【企業向け】オンラインインターンシップを紐解く!メリットとデメリット、おすすめコンテンツをご紹介。

「インターンシップはオフラインでの実施」が採用の常識でしたが、新型コロナウイルスの影響を受けて、インターンシップもオンライン化を取り入れる動きが採用の常識となりました。現在も、オンライン化に取り組む採用担当者も多いのではないでしょうか。

ただ、オンラインインターンシップは初めての試みで、具体的にイメージできず不安を抱える採用担当者もいらっしゃると思います。

本稿では、オンラインインターンシップのメリット・デメリット、どのようなコンテンツが有効か、具体的な事例を含めて解説・紹介します。
 

|オンラインインターンシップの各社の導入状況は

21年卒の採用活動では、会社説明会、面接といった選考過程にオンラインを採り入れた企業は多くなっています。しかし、冬のインターンシップを開催した後にコロナ感染の影響を受けたため、22年卒で初めてのオンライン化に取り組む企業が多くなっている状況です。

22年卒の採用活動に関する企業のオンラインインターンシップ開催(予定)状況は、『Offer Box調査:2020年12月「2021年卒/2022年卒の採用スケジュール」』※1によると、「オンライン形式とオフライン形式を併用して開催、または開催予定」43.4%、「オンライン形式のみで開催、または開催予定」30.7%となっており、併用もふくめてオンライン形式での開催が「オフラインのみ」を上回る結果となっています。

※1):22年卒学生の秋・冬インターンシップの開催形式について(開催を決めている企業のみ)
22卒学生のインターンシップの開催形式

出典:「2021年卒/2022年卒の採用スケジュール」
https://app.offerbox.jp/company/whitepaper/form?wid=22190

加えて、HR総研の『「HR総研×就活会議:2022年卒学生のインターンシップと就職活動への意識調査」』によると、「参加したインターンシップの中で、何社オンライン型だったか」という質問に対し、4~6社・7~9社・10社以上と答えた学生が合計で56%と高い割合となっています。

参加したインターンシップの中で、 何社のオンライン型のインターンシップに参加しましたか。
インターンシップをオンライン形式で参加した社数

出典:「HR総研×就活会議:2022年卒学生のインターンシップと就職活動への意識調査」
https://www.hrpro.co.jp/research_detail.php?r_no=286

このことから、インターンシップは、企業も学生もオンライン化が選択肢の一つとして当たり前にあるようになったといえます。
 

|オンラインインターンシップのメリットとデメリット

本章では、オンラインインターンシップは対面(リアル)と比較してどんなメリットがあるのか、デメリットも含めて解説します。
 

○オンラインインターンシップのメリット

①リアルよりも多くの学生の参加が望める(母集団の増加が見込める)
オンライン化されることで、「エリア」と「時間」の制約がなくなり、地方在住(遠方)や授業との兼ね合いで参加できなかった学生の参加が望めます。また、自社の立地が不便でも動員増が期待できます。

②会場費・運営費などのコストおよび拘束負担の低減
運営スタッフやサポートにあたる先輩社員の拘束コスト(人件費)、拘束による負担、交通費の削減になります。また、学生としても移動交通費・宿泊費などを削減できるメリットがあります。

③リアルではできないことが実現可能
・資料データや画像の個々のPCでの共有
・オンラインホワイトボードやオンライン付箋を使っての議論やアイディア出し
・チャットやドキュメントツールを使ったコメント・フィードバックのクイックレスポンス
・画面共有や動画を使ったLIVEオフィス見学

④企業と学生とのコミュニケーションや学びの総量が増える
リアルでは気兼ねしたり時間がなかったりの理由でとりづらかったコミュニケーションが、チャット機能などでとりやすくなります。
 

○オンラインインターンシップのデメリット

①学生の集中力や緊張感が途切れやすい
長時間PCに向かっているのは肉体的にも精神的にも大きな負担がかかります。
プログラムを短時間で区切り適宜休憩を入れるなど、学生の集中力を途切れさせない仕組みや工夫が必要です。

②参加者の意思疎通、情報共有が十分にとれない
リアルだと伝わるその場の空気感が読めず、グループディスカッションなど進行がスムーズにいかないケースがあります。

③会社の雰囲気や様子が伝わりにくい
画面越しの限られた視界に限定されるため、社員同士のやりとりや社内の様子が伝わりにくくなります。

④接続不良や進行の不備が発生する可能性
オンライン化のインフラが不十分だと、接続不良や進行の不備が発生する可能性があります。

⑤企業との結びつき・つながりが希薄化
学生一人当たりの参加社数が増えると、一つの企業との結びつきが希薄化する傾向があります。関係性の密度を上げ、一人ひとりの参加者の体験価値を高めるコミュニケーションづくりが必要です。
 

|オンラインインターンシップに適しているコンテンツとは

これまでリアルでインターシップを実施してきたのであれば、基本的に同じコンテンツをオンラインに当てはめて行えます。リアル、オンラインに関係なくインターンシップを実施する目的、インターンシップを通して学生に何を伝えたいのか、また、参加する学生は何を求めて参加するのかを考え、最適な方法を選ぶことが大切です。

本章では、オンラインインターシップにはどのようなコンテンツが適しているのかを紹介します。
 

1.グループディスカッション形式

グループディスカッションは、リアルの場合、担当者が各グループを遠巻きに見て評価することが多いのに対し、オンラインでは担当者も同じグループに入り、より近い距離から学生の特長を把握し、しっかり評価できるメリットがあります。

オンライン全体に言えることですが、リアルでは会場の雰囲気に飲まれてしまう学生がいますが、自室で参加できるオンラインではリラックスして望めるため、学生の実際の様子をみることができるとも言えます。
 

2.ロールプレイング形式

学生にとっては、オンラインでは画面に向かって行えるため、リアルに比べると他の学生の目が気になりにくく、疑似の世界に集中することができます。参考までに典型的なロールプレイングのテーマを以下に挙げます。

営業現場体験→社員がお客さま役、学生はお客さまへの対応・提案などを通じて、営業の面白さの実感や先入観の払しょくができます。模擬面接→学生が面接官を演じることで、人事が応募者のどこを見ているのか体験できます。
 

3.ビジネスゲーム形式

リアルはもちろん、ビジネスゲーム形式はオンラインにも適したコンテンツと言えます。参加者はゲームに熱中することにより、知らず知らずのうちに現実のビジネスに通じる視点や考え方を獲得できます。

仮説→検証→結論→さらなる課題→仮説・・・と、変化に対し何度も繰り返し続けられる面白さがあります。パッケージとして販売されているビジネスゲームをいくつか紹介します。

The商社:他のチームと交渉しながら資源を集め、期間内にどれだけビジネスを立ち上げられるか競う。

The Shop:店舗経営を疑似体験する。店舗のあるべき姿(ビジョン)を打ち立て、さまざまな手を講じながら収益拡大を目指す。

The Team:自ら行動し直接情報を得られる部下と、部下からもたらされた情報を基に戦略を決定する上司に役割を分ける。両方の立場を疑似体験することにより、チームワークを発揮するために必要なことは何かを学ぶ。

出典)人材採用・内定辞退防止にも有効「ビジネスゲーム:インターン・社内研修」紹介ページ | 採用サロン
https://saiyo-salon.jp/service/business-game/
 

4.就業形式

プログラミングや製品デザイン・設計業務は、要件定義が決まっていれば、一人でPCに向かって仕事ができるため、オンラインインターシップに適していると言えるでしょう。また、デスクワークをリモートワークで行っている企業であれば、学生とオンラインでつなぎ、トレンドの就業形態を体験できます。

しかし、就業形式は、まだリアル開催を予定している企業が多くなっています。客先に出向いて行う営業活動はオンラインではなかなか体感しづらいところがあるためです。
 

5.講義・レクチャー形式

オンライン開催に一番適しているのが、この形式だといえます。『「HR総研×就活会議:2022年卒学生のインターンシップと就職活動への意識調査」』の「今後参加予定のインターンシップの実施形態・実施内容について」※3では、「会社説明、業界・事業紹介」が文理ともトップとなっています。

※3)今後参加予定のインターンシップの実施形態・実施内容について、あてはまるものをすべて選択してください。

今後参加予定のインターンシップの実施形態・実施内容

アンケート名称:HR総研:2021年&2022年新卒採用動向調査
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2020年10月21日~27日
調査方法:WEBアンケート(SurveyHR)
調査対象:企業の人事責任者、新卒採用担当者
有効回答:174件
 

|インターンシップのオンライン化で気をつけることは

本章では、オンラインインターンシップを開催するにあたり、留意するべきことを「開催前」「開催中」「開催後」に分けて解説します。
 

○開催前の留意点

①通信・接続環境の準備
接続トラブルを回避するため、使うツール・必要なアプリ・ブラウザ、安定した通信環境の確保や参加環境(静かな場所や明るい照明)の準備、事前の接続テストなどを学生に依頼しておきましょう。当然自社の環境も再確認しておきます。

②当日の資料の事前配布
参加学生に当日の研修内容資料を配布しておきましょう。事前に当日の予定を知ることで安心して参加できます。また、後日改めて内容を振り返ることができます。

③社員スタッフのスケジュール確認
オペレーションに参加する先輩社員のスケジュール再確認・念押しをしましょう。また、禁止事項や注意事項の再確認・共有も大切です。
 

○開催当日の留意点

①参加者の集中力が散漫にならないように注力
1日だけでも終日PCの前に座りっぱなしは疲労します。適度に休憩、PCの画面から離れる時間をとることが大切です。

また、オンラインはリアルよりも集中力が切れやすいので、グループワーク以外は10~15分に1回は「場面転換」を行い、集中力や緊張感が途切れないようにしましょう。「レクチャー→質問」「発表→フィードバック」を繰り返すなど、企業から学生への一方通行、やりっぱなしにしないことが大切です。

②役割分担やテーマの確認を事前に行う
グループワークではリアルでの実施以上に、役割分担やテーマの確認を事前に行うことが必要です。初対面でいきなり進めると、うまく回らない可能性があります。
 

○開催後の留意点

①自社とのつながりを継続させる仕組みづくり
ホームページに特設ページを設けるなど、インターンシップに参加した学生に向けて当日出た質問に回答するページや登場した社員について、より詳しい仕事内容を紹介するコンテンツを配信するとよいでしょう。ことあるごとにマイページへのログインを促し、自社とのつながりを継続させる仕組みづくりが大切です。
 

|オンラインインターンシップの事例

オンラインインターンシップを実施している企業の実施例をいくつか紹介します。
 
①大手医薬品メーカー・C社
【形式】グループディスカッション形式:夏インターンシップ
【内容】「自分が何を大切にしているのかという価値観を見出す」がテーマ。
自分の大切にしている価値観と会社の価値観がどのように合致するのか、ディスカッションを通じて考える内容。
【特徴】インターンシップを通じて学生の成長機会を提供したいというインターンシップポリシーがあります。
 
②ITベンチャー企業・P社
【形式】就業型/ロールプレイング形式・3日間
【内容】企画立案の方法やロジックの組み方、プレゼンスキルを磨くプログラム。
1日目:自己紹介、環境設定、企画立案に関する説明、企画立案開始
2日目:終日企画立案、参加者とメンターによる座談会
3日目:発表資料作成、プレゼン、懇親会
【特徴】期間中、事業責任者やPマネージャーなどメンターが常時質問を受け付けるサポート体制を整えています。
 
③環境コンサルティング・E社
【形式】講義・レクチャー/ロールプレイング形式・1日
【内容】ビジネスの現場を短時間で体感する。
事前に提出した課題に対するレポートを基にビジネスモデルを考えるプログラム。
企画立案方法のオリエンテーションの後、1時間という短時間での企画作成。実務のスピード感を体験させるもの。社員が学生にマンツーマンでサポート。
【特徴】インターンシップオープニングで、社員がハンディカメラをもって、社内(実際に働いているオフィス)を突撃撮影・インタビューのLIVE配信で案内。
 
④マーケティング・C社
【形式】講義・レクチャー型/グループディスカッション形式・2日間
【内容】マーケティングの基礎知識やフレームワークのレクチャーを受けながら、与えられた課題についてグループワークを行う。
1日目:4分の3をレクチャー、残りの時間はグループワーク(30分ごとに中間発表挟む)
2日目:午前中半日グループワーク、午後発表準備と最終プレゼンテーション・FB講評・振り返り
【特徴】従来リアルで行っていた内容をそのままオンラインに落とし込む。
 
⑤ITシステム開発・L社
【形式】就業型/ロールプレイング形式・2週間
【内容】調査・分析およびプログラム設計・開発
実業務の一環なのでセキュリティのため社内ネットワークは使わずに、研究用の独自ネットワークを使用。各自のPCから実習用サーバにリモートで接続して行う。
【特徴】通常業務でもリモートワークを行っており、普段からメンバーのコミュニケーション不測の解消のため30分程度の雑談タイムを設けている。インターン生にもその場に参加してもらいコミュニケーションを図る。インターン生のなかには、大学の講義(リモート)に重なる時間もあったが、一時抜けて講義を受けながらインターシップ実習にも参加、両立が可能ということが実証された。
 
⑥先端素材メーカー・T社
【形式】講義・レクチャー型/2日間
【内容】グローバルに事業展開する自社の、環境変化に対応するうえで、営業がどのような重要な役割を担っているか知ってもらう。
1日目:若手・中堅社員の講義、質疑応答
2日目:グローバルに活躍する社員の講義、質疑応答
【特徴】事前に送付済みの会社説明動画を視聴してもらい、講義へのスムーズな導入を図った。
 

|まとめ

オンラインインターンシップを検討しているけれど、初めてのことで具体的にイメージできず不安を抱える採用担当者は多いと思います。今回は、そんな方々に向けてオンラインインターンシップを企画するにあたり、どのようなコンテンツが有効か、開催にあたっての留意点、具体的な事例などを解説・紹介してきました。

リアルでインターンシップを実施してきた実績があれば、そのコンテンツをそのままオンラインに転用しても差し支えありませんが、オンラインならではのメリットもデメリットもあり、自社の状況と環境を考慮して、最適な形式・コンテンツを選択することが大切です。

本稿を参考にスムーズなオンライン化ができ、企業も学生も満足できるオンラインインターンシップが実施されることを願っています。


2021年3月3日公開