【2019年卒市場動向】押さえておきたい就活生を取り巻くマクロ環境の変化とトレンド

【市場動向予測3】押さえておきたいマクロ環境の変化と19卒のトレンド

新卒採用においては、新しい採用手法が注目されがち。直近ならば、大手企業のAIの導入に関するニュースが紙面にも取り上げられた。

しかし、本当に重要なのは新しい採用手法の導入ではなく、採用戦略そのものの見直しではないだろうか。企業を取り巻く環境は刻一刻と変化し、不確実性が増してきている。グローバル化や新規事業の創造、生産性向上、新しいテクノロジーへの適応といったテーマへの対応が待ったなしで求められている。大手企業においては、社内の年齢構成の変化から、若手人材への要求レベルが高まってきている。

そのような内外部環境の変化に整合をとるために、採用要件の見直しや、採用手法の見直しがはじまっているのだ。学生が興味を示すような面白企画を考えることや、新しい採用ツールを導入することを考える前に、今の時代に合った、これからの時代に合った、そして各企業の戦略に合った採用を考える必要性がより高まっている。

変わる大学、多様化する学生

大学進学率が50%を超えると大学の役割はマス型からユニバーサル・アクセス型(M.トロウ)へ移行するとされ、それによって学生の質の多様化が進む。まだ量的変化は見られないが、質的変化は顕著となっている。ライフスタイルや義務教育の中身は20代の若手採用担当者であっても同じではなくなってきている。そういった今と昔の学生の違いへの配慮は選考を進捗させる上で重要となってくるだろう。とくに、働き方改革の推進により、学生の働き方への関心は高まってきている。「安定」という言葉を1つとっても学生によって捉え方が異なってきている。

また、日常的に活用するスマートフォンにはいくつものアプリがダウンロードされているわけだが、その画面自体が一人ひとりにカスタマイズされている状態だ。もちろんアプリのほとんどが利用者に合わせて個別最適化もされている。ある大学のキャリアセンター職員の方の話では、全学部向けに一斉にメールでアナウンスしたときよりも学部ごとに分けて内容を変えて送信したところ反応率が全然違ったという。スマホ対応だけではなく、学生へのコミュニケーション全般において個別最適化は欠かせない要素になってくるだろう。

2019年卒はここ数年の流れを踏襲、その流れはさらに強まる

2017年卒からの流れを整理したのが以下の表だ。

ここ数年で採用が「待ち」から「攻め」へ大きくシフトしてきているが、この流れはさらに強まるだろう。19卒採用ではより一層採用手法の多様化が進む。とくにプレ期(3月広報解禁前)における接触の仕方は多様化するだろう。そして、主戦場は明らかにナビサイトだけではなくなる。地方採用やインターンシップといった地域や時期の「土俵ずらし」がさらに進化し、企業ごとの独自色が強くなっていく。このような採用手法の変化を強力にアシストしているのがテクノロジー(AI、データ)の進化である。

先進的企業における本格的なAI、テクノロジーの活用による社内リソースの最適配分は、企業に競争優位性をもたらすだろう。データドリブンな採用活動、そに伴う選考の個別最適化は学生の期待にも合致する。ただ、一方で導入すれば上手くいくものではない。冒頭にも記載したとおり、そこには企業としての戦略が欠かせない。なぜその採用手法をとるのか、といった納得のいく理由を運用する側が持っていないと運用にかかる負荷を払拭できない。また、その理由を学生に対しても理解できるように発信しなければ却って学生の足を遠ざけることになりかねない。

項目 2017年卒 2018年卒 2019年卒
政治・経済 ・一億総活躍社会、アベノミクス第二ステージ・経済成長1.7%
・有効求人倍率が92年以来の1.25倍に上昇
・働き方改革の推進
・Brexit、トランプ就任
・国際情勢不安、円安⇨円高
・消費の減退、爆買いの終了
・有効求人倍率高水準で維持
・国際情勢の不安や為替変動などリスクが高まり、2020年以降への不安感が高まり
・企業には新規事業領域への投資と生産性向上の両軸での取り組みが求められる
社会・技術 ・安心、安定志向の強まり
・「◯◯tech」の流行
・HRテクノロジーも話題に
・AI、ビッグデータへの注目が高まる
・働き方への注目の高まり
・AI、ビッグデータを活用したサービスの増加
・ピープルアナリティクスへの注目が高まる
・働き方改革、テクノロジーの指数関数的な進化によって働き方や生活が変化
・AI、ビッグデータがもっと身近な存在に
新卒採用のスケジュール ・3月広報解禁、6月選考解禁へ変更
・選考期間が短縮
・3月広報解禁、6月選考解禁は据え置き ・3月広報解禁、6月選考解禁は据え置き
・1dayインターンシップが解禁
学生・大学 ・大学進学率50%超、ユニバーサル・アクセス型*へ
・学生数60-65万人
・スマホシフト、動画視聴がライフスタイルに浸透
・大学進学率50%超、ユニバーサル・アクセス型*へ
・学生数60-65万人
・小中を通してゆとり教育を受けた最後の世代
・大学進学率50%超、ユニバーサル・アクセス型*へ
・2018年より18歳人口が減少に転じ、今後大学進学者数も減少へ
・中学校時に脱ゆとり
紙面掲載の企業の取り組み 求む!「ワイルドな人」トレンドマイクロが専用枠(日経電子版,2016年7月20日)
倍率は60倍、丸紅の「泊まり込み合宿」(日経電子版,2016年3月3日)
すぐ辞めない新入社員を探せ ヤマハ意中の学生スカウト(日本経済新聞,2017年3月2日)
ソフトバンクも参入 就活「逆求人」最前線(日経電子版『お悩み解決!就活探偵団2018』, 2017年2月23日)
ANAも導入、AI採用は就活生に不利か(お悩み解決!就活探偵団2018,2017年4月20日)
ヤフー、新卒一括採用を廃止 30歳未満は通年(日本経済新聞,2016年10月3日)
ソフトバンク、IBM「ワトソン」で就活書類選考(日本経済新聞,2017年5月29日)
入社2年前に内定 ユニリーバ日本法人、新卒採用に新制度(日本経済新聞,2017年6月19日)
第一生命、滋賀大のデータ分析講義に講師派遣 人材育成で連携(日本経済新聞,2017年6月8日)
採用のトレンド 尖った企画や選考フローが話題に。主戦場はナビサイト。
ダイレクトリクルーティングやOBOG訪問、リファーラル採用など学生に会うための採用ツールが台頭し、採用手法の多様化が進み始めた
企画での差別化ではなく採用手法の見直しに注目が集まる(攻めの採用へのシフト)。
HRtech台頭により、アセスメントを用いた活躍人材の特定や選考におけるAIの活用、動画広告での募集などテクノロジーを活用する流れが強くなった。
プレ期の接触の仕方が多様化し、採用手法も多様化。
先進的企業における本格的なAI、テクノロジーの活用による社内リソースの最適配分が進む。
データドリブンな採用活動、そに伴う選考の個別最適化が進む。

*ユニバーサル・アクセス型:
進学率50%を超え、高等教育の機会が万人の義務となっている状態を指す。学生の多様化が進み、高等教育機関には新しい広い経験の提供が求められ、大学と社会とが一体化していく。M.トロウ『高学歴社会の大学』(天野郁夫,喜多村和之訳,東京大学出版会,1976)

※本記事は「【市場レポート】どうなる? 2019年新卒採用の動向・変化予測 ー秋冬・本選考対策編ー」の一部を抜粋したものです。


2017年10月23日公開