「上場企業」と「非上場企業」の違い vol.1

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就職活動をする中で、「上場企業」「一部上場」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。
上場企業とは株式を上場している企業・・・・・・それは知っていても、それが企業にとってどんな利点があるか理解していますか?
今回は上場企業と非上場企業の違いについてみていきましょう。

「一部上場」ってどういう意味?

企業が事業を行うためには資金が必要です。原材料の調達、生産設備の導入、製品の保管・配送、雇用など、さまざまな場面でお金がかかります。資金の調達には、銀行から借りる、株式会社であれば株式市場を通じて機関投資家や企業などからお金を集める方法などがあります。

株式(株券)とは、株式会社が資金を調達するために発行する一種の証明書です。株式を購入した人や組織は株主となり、企業の経営に参加したり、企業の収益によって配当金の分配を得たりすることができます。また、株主優待と呼ばれる特典(製品や招待券など)がある場合もあります。

 

■証券取引所と市場の特徴

 

株式が証券取引所で売買されている企業を「上場企業」と呼びます。全国の証券取引所に上場する企業の数は約4100 社(外国企業を除く。複数の取引所で上場している企業も含む)。日本には、東京証券取引所(東証)、札幌証券取引所(札証)、名古屋証券取引所(名証)、福岡証券取引所(福証)の4つの証券取引所があります。

4つのうち東証は日本最大の証券取引所で、上場企業数は3721社(2020年10月1日時点)です。企業の時価総額や流通株式などの基準によって、東証一部、東証二部、マザーズ、JASDAQなどに分かれています(東証は2022年4月に現在の4市場を3つに再編予定)。「一部上場」とは、基準が最も厳しい東証一部の株式市場に上場していることを示す言葉です。

 

上場のメリットとデメリットを理解しよう

■株式上場のメリットとデメリット

 

上場企業は広く一般の投資家に株式を購入してもらえるため、非上場企業よりも資金の調達がしやすくなります。また、企業が上場するためには一定の上場基準を満たす必要があり、厳しい上場基準をクリアすることで知名度や信頼度が高まるため、取引を有利に進めることができ、優秀な人材を集めやすいといったメリットもあります。

一方で、上場するということは株式市場という開かれた場所のメンバーになったといえます。上場前よりも公共性、透明性が求められるようになり、企業の社会的責任は大きくなります。また、企業が株式市場からどのような評価を得ているか客観的に分かるようになるため、買収されるリスクも増すでしょう。

上場企業には投資家の判断材料となる情報開示や株主への説明・意見対応といったさまざまな義務があります。これには継続的なコストが生じ、また企業の独自性やスピーディーな判断の足かせとなる場合もあるため、あえて上場しない企業もあります。

近年、企業価値の向上を求めて経営に関して積極的に提言したり、株主還元など要求したりする「物言う株主(アクティビスト)」の存在が目立つようになりました。物言う株主は経営に刺激を与え、企業価値を上げたり健全化を進めたりする一方で、企業がその対策のため疲弊する現象も起こっています。

主な非上場企業には、竹中工務店(建設)、YKK(非鉄金属)、日本IBM(ソフトウエア)、JTB(旅行)、ロッテ(食品)、森ビル(不動産)、ヨドバシカメラ(小売り)などがあります。

また、保険会社には「相互会社」(保険業にのみ認められている会社形態。株主が存在せず、保険契約者が原則として会社の構成員となり運営に参加する)という形態をとる会社があり、日本生命などが該当します。相互会社も非上場企業になります。

ちなみに、2020年は新型コロナの影響により業績の不透明感が強まり、上場を予定していた企業の「上場中止・延期」発表が相次ぎました。新型コロナによって社会は大きく変容し、過去のビジネスモデルが今後も通用するかどうかは分かりません。経営戦略の見直し、ビジネスの再構築が急務といえるでしょう。

 

日本の企業の90%以上は非上場の中小企業

 

上場・非上場という区分のほか、企業は資本金や従業員数の規模により、中小企業とそれ以外の大企業にも分類される場合があります。上場するには、資本金を含む純資産や利益について一定額以上の基準を満たさなければなりません。このため、上場企業には大企業が多くなっています。

日本の企業の90%以上は非上場の中小企業です。

一般的に知名度が低く、経営情報が公開されていない場合が多いですが、独自の技術などを武器にグローバルに活躍している優良企業も多数あります。

経済産業省は、世界シェア、技術の独自性、サプライチェーン上の重要性などの側面から優良企業113社を、2020年版「グローバルニッチトップ企業100選」として選定しています。こうしたデータを利用すれば、力のある中小企業を見つけることができるでしょう。