教育業界の仕事内容や職種とは?業界課題やトレンドまで解説

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「教育業界にはどのような仕事があるの?」
「少子化だけど、教育業界に将来性はあるの?」

教育業界に興味を持つ方の中には、こんな疑問を持つ方もいるでしょう。

教育業界と聞くと、学習塾や予備校など学生向けのサービスをイメージする人が多いですが、社会人向けのサービスも数多く提供されています。教育業界は少子化などの課題に直面する一方で、リカレント教育の広がりやリスキリングの普及、ICTの活用など新しいトレンドが生まれ、将来性のある業界の1つです。

この記事では、教育業界の仕事内容や職種、業界の課題やトレンドについて紹介します。教育業界の市場動向や将来性も解説していくのでぜひ参考にしてください。

教育業界の仕事とは

教育業界の仕事は大きく「小中高生など学生向けのサービス」と「社会人向けのサービス」の2つに分けられます。

「小中高生など学生向けのサービス」は主に学習塾や予備校、資格取得のスクールなどが該当します。「社会人向けのサービス」には企業研修や通信教育、スキルアップなどのサービスがあります。

新型コロナウイルスの影響で従来のサービスにも変化が生じていますので、それぞれの仕事の変化にも触れながら事業内容を解説していきます。馴染みのない仕事もあるかもしれませんが、一緒に理解を深めていきましょう。

1.幼児・学生向け

まず幼児・学生向けの教育事業を紹介します。主に学習塾や予備校、英会話や資格取得のための学校など、スクール型の事業が中心です。従来は対面が中心でしたが、新型コロナウイルスの影響で、オンラインでサービスを提供する事業者が増えています。

またスクール型事業以外にも出版社で幼児・学生向けに教材を作る仕事もあります。出版業界についてはこちらの記事をご覧ください。

学習塾

学習塾は就学年齢の子どもを対象としており、大きく3つのタイプがあります。

  • 進学塾:受験対策に特化して指導をおこなう塾
  • 補習塾:学校の授業内容を補う塾
  • 総合塾:進学塾・補習塾の両方の役割を持つ塾

また、一口に学習塾と言っても、それぞれに求められる知識は異なり、指導方法によって次の2つに分類できます。

  • 集団指導:複数の生徒に向けて講師1人が授業をおこなう
  • 個別指導:1~3人の少数、または生徒と講師がマンツーマンで授業をおこなう

指導方法によって生徒とのコミュニケーションの取り方が変わります。

予備校

予備校とは各種試験対策をおこなう教育施設で、一般的には大学受験対策のために通う施設です。学習塾と混同する人もいるかもしれませんが、予備校は国から免許をもらった「学校」である点が大きな違いといえます。予備校は法律の規制を受けますが、学習塾は法律の規制を受けません。

指導の形式も学習塾のように集団指導、個別指導ではなく、講師が一方的に授業をおこなう講義形式が中心です。学習塾のように生徒から質問を受けることはあまり多くありません。

また学習塾では講師が進路相談などをおこなってくれますが、予備校では役割が分かれています。講師は授業に責任を持ち、チューターと呼ばれる大学生アルバイトが進路相談や受け付け業務を担います。

英会話・資格取得のスクール

学習塾や予備校だけでなく、英会話を代表する語学スクールや資格取得専門のスクールがあります。

英語の分野では、小学校での英語必修化による英検の取得、留学を目指す学生のために海外の大学・大学院の審査基準とされるTOEFLスコア取得のためのスクールが設けられています。

近年はITが発展し、小学生からパソコンを用いた授業がおこなわれています。そのためITやパソコンに関するMOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)やITパスポートといった資格取得の講座を設ける資格取得スクールも増えています。

2.企業・社会人向け

次に企業や社会人向けの教育事業を紹介します。大きく次の2つに分類することができます。

  • 企業向け研修事業(toB)
  • 社会人向け教育事業(toC)

社会人向け教育事業は通信教育とスキルアップ・自己啓発の2つがあります。幼児・学生向けの教育事業同様、新型コロナウイルスの影響によりオンラインで受講するケースが増加しています。

次の章で企業・社会人向けの教育事業内容について解説します。

企業研修

企業研修は、個人のスキルアップを図る人材開発や、組織の生産性底上げを目的にした組織開発のために研修を計画し、社員に提供するものです。研修に関するノウハウが少ない企業に対して専門の教育事業者が研修を企画・実施します。

企業研修のサービス提供スタイルは、講義型とe-learning型が中心です。講義型では会議室など外部会場で講義を開催し、複数の会社から参加者を募る形式や、講師が直接企業へ赴いて講義をする形式があります。従来は対面での講義が中心でしたが、新型コロナウイルスの流行後はオンラインでの実施が増えています。

企業研修を専門にする教育事業者のほか、コンサルティング会社や資格学校、人材サービス事業者など幅広い業種が企業研修を提供しています。

通信教育

通信教育は主に社会人向けに提供されるtoCの教育事業です。通信教育とはパソコンやタブレット、DVD、テキストなどさまざまな教材を用いて学習する教育を指します。

代表的な通信教育事業者

  • ヒューマンアカデミー『たのまな』
  • 大原出版『資格の大原』
  • アガルート『アガルートアカデミー』
  • ユーキャン『生涯学習のユーキャン』

通信教育は自分の好きな場所で、自由な時間に学べることが特徴ですが、なかにはオンラインで講義時間が決まっていたり、校舎での受講ができるハイブリッド型などさまざまな受講形態を準備しています。

就職・転職、実務につながる資格講座や英語などの語学教育に加え、手芸や絵画といったバラエティに富んだ講座が選べるのも魅力です。

スキルアップ・自己啓発

スキルアップや自己啓発のために、さまざまな切り口でスクールを開講したり、オンラインで教育コンテンツを提供する教育事業があります。代表的なスクールや教育コンテンツをいくつか紹介します。

  • ITスキルを身に付けるプログラミングスクール
  • 起業を目指す人向けのビジネススクール
  • リーダーシップや論理的思考力を学ぶMBA講座

対面でのスクール開講、オンラインの講義、隙間時間に動画を視聴できるe-learnigなどの形態が主流となっています。

代表的な職種

教育業界にはどのような職種があるのか気になる人も多いでしょう。学生時代に学習塾や予備校に通った経験がある人は仕事のイメージが持ちやすいかもしれません。教育業界の代表的な4職種を取り上げて紹介します。自分に合った職種があるか確認してみましょう。

講師

講師は教育現場の最前線に立ち、学生に学習指導をしたり、受講者に講義をおこないます。授業のない時間は次の授業の準備をしたり、校舎の運営や生徒からの質問対応、保護者の対応をおこないます。学校の教員と異なり、教員免許などは必要ありません。

講師の業務範囲は教育事業ごとに異なります。例えば学習塾の講師であれば生徒の進路相談や生活面の相談に乗ることもありますが、予備校の講師はこれらは業務範囲に該当しません。学習塾は正社員、予備校は業務委託での契約形態が中心です。

事務・チューター

生徒や講師が働きやすい環境を整えることが事務の役割です。教室の清掃や授業の準備、書類作成、データ入力、お問い合わせ対応などスクール運営に必要な業務を担います。スクール運営に欠かせない存在です。

事務とは別に、予備校には学生をサポートするチューターという職種があります。主に大学生がチューターを担い、学生の勉強方法のサポートや進路相談、時には日常生活の悩み相談などをおこないます。受験のプレッシャーを感じるときに、精神的な支えとなってくれる存在です。

教材企画・制作

教材企画・制作は教材や模試、映像など教育コンテンツを企画・制作する仕事です。従来は紙の教材が中心でしたが、ITの普及に伴い動画などのデジタルコンテンツなども担当します。

主に教材企画・制作は出版社が担いますが、一部の学習塾や予備校、資格学校などは独自に教材を企画し、差別化を図っています。

教材企画・制作には一定の専門知識が必要となり、新卒で携われることは少ないでしょう。資格は必須ではありませんが、専門知識が求められる仕事です。学生のうちに、携わってみたい分野の資格取得や知識習得に励んでおくと、後に教材企画・制作に携わる機会を広げられる可能性があります。

営業・マーケティング

営業・マーケティングは教育事業に欠かせない職種です。

事業内容や規模によって営業先はさまざまですが、主に学校や民間企業に対して営業をおこないます。主に自社の教育サービスの導入を提案します。例えば企業研修を提供する企業であれば、企業のニーズを把握し、どの教育コンテンツが適切か検討し、提案に結びつけます。

マーケティングは広報宣伝物の企画や制作を担当します。パンフレットの紙媒体だけでなく、ホームページの制作なども役割の1つで、クリエイティブな仕事といえます。

教育業界の市場規模・動向

矢野経済研究所の「教育産業市場に関する調査を実施(2022年)」によると、2021年度の教育産業全体の売上高は2兆8,399億円と前年から5%増加しました。直近5年間は2兆7,000~9,000億円の間で推移しています。

新型コロナウイルスの影響やデジタル化の浸透を受け、「家庭教師派遣市場」、「語学スクール・教室市場」、「学習参考書・問題集市場」は前年度比でマイナス成長となっています。一方で「通信教育事業」、「eラーニング事業」など非対面型の教育事業は前年度を上回る売上を残しています。

また少子化が続く中でも、大都市圏では学習意欲が高い子どもが多く学習塾や予備校の需要は大きいものの、地方は対象年齢の子どもが減少し、生徒確保に課題を持つ事業者が多い状況です。

教育業界の課題と今後

教育業界は少子化の影響を受けて、需要が減少しているのではないかと不安を感じる人もいるでしょう。教育業界には少子化以外にも取り組むべき課題があります。教育業界の課題と今後について解説します。

少子化

日本は少子化が進み、教育業界も影響を受けています。特に人口減少・少子化の進行スピードが早い地方エリアでは学習塾・予備校の運営が厳しくなっています。

一方で、子ども1人当たりの年間教育費が年々増加していることは注目すべき点です。参議院の調査室が発行する「経済のプリズム」によると、1970年に2.4万円だった年間教育費は、2017年に37.1万円と約16倍に増えています。

生徒を増やしたい学習塾や予備校はホームページや広告の活用、SNSの運用などで生徒や保護者に働きかけをおこない、いかに生徒の確保につなげるかが今後の事業運営の最重要事項といえるでしょう。

ICT・e-learning活用

ICT化は教育現場でも浸透しており、2021年8月時点で全国の公立小・中学校の実に96.1%がパソコンやタブレットの端末を整備していると発表しています。また新型コロナウイルスの影響もあり、学習塾や予備校、通信教育など教育業界全体でe-learningやパソコン・タブレット端末を用いた教材が整備されています。

急速な普及に伴い課題も散見されます。インターネットの活用で、保護者の目が届かない場所で犯罪やトラブルに巻き込まれたり、いじめに発展するケースも報告されています。ITリテラシーの向上や保護者や教育事業者の注意喚起が必要です。

業界再編

少子化の影響もあり、大手の学習塾や予備校によるM&Aや業務提携、事業縮小など業界再編の動きが出ています。

事業縮小では、大手予備校の代々木ゼミナールは2015年以降、全国27の校舎のうち20もの校舎で生徒募集をストップし休校、事実上閉鎖をしました。

代表的なM&Aや業務提携としては、下記の動きがありました。

  • 「東進ハイスクール」を運営するナガセが「四谷大塚」を買収
  • 大手予備校「代々木ゼミナール」が「サピックス」を買収
  • 通信教育「Z会」を運営する増進会出版社が「栄光ゼミナール」を買収

今後も教育業界の再編は続く可能性があります。

教育カリキュラムや大学入試制度の変化

教育業界が今後、対応すべきこととして教育カリキュラムや大学入試制度の変更が挙げられます。

2016年に学習指導要領が改訂され、2018年から移行期間を経て、教育カリキュラムが変更されています。教育カリキュラムの変更に伴い、学習塾や予備校ではテキストの改訂や、講師の指導内容を変更しなくてはいけません。

また大学入試制度の変更も大きな影響があります。従来のセンター試験は2020年1月を最後に廃止され、新たに「大学入学共通テスト」が導入されました。特徴として今までよりも高い英語力を求める内容に変更され、予備校などでは「大学入学共通テスト」の英語試験に対応できる講師およびテキストの準備が必要です。

教育業界のトレンド

教育業界は課題ばかりで先行きが厳しいと感じた人もいるかもしれません。しかし、教育業界には新たなビジネスチャンスとなりえるトレンドが生まれており、今後の成長に期待が寄せられています。教育業界のトレンドを3つ取り上げ、解説します。

リカレント教育の広がり

教育業界のトレンドの1つ目はリカレント教育の広がりです。リカレント教育は「学び直し」のことで、人生100年時代を豊かに過ごすために社会人の間で関心が高まっています。

IoTやAIの進化によって今までのスキルが陳腐化しており、新たなスキル獲得のためのリカレント教育サービスが提供されています。

代表的なリカレント教育関連サービス

  • ローンディール:人材育成を目的とした大企業からベンチャーへの人材レンタル移籍
  • エッセンス『他社留学』:人材育成を目的とした他社への留学研修
  • 社会人材コミュニケーションズ『知命塾』:ミドルシニア層を対象に自身の経験を振り返るリフレクション型プログラム

リスキリングの普及

リカレント教育に加えて、リスキリングも教育業界のトレンドです。リカレント教育とリスキリングは混同されがちですが、リスキリングは単なる学び直しではありません。リスキリングは、これからも職業で価値創出を続けるために必要なスキルを学ぶことです。

直接仕事に結びつくスキルを身に付けるために企業主導でリスキリングをおこなう点も、リカレント教育との相違点です。

リスキリング分野ではデータサイエンティスト育成やDX・AI人材育成など近年のDX化に対応できる人材育成サービスが登場しています。

EdTechサービスへの期待

EdTech(エドテック)とは「Education(教育)」と「Technology(技術)」の造語で、教育分野にテクノロジーを導入しイノベーションを起こすことを指します。

EdTechサービスは個別最適化の学習や、学習指導、教育機関の運営業務の効率化などの分野で開発が進み、現在は大きく6つのカテゴリーに分類されます。

  • 授業支援
  • 校務支援
  • 業務支援
  • デジタル教材
  • 学習支援
  • 学習管理システム

経済産業省はEdTechサービスを学校に提供する「EdTech事業者」に対し、導入にかかる補助金を支給しており、国の期待値も高い事業といえるでしょう。

教育業界に向いている人

教育業界に向いている人の特徴は次の3つが挙げられます。

  • 人と関わることが好きな人
  • 教育を通して、社会の発展に貢献したい人
  • 新しいことにチャレンジすることが好きな人

教育業界は、多くの人とコミュニケーションをとりながら、相手のために何かすることで喜びややりがいを感じる人に向いている業界です。また教育を通して、社会の発展に貢献したいと考える人にも向いています。

また教育業界はリカレント教育やリスキリング、EdTechサービスと新しい分野が誕生しています。まだ確立されていない分野でチャレンジしたい人にとって教育業界はやりがいがあるといえます。

志望動機のポイント

教育業界に限らず、志望動機のポイントは自己分析をおこない、自身の強みや大切にしている価値観の言語化が重要です。自己分析のやり方が分からない人はOffer Boxの自己分析ツール「AnalyzeU+(アナライズユープラス)」を使ってみましょう。

志望動機のまとめ方や答え方に不安のある人はこちらの記事も参考にしてください。

また教育業界では以下のような人物像が好まれます。志望動機を作成する時に該当するエピソードを盛り込むと好印象に繋がるでしょう。

  • 人のために貢献できる人
  • 新しいことにチャレンジしたい人

例えば部活動やサークル、アルバイトといった場で周りの人のために貢献した経験がある人は志望動機のエピソードに盛り込んでみましょう。

教育業界に関するQ&A

最後に、教育業界の気になる項目をQ&A形式で回答します。

Q1.最新の売上高ランキングは?

教育業界の2022年の売上高ランキングは次のとおりです。

 順位 企業名 売上高
 1位 ヒューマンホールディングス 862億円
 2位 TAC 204億円
 3位 日本能率協会マネジメントセンター 157億円
 4位 山田コンサルティンググループ 146億円
 5位 ウェルビー 98億円
 6位 インソース 83億円
 7位 ビジネス・ブレークスルー 67億円
 8位 識学 39億円
 9位 FCE Holdings 36億円
 10位 ジェイック 26億円

教育業界トップの売上高を誇るのはヒューマンホールディングスです。ヒューマンホールディングスは教育事業のヒューマンアカデミーを展開し、資格取得、就転職の総合校としてさまざまな学びの場を提供しています。

第2位は「資格の学校TAC」を運営するTACがライクイン。第3位の日本能率協会マネジメントセンターは人材育成支援を手掛けています。

Q2.教育業界の年収は?

教育業界の年収は、ほかの業界と比べて飛びぬけて高いとはいえませんが、年齢と共に年収が増える傾向があります。
マイナビエージェントによると教育業界の平均年収は370万円で、厚生労働省の厚生労働省2020家計調査では年収の中央値は440万円と公表されており、平均と比べるとやや低いといえます。

年齢別に見ると、20代の平均年収342万円に対し、30代の平均年収は448万となり、順調に年収がアップし、厚生労働省が発表している年収の中央値を超えています。

なお売上ランキングトップのヒューマンホールディングスの平均年収は559万円となり、教育業界の平均年収を大きく上回っています。

まとめ

教育業界は幼児・学生向けと企業・社会人向けの2つに分けられ、それぞれ提供する教育事業は異なります。

少子化や業界再編、教育カリキュラム・大学入試制度の変化など対応すべき課題はあるものの、リカレント教育、リスキリング、EdTechサービスといった新しいビジネスチャンスが生まれ、将来性のある業界といえます。

人のために貢献したい、教育を通じて社会の発展に寄与したい、新しいことにチャレンジしたい人は教育業界に向いているといえます。自分の経験や価値観が教育業界に合致する際には、志望業界の1つとして検討してみてはいかがでしょうか。