クレドとは?重要性・メリットや類語との違いと導入事例・失敗例も紹介

クレドとは?重要性・メリットや類語との違いと導入事例・失敗例も紹介
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企業の方向性を明確にし、従業員にとって「働きがいのある会社」にするための施策として「クレド」の導入を検討している人事担当者も多いのではないでしょうか。

しかし、クレドの正しい導入手順や、ミッション・企業理念などとの違いを把握しておかなければ、期待する効果を得ることはできません。

そこで今回は、クレドの正確な意味や企業理念との違い、導入に失敗しないための浸透策などについて詳しく解説します。

実際の導入事例もご紹介しますのでクレド導入後のイメージがつきやすくなり、クレドを有意義に運用できるようになるでしょう。

クレドとは?

クレドとは?

クレドとは、「企業の活動や仕事の基準となる信条や価値観」を意味します。具体的かつ簡潔に活動方針を表し、従業員の行動や考え方の模範とするために定めるものです。

ミッションや企業理念などとの違い

「クレド」と「企業理念」や「ミッション」などには、以下のような違いがあります。

クレドと企業理念、ミッション、ビジョン、バリューの違い

・企業理念
企業理念は「企業の存在意義や価値」を指す言葉です。クレドに比べると抽象的な考え方で、創業当時から継承される基本的な価値観とも言えるでしょう。クレドは具体的であり、時代の変化に応じて内容も変化します。

・ミッション
ミッションは、企業や個人が市場や顧客に対して果たすべき使命や任務のことです。一方、クレドはミッションを達成するための行動指針であるため、手段と目的という二つの面を備えています。

・ビジョン
ビジョンは「企業の進むべき方向性を言語化したもの」です。企業のあるべき姿を従業員と共有するために定めます。

・バリュー
バリューは、「企業や従業員に共有されている価値観」です。ミッション達成や理想のビジョンに達するための判断基準にもなります。

クレドが注目される理由

クレドが注目される理由

2000年代に入ってから、食品産地の偽装や商品の不具合が目立つようになってきました。不祥事が原因で起こるSNSでの炎上も続発しています。

このような現状のなかで、消費者からの信頼を得るために、企業のコンプライアンスや社会的責任の強化が重要課題とされるようになってきました

法令違反を告発した労働者を保護する「公益通報者保護制度」の制定によって、企業のモラル意識も高まっています。グローバル化に伴う自主性の高い人材育成も、企業に求められる新たな要素のひとつです。

しかし、モラル意識や自主性を掲げても、その重要性が従業員に浸透しづらく、実現が難しいという問題が生じています。

このような問題を解決するために、企業の指針と方向性を明確にし、従業員に周知するためのクレドが注目されているのです。

クレドを導入するメリット

企業活動の指針や基準、価値観などを示すクレドですが、ほかにも企業理念などを掲げているなかで、なぜあえてクレドを設定し導入する必要があるのでしょうか。そのメリットについて具体的に解説します。

社員のマインドセットの確立

クレドの導入により、社員の思考パターン、マインドセットの確立ができるとともに、組織としての意思の統一が図れます。

クレドは企業人として必要なモラル、社員としての規範、方向性なども盛り込まれた、意思決定・行動のベースです。クレドを通して企業と社員が共通認識を持つことで、仕事で迷いそうな場面であっても、企業理念に即して最適な回答を素早く出せるようになります。

エンゲージメントの向上

企業と社員がクレドを共有することにより、関係性が深まりエンゲージメントの向上につながります。社員は、クレドを通して自社独自の考え方・理念を深く知ることで、自分も社の一員だという実感を育めるでしょう。

コンプライアンス違反の防止

クレドを社員に浸透させることで、コンプライアンス遵守を徹底しやすくなります。

禁止事項を並べるだけではコンプライアンスの向上にはつながりにくいものですが、企業が理想とする行動規範をポジティブな言葉で伝えることにより、社員の意思統一が図れるようになっていきます。

求める人材の育成

人材育成にもクレドは役に立ちます。クレドを通じて企業の価値観をしっかりと身に付けてもらうことで、責任ある仕事を任せられるようになっていきます。

日々の業務のなかで目の前のことをこなすのに精一杯な社員は、短い期間の研修を受けただけでは、会社のミッションや方向性などを忘れてしまいがちです。それでは、日常業務の知識・スキルが身に付くことがあっても、企業理念に即した考え方ができるようになるとは限りません。

一方、クレドを作成し、日ごろから社員が意識できるような工夫を施せば、企業の意思は浸透していきます。企業の価値観などが浸透することで、求める人材が育っていきます。

クレドを作成する手順

クレド導入のステップ

ここからは、クレドを導入するための具体的な流れを、段階別に詳しくご紹介していきます。

ステップ1:代表を選出して議論をする

さまざまな部署や役職から代表を選出して議論を行います。この段階では、会社のあるべき姿や意義を多角的に分析することが大切です。

まずは企業理念を掘り下げながら、会社のミッションやビジョンを徹底域に議論していきましょう。

幅広い意見を聞くためにも、選出する代表メンバーは部門やポジションの偏りがないようにしてください。

ステップ2:目標とスケジュールの設定

最終的なゴールを見失わないようにするためにも、「5W1H」を事前に決めておきましょう。

Who(だれが)   :クレド作成選出メンバーの○○と○○が

When(いつ)   :5月10午後8時まで

Where(どこで) :本社の会議室で

What(なにを)  :経営理念を見直しを

Why(なぜ)   :なぜ自社にクレドが必要なのか

How(どのように):クレドを浸透させるための具体的な方法

この6つを決めておけば主旨が明確になり、過不足なく意見や情報の交換ができるようになります。

ステップ3:企業理念を調査する

経営陣の方針と理念を調査してクレドに落とし込んでいきます。経営者は企業の代表なので、その想いや目標を反映するためにも、クレドを決めるミーティングには参加しなければいけません。

多忙などが理由で参加が難しい場合は、事前に1時間前後の聞き取り調査を行い、経営者の考え方や理想をまとめておくようにしてください。

ステップ4:従業員へのヒアリングとアンケート

全従業員へのアンケートを行い、その結果をクレドに取り入れていきます。

アンケートでは、

  • 従業員が考える将来のビジョン
  • 企業としてのあり方
  • 改善点

などをヒアリングするといいでしょう。

クレド作成の担当者やメンバーをプロジェクト形式で各部署や支店に配置し、全従業員に対するヒアリングを進めていくといいでしょう。

従業員の意向を盛り込めば組織の方向性がより明確になるだけではなく、従業員がクレドに関心を抱くきっかけにも繋がります。

ステップ5:クレドの文章化

議論の結果や経営陣や従業員にヒアリングした内容を文言にしていきます。難しい表現は用いず、具体的で簡潔な文書を心がけるようにしましょう。誰にでもイメージできるクレドの作成を意識することが何よりも大切です。

クレドを周知する3つのステップ

クレドが作成できたら、社内に周知する必要があります。ここではクレドを周知するステップを紹介します。

理解・共感

第一段階として、クレドに触れたり目にしたりする機会を増やすことが重要です。なかにはクレドの存在さえ忘れている社員がいるかもしれません。また、存在を知っていても内容を理解していない可能性もあります。

社内メールやポスター、社内報、イベントなどを活用し通達をするのが良いでしょう。ただし、一方的に通達しても、自分ごととしなければ理解は進みません。実際の業務や社員1人ひとりの状況を照らし合わせ共感を促す機会を積極的に設ける必要があります。

具体化・実践

社員に共感を促すためにも、具体的にイメージし、実践したいと思う気持ちを高めてもらう工夫を行います。行動事例の提示や評価制度を取り入れる手法も、クレドの具体化・実践に役立ちます。

アクションの実践状況のレポート提出を社員に課し、上司がフィードバックするような仕組みを作るのも手です。

定着

最終的には、社員が意識せずともクレドが浸透し実践されている状態になることが望ましいと考えられます。クレドが身に付いているからこそ、業務の判断スピードが上がり、コンプライアンスに触れる行動を自然に避けられるようになります。

それには、一回だけクレドを読んで頭に入れるのではなく、何度もPDCAを回して浸透度を深めさせることも大切です。

クレドの効果的な浸透方法

クレドを浸透させる方法

クレドは周知するだけで終わりではなく、社内に浸透させてこそ効果を発揮するものです。ここではクレドの浸透方法を解説します。

クレドカードの配布

クレドの内容を記載した「クレドカード」を全社員に配布すれば、業務中に迷ったり、日々のなかで企業の一員としての自信を失ったりしそうになった時に、いつでも見返してもらえます。

常に携帯できるように、社員証と一緒にケースに入れられるサイズがよいでしょう。

朝礼・全社会議でのアナウンス

朝礼や人事主導の全社会議、定期的に行う社内勉強会でクレドを繰り返し発信すると、社員の意識に浸透していきます。タイミングは社員の浸透度を見ながら発信するのがポイントです。

また、発信側の上司や経営陣がクレドに沿った行動がとれていないと、社員にも浸透しません。トップが率先してクレドに沿っている行動を見せると、自然に会社全体の雰囲気が変わっていきます。

メールによる周知

社内メールを使った周知も有効な手法といえます。定期的にクレドを記載したメールを配信しましょう。ただし、いつも同じようなメールでは、社員は流し読みするようになります。クレドに基づいた業務事例を掲載するなど、毎回、見せ方を工夫するのがポイントです。

目に入りやすい場所への掲示

オフィス内のエントランスや廊下、休憩室、食堂、会議室など社員の目に入りやすい場所への掲示も効果的です。日常的にクレドを目にすれば自然に頭に入り、潜在的に考え方が浸透していきやすくなります。

クレドを自社のサイトに掲載するのも良いでしょう。社員が目にする機会が増えるだけでなく、求職者や取引先に対しても自社の考え方を理解してもらうことで信頼向上につながる可能性があります。

クレド導入の失敗例と注意点

クレドは作っただけでは成功とはいえません。作成や導入、運用を失敗すると、作っただけで終わってしまったり、社員のモチベーションを下げたりする場合もあります。注意点について解説します。

現場に浸透していない

クレドを作成したものの、現場に浸透していないという場合があります。

経営陣目線が強く、現場の空気、業務と合っていないのかもしれません。もう1つの理由としては、クレドを作成した際の目的、意図が社員に伝わっておらず、なぜ行動や考えの指針にしなければならないのか社員が理解できていない可能性があります。

クレドの意義や意図を浸透させる工夫が重要です。

現場から反発が起こる

クレドを作成する際のポイントとしては現場を巻き込み、社員目線を意識するのが肝心です。しかし、現場の声が反映されていなければ反発が起こる可能性があります。

内容が非現実的で、取り組みが難しいとクレドの存在事態が業務に支障をもたらすとさえ思われるかもしれません。

経営陣が一方的にクレドを作成して現場に押し付けるのではなく、社員の意見も取り入れることをおすすめします。

形骸化している

社員がクレドを認知していても、形骸化してしまうことが多くあります。朝礼での唱和を習慣化したり、ポスターなどで広報したりしても、行動につながらなければ意味がありません

クレドに対する社員の理解度を高める機会を設けつつ、行動に落とし込める仕組みを作ることが大切です。

クレドの導入事例

クレドの導入事例

ここからは、クレドを実際に導入している企業の例をご紹介します。

JTBプロモーション

JTBプロモーションは、愛知県の広告宣伝事業や販促用印刷物の企画、制作、各種イベント事業などを展開する企業です。早い時期からクレドに取り組んでいましたが、浸透度の低さが問題となっていました。

そこで、形骸化したクレドを一新するための施策として全従業員に「クレドアンケート」を行い、ブランド推進メンバーを中心としたクレドの改訂に着手したのです。

「そもそもクレドとは何か?」「導入目的は?」「なぜクレドが必要なのか?」といった、クレドの基本的な意義を再考するところから始め、文例集や他社事例を参考にして新しいクレドの作成に成功。現在はクレドカードを配布して、従業員への浸透度を深めています。

ニチレイ

冷凍食品でも有名な大手食品関連会社「ニチレイ」も、クレドを導入している企業のひとつです。

ニチレイでは以前から顧客や取引先、社会全体などのステークホルダーに対する行動指針を示していましたが、「従業員のモットー、及び行動方針」としてクレドを制定し、従業員に共有しています。

・法と社会の秩序を守り、高い倫理観をもって行動します。
・お役に立つ価値提案のために食と生活を見つめます。
・互いに多様性を認め合い、対話を通じて連携します。
・誠実な気質を継承し、ていねいなものづくりを心がけます。
・謙虚に自己を見つめ、挑戦することで成長し続けます。

ニチレイフーズ「従業員のモットー及び行動指針」

業務内容に沿った具体的で簡潔な内容は、従業員が行動に迷ったときのヒントにもなるでしょう。

まとめ

クレドの導入は企業としてのあるべき姿や方向性を明確にするだけではなく、経営者と従業員の行動指針の共有を実現します。

正しい手順でクレドを導入し、浸透度を深めていけば、従業員のモチベーションアップにも繋がるでしょう。企業の効率的な成長のためにも、クレドの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

人事ZINE 編集部

人事ZINE 編集部

人事・採用担当者の悩みに寄り添うメディア「人事ZINE」の編集部です。 人事・採用に関する役に立つ情報や手法を発信します。 就活生の3人に1人が利用する新卒採用オファー型サイト「OfferBox(オファーボックス)」を提供する株式会社i-plugが運営しています。