企業の説明会に参加するまでに読んでおきたい銀行業界まるわかり解説

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銀行業界の解説サマリー:

◇従来は預金と融資の金利差で利ザヤを取るビジネス。

◇近年は信託銀行や証券会社と連携した高度な金融商品も展開。

◇国内ビジネスは頭打ち。国際展開が鍵。

◇地方銀行を中心に再編の波。3メガバンク体制も崩壊するか。

 

■何を扱っている業界?

銀行の基本的なビジネスは、個人や企業から預金としてお金を預かり、企業に対して融資としてお金を貸すビジネスです。現在はゼロ金利政策の下で、預金金利はほぼ0%になっていますので、個人100人から各100万円、合計1億円を年間金利0%で集めて、これを企業に年間金利3%で貸す事で、個人に払う金利と企業から貰う金利の差額である年間300万円の利益を生み出すビジネスを行っています。

 

しかし現在はこのビジネスだけでなく、投資信託の販売や証券会社等との連携等、幅広い金融ビジネスを展開しています。例えば信託銀行と連携して相続対策や利用していない土地の有効利用の提案を行ったり、証券会社と連携して日経平均と金利が連動するようなオーダーメイドの特殊な預金を作ったり投資信託を作ったりと、お客様の要望に応じた金融商品を作ったりしています。

 

対企業については、融資だけでなく、日々のお金の管理決済の手伝いや、工場の新規建築、新事業進出、また企業の買収や売却等にも強く関わります。大規模な国際的なプロジェクトに対して対応する場合には国内外の銀行で連携をしながら大規模融資を行ったりと国家プロジェクトにも関わる事があります。

 

■その業界は今どんな感じ?

従来の銀行業務である預金と融資のビジネスで考えると、誰もが銀行口座を既に持っている現状では、日本国内だけのビジネスではこれから銀行が成長していく事は難しくなってきます。その為、ここ数年で地方銀行を中心に合併等の再編が多数発生しています。

 

また少子高齢化が進む現状からも「日本の銀行」から「世界の銀行」として国際展開を行う事が求められていますが、国際的に戦う事ができている銀行グループは現在の所限られています。その為、金融業界や金融庁では3メガバンク体制は多すぎるとの議論がなされており、2メガバンクに集約すべきだとの議論も存在しています。

 

そして国際的には、銀行に対しては規制強化が進められています。リーマンショックの要因の一つが銀行がリスクをとり過ぎた事であるとされており、また銀行が潰れたら問題が大き過ぎるので「大きすぎて潰せない」という状況は避けるべきだとの議論から、バーゼル規制や各国独自の規制が導入され、議論がされています。例えばアメリカでは銀行と証券会社を同じ金融グループが経営してはいけないとのルールや、イギリスではイギリス国内で集めたお金を海外の企業に貸す事は止めるべきだといった議論が行われています。

 

■勝つために何が重要?

日本では銀行市場は頭打ちとなっているので新規市場開拓や国際展開が求められています。銀行だけのビジネスから脱却する為に、証券会社を持っている銀行も数多くありますが、銀行と証券会社は密接な関係にあるため、証券ビジネスで成功している銀行はメガバンクにほぼ限られています。特にメガバンクは旧財閥からの付き合いがある企業と密接に関係があるため、対企業の証券ビジネスではメガバンク系の証券会社と外資系証券会社がほぼ独占しているのが現状です。この証券ビジネスの独占状態、特に外資系証券会社が大きくシェアを取っている所をどう崩すかが重要となってきます。

 

また、国際展開についてはメガバンクが積極的に行っており国際的な存在感が強まっています。メガバンクの中には海外の銀行を買収して現地の普通銀行として展開している所もあります。他のメガバンクでは海外の様々なビジネスを買収して、航空機のローンビジネスや投資信託を作るビジネスといった単体のビジネスを次々買収している所もあります。地方銀行でもアメリカや中国等に支店を置き、地元企業の国際展開をサポートする業務を行っている企業が多数あります。世界的に経済が安定していない中で、比較的体力が残っている日本の銀行が今、どこまで将来の銀行ビジネスの再加熱に向けて準備が出来るかが日本の銀行の将来の鍵を握るでしょう。

 

■そこではどんな人が活躍しそう?

銀行は子供から大人まで全ての人とお付き合いをする会社です。ある意味で一番身近な会社とも言えるかもしれません。しかし大事なお金を預かる会社だからこそ、お客様に信頼される必要があります。お客様からの相談について親身になって相談に乗れる人が、お客様からの信頼を得る事が出来ます。相談に対してしっかりとした提案をする為に、常に金融や政治や経済について積極的に勉強をする必要があり、また高頻度で様々な社内研修や試験があるので、勉強を常にしていく能力・気持ちがある事も重要です。特にメガバンクでは海外でも積極的に展開を進めている為、語学に自信がある人は海外で活躍する機会が多くありそうです。

 

銀行で企業と関わる業務では入社1年目でも、中小企業に対してはほとんどの場合で社長と話をする事になり、大企業でも部長や役員と話をする事になります。時には会社の社長や役員会で決まった事に反対をしたり、逆に提案をしたりもするコンサルティング業務も銀行の重要な業務で、大変面白い業務です。メーカー等の銀行以外の会社でも社長や役員に元銀行員が迎え入れられるのも、コンサルティング業務の経験を買われることにあります。国内や世界をまたにかけて活躍する銀行マンになりたい、コンサルタントとして活躍したいという挑戦的な人には銀行業界は面白い業界です。

 


岸 泰裕

元外資系金融機関勤務、 現在は大学非常勤講師。金融工学MBA。
1985年生まれ。大学卒業後、シティグループの日本持株会社財務部門に勤務しながら金融工学のMBAを取得。その後、スタンダードチャータード銀行日本支店に勤務すると共に大学にて金融リテラシー論についての教鞭を持つ。2014年よりは明治大学や龍谷大学や、金融機関開催の各種セミナー等にて講師として活動。また、金融機関勤務経験を生かし、学生に対する就職支援活動やセミナーも行っている。