外国人留学生と女性が活躍できる日産【日産自動車インタビュー・後編】

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日産自動車の採用から育成までを統括する、日産自動車株式会社 日本タレントマネジメントグループ兼人財開発グループマネージャー 品川裕祐氏(以下、品川氏)に、同社の新卒採用についてインタビューを行いました。

求める人財は自ら出会いに行く日産の「戦略採用」

 

有名企業なので、学生からの人気が高いと思いますが、どのように集めていらっしゃいますか?

品川裕祐氏:

大型イベントに参加することは多くの学生さんに会うことが出来、とても大事だと思っています。しかし、私たちが採用したい人財がそこに来ているとは必ずしも言い切れません。私たちが求める人財を採用するためには、そういう人財がいるところに、自ら行かなければならないと思っています。そういった意味で、ターゲットに対し効果的なアトラクションをしていくことを、日産では「戦略採用」と呼んでいます。

 

「戦略採用」をするとどんなことが起こりますか?

品川裕祐氏:

自動車業界以外と競合することも出てきます。

 

競合相手は同業だけではないのですね。

品川裕祐氏:

はい。まさにそこを狙っています。具体的にどこの業界かは申しあげられませんが、最近は、他業界とのバッティングも多くなってきています。

 

では自動車業界志望ではない方に興味を持ってもらう、という工程が必要になりますよね。どんなことを学生にお話しになるのですか?

品川裕祐氏:

今まで自動車業界に関心がなかった人に対しては、自動車業界は高成長で、最先端のIT技術等を活用してビジネスを行い、社会課題も解決しているということを伝えています。例えば、自動車業界はこの15年ほどで、全世界の販売台数が30〜40%伸びています。100年を超える歴史がある産業ですが、今なおこれほど高い成長率を維持しています。2050年までに人口も100億人に達するといわれており、GDPも加速度的に増加するといわれています。自動車の使い方の変化はあるかと思いますが、潜在的な市場は大きいと思われます。

また自動車は、これから電動化(バッテリー等)、知能化(人工知能)を行っていき、IT業界との協業も進んでいきます。そしてそれらを駆使し、大気汚染や地球温暖化といった環境問題、交通事故や渋滞といった安全に関する問題も解決していきます。成長産業で、最先端技術に関われ、そして社会問題も解決する。ワクワクしませんか?

加えて言いますと、このような環境下、競争に勝ち残り、それをリードできる会社は、世界に数社しかありません。その条件は、規模、最先端技術、変化への柔軟な対応だと思います。日産は、その一社だと言えます。私たちのアライアンスに三菱自動車様も加わりました。これで総販売台数は1000万台規模を見込み、世界トップ3のグローバル自動車グループとなり、これまで以上に規模のメリットを享受できます。また、TVCMで流れている電気自動車、自動運転に代表される世界最先端技術。これらの技術、製品は、現に世界をリードしています。業界の変化、規模、技術の追求、私たちはすべてを追っています。また、変化に柔軟に対応するための土壌が日産にはあります。ダイバーシティ(性別、人種、学歴、性格などについて多様な人材を積極的に受け入れる環境を築くこと)です。

 

そういった事実を正しく伝える、ということをされているのですね。

品川裕祐氏:

はい。これらを伝えた上で、自動車業界をリードし、社会をよりよくしていきたいと思っている方に来ていただきたいと思っています。

 

 

外国人留学生も女性も活躍するための先進的な取り組み

ところで、採用においても“多様性”は重要なテーマなのでしょうか?

品川裕祐氏:

重要なテーマですが、全社での外国人採用比率、数等の目標値は定めていません。求める人財像にマッチすれば、採用するという考え方のためです。ちなみに過去3年間は、新卒において10%以上を占めています。

 

自然に選考して10%以上というのは高いですね。

品川裕祐氏:

おそらく、上記で説明した日産のグローバルビジネス展開やグローバルな人財の適材適所の考え方が少しずつ外国人の皆さんの間にも浸透してきたのではないでしょうか。また、スクリーニングの中にwebテストがありますが、そこでは日本語は求めていません。言語によるハンディキャップを取り除き、選考を受けてもらい、そこでリーダーシップの素養はあるか、和魂多才型人財のポテンシャルがあるかを見極めています。

 

なるほど。国籍不問で採用するのならば、障害にならないような選考設計も大切ですね。ところで理系の女性採用にも積極的とうかがったのですが、注力されているのですか?

品川裕祐氏:
注力しています。自動車会社のエンジニアは機電系が多いと思われていますが、実際は、それ以外の専攻の方もたくさん活躍しています。こういった事実をできるだけ多くの接点を持ち、伝えることで、活躍できるというイメージを持ってもらう努力をしています。また、女性は出産等のライフイベントがありますので、その前後での会社サポート等についても具体例を交えながら説明しています。

 

「新卒採用」という考え方から「若年層全般の採用」へシフト

 

それでは、日産自動車の採用において、どんなことに取り組むべきとお考えですか?

品川裕祐氏:

今後、少子高齢化が進み、日本の労働人口が減少すると、採用においてこれまでと同じ質を担保できるのか、という課題が出てきます。冒頭で申しました通り、日産は専門性やリーダーシップのある和魂多才型人財を採用しています。労働市場全体が縮小していく中でこのような人財を現在の新卒採用という枠組みだけで確保し続けることは非常に難しいと考えています。

もちろんこの枠組みのメリットもありますので継続していきますが、第二新卒(就業経験3年未満)や海外にいる日本人、海外にいる外国人等の採用も積極的に取り組んでいきたいと思います。

 

確かに「新卒採用」を既卒3年以内まで広げようとする企業なども出てきました。社会全体が徐々にその方向に向かいそうですね。そうなると学生は、学生生活で何を身につけるべきかもっと考えるようになりますね。

品川裕祐氏:

そうですね。世界のトレンドは、学生時代に自分の専門性を持つ方向にあります。今後、日本でもこれが進んでいくのではないでしょうか。

 

入社後3年まで責を負う採用チーム

最後に、採用後の育成についても教えていただけますか?

品川裕祐氏:

日産では、求める人財像である専門性、リーダーシップを有する和魂多才型人財の採用を行っておりますが、これは入社してからの人財育成においても継続されています。それぞれの強化のためにアサインメント、教育を行っており、それはキャリアパスにつながっています。将来グローバルに戦略策定、実行のリードを行うことのできる人財になるためには、入社後数年間どのように育成するかは非常に重要です。コンセプトと施策の一貫性を保つために、採用チームは、採用、入社から3年間育成の責任を担っています。自分が採った人財がちゃんと成長しているかを見ています。

 

採用と育成の部署が分かれている企業が多いですよね。大企業は特にそうだと思いますが。

品川裕祐氏:

日産ももともとは分かれていたのですが、2年前に今の形にしました。採用して、グローバルビジネスパーソンとして一人前になるように育て上げるということを、関係者一丸となり行っています。育成の結果については、採用にフィードバックし、それを採用に生かしています。

 

採用にもフィードバックされているのですね。採用から育成まで、会社として本気で取り組んでいらっしゃるという姿勢が伝わってきました。ありがとうございました。

 

(この記事は、2016年12月1日にOfferBox法人向けサイト・スペシャルインタビューに掲載された「ダイバーシティ先進企業、日産自動車が取り組む新卒採用とその未来〈後編〉」を一部加筆修正したものです。)