Web面接の導入で、採用効率を上げる。
〇Web面接は、非接触の面接を可能にする
〇Web面接が選考方法の主流のひとつになることが予想される
〇2大メリットは「遠隔地在住求職者の応募・面接機会創出・増加」「面接準備に要する労力・時間の効率化」
従来、面接といえば学生と企業の面接官とが直接顔を合わせて行うのが一般的な方法だったが、インターネットの普及・高速化が進んだ昨今、非接触で行うWeb面接に注目が集まっている。とくに2020年初頭から世界中を震撼させている新型コロナウイルス禍での自粛要請により、対面での面接ができない状況から、Web面接を導入する企業が増加※1している。
※1)HR総研:2020年5月採用担当者アンケート調査「採用工程や手法の変更内容」
また、Web面接がこのまま選考方法の主流のひとつになることも予想※2される。導入を急いで検討される採用担当者のため、今回はWeb面接導入における「準備」「メリット」「実際のオペレーション」について解説する。
※2)i-plug調査:2022年卒に対する採用活動におけるオンライン手法の導入
導入企業が増加しているWeb(オンライン)面接
Web面接とは
Web面接とは、インターネットを通してPCやスマホを使用した面接を行うことだ。距離が離れていても面接ができるので、これまでは遠隔地在住学生の移動負担を軽減するために活用することが多かった。しかし、2020年は新型コロナウイルス感染拡大防止の外出制限の影響で、非接触で面接可能なWeb面接を多くの企業が導入している。
Web面接には大きく分けて2種類ある。一つは、対面での面接をオンラインに変更したタイプで、面接開始時間は企業から指定され、面接官とはモニター越しに面接をする(ライブ型)。もう一つは、企業が指定するテーマに沿って回答する模様を録画して登録するタイプで、学生は指定された期間内であれば、いつでも自分の好きな時間に面接を受けることができ、何度でもやり直しができる(動画型)。「AI面接」と呼ばれるタイプは、後者に含まれる。
Web面接導入企業の増加
Web面接は、場所や時間にとらわれない「いつでもどこでも」を可能にし、今まで獲得できなかった面接の機会を創出する新たな手法として注目されている。そのため多くの企業がWeb面接導入に動いている。
前出のHR総研の調査※1(2020年5月、採用担当者アンケート調査)では、採用工程や手法の変更をした(予定含む)企業66%のうち、「来社を伴わない面接への変更」を行った企業が75%に達している。全体から見ても約半数の企業が「来社を伴わない面接=Web面接」を導入した(予定含む)という結果となっている。
働き方改革の一環として導入が奨励されていながら、これまで一部のITベンチャー企業でしか行われていなかったテレワークの存在が、今回の新型コロナウイルス禍の外出自粛要請に呼応して多くの企業が採り入れたのと同様に、Web面接も非接触の面接手法として、一気に幅広い企業が採用し始めたのだ。
Web面接導入のメリット
遠隔地在住求職者の応募・面接機会創出・増加
(株)リクルートキャリアの調査※3によると、Web面接を導入した理由で、「自社と離れた地域・場所に住む候補者と面接するため」が61.4%、「オンラインの方が候補者と日程調整がしやすいため」が39.0%、「より多くの面接枠を確保するため」34.5%という結果が出ている。
※3)Web面接を導入済(これから導入も含む)、または導入検討している採用担当者からの回答。複数回答 n=562
採用コストの削減
Web面接は、これまで遠隔地在住者の面接を行うために採用担当者が地方に出向くといった移動時間・人件費コスト、交通費などの削減に寄与していたが、求職者側から見ても同様で、時間的ロス、交通費負担がない分、応募がしやすい状況をつくっている。
災害や有事の際にも選考可能
新型コロナウイルス禍の緊急事態宣言下、各種自粛要請を例にとると、Web面接であれば面接官も学生も企業に出向かなくても、自宅にいながら面接を実施できる環境が用意できることが証明された。これは、IT・通信系のライフラインが寸断されない限り、災害・有事の際にも選考可能であることが証明されたといってよい。
Web面接を行うためのポイント
Web面接ツールの選定
1.目的の洗い出し
Web面接ツールをどのような目的で使うかによって、必要な機能や見るべきポイントが異なる。まず、何のためにWEB面接ツールを導入するのか目的を明確にする必要がある。「選考辞退防止のために、早期に求職者と接触を図りたい」「採用コストを削減したい」など、さまざまな目的があると考えられる。
2.必要な機能の洗い出し
カメラとマイク、スピーカーを搭載したPCかスマートフォンがあり、ネット環境がそろえばWeb面接は可能だが、動画作成やWebページ作成、被面接者の評価などさまざまな機能のついたソフトが出ているので、目的を全うするためにどんな機能が必要かを洗い出すことが大切だ。不要な機能までついて使い勝手が悪くなることは避けたい。
3.予算の見積もり
Web面接ツールの料金形態はサービスによって異なる。利用する人数や頻度ごとに価格が決まる従量課金制や、どれだけ使っても定額の月額料金制など、さまざまなものがある。自社の規模や利用人数・頻度などを想定したうえで、価格を比較することが必要となる。
また、ほとんどのツールは価格表が公開されているが、自社の使用ニーズと整合するとは限らない。場合によってはオプションを付加するケースもある。複数のツール比較を含めてベンダーに見積りをとることを勧める。
4.無料トライアル体験
ベンダーによっては、無料トライアル体験ができるので、ぜひ利用してほしい。トライアルする場合、採用担当者一人や二人で行うのではなく、利用が想定される担当全員が使ってみることが大切だ。さらにWeb面接だけでなく、面談、オンライン会議・研修などさまざまな用途を想定している場合は、複数の部署をまたいだ多くの社員でトライアルを重ねることを勧める。また、通信の安定性が変わる場合もあるので、社内の複数の場所でチェックしてみたい。
人材採用という企業の要を担うためのツール選択であるから、役員クラスにもトライアルに参加してもらうと、導入コンセンサスが得られやすい。
Web面接の環境づくり
Web面接では、面接を受ける応募者も不慣れな場合が多い。企業側で応募者が面接に全力で臨める環境を整え、不安を解消することが重要である。
・どのようなWebツールを使っているか
・通信環境は整っているか
・ビデオ会議画面への入室方法
・当日の面接官の情報
・途中で通信が途切れた、ビデオ会議に参加できなかったときの連絡方法 等
これらの事前情報を丁寧に伝え、応募者に安心感を持ってもらうことが大切だ。
候補者の選考・見極め
実際にWeb面接を行うにあたり、面接官にも不安はある。
「Web面接では求職者の熱意は伝わりにくいのでは?」「オンラインで本当に相手の人柄が分かるのだろうか?」と。
応募者の選考・見極めに不安を感じる面接官にお勧めしたいのは、「構造化面接法」「コンピテンシー面接」といった面接手法の実践的な面接トレーニングだ。その場の雰囲気だけで選考してしまわないように、トレーニングを重ねることが大切だ。
まとめ
「面接は会って行うもの」という従来の常識が変わりつつある今、Web面接のメリット・デメリット、ポイントを把握した上で導入したい。
○新型コロナウイルス禍の自粛要請をきっかけにWeb面接を導入する企業が増えている。
○遠隔地の採用機会創出、コスト削減などのメリットがあり、今後も面接手段の主流のひとつになることが予想される。
○導入にあたっては、ツールの選定、環境づくりなどのポイントを押さえる必要がある。