【セミナーレポート】採用アナリスト谷出氏が2020年新卒採用の疑問を解決
これからの2020年新卒採用。動向と対策を考える。
また、2部では、新卒採用に関する会場からの質問に谷出氏と弊社CMO田中によるQ&Aセッションを開催いたしました。
登壇者
採用コンサルタント/アナリスト
谷出 正直氏
奈良県出身。筑波大学大学院体育研究科を修了。中学校から大学院まで陸上競技部(短距離)に没頭する。新卒でエン・ジャパンに入社。
子会社へ出向を含め、新卒採用支援事業に約11年間携わる。2015年末退職。独立後は、企業への採用コンサルティングや採用アナリストとして活動する。人事・経営者向けの講演、学生向けのキャリア支援、大学関係者との取り組み、メディアへの情報発信などを行う。
パネラー
株式会社i-plug 取締役 兼 CHRO
田中 伸明
関西学院大学卒、グロービス経営大学院大学卒。新卒で外資金融機関に入社後、株式会社グロービスに転職し法人営業に従事。ユニットリーダー、マーケティング業務を経験。グロービス経営大学院の同期とともに2012年に株式会社i-plugを創業し、初期は法人営業の責任者を務めた。三期目より、学生や法人のユーザー拡大を目指しマーケティング部門の立ち上げに着手。その後、広報チームや大学営業チーム、新規事業の立ち上げも担当。年間50回程度の学内講座での講師も務めている
1部:谷出正直氏登壇サマリー
◆2019年卒採用市場の概況
2019年卒の有効求人倍率は1.88倍。大卒者は7年連続の倍率上昇で、引き続き売り手市場となり、採用活動のさらなる早期化が発生した。
2019年卒採用市場の特徴
- 採用予算の増加
- 採用時期の早期化
求人広告費の増加・採用要員の増員説明会回数の増加
早期の母集団形成を狙ったインターンシップの増加。インターンシップの導入企業数は前年の1.6倍で推移。
◆2020年卒採用市場の見通し
現在のところ、企業の採用意欲が下がる要素は見当たらない。
- 採用活動の早期化と企業人気の二極化はより一層進む
- 選考にAI・VR活用の新たな潮流も
- 新手法導入でも、採用担当者の動機形成における役割は不変
- 新手法の影響で、従来型の選考手法にも変化
- 学生と企業が対面で会う重要性は、依然として存在
◆2020年卒の採用成功に向け、改めて考えるべきこと
今は「学生が企業を選ぶ」時代
- 学生から選ばれる理由づくりができているか?
- エントリー数を追うような目標設定は困難に
- 「志望度」と「理解度」は異なる
◆2020年卒者対象のインターンシップの動向と、採用活動にあたっての指針
- 学生は、インターンシップを選ぶ際「プログラムの内容」を基準にする。一方、選考では「業種」や「職種」で選ぶ傾向がある。
これからは、この傾向の違いをうまく使えば、従来は接点がなかった今欲しい学生へもアプローチすることができる。 - インターンシップの合同説明会が、地方で増加する傾向は続き、さらに早期化することが見込まれる。
- 2020年卒の採用活動への取り組みとしては、時期の早さよりも、学生に「何を伝えるか」や、「事実」と「解釈」の伝え方に注力すべきである。
第2部 Q&Aセッション
インターンシップを開催したくても学生が集まらない。
また、開催できたとしても、本選考で応募が集まりません。
田中
応募するインターンシップ先を学生がどのような基準で選んでいるかという調査をすると、まずは既に自分が知っている企業、次にプログラムの内容が魅力的な企業で選んでいました。しかし、プログラムの内容が良かったとしても、必ずしもその後の接触にはつながらないという事もわかっています。伏線はインターンシップで接した社員の態度にあります。これによる後の志望度への影響は約3割にもなります。
大学のランクによってインターンシップ後に期待する事柄も変わりますが、早期接触からの特別選考への流れを期待している学生の割合は、上位校ほど多いようです。特別選考の実施が難しい場合は、インターンシップ参加者限定のセミナー、特別相談会など「限定」の接点を求める傾向にあるという結果がでていますので、参考になるかと思います。
昨今のアプリなどで見かける個別最適化が、就職活動においても影響していると思われます。
谷出氏
新卒採用担当の人事の皆さんは、学生が目の前にいて「インターンシップはどう選べばいいですか?」と質問したときに、どう答えますか?
学生は就職活動がはじめてですから、知っている企業にエントリーし、知らない企業にエントリーしないのは当然です。
知名度が高くない企業としては、「なぜこの企業にエントリーすべきか」に答えられなければ学生が来ないことになります。答えになる内容を、自社サイトに記載するなど、学生が自社にエントリーするべき理由を教えてあげることが重要です。インターンシップの合説や、学内の説明会など、対面で学生の反応を見ながらそれを伝えられるとより良いと思います。
例えば、社長のトップセミナーなども、学生からすると「なぜ社長が出てくるセミナーに参加すべきなのか?」と感じています。そのあたりは自分で考えることができる学生に参加して欲しいという考えもあると思いますし、そういう学生だけをあえて集客することもいいと思います。
ただ、夏のインターンではインターン経験の無い学生が多く、「行動する理由」を伝えてあげることで学生を集客することもできると思います。
田中
ワンデイインターンシップについては、学生のインサイトを調査すると、特別選考に対する期待は15%ほどにとどまります。社員と話して雰囲気を知りたいとか、実務を体験したいという「知りたい欲求」が多くを占めているようです。
説明会などで学生と接点を持ったときに、どのように動機形成すべきかわかりません。
選考過程でのフォローがうまくいかないというケースのほか、説明会で話したときに、何が学生に響くのかわかりません。
また、18年卒にはしっかりとした基準を決めずに内定を出して辞退が続出してしまったため、19年卒は学生としっかり向き合って内定を出したつもりですが、なお内定辞退が続いてしましました。
どうしたら内定辞退を防げるか、歩留まりを上げる方法を教えてください。
谷出氏
内定を乱発すれば辞退が頻発するのは当然なので、他社とでなく自社の過去と比べるのが重要です。「過去のケースでは、このタイプの人は内定を承諾していたはずなのに今年は辞退した。それはなぜか」と考えることが重要になります。
健全な刷り込みも必要です。
20年ほどしか生きていない学生に“どんな人生なら幸せなのか”をある程度教えてあげるということです。
例えば、私は「楽すること」のリスクを学生時代に参加したインターンシップで知ったので、逆に営業会社に入社したという経緯があります。
シェアや製品名・社名以外の視点で、皆さんの会社に入ったほうがいい理由を語れないといけません。そして、説明会でその点をひたすら語り、体現している社員に学生を引き会わせることが大切です。
皆さんが今の会社に入った理由は何ですか? ゼロから理由を考えたのではなく、先輩社員など誰かに聞いた事情を自分なりに組み合わせて入社を決めたのではないですか? それを今の学生にも追体験させてあげることが重要です。
田中
「志望動機の作り方」と検索すると、ほぼ「事例」「テンプレート」しか出てこない。つまり、学生は「動機の形成方法」を知らないということです。
私は、大学で年200回ほど講座を開く中で「志望動機とは学生と企業との繋がり方を言語化したもの」と説明しています。
近年は学生も多様化しているので、企業側が魅力だと思う点を伝えても、それが学生にとって魅力に映らないケースもある。どのあたりに共感して欲しいのか、企業との向き合い方を伝えてあげるのも重要だと思います。
面接官の面接内容をいかにコントロールすべきか教えてください。
面接には面接官の力量が大きくかかわり、面接官によっては、圧迫面接をしてしまうこともあり、学生の動機形成に関わるので質問しました。
谷出氏
1次面接に動画面接を取り入れる企業が増えています。「動画面接」とは、企業からの課題に対して、学生がスマホの自撮り機能などを使って答える方式です。学生・企業ともに、いつでも相手の課題・答えを見られる点がポイントです。
これを使っている企業は、動画を採用担当者全員で見ながら、各人がどのような採点をしたのかをチェックし合っています。採用側の基準の合意づくりに有効で、採用担当者のスキルの底上げに繋がります。
田中
今の採用市場がどうなのかを共有して、面接官の役割変化について考えることも必要です。
RJP理論(ありのままを伝えて学生側に判断してもらうことで、学生の判断に主体性を持たせて選考辞退や離職率を下げる)などの方法論を面接官で共有して、お互いのスキルを高めていくことも必要だと思います。
適性は適性検査で見て、カルチャーフィットの部分は面接で見るなど、目的をしっかり共有するのも大事です。