせていただきました。
学生さんの「ちょっとだけ、話を聞いてみたいな」というニーズを汲み取って採用に活かす、まずは小さく実践していきましょう!
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