新卒紹介のメリット・デメリットを元人事担当者が解説

【無料ダウンロード】採用したい学生のペルソナ設計フレームワークはこちら

学生の売り手市場で新卒採用に苦戦される人事担当者の方で、「新卒紹介」のサービスを検討する方もいらっしゃるのではないでしょうか?

本記事では、元人事担当者だったわたくし、株式会社i-plugの米田が新卒紹介サービスを利用した体験談から学んだメリットやデメリット、そしてリアルな失敗談などをお伝えしていきます。

アウトソーシングする前に、求める人物像=ペルソナ設計を行っておくことが大切です。上流設計をしっかりと行わないと紹介会社と考え方のミスマッチが発生し、欲しい学生に出会えない可能性が高まります。

「まだペルソナ設計を行なっていない!」という方は記事を読んでいただいてから、こちらのワークシートをご活用ください。

採用したい学生のペルソナ設計フレームワーク
採用したい学生のペルソナ設計フレームワーク
母集団形成に課題を感じている採用担当者の方向けの資料です。学生のペルソナ設計フレームワークを用いて、自社の強みや欲しい人材の要件を言語化していきましょう。
資料ダウンロード

新卒紹介とは?

新卒紹介とは?

学生の売り手市場が続き、内定辞退や母集団形成など採用課題を抱える企業が増える中で、成功報酬型でリスクの低い採用手法として「新卒紹介」サービス(つまり大学新卒者の人材紹介)があります。

大手ナビサイトが登録学生に新卒紹介へも登録を促しているケースや、理系学部・体育会・外資系志望者などに特化したサービスもあれば、リアルなマッチングイベントを開催するサービスもあります。

最近では働き方改革の影響からも、多忙な採用担当者の工数を削減する方法として注目が集まっています。

新卒紹介のメリット

新卒紹介を使わない採用活動では一般的に、まず広報活動をして学生を広く集めたり、あるいはターゲットをスカウトするところから、選考日程調整、学生管理、動機付けや内定辞退対策のフォローまで、たいへん手間がかかります。

新卒紹介では、こうした工程を一部アウトソーシングすることで、採用の工数を削減できます。エージェントは、データベースにある学生情報の中からクライアント企業が求める学生を見つけ出し、簡単な面談や自社の紹介までした上で、選りすぐった人材を紹介してくれます。

そのため、大量のエントリーシートを採点したり、大規模な説明会を開いたりする手間が省け、求める学生だけに効率的に会えるのです。

どんな新卒紹介会社がある?

リクナビ・マイナビなど大手ナビ媒体サイトと同じ母体が運営するものもあれば、体育会出身者や文系・理系など特定の学生層に特化したサービスもあります。

一部をご紹介すると、マイナビ新卒紹介オキャリア新卒紹介JOBRASS新卒紹介スポナビエージェントなどがありますが、人材紹介サービスは参入障壁が低いため、常に多数の紹介会社が存在しています。

新卒紹介にかかる料金は?

新卒紹介の料金は、成功報酬型が一般的です。相場は、キャリア採用における「年収の30〜40%」に近く、60〜80万円程度です(※新卒者の初年度年収が250万円として、その30%=75万円)。中途採用と同様、システムエンジニアなどの理系人材では人気が高く、一人の採用につき成功報酬が100万円を超える場合もあります。

また、初期費用などはかからず、成功報酬の請求は入社日時点で確定したり、内定承諾時点で発生するも、入社までに内定辞退があれば全額返金されるという「完全成功報酬型」が多くなっています(入社後数ヶ月以内の早期退職で一部返金されるサービスも)。

採用したい学生のペルソナ設計フレームワーク
採用したい学生のペルソナ設計フレームワーク
母集団形成に課題を感じている採用担当者の方向けの資料です。学生のペルソナ設計フレームワークを用いて、自社の強みや欲しい人材の要件を言語化していきましょう。
資料ダウンロード

元人事の「新卒紹介」失敗談と反省の記録

新卒紹介サービスを使って「とても良い人材を採用ができた」「採用にかかる手間が一気に楽になった」と効果を実感できている企業がいる一方、そうでない企業があることも事実です。

私が以前、人事担当として新卒紹介サービスを使って失敗してしまった経験から、その反省と教訓をお話しします。

新卒紹介を使うことになった背景

背景:

  • 設立70年以上、従業員100名以下の老舗中小企業。
  • 40代の社員が多くポスト不足で、しばらく新規採用を隔年・若干名でのみ実施。
  • 業種やグループ名などから学生人気は高い(ナビに掲載すれば応募は1000件超)。
  • ナビでの採用は掲載料が高い上、応募が殺到して選考に工数がかかりすぎる。

以上のような経緯から、「2,3名の採用なら、こんなに大人数を選考しなくても最低限の人数に会えば良いのではないか?」ということで、新卒紹介の利用が決まりました。

新卒紹介の利用は初めてだったため、一社だけでは効果が不安だということで、2〜3社を並行して利用することになりました。

実際に使って感じた「想像と違う…」

導入にあたって各社のエージェントと何度か打ち合わせをし、自社の強みや弱み、学生に求めるものなどを一通りお伝えして、いざ、紹介が始まりました。

どれくらい採用が楽になるのかと思ったら……。稼働してみると、日を追うごとに問題が噴出していきます。

  • 紹介される人数が多すぎる……
  • 学生が自社の求める人物像とマッチしていない……
  • 最低限のマナーや意欲が感じられない学生が多い……
  • 複数社のエージェントとの日程調整が煩雑すぎる……

なぜ新卒紹介で思うように成果が出なかったのか?

エージェントから日程調整済みの学生が次々と面接に送り込まれてくる中、違和感を感じながらもひたすら選考をこなす日々。途中で修正を図る余裕もなく、「何がいけなかったのだろうか?」とやっと振り返りができたのは、内々定まで出し終えてからでした。

振り返ってみて、反省として次の3点に気づきました。

自社が求める人物像を明確化・言語化できていなかった。

自社がどんな人材を求めているか、これを明確にして言語化するということが、一番足りていなかったと思います。

この定義づけがなければ、エージェントもどんな学生を紹介したら良いか、判断しづらいからです。

例えば、打ち合わせで「御社は残業時間がすごく少ないですね。これなら学生にも人気がありますよ」と言われてはいましたが、それが学生に「ここは残業時間が少ないから、とても働きやすい会社だよ」と伝わってしまうことまでは、意図していませんでした。

事業内容や社風、理念など他の魅力を差し置いて、一番の魅力が「残業が少ない会社」であるように紹介され、「残業したくない学生」とマッチングすると思われてしまったのです。

これは、私たちがどんな人材を求めているかを説明しきれず、なんとなく「自社に合いそうな子を紹介してほしい」とだけオーダーしてしまったからに他なりません。

また、エージェントが自社に代わって人材を選ぶには、「明確なライン」も必要でした。

求める人材の要件定義は、例えできたとしても抽象的になりがちで、それだけで完全にマッチングすることは難しいからです。少しでもマッチングの精度を上げるために、「◯◯な資質を持った学生」「△△の経験がある学生」などの明確な要素や、それが無理なら例えば「学歴」や「居住地」などでも良いので、「確実にスクリーニングできる明確なライン」を提示するべきでした。

結果、マッチング精度は極めて低くなり、「ナビ経由でエントリーシート選考を通過した学生に会っていた頃は、もっと良い学生に会えていた」と感じてしまったのでした…。

エージェントとの相互理解が足りなかった。

エージェントは、学生に自社の事業内容や社風などの概要を伝えてくれます。こちらの意図する通りに説明してもらえるように、きちんと打ち合わせをしたり、説明資料を共有しておくことが重要です。

私たちは、前項にもあったように「残業が少ない」という事実を学生に積極的に伝えてほしいかどうか、エージェントの方と認識違いになってしまいました。

また、「◯◯業界」と一般化した業界イメージで説明してしまうエージェントもいます。

「学生に自社のことをどんな風に紹介するつもりか」というところは、きちんと把握しておくべきでした。ここに齟齬があると、マッチングの精度も下がってしまいます。

また、エージェントに自社の要求を明確に伝えるという点も足りていなかったと思います。私たちが苦労したのは、紹介された<全員>への面接対応に時間を取られてしまったことです。

エージェントから紹介される人数は非常に多く、学生が「ここを受けたい」と言えばそのままスクリーニングもされずに横流しされている印象すらありました。

人材紹介は「エージェントがマッチすると判断したから紹介している」という前提があり、その時点で求職者(学生)には面接が確約されています。面接前に履歴書を見てミスマッチに感じても、会わずにお断りすることはできません。

工数削減のために新卒紹介を利用している以上、マッチングしていないと感じたら随時それをエージェントにフィードバックして方向修正したり、「1日◯人まで」などの条件を課すなどして、こちらで工数をコントロールする意識が必要でした。紹介される学生にただ会っていくだけでは、マッチングの精度も向上されません。

複数の新卒紹介サービスを同時に利用した。

リスクヘッジのつもりで複数社を同時に併用したことも、失敗の原因でした。

一つ目の苦労は「複数社との日程調整」。

私たちは、選考を1クールで終わらせるために、複数社で同じ期間に一次選考をし、二次選考をし…というスケジュールを組みました。

しかし2〜3社を並行利用していると、各社に「A社さん経由は3日の午前だけ」「B社さん経由は3日の午後だけ」と、狭い範囲の日程しか提示できません(同じ日時を渡してしまうと、1回4名までのグループ面接に5人以上の予約が入ってしまう危険があるため)。

そして日程変更やキャンセル、追加の応募もあるので、それをExcelで管理する始末…。(Googleカレンダーの共有も検討しましたが、各社の規定上断念。)

もう一つの苦労というか後悔は、各社エージェントのモチベーション管理ができなかったことです。

新卒紹介エージェントにとって、入社まで売り上げが立たない成功報酬でクライアントから「あなただけじゃなく他の会社にもお願いしています」と言われれば、モチベーションは保ちづらいものです。

A社の顧客に、A社のみを利用している企業があれば、「自分が紹介しなければ、この企業は今年の採用ができないんだ!」と、A社は当然そちらの優先度を高くしますよね。エージェントも“人”なので、意欲的にコミットしてもらえるよう、モチベーションを上げるコミュニケーションが必要でした。そこにすっかり気づけず、「A社さんに電話してもそそくさと切られて、全く協力的じゃない…」と嘆くばかり。

可能であれば、エージェントは1社に絞るほうが、運用工数もエージェントのモチベーションも改善されると思います。

【失敗から学ぶ】新卒紹介を使った採用に成功するコツ 〜新卒紹介の本当のメリットは何か〜

以上の失敗談から得た教訓をまとめました。

  • 教訓1:求める人物像は明確に!
    • どんな学生を紹介してほしいか、明確化・言語化できていないとエージェントも正確なスクリーニングができない
  • 教訓2:エージェントとの相互理解を深める!
    • 自社の特徴や魅力を学生にどう伝えてほしいか、1日何名(何回)くらいなら面接対応できるかなど、要求を伝えてコントロールする
  • 教訓3:エージェントは1社に絞る!
    • 複数を同時並行で利用すると、日程調整が煩雑になるだけでなく、エージェントのモチベーションも低下しやすい

新卒紹介の真のメリットは「採用担当者のレベルアップ」

この失敗からは、「新卒紹介の真のメリット」も学ぶことができました。新卒紹介は、完全成功報酬である金銭的リスクの低さや、工数削減をメリットとして挙げられることが多くありますが、それだけではないと思います。

他者に「こんな人材がほしい」と説明するため、人材要件定義ができる

どんな人材を採用したいか、自分たちで選考しているときは「良いと思った人材が良いのだ」と、深く考えずに終わってしまいがちです。

しかし、新卒紹介を使ってエージェントに選考(スクリーニング)をしてもらうためには、客観的な言葉で説明できる「人材要件定義」が必須になります。

コンサルティングまでは導入しなくても、エージェントと打ち合わせを重ねる中で、「自社の求める人物像を言語化するとこうなるのか」と少しずつ見えてくるでしょう。エージェントは人材のプロなので、他社事例なども交えて、要件定義をファシリテートしてくれるはずです。

本当にほしい人材を口説くためにリソースを使える

母集団形成や選考にかかる工数・コストなどを削減することによって、本当に良い人材、なんとしても自社に来てほしい人材を「口説く」ためにそのリソースを充てることができるようになります。

売り手市場では、学生を採点するばかりではなく、自社を選んでもらうための努力も重要です。自社から直接関わることはもちろん、本音を話しやすいエージェントからもフォローしてもうらことで、より確実に入社決定に繋がるでしょう。

人材のプロに学び、最終的には内製化できる

エージェントがどのようにして自社にマッチする人材を見つけ出し、口説いて入社に繋げてくれたか、ぜひ教えてもらって参考にしましょう。一通り内定出しが落ち着いたら、エージェントと一緒に採用全体の振り返りを行うのもオススメです。

また、毎年同じエージェントに依頼してPDCAを回すことで、マッチングの精度向上も期待できます(毎回ゼロから企業説明や要件定義をする必要がないという点で、工数削減にもなります)。

これを繰り返していれば、自社でも選考の際に見るべきポイントや打ち出す魅力などのコツが掴めます。ゆくゆくは、新卒紹介を使わなくても自社で内製化することもできるでしょう。

新卒紹介、つまり人材のプロであるエージェントと一緒にチームを組んで採用活動を行うことの真のメリットは、そのノウハウに学び、採用担当者もレベルアップできることなのです。

新卒紹介のノウハウは他の採用手法にも活用できる!

これらのノウハウを獲得できれば、大手ナビサイトやダイレクトリクルーティング、自社ホームページからの集客でも、良い採用活動ができると思われます。

求める人材の要件定義を明確にし、そのターゲットに向けた打ち出し方を考え、コミュニケーションを取る。この流れは、どんな採用手法でも、新卒採用でもキャリア採用でも共通します。

新卒紹介サービスを利用する際にはエージェントに全てを丸投げせずに、ぜひ、そのノウハウを獲得するつもりで積極的に関わっていただきたいと思います。

【おわりに】「丸投げ」では新卒紹介は成功しない

「新卒紹介サービスを利用すれば、待っているだけで良い人材が紹介される」

「採用」という人事最大のミッションは甘くありませんでした。

採用や人事は“人”に関わるものなので、感情やしがらみに左右されたり、成功や失敗を簡単には語れないところがあります。そんなときに「人材要件定義」や「人事ポリシー」といった概念は、最近の流行というだけではなく、採用において本当に重要なものであることを、身をもって知りました。

反省を活かしてもう一度採用活動をするとしたら、私は、エージェントを1社に絞って徹底的に情報共有しマッチング精度を上げるか、あるいは同じメリットをもっと安価に得られるダイレクトリクルーティングを使うと思います。

ぜひこの失敗談をもとに、有意義な新卒採用を行っていただければと思います。

採用したい学生のペルソナ設計フレームワーク
採用したい学生のペルソナ設計フレームワーク
母集団形成に課題を感じている採用担当者の方向けの資料です。学生のペルソナ設計フレームワークを用いて、自社の強みや欲しい人材の要件を言語化していきましょう。
資料ダウンロード
人事ZINE 編集部

人事ZINE 編集部

人事・採用担当者の悩みに寄り添うメディア「人事ZINE」の編集部です。 人事・採用に関する役に立つ情報や手法を発信します。 就活生の3人に1人が利用する新卒採用オファー型サイト「OfferBox(オファーボックス)」を提供する株式会社i-plugが運営しています。