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【2017年卒市場動向】人事の仕事、HRテックでどう変わる?

新聞で「AI」「ビッグデータ」の見出しを見かけない日はないような時世になった。2016年3月には、Google社傘下のベンチャー企業 ディープマインド社が開発した囲碁ソフト「AlphaGo」が世界最高レベルの棋士イ・セドル九段を破って話題に。Google、Microsoft、IBMなど名だたる巨大企業が人工知能の実用化に向けて開発を進め、その技術で先を行くベンチャー企業があれば、すかさず巨大企業が買収するということが日々当たり前のように起こっている。

日本でもその波は日々大きさを増し、転職情報サイトを見ると、数多くの「人工知能エンジニア募集」が並んでいる。

 

なぜ今、人工知能なのか?

人工知能は、1950年代頃から研究が始まり現在まで続いている。人工知能の話で欠かせない近年の進化は「ディープラーニング」だ。

ディープラーニング(深層学習)は、ビッグデータから人工知能が『自動的に』特徴をとらえて識別し、学んでいく技術だ。例えば人の顔を識別するとき「人間の顔は目がここについていて、耳はここにあって…」と細かく指示をしなくとも、膨大な画像データから特徴を導き出し、動物の顔か、人間の顔か。男性の顔か、女性の顔か。というように自ら判断し識別していく。ディープラーニングは人工知能研究のブレークスルーと言われている。画像認識の精度は、人工知能が人間を上回ったことが実証されている(Florian Schroffら[Google]の研究。2015年3月)。

ディープラーニングの盛り上がりは、2012年に開催された画像認識コンテストがきっかけだ。カナダ トロント大学の研究チームが、ディープラーニングを適用し高精度の結果を残し優勝したことが引き金になった。この時のチームが中心になって起業し、DNNresearch inc.を立ち上げたが、Google社が2013年3月にこの会社を買収している。

― 人工知能は人を超えていく

 

人間が子供から大人に成長していく過程で「なんとなくやっていること」をディープラーニングは再現することができる。はじめからブランコにうまく乗れる人間はいないが、失敗しながらうまく漕げる方法を学び、上達していく。人工知能(ディープラーニング)を搭載したロボットに同じ学習をさせると、漕ぎ方やルールを覚えさせたわけでもないのに、人間と同じように、失敗しながらうまく漕げる方法を導き出すのである。さらに進むと、人間では考え出せなかった一番効率の良い漕ぎ方を見つけるに至る。

このディープラーニングは「機械学習」の技術から進化して生まれた。機械学習は、人間が自然に行なっているパターン認識や経験則を導き出すような行動を、コンピュータが人間と同じようにできるようにするものだ。「この場合は◯◯と判断する」と人間がルールを教え、そのルールに従って情報を処理していく。

機械学習の技術自体は何十年も前からあったものだが、実用化には大きな壁があった。それはデータ量が少なかったことだ。ビッグデータが生まれる前では無用の長物だったのだ。その問題をクリアにしたのが、インターネットである。インターネットの発展により、世界中から膨大なデータを集めることができるようになった。またその情報を処理する機器の性能がアップし処理速度が劇的に上がった。こうしてITとビッグデータを扱える環境が揃ったことが人工知能の実用化、商用化の実現を可能にしたのだ。

60年も前から研究が続けられ、学問の世界でしかなかった人工知能は、ITにより私たちにとって身近なものになろうとしている。これから、様々な分野で人工知能が活躍することになるだろう。

 

ITで変わる世界

ITによる影響は、もちろん人工知能の世界だけではない。2014~2015年頃から「フィンテック」という言葉をよく聞くようになった。FinanceとTechnologyを掛け合わせた造語であり、ビッグデータ等を活用した、新しい金融サービスを指す。既に大手からベンチャーまで数多くのプレイヤーが参入している。

金融以外にも様々な分野でITが活用され、新たな展開に繋がっている。特に注目されているのは、フィンテックをはじめ、以下の6分野だ。

金融×IT → フィンテック
教育×IT → エデュテック
健康×IT → ヘルスケアテック
家×IT  → ホームテック
車×IT  → オートテック
新領域×IT→ フロンティアテック

オートテック分野では自動運転の話題がホットだが、各分野、人工知能との相性もよいため、これまで実現不可能だったような新たなサービスがどんどん展開されていくだろう。

 

HRテックで、人事の仕事はどう変わる?

人工知能の発展により、これまで人がしていた仕事の“一部”を人工知能が担っていくだろう。既に、アスクル社が運営するECサイト「LOHACO」では、人工知能の“マナミさん”がユーザーサポートとして活躍しており、顧客がチャットで質問をすると、マナミさんが即座に答えてくれる。ユーザーサポートに電話で問い合わせた際の「ただいま電話が混み合っております…」のイライラを解消してくれるばかりか、運営側から見ても約6.5人の省人化に繋がっているのだそうだ。

ではここで、人事の仕事について考えてみたい。ITと人工知能の力で、何がどう変わるのか。既に、ヒューマンリソース✕ITで「HRテック(HRTech・HRテクノロジー)」という言葉が生まれている。人工知能も既に活躍し始めている。ではどんなところで活用されているのだろう。

 

配置 → 評価 → 報酬 → 育成

人の管理は、本来ならば水の流れのように繋がっているはずだが、流れの途中で管理者が変わったり、定量的に把握しにくいといった理由から、流れがぶつぶつと途切れていたりする。結果、仕事の評価が高いのに給与が上がっていなかったり、成果を上げているのに評価が低い、という問題があっても管理側が気がつかないという事態が発生している企業もある。頑張って実績をあげても、正当な評価をしてもらえなければ、また評価が正当でも報酬に反映されなければ、働く人のモチベーションは維持できない。

逆に、評価も高く給与も上がっているという良い状態の人もいる。こういう人には、もっと仕事を与えた方が良い。もっと伸ばせる部分はないか、研修はちゃんと受けているのか、本人の希望はどうなのか。そういったことを、これまではExcelなどで管理しているのは良いほうで、まったく管理ができていないという企業も多かった。

こういった問題の解決策として、1990年頃欧米で生まれた概念「タレントマネジメント」が、数年前より日本でも注目されるようになってきている。人材が持つ能力、スキル、経験値などを一元管理して見える化(データ化)し、さらに育成、訓練、開発し、最適な配置を行うことによって、高いパフォーマンスを発揮できる人材に育てるという考え方だ。

ここにITの力が発揮される。何百人、何千人単位の一元管理を人の手で、例えばExcelで行おうと思うとかなりの工数だ。そこにITや人工知能が一役買い、属人的だった人事の仕事を効率化・最適化するための開発が進んでいる。タレントマネジメント✕ITである。

そして、この流れの前に「採用」という大事な仕事がある。これまで採用活動は「all人の手」で行われてきた。採用担当者は、多くの応募者の中から、出身大学やキャリア、年収などを鑑みて、エントリーシートや職歴書の情報から「選考に進める」「進めない」を決める。

人材紹介会社に依頼すれば、エージェントが先ほどのような観点から、各企業に合うであろうスペックの人材を探しだして、引き合わせてくれる。

 

ここにビッグデータ、人工知能を掛けあわせたらどうなるだろう。

100万人〜1000万人単位でデータを収集し、職歴や属性、年収、キャリアの内容などをスコアリングし、人を採用したい企業の『社内データ』も合わせて揃えておく。その企業で活躍するのはどういう人材か、人工知能が社内データから特徴を探し出し、人材データベースから最適な人をピックアップしてくれる。まさに「HRテック」の世界だ。こうなれば、人事の仕事から「人を探す」という仕事がなくなるだろう。エージェントの仕事からも「探す作業」はなくなるはずだ。人工知能の方が人間の精度を超えていくのだから。

 

HRテックは、“補助”でしかない

人工知能は、意志を持てない。これが最大の特徴ではないだろうか。「こんな人を採用したい」と、人工知能は『思う』ことができない。インプットされた目的のために最適解を探すのみ。採用業務の中で一番大切な“採用戦略“は必ず人がやらなくてはならない部分である。

意志が持てないということは、人の心を動かすことができないということだ。「あなたはこの会社に入るべきだ。なぜならば…」とPepperに説明されても、どこか納得できない人が大半だろう。人の心を動かすのは人にしかできない。最終面接で入社を悩んでいる候補者に、社長が「あなたと働きたい!一緒にやろう!」と伝える場面をPepperと比較して想像していただくとわかりやすいと思う。

・書類選考
・候補者のスケジュール設定
・面接官のスケジュール設定
・資料作成
・応募書類管理
・筆記試験の発注、採点依頼

上記のような仕事はIT化で必要がなくなったり、簡素化できたり、人工知能やテクノロジーで代用できる仕事である。将来なくなる可能性は高い。しかしHRテックは補助でしかない。これから重要さを増すのは、経営戦略にもとづいた人事戦略ができる人事、そして人の心を動かす仕事だ。しかし、この「人にしかできない」部分を外部に完全委託しているケースも多くみられる。それが経営にどう影響を与えるのか。人事のあり方はこれからもっと議論されることだろう。