【セミナーレポート】ダイレクトリクルーティングは新卒採用を変えるのか!?①
コクヨ、キングソフト、システムサポート。導入企業3社が語る、新卒採用におけるダイレクトリクルーティングの有用性。
日本の人事部 HRカンファレンス2015 ― 春 ―
【3年間の実績から検証】ダイレクトリクルーティングは新卒採用を変えるのか!?①
会いたいと思える学生10人にオファーを送信、その中から1名を採用し、その人材が入社後活躍してくれる。こんな新卒採用ができたら良いですよね。
株式会社i-plugは3年間、新卒領域に特化したダイレクトリクルーティングサービス「OfferBox」を提供し、結果このような実績をいくつも創ることができました。その実績を利用企業の声を中心にご紹介。コクヨ株式会社様、キングソフト株式会社様、株式会社システムサポート様の人事担当者にご登壇いただき、パネルディスカッションを実施しました。どのように活用したのか、従来の採用手法との違いは何か、どのようなメリットを自社にもたらしたかなど、ダイレクトリクルーティングの有用性についてお話いただきました。
パネリスト
大島 広 様
コクヨ株式会社 経営管理本部 人事総務部
採用育成グループ
国際教養大学卒業後、コクヨに入社。1年目から新卒採用に携わり、現在は新卒採用の全体企画担当として採用戦略の立案を担う。従来の「ナビ頼み」の新卒採用手法に疑問を感じ、4年前から様々な手法を模索。
15卒よりOfferBoxのサービスに共感し、導入。同サービス経由で営業職の追加採用に成功したことで、16卒より本格導入。
小林 慎太郎 様
キングソフト株式会社
管理部部長
立教大学卒業。キングソフトにおいて、管理部門の責任者として、人事をはじめとするバックオフィス部門を牽引。
事業拡大に伴い新卒採用の重要性も増し、採用人数、採用する人材の質、ともに向上をはかる必要性が出てきたことから、16卒より採用戦略を見直す。そんな中、OfferBoxを知り、より必要とする人材をより効率的に獲得するべく、積極的に活用中。
武士垣外 寛之 様
株式会社システムサポート
人事部 マネージャ
IT業界2社を経て、2007年システムサポートに入社。現在は新卒採用全体の責任者を担当すると共に、グローバル採用・障がい者採用などにも従事する。
数年前から新たな採用手法を模索していた中、OfferBoxに出会い、14年卒から利用を開始。IT経験者の採用・同社初の営業職採用などを始めとして、毎年内定承諾者を出している。
ファシリテーター
中野 智哉
株式会社i-plug 代表取締役社長
グロービス経営大学院大学卒(2012年3月)。インテリジェンスで法人営業を経験、上記経営大学院卒業後、同期3名で株式会社i-plugを創業し、同年10月に新卒に特化したダイレクトリクルーティングサービス「OfferBox」をリリース。
中京大学経営学部を卒業後、最初に就職したのは絵に描いたような「ブラック企業」。初任給は約束された給与の半分・・・。そのような自身の原体験から、現在の就職活動の在り方に対して問題意識を持ち、少しでも学生の可能性が広がるような機会を提供したいと考え起業を決意した。
i-plug 中野:
OfferBoxを利用した経緯はどのようなことでしたか?
また実際利用していかがでしたか?
コクヨ株式会社 大島様:
弊社は、新卒採用では質という部分でかなり苦戦をしていた企業です。BtoCの商材、キャンパスノート等の文具商材の認知度が学生の中でかなり高いので、エントリー数は1万~1万5000人くらいで毎年推移していました。そこから40名の採用をしますので、数では正直そこまで困っていませんでした。
1万数千人のエントリーの内、6~7割が女性。そして「かわいい文具を作りたい」というように、商品企画職を希望される方が多い母集団です。しかし現実は、文系出身の方が商品開発、企画に携わることはほとんどありません。そして、文具は押しが強いビジネスで、売り込みの強い営業が必要なのです。エントリー者と、我々が欲している人材とのギャップが、採用上の大きな課題でした。
ナビサイトやイベント等に出て、母集団を多く集めて採用しようという施策を10年ほど前まで続けていたのですが、人事のマンパワーが削られ採用費も削られていく中で、大量にエントリーを集めて、時間をかけて選考をすることが現実的ではなくなってきました。
そこで他の手法を検討するようになり、スカウト型と言われているようなダイレクトリクルーティングのサービスやベンチャー系の「選ばれた学生が参加する限定イベント」というものにも積極的に出ましたが、こういう場でお会いした学生さんは、どこか「自分は特別な存在だ」という認識を持っている人が多いように感じました。志望先を決めきれなかったり、夢見がちな人が多いような。
そんなときに、出会ったのがOfferBoxでした。学生が自分の経験を内省してプロフィールに記入し、我々がそれを見ることができるというのは、ほかのサービスと違うなと思いました。学生のためにもなると感じて。それが導入のきっかけです。
i-plug 中野:
これまで会ってこられた学生との違いは、会ったときに感じたのですか?
コクヨ株式会社 大島様:
実際に会ってみて感じました。学生のプロフィールの内容は日々変わっていきます。なぜかというと、オファーが届かないと自分のプロフィールに改善を重ねていくのですね。それも作用しているかと思うのですが、自分の経験をもとに「こんな仕事がしたい」、「仕事や会社のことはよくわからないけれど、こんな人間になりたい」というような学生が多く、変な売り込みがないですね。非常にフラットです。
i-plug 中野:
学生は自身のプロフィールがどのくらい見られているかをアクセス数として把握することができます。アクセス数はあるのに、オファーが届かない、という時に自分でプロフィールを磨いていきます。弊社も書き方を教えたりしませんので、自分で考えて改善をしていく仕組みになっています。
「学生さんの考え方が違う」というお話が出ましたが、ほかにはどんな違いを感じられましたか?
コクヨ株式会社 大島様:
採用活動の場で学生と会うと「御社が第一志望です」「コクヨではこんなことがしたいです」というようなアプローチが多くて。本気ベースで話せることがあまりないんですよね。OfferBoxだと、学生が自分の経験を公開した上で企業からアプローチを受けているので、“コクヨ”という会社にそこまで迎合せずに本音で話をしてもらえていると思います。話していると「最初は営業をやった上で、ゆくゆくはマーケティングや商品企画をやりたい」というような、地に足のついた考え方をしている人が多いと感じます。
i-plug 中野:
大手企業ならではかと思いますが、もともとエントリー数が多いということですから、ダイレクトリクルーティングを導入するには、ハードルが高かったのではないですか?
コクヨ株式会社 大島様:
社内のハードルは高かったですね。エントリー数は多いのに、なぜ他のサービスを追加する必要があるのだという意見がありました。
i-plug 中野:
それはどうやって乗り越えられたのですか?
コクヨ株式会社 大島様:
2015年卒の採用で1名欠員が出ました。その欠員補充で利用を始めたのがきっかけです。そこで、従来利用していたサービスだったら絶対に採用できないような人を役員陣にも知ってもらおうという試みで、営業職の採用をしました。結果欠員は1名だったのですが、2名内定を出すことができました。1名はOffeBoxから。もう1名は他のサービス経由で決まってしまったのですが、OfferBoxも活用していた学生なので、ほぼ2名を採用することができました。
i-plug 中野:
16卒はどんなタイミングでご利用を開始されましたか?
コクヨ株式会社 大島様:
16卒は早期のイベントを実施しまして、OfferBoxを通じて学生にコンタクトしました。例年、夏のインターンシップをやっていましたが、2016年卒向けには実施せず、それよりも「顔のわかる母集団」を作りたいと考えました。私たちからオファーを送り、飲み会を開いたり。飲み会の場では会社のプッシュをせずに、学生の経験を聞いたりします。「コクヨではこういった働き方ができるけれど、逆にこういう働き方はできない」というような実際の話をして、さらにそこから個別に連絡を取ります。私たちがリクルーターをしているような感覚ですね。結果、2016年卒で約70名ほど、顔がわかり、どういうことがしたい学生なのかがわかる母集団が作れました。
i-plug 中野:
ありがとうございます。
それでは、続いてキングソフト様のお話を聞いてみたいと思います。
キングソフト株式会社 小林様:
弊社は、自分たちが欲しいような学生をなかなか獲得できないという質の問題と、効率に課題を抱えていました。
弊社は中国に母体がある外資系の企業。中国では設立30年と古い企業なんですが、日本法人はまだ10年という若い会社です。そういうステージにおいて求められる人材は、0から1を生み出したい人や1年目から裁量を持って働きたい、というような人なんですが、なかなかそういう人に出会えていませんでした。
もうひとつは効率の部分ですが、小さい企業ですので経営資源も限られています。新卒採用だけでなく中途採用もやれば教育研修も人事制度の策定も、労務総務もやります。マルチタスクで新卒採用だけに工数が割けないので、効率的にやらなければならないというのも課題でした。
i-plug 中野:
実際に利用されて、その課題は解決されましたか?
キングソフト株式会社 小林様:
そうですね。OfferBoxは学生の細かい性格や価値観、考え方がわかるようなプロフィールになっているので、我々が欲しいような学生と確度高く接点を持てるようになりました。
効率の部分ですが、これまでナビだけでは会いたい学生に会えないので、大学での学内セミナーやイベントに参加してきましたが、OfferBoxを導入して以来、学内セミナーには全く行っていないですし、イベントもひとつしか出ていません。その工数がかなり改善できました。
i-plug 中野:
OfferBoxは、学生のプロフィールかなり詳細なので、逆に「こんなに読まないといけないの?」と、その部分の負担を懸念される企業がありますが、実際はいかがですか?
キングソフト株式会社 小林様:
プロフィールを一人ずつ見ながら探すというのは非常に手間がかかります。私は実際にはやっていなくて、部のメンバーがやってくれているのですが、導入した当初は、
「小林さん、これ非常にたいへんですよ」
と、恨めしい目で見られていました(笑)。でもそれは、採用全体を見たときのごく一部の作業ですよね。ですので、全体で見るとOfferBoxを利用したことによって、工数や時間はかなり改善できています。
i-plug 中野:
学生を探すときにも、採用できそうな人だけにオファーを送られているとお聞きしましたが、実際にはどれくらいの方にオファーを送られたのですか?
キングソフト株式会社 小林様:
まず、関東で20名ほど、関西も20名ほど送りました。そのうち60%くらいの学生に会い、関東、関西でそれぞれ2名ずつ内定を出すことができました。
i-plug 中野:
オファー送信から60%の学生さんに会われているというのは、数字的には高いですよね。何か工夫されていることがあるのですか?
キングソフト株式会社 小林様:
かなり早い段階からオファーをしていました。まだ企業からオファーを多く受けていない時期だったというのもありますね。また、中国に母体があって、日本法人でという変わった企業なので、そういった差別化要因をオファー時点で盛り込んだり、検索項目に中国、海外というキーワードを入れたり工夫していました。
i-plug 中野:
ではシステムサポート様にもお聞きします。2014年のOfferBoxのサービススタート年からご利用いただき、今年で3年目です。ぜひ3年間の実感値をうかがえますか。
株式会社システムサポート 武士垣外様:
弊社は、SEをたくさん採用しているのですが、システム業界やSEというのは人気がなくて。ナビサイトだけでは母集団の形成がなかなかできていませんでした。エントリー数でいうと、毎年1~2割ずつ減っていっていたのです。SEだからと言って、情報系の学生のみというわけではないのですが、一定数の情報系学生の確保は必要ですし、SE志望者を効率よく探すことができる面白いサイトだと思い、使ってみようかなと思いました。
実はもうひとつ、経営的な課題として、会社の未来を築いていくような優秀な人材を採用したい、という社長からの話もありました。通常ではなかなか採用できないような能力を持った学生でも、オファーを送ってそのあとの工程でしっかり口説いていけば採用に至ります。IT業界やSE志望者は大人しい学生が多いですが、OfferBoxはアクティブな学生が結構いるなという印象は受けましたね。
i-plug 中野:
2014年卒、2015年卒、2016年卒の採用で使い方が変わってきたところはありますか?
株式会社システムサポート 武士垣外様:
2014年の時は、比較的学歴の高い学生にオファーを送っていたのですが、特に今年は学校に限らず送っています。学歴が高いからと言って、SEの特性があるとは限らないと感じていまして、学校に限らず優秀な学生は結構いますね。
i-plug 中野:
地方の学生にもオファーをされているとお聞きしましたが、オファーからどういった工程で選考されているのですか?
株式会社システムサポート 武士垣外様:
地方から採用したいと考えているので、地域を問わずに採用しています。東京に来るという学生は東京で説明会をしていますが、それ以外の学生はSkypeでやっています。会社説明、一次、二次面接はSkypeで。最終面接は来社していただいてお会いしています。Skypeで面接したときよりも実際に会ったときに印象が悪くなるという学生はあまりいないですね。印象が良くなる人の方が多いです。
【セミナーレポート】ダイレクトリクルーティングは新卒採用を変えるのか!?② へ続く