近年の離職率は一番高い年で1.6%。ブラック企業問題とは無縁の、脅威の定着率を誇るニッタ株式会社。1885(明治18)年に創業し、国内初の伝動用革ベルトを製造。素材が革からゴムに変わっても、工業用ベルトやその他工業用製品の国内リーディングカンパニーとして日本のものづくりを支え、1997年に東証一部に上場した。
大手老舗企業でありながら、20代社員を積極的に海外派遣したり、30代でも海外子会社の要職に就くチャンスがあったりと、チャレンジできる環境がある。しかしBtoBのビジネスモデルのため、学生からの認知度は低かった。定着率が高く、在籍期間が長いからこそ、本当に自社に合った人に入社してもらいたい。その思いから、活躍人材の見極め、そしてOfferBoxを活用し“自ら出会いにいく”ダイレクトリクルーティングの導入へと、変革がスタートした。
引き継ぎ禁止!採用の知識なく、新しく着任した採用担当の小西さん。BtoBで学生からの認知度が低いという課題を持つ同社の戦略として、待つ採用ではなく自ら出会いにいく採用手法を選んだ。
―歴史ある企業が、これまでのやり方を変更するというのはハードルが高そうですが、採用基準や採用方法を大幅に変更し、変革に至ったきっかけは何だったのでしょうか?
「“変わるんだ、チャレンジが必要だ!“というような大号令があったわけではありません。私が前任者に代わって採用担当になったとき、上司から『前にやっていたことは知らなくていいから、自分の好きなように考えてやってくれ』と、引き継ぎ禁止令を出されてしまったのです。」(ニッタ株式会社 小西さん)
―引き継ぎを全く行わず、採用活動をどのように行なったのでしょうか?
「採用がどういうものか、何をするのかもわからなかったので、ひとまず様々な採用セミナーに参加しました。最近の採用のトレンドや世の中の流れを聞き、私が採用担当になった年はごく普通の採用活動をしました。ナビサイトに掲載、説明会を行い、選考しました。加えて、一度だけ社外の合同説明会に出てみたのです。その合同説明会で、たまたまニッタを知った学生が興味を持ち、入社してくれたのです。その時に、弊社は学生からの認知度は低いですが、その分こちらから出ていけばいいんだと思いました。」
学生からの認知度は低くとも、自ら出会いに行けば欲しい人材は採用できる。活躍人材を徹底分析して見えてきた活躍人材の要件は「論理的思考力」「数理的思考力」だった。
―“欲しい人材は出ていけば採用できる”そう確信したとのことですが、御社にとって“欲しい人材”をどのように見極めたのでしょうか?
「ニッタにはどんな人が合うのだろう、と考えました。筆記試験の結果だけで決められるのならば一目瞭然ですが、やはり、面接で直接話をしないとどんな人かはわかりません。また、実際に面接をしても、30分でその人を判断するのは難しい。よくわからないのに、合否を決めるのはとても嫌でした。」
―では、面接とは違う方法で基準を定められたのでしょうか?
「社内でどんな人が活躍しているのか調べたのです。適性検査を含めた入社時の筆記試験のデータが過去10年分ありました。そこで、データがある社員全員の上司に聞いて回りました。活躍している人はどんな人で、どこを評価しているのか。逆に活躍していない人はどういうところが評価できないのか。その聞き取り結果と筆記試験のデータを照らし合わせて分析しました。能力、適性、性格。どの因子に対して活躍が相関するのか。2ヶ月ほど分析作業をして、相関が出たものがありました。それは論理的思考力・数理的思考力と素直さです。」
―一般的によく言われるのは、コミュニケーション力やストレス耐性ですが、御社の場合は、論理的思考力・数理的思考力と素直さだったのですね。文理問わずですか?
「はい、そうです。改めて考えてみれば、弊社は部品メーカー。文系出身の営業でも仕事相手は、完成品メーカーの設計担当者。図面を見て打ち合わせする機会も多くあります。なので、理系の技術職だけでなく、文系の営業職でも仕事をする上で、数理的思考力や論理的思考力が必要なんですね。また、3年後や5年後など、次世代の機械や車に対して新しい部品の提案をしなければならないので、顕在化しているニーズではなく、潜在的なニーズを把握することも必要です。そのためには、お客様や社内外の関係者の話を素直に聴く力も必要だということではないかと思います。」
―お客様の話を聞いてニーズを掘り起こさないとならないので、コミュニケーション力だけが高い人や、強引な営業をする人も活躍できないということですね。
「そうですね。積極的に主導権を握ろうとする人より、多少口べたでも周囲の人の意見を素直に聴き入れた上で、論理的に物事を考える人の方が、お客様に信頼され活躍していきますね。そこで2016年卒採用では少しでも多くの学生さんにニッタを知ってもらうため、大学近くの就活カフェや、学内説明会などに積極的に出るようにしました。そして翌年の2017年卒採用は、広報開始から選考開始まで3ヶ月という短期決戦。さらに早い時期に多くの学生さんにニッタを知ってもらう必要があると思い、どのように活動しようかと思っていたときにセミナーで知ったのがOfferBoxだったのです。」
―OfferBoxを導入する決め手は何だったのでしょうか。
「活躍するかどうかは、学部や学科との相関がないこともわかりました。専攻よりも、過去にどのような経験をし、どのような姿勢で取り組んできたかということの方が重要です。OfferBoxでは、プロフィールを見ればはじめからどんな学生かわかることが良かったですね。履歴書では、みんな塾の先生かバイトリーダーかサークルのリーダーで、ゼミ長。同じような内容の学生が多いのですが、OfferBoxでは、写真や過去のエピソードなどを通して人柄や人となりが伝わってきます。」
オファーを送らなければ、自社を知らないまま就活を終えていただろう学生が、内定に。オファー送信50名>オファー承認44名>面談36名>内定3名>内定承諾2名
―2015年の夏頃、2017年卒採用でOfferBoxを導入。実際にOfferBoxを活用してみて、どのような成果が出たのでしょうか。
「導入してすぐの頃、OfferBox Partyに参加しました。合説だと、学生から興味を持ってもらえないとブースに来てもらえません。でもOfferBox Partyは、最初に全ての参加企業がプレゼンを行うので、ニッタに興味のない学生にも話を聞いてもらうことができました。また、その後の交流会では、食事をしながら直接いろんな学生と話すことができて、実際にこのパーティをきっかけに弊社に興味を持ってくれた学生もいました。これはすごいなと思ったのが印象です。」
―パーティで出会った学生等に、まずは少人数の座談会に呼んで交流を持ったということですが、座談会の様子はどうでしたか?
「その年の新入社員を囲んでもらう形にしました。新入社員は何を話せばいいか、と戸惑っていましたが、とりあえず何でもいいからと(笑)うちの新入社員は、入社後1年間は配属先を決めずに社内すべての部門で研修を行います。新入社員とはいえ、彼らは全事業部を経験するので、秋になれば製造・営業・技術・管理など様々な部門の社員と交流して現場もしっかり見ています。学生にとっては、年も近いので聞きやすかったのではないかと思います。気づいたら4時間経っていたという日もあったくらい盛り上がりました。」
―結果、2018年卒はオファー送信50名>オファー承認44名>面談36名(個人面談18名、社員との座談会18名)>内定3名>内定承諾2名。学生認知度が低くとも、88%がオファーを承認するという結果に結びついたのですね。
「来て欲しいと思った人にしかオファーしないので、一人一人どこに興味を持ったのか考えて、オファーしていましたが、こんなに承認してくれるなんて思っていませんでした。関東や九州の学生にもオファーしました。関西の会社なので承認してくれないだろうと思っていたのですが、予想以上で驚きました。」
―導入して一番良かったのはどのようなことでしたか?
「OfferBoxが無かったら、絶対にニッタのことを知らないまま就活を終えていただろうと思うような学生と出会えたことですね。プロフィールを見て“すごく優秀な学生さんだな、きっとうちのオファーは受けてくれないだろうな”と思いながらオファーしてみたら承認してくれた学生がいて、結局内定承諾に至ったのです。学生からの認知度が低いからこそOfferBoxを利用することは意味があると感じています。」
会社名 | ニッタ株式会社 |
所在地 | 大阪市浪速区桜川4-4-26 |
設立日 | 1945年2月10日 [創業1885(明治18)年3月18日] |
事業内容 | ベルト製品をはじめとした、各種工業用製品の製造・販売 |
ホームページ | https://www.nitta.co.jp/ |