日産自動車・大学キャリアセンターと考える理想のインターンシップとは?
日産自動車株式会社様~楠田祐の人事セントラル・ステーション~
新卒採用を行う企業や就職活動を支援するキャリアセンターに求められるのは、
学生の変化を敏感に感じ取り、採用施策に反映していくこと。そこで今回は新卒採用に取り組む日産自動車様と、就活する学生たちに向き合うキャリアセンターから明治大学様と千葉商科大学様をお迎えし、2019年卒の学生の傾向、これからのキャリアセンター・企業に求められることについて語っていただきました。
本記事は、新卒採用担当者向けPodcast番組『人事セントラル・ステーション』の
vol.5「大学生の変化と向き合う ~大学側及び企業側の課題意識と取り組み~」の一部を抜粋・編集したものです。
『楠田祐の人事セントラル・ステーション~最新の人事情報プラットフォーム番組〜』について
vol.5「大学生の変化と向き合う ~大学側及び企業側の課題意識と取り組み~」 ゲスト紹介
東郷 茉莉氏
日産自動車株式会社 日本タレントマネジメント部 日本採用/リソースプランニンググループ 主担(採用・育成)
慶應義塾大学法学部政治学科卒業。父親の転勤で、小学校3年生からイギリスで2年間、5年生からは南アフリカで2年間過ごす。2007年に日産自動車入社、人事部に配属。入社8年目に国内のマーケティング部を希望して異動した後、2017年4月に再び人事部へ。
野澤 和人氏
千葉商科大学 キャリア支援センターオフィス 課長
1997年、大学卒業後に国内化粧品メーカーに13年間勤務し、営業職として主に販売代理店の事業計画立案や販売指導を行う。2010年2月の入職から現在までキャリア支援センターに勤務。2008年より「CUCアライアンス企業」という本学独自の企業ネットワークを構築、現在750社を超える。「ネットでOB訪問」や「逆オファー型合説」など、企業と学生の出会いの場を積極的に創出している。
藤江 森郎氏
明治大学 就職キャリア支援センター
2008年、学校法人明治大学入職。2014年より就職キャリア支援センターに従事。 学生相談、各種セミナーの企画・運営、国内外のインターンシップの担当を経て、 現在は低学年のキャリア形成支援を主に担当。
田中 伸明
株式会社i-plug 取締役CHRO
関西学院大学卒、グロービス経営大学院卒。アフラック、グロービスを経て2012年にグロービス経営大学院の同期3名で株式会社i-plugを起業。初期は法人営業の責任者を務め、その後CMOとしてマーケティング部門、広報、大学営業、博士人材に特化したOfferBox Ph.D.などの立ち上げに従事。年間50回以上、大学の講座にも登壇。2018年10月よりCHROとして人事企画部門の立ち上げに着手。
2019年卒の学生の傾向は?多様化する志向への対応が迫られている
近年の新卒採用は「空前の売り手市場」だと話題です。
過去の「とりあえず多くのエントリーを集めて絞り込んでいく」手法が機能しにくくなったり、獲得目標を達成できても入社後の定着・活躍に繋げられなかったりという課題が顕在化し、採用手法の変革も求められています。
そんな市場環境の中で、学生の志向はどのように変化しているのでしょうか?
新卒採用や就職活動で学生と関わるスピーカーの皆様に聞いてみました。
まずは、新卒採用向けダイレクトリクルーティングプラットフォーム「OfferBox」を運営する株式会社i-plugの田中より。
「学生を一括りに『大手・安定志向』とする表現がメディアで散見されます。ただ実は、私たちが実施した調査の結果では大手志向とは限らず、一言に安定といっても中身は多様。定義の仕方が学生によって違うというのが見えてきました」(i-plug 田中)
i-plugの調査によれば、「企業にどういったところに魅力を感じますか?」という質問に対して「安定している」と回答する人の
割合は下がったそう。一方で「新規事業に挑戦できる」「経営者に魅力がある」というような、新しいことに挑戦できたり
成長機会が得られたりする点に魅力を感じると答える人は増加。「安定=大手」という簡単な図式ではなく、チャレンジを
通して成長し、どこでも働けるスキルを獲得することを「安定」と考える学生も出てきているのかもしれません。
実際に学生と接する機会が多い、大学のキャリアセンターの方々の意見も聞いてみましょう。
「大手志向が強くなっている傾向を感じることはありますが、それは学生の変化ではなく就活スケジュールの影響という気もします。スケジュールが短縮され、インターンシップに参加する時間もとれないまま就活に突入してしまうので、大手しか知らない、イメージできない人は増えているかもしれません。学生の質そのものの変化はあまり感じません」(明治大学 藤江さん)
「最初は大手志向の学生も多いですが、就活を通して考えが変化し、最終的には『その企業で自分がどこまで活躍できるか?』
を見て企業を選択できる学生が増えていると感じます。福利厚生や休日日数に目が行っていた学生も、次第に
『もっとも重要なのはそこではないのかも』と気付き、将来のキャリアプランや職場の雰囲気、先輩社員の働き方を見て就職先を決めています」(千葉商科大学 野澤さん)
社会に出たことがない、働くイメージを持っていない学生が「名前を聞いたことがある企業」に就職したいと考えるのは、
ある意味では当然です。その上で、企業規模や知名度以外にも重要な点があることの啓蒙や、キャリアプランから逆算した
自社の魅力のアピールが重要になってきているのかもしれません。
では、企業の採用担当者は学生の変化をどう感じているのでしょうか?
「学生が日産自動車に興味を持ってくださるきっかけは、『名前を知っている』『大手企業だから』ということが多いです。
でも、自動車業界は今100年に一度の変革期と言われていて、とても『安定した大企業』とは言えません。
新たなチャレンジが必要な段階なんです。社会の情勢や業界動向の理解がより良い企業選択につながるので、
そういったことを考えるきっかけが就職活動の前にあるといいと思いますね」(日産自動車 東郷さん)
さらに学生の質の変化について以下のように語ります。
「どんどんキャリアアップしたいという人もいれば、ワークライフバランスを保ちながら働きたいという人もいます。
画一的なキャリア像だけではないさまざまな価値観があることを学生も理解していて、個々人の指向性やタイプによって
アプローチを変えなければいけません。複雑な対応が企業側に求められているのを感じます」(日産自動車 東郷さん)
重要なのは「アウトプットがあるか」。大学側が企業のインターンシップに求めるもの
「気軽に実施でき、選考開始前に学生に接触できる」「スケジュールが組みやすい」などの理由によって主流になりつつある1Dayインターンシップですが、人事のプロである楠田さんやキャリアセンターの皆さんは複雑な思いがあるようです。
「経団連が、『インターンシップは5日以上』という日数規定を設けたかと思ったら結局なくなっちゃって、1Dayでやっている企業は多いでしょう?しかも午前中だけのプログラムとかもある。1日だけだと会社の雰囲気とか仕事内容まで理解するのは難しいと思うんだけど、キャリアセンターとして学生さんには参加を推奨していますか?」(楠田さん)
楠田さんの問いかけに対して、藤江さん、野澤さんは以下のように答えます。
「推奨はしていません。でも、インターンシップを実施する企業が増えている状況を好意的にみれば、社会・大人全体で学生を育てようとしているとも言えますよね。インターンシップという呼称はややこしいので考えるべきですが、インプット経験としては有益なものにできるので、『会社見学会』などとすればいいのでないかと。少なくとも、インプットだけの説明会的なものなのか、体験とプレゼンなどアウトプットもあるものなのかは区別したほうがいいと思います」(明治大学 藤江さん)
「うちの大学でも、積極的に勧めてはいません。しかし、1Dayインターンシップが主流になっていて、選考に紐づくという現実がある中で、参加しないことが学生の機会損失につながってしまうのは避けたい。企業の方には、『就業体験を少しでも組み込んで、学生にとっての気付きがあるようにしてほしい』と伝えています。藤江さんのお話しにもあったとおり、アウトプットがあるかどうかは重要です」(千葉商科大学 野澤さん)
両大学とも、キャリアセンターとして1Dayインターンシップを推奨はしていないとのこと。
大学としてはより学生にとって学びが多い「アウトプットができるプログラムへの参加」を推奨しているそうです。
学生一人ひとりに社員がフィードバック。成長を促す日産のインターンシップ
「日産では、1Dayでは開催していません。なぜなら、1日ではできることが限られてしまい、成長につなげにくいから。インターンシップは学生の成長を目的として実施したいという思いがあるので、5日間以上のプログラムを組んで実施しています」(日産自動車 東郷さん)日産自動車のインターンシップの特徴は、夏3日間、冬2日間の合計5日間というプログラム構成。夏の3日間の最終日には、人事社員から学生一人ひとりによかったところと課題をフィードバック。学生はそれを踏まえてアクションプランを立てて実行し、冬の2日間のインターンシップまでの期間を含めて成長を実感してもらうそうです。
インターンシップは実施していても、学生へのフィードバックにまで手が回っていない企業は多いでしょう。
しかし、学生がより明確に働くイメージを持ち、自分に合った企業を選ぶためには、実際の仕事に近い
経験と先輩社員からのフィードバックの組み合わせが非常に有効です。
日産自動車のインターンシップに対する考え方、プログラム内容は、多くの企業の参考になるのではないでしょうか。
「履歴書や面接では見えない姿を見て判断したい」という企業のニーズの高まり
最初はトライアル程度に使ってみたそうですが、インターンシップ参加につながっただけでなく、実際に内定に至る学生にも出会えたとのこと。
OfferBoxで学生さんを検索してみると、いわゆるリクルート用の写真館で撮った写真ではなく学生の普段の姿が伝わる写真が見られたり、詳細な研究内容や論文が載っていたり、色々な情報から自分を企業に理解してもらおうと努めているのがわかります。
「OfferBoxのデータでは、普段の姿がわかる写真をプロフィールに設定しているほうが、プロフィールをしっかり読み込んでもらえる傾向があります。就活用の自分ではなく、自分らしさが伝わる写真や動画を使ってアピールできるといいのではないでしょうか」(i-plug 田中)
番組の続きはこちらから聞くことができます。
<番組で聞けること>
・キャリアセンターのユニークな取り組み
・競争率が激しい新卒採用に対する、「産学連携」のソリューション
・選考におけるテクノロジーの活用や学生の適応状況
日産自動車様が活用しているダイレクトリクルーティングサービスの資料はこちらからダウンロードできます。
新卒採用向けダイレクトリクルーティング「OfferBox」資料ダウンロード
<資料でわかること>
・OfferBoxの仕組み
・利用企業、登録学生データ
・画面イメージ
・導入事例 等