このレポートは2016年10月18日に開催されたHR総研様とのトークセッションレポートです。
綿密に戦略を練ったはずが、なぜ今年も新卒採用は上手くいかなかったのか?
HR総研所長の寺澤康介氏と共にデータを読み解きます。
【セミナーレポート】HR総研と読み解く新卒採用最新データ①~17卒後半を戦う~
通常は有料で提供されている、HR総研様制作の「人事白書」データも公開!
~17卒採用の後半戦、そして18卒採用をいかに勝ち抜くか~
新卒採用スケジュールの変遷
HR総研所長 寺澤様:
16卒採用は政府の要請により、採用広報の開始が12月1日から3月1日へ、選考の開始は4月1日から8月1日へと後ろ倒しされました。ところが8月1日だと、今度は遅すぎて実態にそぐわなかった。結果として17卒採用では、選考開始が6月1日へと変更され、広報開始から選考開始の期間は過去最短の3か月となったわけです。
水面下では前倒しで採用広報を始める企業もあったものの、やはり3か月では短すぎたため、今度はインターンシップを採用に活用する企業が増えました。13~14卒の際は経団連も統制を敷いており、あからさまにインターンシップを採用に活用する企業はありませんでしたが、17卒では急激に目立つようになりました。
採用の課題
採用シーズンが始まる前に17卒採用の課題を企業に調査しました。
やはり多かったのは「応募者数の確保」(46%)で、特に「ターゲット層の応募者数の確保」(45%)を課題としている企業が目立ちます。次いで「内定辞退者を減らしたい」(44%)、「大学との関係を強化したい」(38%)、「学内企業セミナーの参加大学を増やしたい」(31%)を課題としている企業がありました。
ターゲット大学の設定の有無とターゲット大学の学校数
グラフ1:ターゲット大学設定の有無 出典:HR総研(ProFuture株式会社)
12卒から6年続けて調査をしていますが、ターゲット大学を設定している企業数は毎年増加し続け、ようやく16~17卒で頭打ちとなりました。売り手市場ではターゲット大学を設定しても採り切れないと企業も気づき始めたのかもしれません。しかしそれでも回答している企業の約5割はまだターゲットの大学を設定しているという結果になっています。
グラフ2:ターゲット大学設定の有無 出典:HR総研(ProFuture株式会社)
次に、設定しているターゲット大学の数はどの程度かについてです。
全体では「10校以下」をターゲット大学に設定している企業は約7割と多く、「20校以下」まで合わせると9割に上ります。
これを企業規模で見ると、大企業では「20校以下」の設定は7割と減少しますが、代わりに「30校以上」の設定をしている企業が約2割あります。中堅・中小企業では「20校以下」の設定は9割を超えます。
半数以上の企業でターゲットの大学を設定していますが、大手企業では事実上設定していない企業はまずないと言えます。
実施したインターンシップのタイプ
企業がどのようなタイプのインターンシップを実施しているかについてですが、「1日」が最も多く38%、次いで「1週間」は28%となっています。中でも注目すべき点は昨年から倍増している「半日程度のインターンシップ」です。内容は2時間程度のものが多く、セミナー感覚で、1日に複数社のインターンシップに参加する学生も見受けられます。経団連は傘下企業にインターンシップは「5日以上」実施するよう方針を示しており、その統制が取れていた時期は「1週間」のインターンシップが多くあったものの、短いタイプのインターンが増えてきているのが特徴です。
インターンシップの開催時期
毎年「8月」開催が最も多かったのですが、調査が始まって以降初めて「2月」開催が「8月」開催を上回りました。「2月」は「1Day(半日・1日)」タイプの比率が「8月」よりも大きく、時期やタイプの志向が学生とマッチしているのかもしれません。
インターンシップと選考の関係
グラフ3:インターンシップと選考の関係 出典:HR総研(ProFuture株式会社)
インターンシップと選考を結びつけている企業は1,001名以上の企業で19%。300~1,000名の企業では31%、300名以下の企業になると約半数でインターンシップを選考に利用しています。また「選考には結び付けないが、優秀な学生については考慮する」というものまで入れると、1,001名以上の企業でも半数を超える結果でした。選考に直結しているか、選考する上でのメインにしているかは別として、実質的に過半数の企業がインターンシップを採用選考に利用していることになります。また、中小企業ほど選考に強く結びついていると言えます。
半日・1日インターンシップの有用性
近年、増えつつある1Day(半日・1日)タイプのインターンシップは、本来の就業体験型インターンシップと比べ、批判が多いのも事実です。では学生側の評価はどうでしょう。
「大変役に立った」は文系24%、理系31%。「まあまあ役に立った」は文系57%、理系55%で、評価は悪くありません。また「役に立たない」と評価する学生は文理ともに1割もいないのです。反対に1週間の長いインターンシップの評価はそう高くありません。
拘束時間の長さがストレスになることが考えられます。ある種のマッチングと捉えることもできますが、就業体験が長いことで、企業側の不都合な部分が見えることも評価に繋がらない要因かもしれません。最近のインターンシップはインタラクティブで、具体的な体験や気づきを与えるなど工夫されたものも多く、それを有用と感じる学生が多いのだと思います。
インターンシップの参加時期
グラフ4:インターンシップ参加時期 出典:HR総研(ProFuture株式会社)
企業への調査では「8月」と「2月」拮抗していたものの、学生への調査では「2月」参加が5割を超えます。また文系では「1月」参加も「2月」参加に次いで多く、「8月」参加を上回っています。これは「2月」開催は時期的に長期のインターンシップができず、1Dayタイプで受け入れ人数を稼ぐ企業が多いからです。選考を兼ねてインターンシップを実施している企業も多いため、学生もより集まりやすい傾向にあります。ただ「8月」開催の方が本来の意味でのインターンシップの比率は高いのではないかと思っています。
インターンシップ前の選考の種類
インターンシップ前の選考は「エントリーシート」が大半で7割以上を占めています。「面接」や「適性検査」もあり、実際の選考とあまり変わらない結果でした。インターンシップが選考の第一段階と考えれば、このような結果も納得せざるを得ないですね。ただし「面接」を実施している企業の割合は、昨年よりも減少しており「1Dayタイプ×大量定員」のインターンシップ増加が影響していると考えられます。
インターンシップ先への応募と内定
グラフ5:インターンシップ先への応募 出典:HR総研(ProFuture株式会社)
文系(67%)・理系(68%)ともに3分の2の学生がインターンシップ先の企業に正式応募をしています。大学経由ではなく、自由応募型のインターンシップへの参加が非常に多く、就職活動の一環として考えられるようになってきました。
インターンシップ先に正式応募をした学生のうち、文系(33%)、理系(43%)がインターンシップ先の企業から内定を取得しています。またこの調査時点で「選考中・選考前」という学生もおり、さらに内定取得の割合が高まる可能性もあります。
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<講演者プロフィール>
寺澤 康介氏
ProFuture株式会社 代表取締役社長
HR総研 所長 / 中央大学大学院戦略経営研究科 客員教授
1986年慶應義塾大学文学部卒業。同年文化放送ブレーン入社。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。常務取締役等を経て、07年採用プロドットコム株式会社(10年にHRプロ株式会社、2015年4月ProFuture株式会社に社名変更)設立、代表取締役社長に就任。約6万人以上の会員を持つ日本最大級の人事ポータルサイト「HRプロ」、約1万5千人が参加する日本最大級の人事フォーラム「HRサミット」を運営する。 約25年間、大企業から中堅中小企業まで幅広く採用、人事関連のコンサルティングを行う。週刊東洋経済、労政時報、企業と人材、NHK、朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、アエラ、文春などに執筆、出演、取材記事掲載多数。企業、大学等での講演を年間数十回行っている。