新卒採用の最新の潮流を感じ、今後の採用戦略や戦術を考えるための参加型イベント、新卒採用担当者のための「知の交流会」の開催レポートです。
多くの企業の新卒採用を支援する人材研究所の曽和利光氏、株式会社モザイクワークの杉浦二郎氏、株式会社働きごこち研究所の藤野貴教氏、採用アナリスト・コンサルタントの谷出正直氏の4名にご登壇いただき、新卒採用の専門家が注目する企業の採用活動や、近年の採用に関するトレンドなどをメインにお話しいただきました。
「〇〇採用」面白いからやるはNG
藤野貴教氏:
トークセッションの前半は、18年卒の振り返りを踏まえて、「こんな面白い事例があった」「こんなやり方があったよ」と具体的な事例を交えてお話ししていきたいと思います。 面白い事例だったけど、「弊社では真似できないよ」と聞くだけで終わってしまう方も多いんですが、事例の中のエッセンスを活かせるようになってもらえればいいなと思っています。後半は、採用の未来の話をします。大手からベンチャーの方々に向けて、それぞれの企業がどのような採用をしていけばよいか具体的なアイデアを踏まえて話していきたいと思っています。
では最初は、谷出さん。採用アナリストの視点から見て、18年卒は「こんな事例があって面白かったよ」というお話を伺えればと思います。
谷出正直氏
近年の採用の傾向として、「〇〇採用」というブランディングが増えてきているなと感じています。その中でも、今年は、ライトなものが増えています。たとえば、「バーベキュー採用」。 「バーベキューやるから来てね」と学生を誘って、会社説明会の代わりとしているようなパターンや「落ちても再チャレンジOKですよ」という採用ですね。短期間でお互いに知ることはできないので、「一度落ちても、興味・関心があればもう一度面接を受けてもいいよ」という採用です。今は採用が難しいので、企業としても、1人でもすくい上げたいという思いから、再チャレンジ制を導入しているところがあります。
調べてみると毎年50~60社が、「〇〇採用」というものをしているんですよね。最近では、「亀採用」というものがあって、名前に「亀」が入っていたら、1次選考をパスしますよというもの。社長の名前に「亀」が入っていて、昔から名前に亀がついている人に悪い人はいないという教えもあったようですね。でも、「〇〇採用」って、なぜその会社がやるのかという理由がないと上手くいきません。「亀採用」が上手くいっているようだから、自社でも真似しようとしても、ストーリーがないと意味がありません。この会社では、社長の名前に亀がついていた。そして、亀がついている人には悪い人はいないというエピソードをふたつほどホームページ上に載せています。それを見ると、「この会社はこういう社風なんだ」「こんな社長がいるんだ」と分かり、学生がエントリーをします。
なぜ、「〇〇採用」を自社がやるのかをセットで考えて、エントリーしてもらう必要がありますよね。奇をてらって「面白そうだからやる」というのはちょっと違うなと思います。
採用の本質を考え抜いた企業が勝つ時代
藤野貴教氏:
面白いですね。他の人にも話を聞いてみようと思いますが、曽和さん、どうでしょうか?
曽和利光氏:
昨今は、求人倍率が高くなり、全体的に採用難の時代になってきています。業種や従業員数によって違いはありますが、こういう採用難時代は、社会的に見るといいことだと思っています。
企業側が学生に対して、本質的にいい採用活動を追求したところが勝つ。だからこそ、多くの企業が色んな努力をしているなと感じます。バブルのときみたいに学生に迎合するのはよくないですが。
たとえば、エントリーシートに志望動機を書く欄があると、あまり志望度が高くない場合、そこでつまずいて、エントリーしない学生も多くなります。しかし最近は、「うちの会社を最初から志望して来ないよね」と考えて、志望理由を書かせない企業も増えてきていますね。
あと、面接に来る交通費を負担する企業も増えていますね。これは、企業にとってもプラスになるんですよ。交通費出すことで、参加者数が増えると、結果的に1人あたりの接触単価も安くなって、互いにwin-winになれる。ちょっとしたことを改善していくことが、この採用難時代の中で大切になってきていますね。
入社する覚悟がある学生を採る
藤野貴教氏:
杉浦さんは、面白い事例ありますか?
杉浦二郎氏
今年の特徴としては、ナビサイトからの母集団形成が上手くいかなくなってきているなと感じています。面接へのコンバージョンを考えると、全然学生が来ない。面接した人数をナビサイトの金額で割ってみると、とんでもない金額になってしまう。そういう現象が、僕の周りでは結構起きていて、いよいよナビ離れが進んできているなと個人的には実感しています。
そんな中、私のお客様では「即採用」という変わった採用を仕掛けてみたんですよ。これは、究極の採用形態かなと思っています。どういう採用かというと、「名前・連絡先・入社希望日を記入してもらえれば、内定を出します」というルールです。学生からすると「マジで?」ってなるんですけど、ただ「辞退」はできないルールになっています。
採用は、実はすごくシンプルで、「来たい人を採る」だけ。これしかやることがないんです。ただ、「来たいと思ってもらえない」「そもそも見つけてもらえない」という問題もあって、努力して広報すると思いますが。逆に言えば、「来たい」という人がいれば「採ればいいじゃん」というのが私のシンプルな解です。
「絶対に辞退しませんという人がいるのであれば、採るべきでしょう」と、お客様にプレゼンテーションして、即採用をやりましょうということになりました。
実際に採用もできています。先日、内定者懇親会をやったんですが、社長が「この子いいね」と言ってくれた子が、即採用で来てくれた子でした。他から採用した学生とは目の色が違う。即採用で入社を希望してくれた学生たちは、すでにモードが切り替わっているんですよ。入社する覚悟があるので、入社後のこともしっかり考えて、社員に積極的に質問していましたね。
当たり前ですが、「採りたい人を採る」ということを純粋に貫いていけば、どんどんマインドも高まっていきますし、そういう学生も集まってきます。普通は、即採用されるとしても、そのボタンを押さないですよね。よく分からない会社なのに、そのボタンを押したら、必ず入社しなきゃいけない。
セミナー名 | 新卒採用の最新潮流を感じる、知の交流会 2017Summer〜3年後に活躍する人材採用と育成とは〜 |
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構成 | 第1部 トークセッション 第2部 ミートアップ |
主催 | 知の交流会企画委員 – 株式会社グロービス – イグナイトアイ株式会社 – 株式会社人材研究所 – 株式会社モザイクワーク – 株式会社働きごこち研究所 – 株式会社イー・ファルコン – 株式会社i-plug |
登壇者 |
株式会社人材研究所 代表取締役社長 株式会社モザイクワーク 代表取締役社長 株式会社働きごこち研究所 代表 採用アナリスト・コンサルタント 谷出 正直氏 |
※本記事は【セミナーレポート】新卒採用担当者のための「知の交流会」の一部を抜粋したものです。