【2020年卒市場動向】未曾有の大卒求人倍率を読み解く
[シリーズ]どうなる?2020年卒新卒採用動向・変化予測 #2
※本記事は「【市場レポート】どうなる? 2020年新卒採用の動向・変化予測」の一部を抜粋したものです。
大卒求人倍率は1.88倍、前年比0.1ポイント増
同調査によれば、2019年卒の大卒求人倍率は1.88倍となり、昨年の1.78倍から0.1ポイント増加という結果になっています。以下のグラフは同調査の実績推移に、過去の新卒採用に関連する出来事や企業経営に影響を与えた出来事を追記したものとなります。全体の数値はリーマンショック前のものにまだ到達していませんが、連日メディアにも取り上げられているとおり、人材獲得競争が熾烈さを増す背景には、当時とは少し異なる外部環境の変化があると考えられます。リーマンショック後のテクノロジーの指数関数的な進化は、従来のビジネスの競争原理を変えるぐらいのインパクトがあり、それにともない企業が求める人材像の定義は変化し、その変化は新卒採用にも影響を及ぼしてきているのが実態かと思います。全体の大卒求人倍率はまだ1.88倍ではありますが、その内容は大きく異なってきていることを理解する必要があると考えます。
従業員300名未満の求人倍率は未曾有の9.91倍
全体の数値だけを見れば「売り手市場鮮明」かもしれませんが、従業員規模別に見ればそうではないことは明らかです。数値を引き上げているのは従業員300名未満の大卒求人倍率の伸長です。同調査によれば、300名未満の大卒求人倍率9.91倍というのは過去最高、まさに未曾有な状況となっています。一方で、300名以上のセグメントは売り手市場か買い手市場かの境界線と言える1.6倍をここ10年間ずっと下回っている状況となります。
学生の中小離れが進み、超大手企業偏重が鮮明。300名-4,999名は横ばい
以下のグラフは各従業員規模別の求人数と民間就職希望者数の推移を分けたものとなります。あえて、比較がしやすいように縦軸は揃えています。このようにして見ると、従業員規模300名から4,999名においては大きな増減がこの数年ないことがわかります。一方、300名未満における求人数の増加と学生の志望者数の減少は大きく、その差の大きさは他のセグメントと比較しても歴然です(300名未満のグラフ内①)。従業員規模5,000名以上については唯一求人数と志望者数が逆転しています。また、2016年卒から2019年卒にかけての志望者数の増加は69,000名、この増加幅が従業員規模300名未満の志望者数の減少幅(-65,400名)と同等数であることがわかります。
このように5,000名を超えるような大手企業への学生の偏重は顕著であり、昨年以上にそういった大手企業の狭き門に大勢の学生が集中している状態と考えられます。そういった大手企業の選考で満足のいく結果が得られなかった学生が6月以降に例年並み、或いはそれ以上に出てくる可能性があります。5,000名以上のグラフの②の87,400名がその母集団となると考えられます。採用計画が充足していない企業は、いかにこの層に対してアプローチするかを考える必要があるわけですが、残りの求人数を87,400名で割った求人倍率は5.36倍となり、後半の市場は極めて熾烈な状況であることがわかります。
[シリーズ]どうなる?2020年卒新卒採用動向・変化予測 #1 速報!2019年卒の学生の最新動向と今後の展開予測(4月末調査)でも5月以降の市場動向について解説をしていますが、内定(内々定)の取得割合は昨年よりも早いペースとなっておりますが、就活を継続する意向は9割程度(追記:5月末時点でも6割程度)確認できています。超大手企業の選考で良い結果が得られなかった学生や、内定(内々定)を持っているものの納得できず就活を継続している学生は一定数いるわけですから、まだまだ取り組みの余地はあると考えられます。ただ、学生の動きは多様化してきていますので、大卒求人倍率のような数字を掴むことも重要ですが、どういった学生がどういった場所(就活サービス含む)で就活を継続しているのかといった情報を収集し、具体的に捉えていくことが鍵となってくると思われます。
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出典 第35回 ワークス大卒求人倍率調査(2019年卒) http://www.works-i.com/surveys/graduate.html