ホテル業界とは|動向や将来性、職種、向いている人などを解説

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「ホテル業界の将来性を考えると就職しても大丈夫か不安」
「自分はホテル業界に向いているだろうか?」

ホテル業界への就職を考えた時、上記のような不安や疑問を感じる人も多いのではないでしょうか。

新型コロナウイルスの影響で需要が大きく減った時期もありましたが、徐々に回復しつつある状況です。同時に、新たな課題やニーズも生まれてきているため、最近の動向だけでなく中長期的な将来性も踏まえて、正しく業界を理解することが重要です。

この記事では、ホテル業界の市場規模や仕組み、最近の動向や将来性を紹介します。ホテル業界の種類・職種、向いている人なども解説するので、業界研究の参考にしてみてください。

ホテル業界とは?

ホテル業界とは、利用者に対して宿泊用の客室を提供する業界の総称です。また、ホテル内のレストランや結婚式場などの運営もホテル業界の事業の1つです。

ホテル・旅館業界と区分されることもありますが、この記事では、総称してホテル業界として解説します。

ホテル業界の市場規模

株式会社東京商工リサーチの調査によると、2021年のホテル業界の国内事業者の売上高の合計は、約2兆1814億円となっています。この数値は、2020年と比較して34.9%減少しています。新型コロナウイルスの感染拡大前の2019年と比較すると、45.5%の減少となっています。

ただ、2022年は全国旅行支援などのプロモーション施策が功を奏した結果、売上規模・市場規模にも回復の兆しが見られたという情報もあります。

今後は、プロモーション施策終了後の需要の落ち着きや回復しきっていないインバウンドなど課題が残っており、今後の推移には注視が必要です。

ホテル業界の仕組み・ビジネスモデル

ホテル業界の主な収益源は、客室への宿泊です。客室を販売する仕組みとしては、「直接販売」と「委託販売」の大きく2つに分けられます。

直接販売とは自社から直接顧客に客室を販売することを指します。委託販売とは、旅行会社や旅行代理店、旅行予約サイト運営会社など第三者に委託して客室を販売することを指します。

委託販売の場合、ホテル宿泊と鉄道や飛行機のチケットを合わせて販売する、セット販売も多くなっています。

客室への宿泊以外にも、ホテル内のレストランや結婚式場などの利用でも収益を上げています。また、新型コロナウイルスの感染拡大後は、レストランで提供している人気メニューをレトルト加工・販売することなど、収益の多角化が進められています。

ホテルの4つの種類

ホテルには、ビジネスホテル、リゾートホテル、シティホテル、アーバンリゾートの4種類があります。それぞれで顧客層やコンセプト、サービスなどが異なるため、各種類の特徴を押さえていきましょう。

①ビジネスホテル

ビジネスホテルはもともと出張に来たビジネスマン向けに作られたホテルです。そのため1名で泊まることを想定した小さめの部屋が多く、交通の便が良い立地が特徴です。

温泉や豪華な食事プランなど非日常を感じる設備・サービスは少ないものの、無線LANやパソコン、プリンターなど、仕事の準備で使うような設備は多く揃っています。

しかし、最近ではビジネス以外を目的とする宿泊客や複数人での宿泊客も増えているため、ツインルームや独自のサービスを提供するホテルも増えています。

②リゾートホテル

リゾートホテルは、海やスキー場、テーマパークなどリゾート地近くに建設されているホテルのことです。

宿泊客が非日常感や特別感を味わえるよう、海や雪山が見える立地にしたり、バーベキュー場を併設したり、部屋やアメニティのデザインにテーマパークのキャラクターを採用したりといった工夫がされています。

高級料理の提供や露天風呂、スパなどリラックスできるサービスも豊富で、結婚式場を併設しているケースも多いです。

③シティホテル

シティホテルは、市街地にある大型ホテルです。レストランや結婚式場、レジャー施設を併設していることも多く、宿泊にとどまらない幅広い用途で多様な人々に利用されています。

そのため、宿泊以外の事業による収益も多いことが特徴です。客室への宿泊と併設施設の利用をセットにしたプランを売り出していることもあります。客室は1,2人用が基本ですが、大人数用の部屋が用意されているホテルもあります。

④アーバンリゾート

アーバンリゾートは、大都市圏やその周辺地域に立地する、滞在型レジャー空間です。ラグジュアリー感のあるプールやマッサージ施設などリラックスできる環境が整っている他、ヴィラや貸別荘の形をとっていることもあります。

複数のスイートルームを備えていることも多く、都会から離れたリゾート地に行かなくても、非日常的な贅沢を味わえる点がポイントです。大都市圏へのアクセスの良さから、出張のビジネスマンからも需要があります。

ホテル業界の動向・トレンド

次に、ホテル業界の動向・トレンドを見ていきましょう。ホテル業界は新型コロナウイルス感染拡大の影響を非常に大きく受けた業界の1つなので、コロナ禍からの回復が注目されがちです。今後の回復の見通しやアフターコロナの課題について見ていきましょう。

国のプロモーション施策が追い風になっている

新型コロナウイルス流行で深刻な影響を受けた旅行・ホテル業界ですが、国や各自治体によるプロモーションによって回復傾向にあります。具体的にはGoToトラベル、県民割、全国旅行支援などのプロモーション施策が挙げられます。

こうしたプロモーション施策により、ホテル側で宿泊費を割引せずとも多くの観光客が安くホテルに宿泊できるようになり、利用者が増加しました。

人手不足が顕著な業界

ホテル業界では人手不足が大きな問題となっています。

宿泊・飲食関連業界は離職率が非常に高く、厚生労働省が発表した「令和2年雇用動向調査結果の概況」のデータによると、令和2年の宿泊業・飲食サービス業の離職率は約27%でした。

他のサービス業と比較すると、生活関連サービス業・娯楽業は約18%、複合サービス事業が約8%となっており、宿泊業・飲食サービス業の離職率が高いことが分かります。

さらに、厚生労働省が発表した「新規学卒就職者の離職状況を公表します」のデータによると、宿泊業・飲食サービス業では、高卒が約6割、大卒が約5割、それぞれ入社後3年以内に離職しています。

離職率が高いと言われる飲食業界との合算ではありますが、宿泊業界も離職率が高いと考えられます。

また、ホテル業界は以前から慢性的に人手不足でしたが、コロナ禍で人員が減った状態のまま、全国旅行支援などで需要が高まったことも、人手不足に拍車をかけています。

DX(デジタルトランスフォーメーション)が進む

慢性的な人手不足を解決すべく、ホテル業界ではDX(デジタルトランスフォーメーション)が進められています。

具体的には、バーチャルコンシェルジュやオンラインチェックインなどにより、一部業務を無人化しています。

また、新型コロナウイルスの感染拡大以降は「なるべく人が少ない時にロビーや大浴場を使いたい」という宿泊客のニーズが高まっています。こうしたニーズに対しても、各施設の混雑状況をリアルタイム配信するなどのDXが役立っています。

ホテル業界の将来性

新型コロナウイルスの感染拡大により一時は深刻な影響を受けたものの、ホテル業界回復に向けて明るい兆しも徐々に見えてきています。ここでは、ホテル業界の将来性について確認していきましょう。

今後需要回復していく見込み

2020年からの新型コロナウイルスの感染拡大後は緊急事態宣言や外出自粛などでホテル利用客が激減しましたが、その後、旅行・宿泊需要は回復してきています。

テレワークの普及で一時は需要回復の目処が立っていなかったビジネスでの往来も再開しており、ビジネス客の利用も今後増加していくでしょう。

こうした需要回復の流れは今後も続いていく見込みです。

宿泊の売上減少対策として講じていた、団体客向けサービスから個人客向けサービスへのシフトや飲食サービスによる付加価値の向上なども実を結び、今後成長が見込めます。

訪日外国人観光客の獲得が回復の鍵に

今後、回復していく見込みとはいえ、国内のホテル宿泊需要は限られています。そのため、訪日外国人観光客をいかに獲得していくかも業界にとって重要です。

新型コロナウイルスで大きく減少した訪日外国人観光客も、海外から日本への入国規制の緩和により、回復しています。

新型コロナウイルス感染拡大前までは、外国人旅行客の数は増加傾向にあり、2019年には約3188万人にものぼっていました。

2021年には約25万人にまで落ち込みましたが、以前の水準まで回復すればホテル業界の業績も大きく改善するでしょう。

ワーケーションや近距離旅行などの新たな需要も

近年、働く場所としてホテルの部屋を利用するワーケーションや近距離旅行など、新たなホテルの利用方法が広まりました。

これを受けて、ホテル業界もワーケーションプランや近隣地域からの宿泊客限定のプランなどを売り出しています。

具体的には、テレワーク利用を考慮したカフェの開放やテーブル配置、交流会の開催による地域の人や企業との交流の場の創出、近隣地域からの宿泊客限定の特別割引などが行われています。こうした新たに生まれた需要に応えていくことも、今後の売上を向上させる重要な要素となっていくでしょう。

ホテル業界の主な職種

ホテル業界には、多くの職種が存在します。実際に宿泊客に接する職種もあれば、直接的な接客は行わない職種もあるのです。主な職種を8つ解説するので、自分の強みを活かせる職種ややりたいことができる職種を探してみましょう。

営業・企画マーケティング

ホテル業界の営業は、主に法人向けに活動します。宿泊プランを作って旅行代理店に提案したり、旅行代理店がツアーを組む際に自社ホテルを宿泊先にしてもらえるようアプローチしたりします。

学会や企業の忘年会などの場として自社ホテルを利用してもらえるよう営業することも仕事です。

企画・マーケティングは、自社ホテルでのイベントの企画や新たな宿泊プランの企画をする職種です。例えば季節の果物を味わえる期間限定ビュッフェや記念日用の宿泊プランのような企画を立てています。

フロント

フロントは、ホテルを訪れた宿泊客のチェックイン・チェックアウトの対応、案内などを行う職種です。予約の管理や客室の割り振り、荷物の預かり、会計なども担当しており、ここ数年では新型コロナウイルス流行により、宿泊客の体温チェックや体調確認なども業務に加わっています。

加えて、宿泊客から観光地や近くの飲食店などについて尋ねられることもあるため、観光インフォメーションセンターのような役割も担っています。

ベル係

ベル係は、ホテルで宿泊客の荷物を受け取ったり、部屋まで運んだりする職種です。また、宿泊客と一緒に部屋まで荷物を運ぶ中で、鍵や電話、エレベーターの使い方、大浴場の利用時間など宿泊に関する基本情報を伝えます。

宿泊客とコミュニケーションをとりながらも、大切な荷物を落としたりぶつけたりしないよう気を配らなければなりません。

ツアー客が来た時には一度に多くの宿泊客の荷物を運ぶため、体力が必要な職種です。

ドアマン

ドアマンは、ホテルの正面玄関でドアを開けたり、宿泊客から車の鍵を受け取って代わりに駐車したりする職種です。他にも、雨が降っている時に傘を差し出したり、雪が積もった時には雪かきをしたりもします。

混雑時にはホテルの敷地に入ってくる車の誘導・交通整理をすることもありますし、不審者がホテルに入るのを防ぐ警備員のような役割を担うこともあります。防犯上の観点から、体力のある男性が就くことが多い職種です。

客室係

客室係はハウスキーピングとも呼ばれる職種で、客室のベッドメイキングや水回りを含む室内の清掃、備品の補充を行います。宿泊客の満足度を大きく左右する重要な業務を担っている職種と言えるでしょう。

丁寧に清掃することはもちろん重要ですが、前の宿泊客のチェックアウトから次の宿泊客のチェックインまで、限られた時間の中で素早く清掃することも求められます。

客室係はパートやアルバイトが担当することも多く、正社員の客室係はスイートルームなど重要な部屋のみを担当する場合もあります。

コンシェルジュ

コンシェルジュは、ロビー近くで宿泊客からのあらゆる要望に応える職種です。近くの観光地を紹介したり、宅配便やレンタカーを手配したり、レストランや観劇の予約をしたりと幅広いリクエストに対応します。

場合によっては「一緒に宿泊している妻へサプライズをしたい」というような要望を受けることもあります。

海外からの宿泊客の要望に応える際には宗教やその国の文化にも配慮しなければならないため、臨機応変な対応力だけでなくさまざまな知識も必要です。

コック

コックは、ホテルのレストランで調理人として働く職種です。担当する作業・料理などによって主に以下の部門に分けられています。

  • 総料理長:メニューの考案や調理場の体制を管理する
  • シェフ:調理の他、調理場の責任者として厨房を取り仕切る
  • ソーシエ:ソースを作る
  • ブッチャー:肉類の下処理・保存をする
  • ベーカリー:パンを作る
  • パティシエ:デザートを作る
  • 洗い場:洗い物を担当する

ウェイター

ウェイターは、ホテルのレストランでオーダーをとり、できあがった料理を提供する職種です。他にも食器の片づけや宴会場のセッティングなども行います。

ただ配膳・セッティングの仕事をするだけでなく、オーダーをとる際には顧客の好みや食べられないものを確認したり、食材や調理法について宿泊客から聞かれた時にはスムーズに答えたりしなければなりません。

また、食器を片付ける際にも音を立てないようにするなど、細かな心配りが重要な職種です。

ホテル業界に向いている人

次に、ホテル業界に向いている人の特徴を紹介します。

  • 接客が得意な人
  • チームプレイができる人
  • 観察力が高い人

接客が得意な人

ホテル業界では宿泊客と接する職種が多いため、接客が得意な人は向いています。質の高い接客やサービスを売りにしているホテルでは特に重要視されます。

普段の身だしなみや言葉遣い、所作などすべて含めて、ホテルのイメージやコンセプトに合った接客をすることが重要です。

接客の仕事をする際は、立った状態が続くことも多く、体力的にハードなときもあります。そうした状況でも、利用者のために質の良い接客ができることも大切です。

チームプレイができる人

ホテル業界にはさまざまな職種がありますが、お互いに連携して接客が成り立っています。例えばフロントとベル係が連携できていなかった場合、チェックインした宿泊客をスムーズに客室まで案内できません。

また、職種間で良好な関係を築けていなかった場合、宿泊客にそれを悟られてしまいぎこちなさが伝わる恐れもあります。

職種を超えて良好な関係を築き、連携して仕事ができる人はホテル業界に向いています。

観察力が高い人

観察力が高い人も、ホテル業界に向いています。ホテルでは、いかに宿泊客のニーズを把握して質の高いサービスを提供するかが重要です。

宿泊客の会話や服装、持ち物から宿泊の目的や好み、体調などを察して的確にニーズを読み取ることができれば、宿泊客が期待する以上のサービスを提供できるでしょう。そして、そうした質の高いサービスを提供することで、リピートにつながる可能性もあるのです。

そのため、観察力の高い人はホテル業界に向いていると言えます。

ホテル業界の売上ランキング

最後に、ホテル業界の売上上位3位の企業を紹介します。ランキングは2021年度の有価証券報告書の内容をもとにしています。

1位:リゾートトラスト株式会社

ホテル業界の売上1位は、リゾートトラスト株式会社です。2021年度の売上高は約1,577億円です。

会員権事業、ホテルレストラン事業、ゴルフ事業、メディカル事業などを行っており、ホテルとしてはエクシブ、リゾートピアなどのリゾートホテル・シティホテルが国内に40ヶ所、ハワイに1ヶ所あります。

企業理念のなかで、「信頼と挑戦」「ハイセンス・ハイクオリティ」「エクセレントホスピタリティ」を追求することを表明しているとおり、高品質なサービスで人気を博しています。

2位:株式会社 西武ホールディングス

ホテル業界の売上2位は、株式会社西武ホールディングスです。2021年度のホテル関連事業の売上高は約1,295億円です。

主な事業内容は都市交通・沿線事業、ホテル・レジャー事業、不動産事業です。ホテル業としては、国内ではプリンスホテルなどを50ヶ所、海外ではハワイ、中国、台湾、オーストラリア、イギリスなど11の国と地域に33のホテルを展開しています。

「でかける人を、ほほえむ人へ。」をグループビジョンとし、「お客さま目線」「コンプライアンス」を大切にしている企業です。

3位:ルートインジャパン株式会社

ホテル業界の売上3位は、ルートインジャパン株式会社です。2021年度の売上高は約970億円です。

主な事業内容は、ルートインホテルズの運営や管理・企画、旅行企画などです。ルートインホテルズには、ビジネスホテルであるホテルルートイン、観光ホテルであるルートイングランディアがあります。

地方創生を重視し全国にホテルを展開していることや、「独自の道を開拓し、社会に貢献し、必要とされる企業を目指す」という企業方針のもと福祉事業も展開している点が特徴です。

まとめ

以上、ホテル業界の市場規模や仕組み、最近の動向や将来性などを紹介しました。

ホテル業界は新型コロナウイルスによって、大きな影響を受けた業界のひとつです。そのなかでも、創意工夫を凝らして業界を盛り上げようとしている企業がたくさんあります。

どのようなホテルでも宿泊客が快適に過ごせるようサービスを提供するという点は同じです。しかし、ビジネスホテル、リゾートホテル、シティホテル、アーバンリゾートなどの種類によって、顧客層や求められるサービスは異なり、各社の独自性があります。

ホテル業界への就職を目指して就職活動を進めていく際は、こうした企業ごとの特徴・独自性を理解し、自分の価値観と合う企業を見つけることが大切です。興味を持った方はぜひホテル業界の企業研究に進んでみてください。