公務員。国や地方自治体などのもとで働くという点で、民間就職とは異なる魅力を持っています。
しかし、公務員になるには、公務員試験や面接など、民間就職とは違ったフローがあります。
合否が分かるまで時間がかかったり、公務員試験に万が一落ちた場合に就職留年も検討する必要があるなど、公務員だけを目指すことにリスクがあることも事実です。
そこで浮かぶのが「民間企業の就職活動」との併願についてでしょう。
では、限られた時間の中で、両方の対策をすることは可能なのでしょうか。また、民間企業でしかできないこと、公務員だからこそできること、その違いは何でしょうか。
今回は、「公務員と民間の就職活動を両立することは可能か」を、具体的な併願スケジューリングと共に、実例も交えながらご紹介していきます。
※この記事では、教員採用試験については記載していません。国家公務員・地方公務員の採用情報をメインに扱っていきます。
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目次
公務員試験と民間就職の併願は出来るの?
まず、そもそも疑問として出てくるのは「公務員と民間の併願は出来るのか?」ということではないでしょうか。そこでまずは、併願可否について調査してみました。
併願禁止のルールは存在しない
公務員採用試験は主に「国家公務員試験」と「地方公務員試験」の2つに分かれます。そしてそのどちらも、民間企業における採用試験との併願を禁止してはいません。国家公務員試験など、難関な試験を受験している人であっても、併願は珍しいことではありません。
現実的に併願は可能か
しかし、言うは易く行うは難し。実際に、併願をしている学生は事前に計画を立て、かつ、かなり忙しい日々を送っていたことが分かりました。詳細なスケジュールは「公務員試験と民間就職のスケジュール」で紹介しますが、戦略的なスケジュールの組み立てと、綿密な準備の両方が求められていきます。
民間就職と公務員試験の併願のメリット
併願は一定大変であることは前段でお伝えしましたが、一方で併願することでのメリットもあります。
就職先のリスクヘッジになる
何より大きいメリットはこの点でしょう。確実に就職先を決める上で、公務員以外の選択肢を持っておくことは、心理的な安心感にも繋がります。失敗したときの「保険」にもなりえますし、事前に内定を1つでも持っていれば、安心して公務員試験に臨める、というメリットもあります。
盲目的な進路選択を避けられる
上記メリットと相反するするように聞こえますが、公務員「だけ」に縛られていると、将来の人生の目的やありたい姿から遠ざかってしまう可能性もあります。世の中には様々な業種の企業が存在します。それらに対し理解を深めることは、本当に自分のやりたいことは何か、深く考えるきっかけにもなるでしょう。
それぞれの選考対策を互いに応用することができる
公務員試験の勉強は、民間就活のSPI等の試験に応用することが出来ますし、民間就活での面接の経験は、公務員試験の面接で活かすことができます。
また、公務員の「省庁・自治体研究」と民間の「業界研究・企業研究」は構造が近しいです。これらは、説得力のある志望理由を作成するための「自分のやりたいことと、その企業や自治体の共通点」を探す必要不可欠な下準備です。一見、異なる対策が必要と思いがちな下準備も、それぞれに必要なスキルを磨くきっかけとなります。
このように、選択肢を広げることで、リスクヘッジになるだけではなく、それぞれに補填しあう効果を得られることが分かったと思います。
民間就職と公務員試験の併願のデメリット
一方で、良いところばかりではありません。デメリットに関しても、きちんと認識しておきましょう。
時間が取られる
「民間就職の対策に時間を使いすぎる」「公務員試験の対策が遅れる」など、優先順位とスケジュールの立て方を失敗すると、無駄な時間を過ごしてしまう危険があります。
どっちつかずになる
公務員試験も、民間就職の面接も、いずれもしっかりとした対策が必要なものです。それにも関わらず、滑り止めとして「民間を受ける」という選択をすると、それぞれの対策が中途半端となってしまいます。
まとめると、最大のデメリットは「労力が分散される」ことでしょう。何を優先にすべきかなどTO DOリストを整理した上で綿密に予定を立て、スケジュールの遅延や、勉強や対策の遅れが起きないようにする努力が必要不可欠です。
公務員就職と民間就職の違い
では、公務員に就職することと、民間に就職することには、どのような違いがあるのでしょうか。それぞれの魅力を見ていきましょう。
公務員就職の特徴・魅力
公務員には、民間とは異なる、以下のようなメリットが存在します。
- 雇用の安定性がある
- 週休二日制で休みを担保した上で、更に有給が取れる
- 安定した収入を得つつ、プライベートな時間を充実させることができる
- 将来設計やライフプランを設計しやすい
- 社会的な信頼が高い(カードが作りやすい、ローンを組みやすいなど)
- 退職金やボーナスが安定している
- 手当が充実しており、福利厚生が良い
- 広く公共の役に立つことが出来る
公務員は利益を生むことが目的の組織ではないため、景気の動向によって倒産したり、解雇されるということは基本的にありません。
加えて、公務員は経済的な利益以上に、公共の福祉のために職務を行う立場にあります。国民全員や地域住民など、日本に居住する幅広い人の生活に貢献できるという点は、民間では得難い経験となります。
公務員就職で留意すべき点
上記のようなメリットがある一方で、年功序列型の賃金制度や評価制度である可能性が高く、自身の努力が出世や賃金に直結がしづらいという留意点もあります。ご自身の志向性をいま一度確認してみることをおすすめします。
また、公務員試験は民間企業より長丁場となります。公務員試験の面接が終わった後に民間企業への就職活動を始めるとなると、その他の学生が就活を開始する一般的な就活スケジュールからかなり出遅れて活動を開始することとなります。タイミング次第では、民間就職においても内定を獲得できないリスクが高くなるという危険性があることも留意しましょう。
民間就職の特徴・魅力
民間就職と呼ばれる、営利企業に入社することには、以下のようなメリットが考えられます。
- 成果に応じた評価・昇進・昇給を得やすい
- 利益を生み出す喜びを感じられる
- 様々な業種・職種があり、自分にあった形を模索することが出来る
自分の仕事の成果が、昇給や昇進に反映されやすいことは、民間企業ならではでしょう。また、自社の成長・拡大を楽しめたり、キャリアの選択肢が広いことも、民間企業の特徴といえます。
民間就職で留意すべき点
公務員と異なり、民間企業は将来潰れないという保証があるわけではありません。
終身雇用制度をとっている企業は、現在ではほとんどありませんので、活躍し続けるためには、絶えずスキルアップやビジネスの動向を確認していく必要があります。
公務員の種類
さて、ここからは、「公務員」の種類について、更に詳しく見ていきましょう。
公務員は大きく分けて「国家公務員」と「地方公務員」に分かれます。
この2つの違いは国・県・市区町村という枠組みの違いに現れ、これによって、サービスを提供する範囲や、国民・市民社会との距離が変わります。そのため、自分の希望するあり方・役割はどのようなものかを考え、どちらを目指すか早々に決める必要があります。
国家公務員
国家公務員は、中央省庁などの国家機関に勤務します。主に立法、司法、行政という政府の根幹を支える機関に採用され、国家の運営に関した業務を行います。
職種にもよりますが、日本全国に転勤することが多く、場合によっては海外にある日本の機関に転勤することがあるのも特徴の一つです。
国家公務員の職種
国家公務員には大きく分けて総合職と一般職があります。その他、一部の特別な職種として、専門職や特別職という職種もあります。
- 総合職:政策立案や企画など、高度な知識や技術を要する業務を行う職種
- 一般職:事務処理などの定型業務を担当する職種
- 専門職:国税専門官、財務専門官、海上保安学校学生など、専門性の高い職種
- 特別職:内閣総理大臣、国会議員、裁判官などの職種
地方公務員
地方公務員は都道府県の機関や県庁、市区町村の役所や役場などで勤務し、主に行政サービスを行う地方自治体に採用されます。地域住民に密着した業務ができることが特徴です。
地方公務員の職種
地方公務員には、大きく分けて、一般職、技術職、公安職、特別職の4つの職種があります。
- 一般職:都道府県庁や公共機関などでの事務職
- 技術職:「建設職」「電気職」「土木職」など、専門的な技術を活かした職種
- 公安職:警察官や消防士などの職種
- 特別職:都道府県知事や地方議員などの職種
また、その他にも、都道府県立、市町村立の病院・診療所の医師や看護師、公立学校で働く教職員や公立保育所で働く保育士保健所で働く保健師なども地方公務員です。
公務員試験の種類
公務員試験も、国家公務員・地方公務員で分かれています。その特徴を簡単に説明します。
国家公務員
国家公務員になるには国家公務員試験を受験する必要があります。地方公務員試験と比較すると問題の難易度が非常に高いです。また、試験の後に官庁訪問(いわゆる面接)があり、ここでもふるいにかけられます。
地方公務員
地方公務員になるためには、それぞれの自治体ごとに行われる地方公務員試験を受験する必要があります。地方公務員の試験は以下の3つのレベルに分かれています。
- 上級(大卒レベル)
- 中級(短大・専門学校卒レベル)
- 初級(高卒レベル)
※ただし、学歴とは厳密には紐付かないため、高卒の方が上級を受けることも可能です。
公務員試験と民間就職のスケジュール
ここまで、公務員の特徴や試験について見ていきましたが、もし公務員と民間の併願を考えている場合には、それぞれの志望先のスケジュールを把握する必要があります。
この章では、その具体的なスケジュールを、民間就職・公務員試験のそれぞれのスケジュールと重ねながら見ていきましょう。
地方/国家公務員のスケジュール
国家公務員も地方公務員も、一般的な選考スケジュールは以下の通りです。
- 2月:受験案内の掲載が開始
- 3月~4月:願書受付開始(インターネット経由が中心)
- 5~6月:1次試験と合格発表(1次試験は教養・専門・論文試験・専門記述試験といった筆記試験による選考)
- 6~7月:2次試験
- 7~8月以降:内定通知(職種によってばらつきあり)
- 10月1日:採用内定通知(職種によってばらつきあり)
上記はあくまで一般的なスケジュールです。
例えば「国家公務員採用一般職試験(大卒程度)」の場合、政令指定都市では、6月に1次試験を実施する自治体が多いですが、その他の自治体では7月~11月の期間に試験を実施する場合が多いです。
このように、職種や受けるエリアによってもばらつきがあります。
2次試験ともなると、個別面接、集団面接など、実施方法は様々となります。国家公務員一般職の場合、官庁訪問もあります。
関心のある自治体や職種の選考日程などは早めにホームページなどで情報を集めておきましょう。
民間就職のスケジュール
経団連の定める基本的な民間企業の選考スケジュールは、3月採用広報が開始され、6月から面接や選考が解禁となります。
ただし、これは表向きのスケジュールであり、実際には通年採用や早期選考を実施する企業が近年増えています。
民間企業のスケジュールについては、こちらの記事も参考にしてみてください。
興味のある業界や企業の採用スケジュールは、事前に調べておくことはもちろんのこと、常に最新の情報が入手できるような体制を整えておくようにしましょう。
公務員と民間の兼ね合い
上記でお伝えしたとおり、公務員試験は民間企業の内定が出始める頃に1次試験がスタートし、最終結果が出るまでに数ヶ月を要します。
そのため民間企業と公務員試験、両方の準備を行うとなると、5月〜7月のスケジュールが多忙となることが予想できます。
- 3年の夏などから早めに民間の情報収集を行い、早めに選考を受ける
- 情報収集を早めに行い、秋採用に臨む
- 遅めに選考を行う企業で具体的に受けたい企業を探す
など、前もってスケジュールを立てるなどの工夫が必要不可欠であることを覚えておきましょう。
公務員試験対策と民間選考対策の違い
公務員試験は筆記試験を突破しないと面接に進むことができないため、筆記試験対策がかなり重要となります。
民間企業の選考においてもSPIの受検などはありますが、大体の企業の試験の難易度は、公務員試験と比較すると低いでしょう。
ここからは、それぞれに必要な対策について確認していきましょう。
公務員試験対策に必要なもの
筆記試験・面接試験双方に対する対策が必要となります。
①筆記試験について
公務員試験は平均で1000〜1500時間の勉強量が必要といわてれおり、多くの塾や参考書などでも筆記試験の準備を本試験の1年〜1年半くらい前からスタートするよう推奨しています。
国家/地方公務員どちらも、職種によって試験に若干の違いがあるため、職種ごとの試験対策が必要となります。
(筆記試験の例)
- 国家一般職:一般論文試験
- 裁判所一般職:憲法記述・小論文
- 東京都Ⅰ類B:専門記述・論文
- 特別区Ⅰ類:論文
②面接試験について
こちらも民間就活同様に、志望動機やこれまでに力を入れてきたことや自分が公務員として活躍するイメージを具体的に伝える練習をする必要があります。
民間就職の選考対策で必要なもの
民間就職の選考でまず重要なのは、以下の3つです。
- 自己分析:「これまでの人生の棚卸し」「自分の強み・弱み」など
- 業界研究:「どんな業界があるか」「どんな業界が自分に適しているのか」など
- 企業研究:「どうしてこの会社で働きたいのか(志望理由の明確化)」など
また、情報収集や自己理解だけではなく、以下の対策も必要になります。
さらに、企業によっては「実地経験(インターンシップ、アルバイトなど)」が選考を受けるうえでの絶対条件となる場合もあるので、事前の確認が必要です。
ただし、上記でお伝えしたとおり、SPIは公務員試験の筆記試験と重複したり、グループディスカッションは公務員の集団討論とほぼ同じ形式だったりするため、併願する場合であっても、その対策全てに取り組む必要はないと言えるでしょう。
公務員と民間就職併願した人の就活経験談
ここまで、スケジュールなどの具体的な情報をお伝えしました。ここからは、実際に併願した学生の体験談をお伝えします。
今回お話を聞いたのは、民間企業の就職活動との両立を行いながらも、最終的に公務員試験に合格し、就職を決めたSさん(4年生・文系/法学部)です。
両立に成功したSさん(4年生・文系/法学部)のケース
ー就活はどうでしたか?
ー何が成功要因だったと思いますか?
ただ、民間と公務員を併願する場合は、両者の時間配分がとても大事です。私の場合、、まだ試験勉強が追い込みの時期に入っていない3年生の夏ごろに、民間企業のインターンシップに参加し、相性の良い企業や働き方などについて考える機会を作りました。
「自分にあった環境は何かを広く検討したこと」は成功要因の1つであったと思います。
ー公務員と民間、どのように意思決定していきましたか?
ーとはいえ、民間と公務員の両立は大変だったのではないでしょうか。どのように対策しましたか?
ースケジュールに関して、気をつけていたことはありますか?
ー最後に、今後併願を迷われている方にメッセージをお願いします。
結論:公務員試験と民間就活の併願はできる!
最後の体験談でもあったように、公務員と民間の併願は
- 公務員試験への事前準備
- 民間のスケジュールとの過度なバッティングを避ける
- 公務員・民間で共通する対策は省く
などの工夫によって「可能」であることが分かったと思います。
とは言え、公務員であれ、民間企業であれ、社会人へのファーストステップであり、
「どういうキャリア・環境が自分にあっているのか?」
「社会にどういうインパクトを与えたいのか?」
「どんな人と一緒に働きたいのか?」
これらの問いに答えを出す必要がある点においては、どちらも変わりません。
また実際に、中途採用なども含めて考えてみると、中途で公務員になる選択肢も存在し(逆もしかり)、現代においてその二分論は、徐々に失われつつあります。
だからこそ、一度は公務員という選択をしたとしても、「それはなぜだろう?」と考えることが大事ですし、民間企業まで広く検討することで、社会に対する理解度を高めたり、自己分析につながったりといったメリットも発生します。
なにより、満足度の高い選択をすることが出来る可能性が高まるのではないでしょうか。
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インタビューのSさんのように、公務員試験が始まる前に民間企業の選考を受け、先に内定を獲得できていると、時間的にも精神的にも余裕を持って、公務員試験を受けることができます。
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なによりも、登録しているプロフィールを見た企業からオファーが届くので、公務員試験対策と並行して、民間就活を進めることができます。
今回の記事は以上です。
公務員と民間就職の併願について、メリット・デメリット、併願する場合のスケジュールなどについてお伝えしました。
結論として併願は可能ですが、多忙になることは間違いありません。
- 公務員/民間を検討するリミットや判断軸
- スケジュールと照らした上での現実可能性
などについて熟考したうえで、、現時点で自分の人生にとって何がベストな選択かを冷静に考えてみましょう。
自分にあった就職先・職種が選べるよう、プランを立て、考え抜いていく過程こそが「就職活動」であると心得て、取り組んでいきましょう。