鉄鋼業界とは?仕事内容や代表企業、市場動向や今後の将来性まで解説

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「鉄鋼業界ってどんな仕事をするの?」
「鉄鋼業界のことはよく分からないな」

鉄鋼業界と聞いてもイメージを持ちにくく、何となく近寄りにくい印象を持つ学生も多いのではないでしょうか。

普段の生活ではなじみのない鉄鋼業界ですが、「鉄は産業の米」と呼ばれ、私達の生活を支える大事な存在です。日本のモノづくりを支える鉄鋼業界は、学生に人気のある業界の1つでもあります。

この記事では、鉄鋼業界の仕事内容や向いている人、志望動機のポイントを紹介します。鉄鋼業界の市場動向や将来性について解説していくのでぜひ参考にしてください。

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鉄鋼業界とは

鉄鋼業界は製造・加工を担う鉄鋼メーカーと流通を担う販売会社で構成されます。

鉄鋼メーカーが製造・加工した鉄は、流通を担う販売会社によってさまざまな業界や企業に提供されています。

鉄を必要とする業界は数多く、身近な製品ではテレビや冷蔵庫、エアコンなどの家電に使われています。またビルやマンション、道路など、街中のあちこちで鉄は活用されています。

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鉄鋼業界の仕組み

鉄の製造や加工を担う鉄鋼メーカーは、取り扱う原料や製造方法の違いから高炉メーカー、電炉メーカー、特殊鋼メーカーの3つに分類されます。取り扱う原料と製造方法の違いに着目すると、それぞれの特徴が掴みやすいです。

鉄鋼メーカーが製造・加工した鉄の流通を担う販売会社によって、鉄を必要とする企業の手に届きます。 それぞれの役割、仕事内容や代表的な企業を紹介します。

高炉メーカー

高炉メーカーは高炉という設備を用いて、鉄鉱石やコークスなどの原料から鉄鋼製品を生産するメーカーです。高炉を用いて原料から炭素分の多い銑鉄(せんてつ)を作ります。次に銑鉄から不純物を取り除いて鋼鉄を作り、冷やして固めると製品が完成します。

高炉は非常に大きな設備で、建設や維持に多額のコストがかかります。そのため、高炉メーカーは主に大手企業で構成されています。

主な高炉メーカー

  • 日本製鉄
  • JFEスチール
  • 神戸製鋼所

2000年以前には6社あった大手の高炉メーカーは合併などにより現在は3社体制になっています。

電炉メーカー

鉄スクラップを原料として取り扱うのが電炉メーカーです。スクラップとは「細切れ」「鉄くず」という意味で、鉄スクラップを電気炉と呼ばれる装置で溶かし、不純物を取り除いてから改めて鋼材にします。

高炉メーカーと比べ、電気炉の建設や維持コストは低く、二酸化炭素排出量が少ないというメリットがあります。一方で成分調整が難しく、高い強度と加工しやすさの双方が求められる自動車用鋼板などには不向きとされています。

主な電炉メーカー

  • 共英製鋼
  • 東京製鐵
  • 合同製鐵

主な電炉メーカーのうち、共英製鋼と合同製鐵は高炉メーカーの日本製鉄が大株主になっています。

特殊鋼メーカー

特殊鋼メーカーは溶かした鉄スクラップにマンガンやニッケルなどレアメタル(希少な非鉄金属)を加え、特殊な性質を持つ鋼材を作っています。

鉄はレアメタルを加えることで、熱や錆、摩擦への強さが増したり、加工しやすくなるといった性質を持ちます。特殊な性質を持った鋼材は、輸送機器や建設、工作機械、プラントなど幅広い業界で利用されています。

主な特殊鋼メーカー

  • 大同特殊鋼
  • 山陽特殊製鋼
  • 日立金属

特殊鋼メーカーは市場から高機能化などのさまざまな要求を受けており、新素材や高機能材の開発など研究開発に力を入れています。

販売会社

鉄鋼メーカーが作った鉄は、流通を担う企業を通じてエンドユーザーである自動車メーカーや電気メーカーなどに届きます。

流通を担う企業は大きく3つに分類することができます。

  • 商社系
  • メーカー系
  • 独立系

総合商社が流通を担うこともありますが、三菱商事と双日の合弁会社であるメタルワンや伊藤忠丸紅鉄鋼といった子会社が鉄鋼の販売をおこなっています。

日本製鉄子会社の日鉄物産やJFEスチール子会社のJFE商事がメーカー系企業です。独立系では阪和興業や岡谷鋼機といった企業があります。

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代表的な職種と仕事内容

鉄鋼業界は学生に馴染みがなく、どのような職種があるのか気になる人も多いのではないでしょうか。鉄鋼業界の代表的な職種と仕事内容について解説します。

鉄鋼業界への理解を深めるとともに、自分に合った仕事があるか確認しましょう。

営業

営業は鉄鋼業界において重要な職種の1つです。営業の役割はエンドユーザーへ鉄鋼製品を売り込むことが大きな役割ですが、それ以外に市場ニーズの開拓や安定供給のために製造部門や生産管理部門との連携が求められます。また建設業界向けの鉄鋼製品を扱う場合は、図面を読むスキルが求められるなど担当する業界によって専門知識が必要です。

営業とは別に技術営業という職種があるのも鉄鋼業界の特徴の1つです。技術営業は担当する顧客に対し、技術的な提案をおこないます。

例えば建設業界であればコスト削減に向けた工法や製品の提案、積算といった専門的なやりとりが主な役割です。営業に比べて、より技術的な知識・スキルが求められます。

研究・開発

研究・開発は日々ニーズが変化する顧客に、付加価値の高い鉄鋼製品を提供するために欠かせない職種です。競争の激しい鉄鋼業界で、他社との差別化を図る重要な役割を担います。

例えば多くの鉄を使う自動車では安全性や機能性を確保しつつ、環境への配慮が求められ、軽い鉄のニーズが増しています。研究・開発には高度な技術を駆使して、軽い鉄を生み出すことが求められます。ニーズやトレンドに合った研究テーマに取り組み、技術の蓄積や特許出願、製品化、新規事業化まで幅広い業務を担うポジションです。

製造・生産管理

製造・生産管理は、顧客が求める鉄を期日までに納品するために無くてはならない職種です。

主に製品の生産計画を立て、製造工程の管理を行います。製造部門では営業が獲得した注文を取りまとめ、それぞれの納期を考慮しながら生産計画を立てなくてはなりません。もし納期に遅れると、顧客のビジネスに多大な損害を出して信用を失ってしまうため、責任が大きい仕事と言えます。

単に鉄の製造をおこなうだけでなく、製造ラインの管理、生産機械にトラブルが起きた際の対処、製品の品質維持などさまざまな役割を担っています。製造・生産管理の支えがあるからこそ、安定して顧客に鉄鋼製品を提供できるのです。

事務

営業や製造・生産管理の仕事を支える事務は重要な役割を担います。

鉄鋼業界の事務職は、鉄鋼メーカーが日々受ける多数の発注を手際よく処理し、営業や製造・生産管理を支える仕事です。

事務の主な仕事

  • 電話対応
  • 伝票処理
  • 受発注業務
  • 在庫確認や見積もり回答
  • 社内システム入力

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鉄鋼業界の市場規模・動向

世界鉄鋼協会によると、2021年の世界全体の鉄鋼需要は18.7億トン、2022年は19.2億トンと予測され、鉄鋼需要の拡大が見込まれます。世界の人口増加や経済成長の予測などを踏まえると、2100年には約38億トンに需要が増加すると試算され、市場の拡大が続いていく見通しです。

日本における粗鋼生産量は約1億トンで、粗鋼生産量世界一の中国の約10分の1の割合を占めています。国内の市場規模としては、大手高炉メーカー3社の総売上高は10兆円を超え、巨大市場と言えるでしょう。

鉄鋼業界は今後、製造過程での二酸化炭素排出を抑える「ゼロカーボンスチール」への取り組みが求められ、2050年には世界市場で40兆円の市場になると予測されています。市場拡大の中で、鉄鋼メーカー各社は生き残りをかけて脱炭素に向けた取り組みが求められています。

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鉄鋼業界の将来性

鉄鋼業界は市場規模が大きく、堅調に推移しているものの、人口減少による国内市場の縮小や脱炭素に向けた取り組みの必要性など向き合うべき課題も少なくありません。鉄鋼業界の先行きに不安を感じる人に向けて、「国内市場の縮小と海外展開」「温暖化など環境対策」「業界再編」の3つの視点から将来性について考えてみましょう。

国内市場の縮小と海外展開

鉄鋼業界は人口減少による国内市場の縮小が避けられません。人口が減少すると鉄を必要とするマンションや自動車、道路や鉄道などのインフラのニーズが低下します。

日本鉄鋼連盟によると国内市場ピーク時の1990年は国内向けの鋼材は9400万トンありました。新型コロナウイルスが流行する前の2019年には5900万トンと国内の需要は大きく下がり、人口減少によってさらに国内需要は減少する見込みです。

国内需要は先細りのため、鉄鋼メーカー各社は海外展開を推し進めています。大手鉄鋼メーカーは海外での売上高比率が35~50%を占めていますが、今後、さらに拡大させていく方針です。

温暖化など環境対策

温暖化現象の原因とされる二酸化炭素(CO2)排出を削減すべく、先進国では「2050年までにCO2排出量をゼロにする」というカーボンニュートラルを掲げています。

国内CO2排出量の実に14%が鉄鋼業界から排出されており、カーボンニュートラルに向けた取り組みが対策が求められています。一般的に1トンの鋼鉄を製造するのに1.8トンのCO2を排出し、ほかの業界と比べても多くのCO2を排出しているのです。

日本鉄鋼連盟では「カーボンニュートラル行動計画」という自主行動計画を策定し、3つのCO2削減目標と革新的技術開発に取り組んでいます。

特に水素を使った新技術「COURSE30」への期待は大きく、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託研究開発プロジェクトとして国が予算をつけて実用化を目指しています。
単に鉄を作り供給する仕事ではなく、地球全体に視野を広げて、複雑な環境問題にも取組む姿勢が必要な業界です。

業界再編が続く

鉄鋼業界は業界再編が続いています。2000年以前には6社あった高炉メーカーは、合併やM&Aにより2023年現在は3社にまで集約されています。

国内の主な合併・M&A

  • 2002年5月:NKKと川崎製鉄が経営統合し、JFEホールディングスが誕生
  • 2012年10月:新日鉄と住金が合併し、新日鉄住金が誕生
  • 2020年4月:日本製鉄が日鉄日新製鋼を吸収合併

鉄鋼業界のマーケットリーダーである中国の成長が頭打ちになってきており、鉄の過剰供給による価格下落の懸念があり、今後は海外でも業界再編の波が来るかもしれません。今後も業界内が大きく変化することを前提に、企業選びをすることが大切です。

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鉄鋼業界の向いている人

鉄鋼業界に向いている人の特徴は次の2つが挙げられます。

  • 主体性を持って、課題解決に取り組める人
  • グローバルに活躍したい人

鉄鋼業界は国内の人口減少や温暖化などの環境対策、海外企業との競争激化など取り組むべき課題がたくさんあります。それらの課題に主体的に取り組み、解決できる人材を求めています。そのため鉄鋼業界は、学生時代に主体的に課題解決に取り組んできた人に向いている業界と言えるでしょう。

また国内需要の低下から鉄鋼メーカー各社は海外事業の拡大が急務です。今後、鉄鋼業界はグローバルに挑戦できる環境があり、海外で働きたい人にチャンスの多い業界です。

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志望動機のポイント

鉄鋼業界に限らず、志望動機のポイントは自己分析をおこない、自身の強みや大切にしている価値観の言語化が重要です。自己分析のやり方が分からない人はOffer Boxの自己分析ツール「AnalyzeU+(アナライズユープラス)」を使ってみましょう。

志望動機のまとめ方や答え方に不安のある人はこちらの記事も参考にしてください。

また鉄鋼業界では以下のような人物像が好まれます。志望動機を作成する時に該当するエピソードを盛り込むと好印象に繋がるでしょう。

  • 課題に立ち向かう姿勢
  • グローバルに活躍できる語学力
  • カーボンニュートラルなどの新しい技術開発に意欲がある

海外留学経験を持っていたり、部活動などで大きな課題に取り組み解決した経験がある人は志望動機に盛り込みましょう。

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鉄鋼業界に関するQ&A

鉄鋼業界の気になる項目をQ&A形式で回答します。

最新の売上高ランキングは?

鉄鋼業界の2022年売上高ランキングは次のとおりです。

 順位企業名業種売上高
 1位日本製鉄高炉メーカー6兆8,088億円
 2位JFEホールディングス高炉メーカー4兆3,651億円
 3位神戸製鋼所高炉メーカー2兆825億円
 4位プロテリアル(旧・日立金属)特殊鋼メーカー9,427億100万円
 5位日新製鋼(現・日本製鉄)高炉メーカー6,141億9,600万円
 6位大同特殊鋼特殊鋼メーカー5,296億6,700万円
 7位山陽特殊鋼特殊鋼メーカー3,632億7,800万円
 8位共英製鋼電炉メーカー2,927億1,900万円
 9位東京製鐵電炉メーカー2,708億8,300万円
 10位愛知製鋼特殊鋼メーカー2,601億1,700万円
 11位丸一鋼管特殊鋼メーカー2,242億1,800万円
 12位合同製鐵電炉メーカー2,042億100万円
 13位淀川製鋼所特殊鋼メーカー2,016億5,500万円
 14位中山製鋼所特殊鋼メーカー1,667億100万円
 15位大和工業特殊鋼メーカー1,500億2,900万円

売上高トップ3は高炉メーカー3社で占められており、3社ともに1兆円を超える売上高を誇ります。2000億円以上の売上高を有する鉄鋼メーカーは13社で、内訳は高炉メーカー4社、電炉メーカー3社、特殊鋼メーカー6社となっています。

鉄鋼業界の年収は?

鉄鋼業界は、ほかの業界と比べて高年収が期待できます。年収ランキング運営事務局の「年収ランキング」によると鉄鋼業界の平均年収は627万円です。またアリト経営コンサルタントの「平均年収.jp」では、鉄鋼系企業全体の平均年収は613万円と算出されています。

厚生労働省の厚生労働省2020家計調査では年収の中央値は437万円と公表されています。鉄鋼業界の平均年収は、日本の年収中央値を大きく超えて、高年収が期待できる業界と言えます。

鉄鋼業界でトップの平均年収はJFEホールディングスで、959万円(2021年実績)となっています。

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鉄鋼業界に関する用語集

鉄鋼業界では学生に馴染みがない用語が使われることがあります。会社説明会や面接などで慌てないよう、事前に鉄鋼業界に関する用語を確認しておきましょう。

粗鋼

粗鋼(そこう)とは、高炉や電炉で不純物を取り除き、加工する前の鋼のことを指します。鉄鋼業界の統計用語になっており、粗鋼の生産量は景気動向を示す指標となっています。

粗鋼は最終的に自動車や家電製品、建築材料など身近なところで使用されています。英語ではCrude steelと表記されます。

高張力鋼板(ハイテン)

高張力鋼板(ハイテン)は引っ張り強さが高い鋼板で、主に自動車業界で用いられています。高張力鋼板(ハイテン)は薄くしても、普通鋼板と同じ強度を得られるのが特徴です。

燃費向上による二酸化炭素排出削減が必要であった自動車業界と相性が良く、高張力鋼板(ハイテン)を用いることで車体の軽量化を実現することができました。高張力鋼板(ハイテン)の技術開発は日系の鉄鋼メーカーがリードしてきました。

特殊鋼

特殊鋼は鉄鋼にクロムやニッケルといったレアメタルを加えて、特殊な性質を持たせた鋼のことです。特殊鋼は熱や錆、摩擦に対する強さが増したり、加工しやすくなり、過酷な環境で利用される輸送機器やプラント、建築資材でニーズがあります。

レアメタルを入れるタイミングや量で特性が変わるため、どのような特殊鋼ができるかは特殊鋼メーカーの技術力次第と言えます。

ひも付き

ひも付きとは鋼材が作られる時点で納入先が決定している取引のことです。

ひも付きの始まりは戦前の統制経済下で、当時、鉄鋼は割当証明書によって販売されていました。数量、価格とも「メーカー」「問屋」「需要家」が割当証明書でひも付けられていたことから、ひも付きと呼ばれています。

現在も自動車業界や造船業界は大量の鋼材を扱う需要家などがひも付き取引を採用しています。

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まとめ

鉄鋼業界は「高炉メーカー」「電炉メーカー」「特殊鋼メーカー」の3つのメーカー機能と流通を担う販売会社で構成されています。

鉄鋼業界は人口減少による国内需要の低下や温暖化などの環境対策、海外企業との競争など取り組むべき課題は多いものの、グローバルでは今後も成長が見込まれる業界です。

難しい課題に挑戦したい、グローバルで活躍したい、カーボンニュートラルなど新しい技術開発に挑戦したい人に鉄鋼業界は向いていると言えます。自分の経験ややりたいことが鉄鋼業界に合致する際には、就職先の1つとして検討してみてはいかがでしょうか。

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