慣れれば簡単!フェルミ推定攻略法【例題でパターンを解説】

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「全国で1年間に使用されるトイレットペーパーの量は?」「世界で今、睡眠中の人は何人?」――。就職活動では、外資系企業のインターンや本選考の面接などで、このような問題を出されることがあります。これは「フェルミ推定」と呼ばれ、まるで見当が付かない数値や量について推定するもの。
最初は難しいと感じても、フェルミ推定の例題をこなすうちに、だんだんと考え方のアプローチがつかめるようになってきます。本記事では、就活だけではなく、その後のビジネスシーンでも業務にあたるうえで役立つフェルミ推定について解説します。この機会にぜひフェルミ推定を習得してみましょう。

フェルミ推定とは?

そもそもフェルミ推定は就職活動において、どんな企業で、何の目的のために出題されるのでしょうか?例題に入る前に、基本的な情報を押さえておきましょう。

フェルミ推定を出題する企業

フェルミ推定は、正確に把握するのが難しい数値を、論理的に概算するもの。「原子力の父」として知られるノーベル賞物理学者エンリコ・フェルミの名前に由来します。フェルミがこのような概算を得意とし、実際に大学生に出題していたと言われ、1980年代頃からアメリカの企業が採用活動で使うようになりました。
日本では、マッキンゼー・アンド・カンパニーやボストン コンサルティング グループといった外資系のコンサルティングファームをはじめ、商社やベンチャー系などさまざまな企業の面接で用いられています。コンサルタント志望者をはじめ、それらの業界を目指す人やインターン志望者は対策をしておくとよいでしょう。

フェルミ推定の目的

フェルミ推定について対策もせず面接に挑み、突然「日本にある電信柱の数は何本でしょうか」などと問われたら焦りますよね。真正面から答えるとすれば、何らかの統計調査を調べ、正確な数値を割り出したいところですが、実際はわずかな考察時間しか与えられず、情報の検索もできません。その場で正確な数値を探し出すことなど、到底できないように思われます。

ただ、フェルミ推定の目的は、正確な数値を知っているかどうかや、知識の豊富さを問うものではありません。わざと正確な答えが出しづらい問いかけをし、人口や面積など一般的に知られている数値や、自分で考えて推定した数値を用いて答えを導き出し、その根拠を論理的に説明できるのかどうかを見ています。

考える力や「地頭の良さ」を問うフェルミ推定

では、なぜ採用試験でフェルミ推定の問題を出すのでしょうか。現代社会はめまぐるしい速度で変化していて、情報を探すだけならだれでも簡単に検索できる時代です。そういう社会にあっては正確な数値を求める場面とは別に、たとえ正確な数値からかけ離れていても、自分の頭で考える力や「地頭の良さ」が問われるようになります。そこで「限られた時間と情報で最善の答えをいかに導き出せるか」を見るため、採用試験でフェルミ推定を使う企業があるのです。

例題で、実際のフェルミ推定の問題の解き方を解説

フェルミが実際に出題した有名な例題が「アメリカのシカゴには何人のピアノの調律師がいるか?」です。

この問題に対して、まずシカゴの人口を300万人と仮定します。1世帯あたりの人数を平均3人とすれば、市内にあるのは100万世帯となります。このうち、どれぐらいの家にピアノがあるでしょうか。ピアノを所有しているのは10世帯中1世帯、と仮定すれば、市内には100万世帯/10で10万台のピアノが存在すると推定できます。

一方、調律師が1日に調律できるピアノの台数は3台ぐらいでしょう。週休2日で働けば、年間の勤務日数は約250日です。つまり1人の調律師が1年間で調律できるピアノは250日×3台で750台と推定されます。

一般的にピアノの調律は1年に1回、行うものと考えられます。市内には10万台のピアノがあるわけですから、単純に考えて1年に10万回の調律ニーズがあることになります。これを1人の調律可能台数750台で割れば、10万回/750台で130人となり、これがシカゴの調律師人数だと推定できます。

フェルミ推定問題で問われているスキル

もちろん実際の調律師の数とは、かけ離れた数値かもしれません。しかし仮説を立てながら、目標とする調律師の数まで到達する力や、一見すると難しい課題も抽象化して考えていく力などは、まさに入社後、ビジネスシーンで活躍するために必要なスキルで、採用試験で問いたいものでしょう。

フェルミ推定は、そもそも予想がつかないことを聞いてきます。課題を解く“ヒントの種”は、自分がこれまでの学校の勉強などで当たり前のように知っている知識や、日常生活の中で知っている、何となくこれぐらいだと思える数値です。

ピアノの調律師数の例題では人口から世帯数、さらにピアノがある家の数について、順を追って推定しています。このように人口という大きな数値を、少しずつ分解していくのが大切なステップです。

知っていること前提! フェルミ推定で常識的な数値とは

正確な数値に基づいた解答は求められないフェルミ推定ですが、ビジネスパーソンなら知っていて当然!という基本的な数値は、就活生も常識として頭に入れておきたいものです。
以下にいくつか知っておきたい数値をまとめてみます。

フェルミ推定を解くのに知っておきたい数値

【日本の総人口】 1億2500万人

【日本人の平均寿命】 84歳 (男性81歳、女性87歳)

【全国の世帯数】 5600万世帯

【1世帯の平均構成人員】 2人

【日本の国土面積】38万平方km (うち30%が平地、70%が山岳地)

【市の数】800

【企業の数】385万社 *従業員300人以上は1万2000社

【給与所得者数】5990万人

【平均給与】440万円

【世界の人口】78億人

【地球の表面積】5億平方km(うち70%が海、30%が陸)

フェルミ推定例題のトレーニング方法

実際の選考試験で同じ問題が出る確率は低いものの、考え方のパターンを身に付けておくことは非常に有効なので、フェルミ推定例題には取り組んでおきたいものです。

例えば何かの市場規模を聞かれた場合は、母数に平均所有率や1人当たりの平均保有数、単価をかけ、さらに買い替え頻度で割る、など考え方のパターンがあります。

考え方のパターンを身に付けたり、例題を解いたりするうえでおすすめの本を以下に紹介します。

①東大ケーススタディ研究会・著『現役東大生が書いた 地頭を鍛えるフェルミ推定ノート―「6パターン、5ステップ」でどんな難問もスラスラ解ける!』(2009年、東洋経済新報社)

フェルミ推定の「パターン」と「解法ステップ」を分かりやすく解説しています。難易度の高い「解答のとっかかり」を体系化して説明しているので、初心者でも感じをつかみやすいです。問題厳選100問を巻末に掲載しているので、パターン練習にも最適です。

②細谷功・著『地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」』(2007年、東洋経済新報社)

地頭力の本質は、「結論から」「全体から」「単純に」考える三つの思考力である、として、それぞれをどのように鍛えるかを詳しく解説しています。より分かりやすく理解するには『まんがでわかる 地頭力を鍛える』(2017年、東洋経済新報社)もあります。こちらは漫画で解説されているので読みやすく、フェルミ推定のイメージをつかみやすいです。いずれも就活のためだけではなく、フェルミ推定で鍛えられた地頭力がいかにビジネスシーンで有効かが分かります。

③高田泰介・著『就職活動対策シリーズ ― フェルミ推定の教科書』(2017年)

実際に数多くのコンサルティング企業の選考に参加、通過した筆者自身の体験に基づいた実践的な内容が書かれています。例題として実際の選考で出された課題と、筆者によるメモが掲載されており、どのようなアプローチで答えを導き出したのかがよく分かります。電子書籍のみでの発行です。

フェルミ推定で“地頭力”の強化を

フェルミ推定はビジネスの場でも考える力の基本として注目されています。就職活動だけではなく、社会人になってからも役に立つ思考法ですので、この機会にぜひ「地頭力強化」に取り組んでみてください。