工学部の就職先|人気の業界・職種や就職活動のポイント

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「工学部に人気の就職先を知りたい」
「何に気をつけて就職活動を進めるべきかよく分からない」

就職活動中、またはこれから就職活動に臨む工学部生のなかには、このような悩みを抱えている人が多いのではないでしょうか。

専門性の高さを利点に就職先を見つけやすい工学部ですが、本当に今の専門分野で就職先を選択していいのか、他の分野で自分の力を活かせる業界や職種がないかと考えている学生は少なくありません。

就職先を考える際は、今の専門性を活かせる分野かどうかも大切な要素の1つですが、何よりも自分が納得して就職先を選ぶことがそれ以上に重要です。少しでも就職先に迷いがある場合、他の工学部生がどのような進路選択をしているのか知ることから始めましょう。

この記事では、工学部ならではの利点や特に人気の就職先を紹介します。具体的な職種と就職活動のポイントも紹介するので、ぜひ参考にしてください。

工学部の就職事情

「工学部は就職に有利」という話を耳にする機会は多いと思いますが、実際のところはどうなのでしょうか。学部系統別実就職率のデータをもとに、ほかの学部と比較しながら工学部の就職事情を確かめてみましょう。

就職率はほかの学部に比べて高い

大学通信ONLINEによると、理工系学部の平均実就職率は92.2%でした。これは資格取得を主としない学部(看護・保健・医療系のように資格が取得できる学部以外)のなかで最も高い数値です。

20年3月卒の平均実就職率が88.8%と比較しても工学部の就職率は平均を上回っており、就職率の高さがうかがえます。

※実就職率=就職者数÷(卒業者数-大学院進学者数)×100

就活市場でも工学部生は需要が多い

平均実就職率のデータが示すとおり、就活市場で工学部生は需要が多い傾向にあります。

その要因の一つとして考えられるのが、工学部の学びと日本の基幹産業であるモノづくりの関連性が高いためです。市場規模が大きいモノづくり産業で知識やスキルを活かしやすいために、ほかの学部以上に多くの就職先が用意されています。

また、情報技術の発展と高度化も、工学部の就職活動に好影響を及ぼしています。各業界でこぞってデジタル化が進められているため、機械工学や電子工学などの知識を持つ人材が重宝されているのです。

大学院に進む工学部生も多い

就職に有利な工学部ですが、大学院進学を選ぶ学生も少なくありません。

文部科学省の学校基本調査によると、令和3年3月の工学部卒業者数は8万6777名で、そのうち3万2021名が大学院に進学していました。割合で表すと36.9%と、約4割の工学部生が就職ではなく大学院進学を選んでいることが分かります。

大学院に進む理由の一つは、より深い知識を身につけるためです。研究職や技術職などの専門職への就職を目指す場合、大学院でより専門性の高い知識を身につけることができれば、選考で有利に働くことがあります。そのため、より専門性の高い知識を得るために大学院進学する学生も多いです。

工学部生に人気の就職先一覧〜業界〜

ここでは、工学部生に人気の就職先の例を紹介します。自分の専門分野でなくても、工学部で培った力を活かせる業界はありますので、まずは視野を広げて就職先を知っておくことをおすすめします。

【工学部に人気の業界】

  • ①自動車業界
  • ②電機・機械メーカー
  • ③鉄鋼業界
  • ④エネルギー業界
  • ⑤建設業界
  • ⑥医薬品業界
  • ⑦化学業界
  • ⑧通信業界
  • ⑨IT業界
  • ⑩官公庁・公務員

①自動車業界

製造業のなかでも、特に人気の高い就職先が自動車業界です。「市場規模が大きいために経営基盤が安定している」「大手自動車メーカーであればグローバルな活躍ができる」などの理由から人気を集めています。

自動車業界の企業は主に、自動車部品メーカー、完成車メーカー、自動車販売会社、自動車関連サービス会社の4つです。そのなかで、トヨタ自動車や日産自動車に代表される完成車メーカーが人気の就職先となっています。

自動車業界について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

②電機・機械メーカー

電機・機械メーカーは、電子部品、重機、家電製品などを製造する業界です。機械工学や電気・電子工学を学んだ工学部生が志望するケースが多く見られます。

電機・機械メーカーの代表的な職種は、研究・開発、設計、生産技術、品質管理、営業などです。冷蔵庫やテレビのように、目に見える形として残る製品の開発と販売に携われることがやりがいになります。

③鉄鋼業界

鉄鋼メーカーや、金属卸事業を展開する企業を含む鉄鋼業界も工学部生に人気があります。鉄鋼業界の役割は、鉄鉱石や原料炭をもとに鋼材製品を生産し、自動車メーカーや電機・機械メーカーなどに届けることです。

BtoBビジネスを中心としているため世間的な知名度は高くありませんが、事業規模そのものは非常に大きい傾向にあります。モノづくりの最上流工程を知りたい人や、スケールの大きな仕事に関わりたい人に最適です。

④エネルギー業界

エネルギー業界は、ガス・電気・石油などのエネルギーに関わるサービスを提供する業界です。エネルギー安定供給のための仕組みを維持・管理する技術職の人たちと、実際にサービスを消費者に提供する販売管理職の人たちが活躍しています。

エネルギー業界で働く魅力は、エネルギーの供給を通じて人々の生活のインフラを支えられることです。自分の仕事が社会の役に立っている実感を得やすいことから、就職先として高い人気を誇っています。

⑤建設業界

建設業界はマンションやビル、住宅の建設をはじめ、プラントの開発や都市開発など、幅広い事業を手がける業界です。「スケールの大きな仕事に携われる」「自分の携わった建物が形に残る」などの理由から人気を集めています。

安全性への配慮が求められる仕事が多いために、関連資格が多いのも建設業界の特徴です。なかには資格がないと従事できない仕事があるため、興味のある仕事にどんな資格が必要なのかしっかりと確認しておきましょう。

建設業界について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

⑥医薬品業界

化学系を専攻している学生を中心に医薬品業界も人気があります。医薬品の研究開発から販売まで手がける医薬品メーカーや、一般家庭・医療施設向けの医療機器を扱う医療機器メーカーが代表的な就職先です。

医薬品業界といえば薬学部の就職先というイメージがあるかもしれませんが、広く浅く学ぶ学生が多い薬学部に対し、工学部は狭く深く学ぶ学生が多い利点があります。特定の分野の深い知識があれば、薬学部出身者が多い医薬品業界でも十分活躍できるでしょう。

⑦化学業界

自動車やコンピュータ、医薬品、化粧品などの製品のもとになる化学製品を作るのが化学業界です。事業範囲が広い化学業界では自分の学びを活かせるフィールドを見つけやすいため、就職先として人気が集まっています。

化学業界の仕事に特に適応しやすいのは、応用化学や材料工学を学んだ学生です。化学と工学両方の要素を持つ学科の出身者は、研究開発から事務職まで幅広い職種で活躍できるでしょう。

⑧通信業界

固定電話やパソコン、スマートフォンを利用するためのインフラを扱う通信業界も人気の就職先です。NTTやソフトバンク、KDDI、ドコモなどが特に人気の企業として挙げられます。

通信業界と関連性が高い工学部の学科は情報工学です。ハードウェアの仕組みからソフトウェアの作り方まで広く学ぶ情報工学の知識があれば、通信業界の仕事内容に適応しやすいでしょう。

⑨IT業界

通信業界と同様に、情報工学を学んでいる工学部生を中心にIT業界が人気の就職先となっています。IT業界は、ハードウェアやソフトウェアなどのコンピュータ関連技術全般を取り扱う業界です。

ITの需要はあらゆる業界で高まり続けているため、今後の将来性が見込めます。常に最先端の技術に触れたい新しいもの好きな人はもちろん、仕事に将来性を求める人にも最適な就職先です。

IT業界について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

⑩官公庁・公務員

業界ではありませんが、官公庁や地方公共団体に務める公務員も人気です。「労働環境が整っている」「地域の再生や発展に直接貢献しやすい」などの理由から人気を集めています。

ひとくちに公務員といっても多様な職種があるなかで、特に工学部との関連性が高いのは技術系公務員です。技術系公務員は理系の知識を活かして国や地方公共団体の政策に携わる職種で、工学や建築、土木、化学、電気・電子、機械などの採用区分が用意されています。

工学部に人気の就職先一覧〜職種〜

自分に合いそうな業界をある程度絞り込めたら、具体的な職種についても考えてみましょう。工学部は多様な職種で活躍できますが、就職先として特に人気なのは以下の5つの職種です。

【工学部に人気の職種】

  • ①研究職
  • ②SE・プログラマー
  • ③機械設計・開発職
  • ④サービスエンジニア
  • ⑤営業職

①研究職

研究職は新製品の開発や既存製品の改良、新しい技術の構築を目的に、さまざまな研究に取り組む職種です。インフラ系や機械系など、工学部の各分野で学んだことを活かして研究職に就く学生が多く見られます。

研究のテーマは業界によって異なり、例えばIT業界ではAI研究やロボット研究などをテーマにしています。いずれの業界の研究職も高い専門性が求められることから、大学院卒業生が多いのが特徴です。

②SE・プログラマー

理系職として人気のシステムエンジニアやプログラマーは、工学部卒業生と大学院卒業生どちらにも人気です。情報工学との関連性が高く、主にIT業界や電機・機械メーカーが就職先となります。

ITの需要があらゆる業界で高まり続けていることから、システムエンジニアやプログラマーに代表されるIT系の職種は人手不足の状態にあります。今後も需要が急激に減少する可能性は低く、将来性を見込める職種といえるでしょう。

③機械設計・開発職

機械設計・開発職は自動車やパソコン、家電製品などさまざまな製品の設計と開発に関わる職種です。機械工学や電気・電子工学との関連性が高く、製造業に関わる業界を中心に活躍しています。

具体的な就職先として挙げられるのは、自動車業界、電機・機械メーカー、建設業界、IT業界などです。自動車業界であれば自動車に使われる部品や技術の開発、建設業界であれば安全性の高い住宅構造の設計など、業界によって取り組む内容は異なります。

④サービスエンジニア

サービスエンジニアは、機械製品の設置・保守・修理などを担当する職種です。特に、情報工学の専門知識と技術を有している工学部生に向いています。

名称はシステムエンジニアとよく似ていますが、システムエンジニアはシステムの設計開発を手がける技術職なのに対し、サービスエンジニアは技術営業職と呼ばれる仕事です。製品の導入やアフターフォローが主業務となるため、営業職に近い仕事をしたい人に最適です。

⑤営業職

製品の知識を活かして、物やサービスを売る営業職に就く人もいます。技術職は顧客の反応があまり見えない職種が多い一方、顧客の反応をダイレクトに感じられるのが営業職の魅力です。

営業職のなかでも特に工学部での学びを活かしやすいのが、技術営業職の一種であるセールスエンジニアです。セールスエンジニアは技術的な知識をもとに営業をサポートする仕事で、特定分野の知識と営業スキルの両方を活かせます。

理系の文系就職のメリットとデメリットについては、こちらの記事を参考にしてください。

工学部の就職活動のポイント

就活市場での需要が高いとはいっても、油断して対策を怠ったのでは内定獲得には至りません。工学部の就職活動ならではのポイントと注意点を知り、入念な対策を進めていきましょう。

早期から情報収集を始める

どの業界にも共通して言えることですが、就職活動では早めの準備が大切です。自分の興味がある業界の仕組みや詳しい仕事内容、企業の採用スケジュールなど、対策に必要になる情報を早いうちから集めていきましょう。

特に、工学部の場合は大学3・4年次になると研究で忙しくなり、就職活動に手が回らなくなる人が少なくありません。ほかの学部以上に徹底した時間管理が重要になるため、後回しにせず早めに情報収集を始めてください。

早めに情報収集を始めておけば余裕をもって対策を進められるうえ、インターンシップの開催日程や、選考の応募締め切りなどの重要な情報を見逃さずにすみます。

以下の記事を参考にして早期内定を目指しましょう。
早期内定を獲得する方法を解説!早期選考を受けるメリットなども紹介

インターンシップに参加する

技術職・総合職問わず、業界・企業・業務への理解は必須です。企業のホームページや説明会で得られる情報には限りがあるため、リアルな情報を自分の目で確かめられるインターンシップにぜひ参加してみましょう。

【インターンシップ参加のメリット】

  • 早い段階から業界・企業・業務への理解を深められる
  • 職場の雰囲気を確かめられる
  • 業務の流れを把握できる
  • 本選考の練習になる
  • 早期内定につながる可能性がある

大学の授業や研究、アルバイト、サークル活動に取り組むなかで時間を作るのは難しいかもしれませんが、インターンシップには1日で終わるタイプのものもあります。雰囲気を把握するためにも、まずは気軽に参加できるものからチャレンジしてみてください。

インターンシップの種類や開催時期についてはこちらの記事でも解説しています。
就活インターンシップ大全|2025卒2026卒の選考時期など紹介

研究室のつながりも活かしてOB/OG訪問する

研究室に所属している人は、そのつながりをうまく活用してOB/OG訪問をしてみましょう。インターンシップとOB/OG訪問を組み合わせることで、さらに業界・企業・業務への理解が深まります。

【OB/OG訪問のメリット】

  • 業界・会社の実情が分かる
  • 実際に働いてからのギャップを聞ける
  • キャリアを参考にできる
  • 就職活動のアドバイスをもらえる
  • 面接の練習になる

研究室に所属していない場合でも、OB/OGを探す方法はあります。こちらの記事を参考に、訪問に対応してくれるOB/OGを探してみましょう。
OB・OG訪問の探し方や流れを徹底解説

まとめ

今回は工学部の就職事情や人気の就職先、就職活動のポイントを紹介しました。

工学部生は就活市場での需要が高いだけに、就職先の選択肢は多岐にわたります。志望業界や企業が決まらないまま何となく就職活動を進めてしまう失敗を避けるためにも、目標をしっかりと定めることが大切です。

また、工学部の場合は、就職活動と大学での研究をうまく両立する必要があります。なかには研究が忙しすぎて就職活動に手が回らなくなる学生が見られるため、落ち着いて準備を進められるよう早めの情報収集を心がけましょう。