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1年で50以上の上場企業が社名(商号)変更
社名は正式には商号といいます。日本取引所グループ(JPX)のウェブサイトに掲載されている2005年から20年までに商号変更した上場企業は約740社にも上ります。20年の1年間だけでも50社以上の商号変更がありました。
技術の発展、社会の変化などに対応し、多くの企業が組織変更などとともに商号を変更しています。(以下、「商号」は「社名」で統一します)。
■2020年に社名変更した主な企業
21年1月には、日本製粉が多角的総合食品企業としてニップンに社名を変更しました。4月にはソニーが経営機構改革に伴いソニーグループとなり、富士ゼロックスが米ゼロックスとの合弁解消を機に富士フイルムビジネスイノベーションに、沢井製薬が持ち株会社へと移行しサワイグループホールディングスに社名変更。このほかにも、ジャパンネット銀行がブランド推進の一環としてPayPay銀行になるなど、多くの社名変更が予定されています。
最も多いのがホールディングス化、グループ化
社名変更の理由は様々ありますが、上の表からも分かるように特に目立っているのがホールディングス化やグループ化によるものです。上場企業のうち2005年から20年までに250以上の企業が「〇〇ホールディングス」「〇〇グループ」という社名に変更しています。
ホールディングス(HD)とは、持ち株会社のことで、事業会社の株式を所有し、大株主として傘下企業の経営・管理を行うことです。経営・管理の範囲は、ホールディングスによって異なり、事業内容を傘下企業に任せるところや、細かく指導・管理するところもあります。
ホールディングスのメリットは、意思決定の迅速化や傘下企業全体の利益を考えた経営ができること、傘下企業への権限移譲がしやすく、企業のM&A(合併・買収)がスムーズにできることなどが挙げられます。
■ホールディングスの仕組み
21年4月にソニーグループが発足することが話題となっています。ソニーは組織変更によってグループ経営を進め、さらに事業を拡大していくことをその社名とともに発信しているのです。
既に20年9月には収益の高いソニーフィナンシャルホールディングスを完全子会社化し、自社の先端技術と金融事業のノウハウを融合させフィンテック事業などに注力するとしています。
ソニーは、1946年に東京通信工業として設立した小さな電気製品の会社でした。現在は、米国のアニメ配信大手の買収に動くなど、エンターテインメント事業も成長し、事業の多角化がさらに進んでいます。
22年4月にホールディングス化するパナソニックも、松下電気器具製作所として配線器具を作ることから始まった企業です。松下電器製作所、松下電器産業、パナソニックと、事業を広げ、社名や組織を変え、進化してきたのです。
社名変更の背景に経営戦略あり
社名変更をする理由について、ホールディングス化、グループ化の例を挙げましたが、ほかにも大きく捉えて次のような特徴があります。
■社名変更 主な特徴(図内:旧社名→新社名/カッコ内は社名変更年月)
・認知度の高いブランド名を社名に
商品やサービスと社名が合致することで、認知度がより上がる効果があります。
身近なブランドでは、07年に東陶機器からTOTOへ、17年に富士重工業からSUBARUへの社名変更などが挙げられます。最近テレビコマーシャルで見かけるAGCは、18年7月に旭硝子から海外市場の拡大を目的に企業ブランドと社名を統一しました。
このように、社名に英字を用いたことで、世界市場において認知されやすいということも1つの理由といえます。
・事業領域の拡大・変更により業種・事業名を外す
21年1月に社名を変更したニップンは、1896年に創立された製粉会社ですが、現在は加工食品事業が伸び、また健康食品、化粧品なども手掛けており、事業領域が製粉という特定分野に限らないことで社名変更した例です。
ほかにも、写真フイルム事業が衰退する中、複写機や医療などに事業を多角化し、06年に富士写真フイルムから富士フイルムホールディングスとなった例などがあります。
・分社化や経営統合、合併など
分社化は、一部の事業を切り離してそれぞれの業務に特化することです。経営統合や合併は、2つ以上の会社が1つになったりすることで社名を変更するケースです。
前者の例では、19年9月に東京急行電鉄は東急となり、鉄道事業を東急電鉄として分社化しました。東急は駅周辺の再開発といった不動産事業などを担い、東急電鉄は鉄道事業に特化し、その相乗効果などを見据えています。
経営統合の例では、07年にマルハグループ本社とニチロが統合し、水産最大手となったマルハニチロ※などがあります。
複数の企業が1つになることで、その資金力やブランド力を生かしてシェアや事業拡大などを図ります。
※社名は07年にマルハニチロホールディングスとなり、14年の組織再編で現社名に変更。
このように、社名変更の経緯を調べると業界・企業研究が深まります。
社名変更は企業のウェブサイトや新聞などに掲載されます。ぜひチェックしてみてください。