従業員満足度とは?調査方法や指標、好事例などをわかりやすく解説!
「従業員満足度って?」「どのように調査するの?」など従業員満足度について悩んでいる人事担当者もいるのではないでしょうか?
少子高齢化による深刻な人材不足を背景に、従業員満足度を重視する企業が増えています。ここでは、従業員満足度をわかりやすく説明するとともに、従業員満足度のアンケート調査方法や高めるための取り組みなどを紹介します。
目次
従業員満足度とは
従業員満足度とは、従業員が働くうえでの環境に対する満足度をいいますが、ここでは、従業員満足度の定義や構成する要素や課題を説明します。
従業員満足度の定義
従業員満足度(Employee Satisfaction)とは、従業員が働くうえで職場環境や働きがい、人間関係などに対する満足度を指します。
従業員満足度は、顧客満足度(Customer Satisfaction))に対比される概念です。
厚生労働省の調査では「従業員と顧客満足度の両方を重視する企業」は、「顧客満足度のみを重視する企業」と比べて業績が向上しており、人材の質・量ともに確保できている割合も高いとの調査結果がでているように、業績向上を図るには、顧客満足度とともに従業員満足度を重視することが求められます。
従業員満足度を高めることで個人や組織のパフォーマンスを向上させ、顧客満足度が高まり、業績の向上を図ることができるのです。
従業員満足度を構成する要素や課題
従業員満足度の構成要素は、ハーズバーグの二要因理論における「衛生要因」と「動機付け要因」から構成されるといえます。
「衛生要因」は職務環境に関するもので不足すると不満につながる要因であり、「動機づけ要因」はより高い業績へ動機付ける要因であると説明しています。
(リーダーシップインサイト「ハーズバーグの二要因理論」)引用・参考
従業員満足度を向上させるには、不満要因を取り除く「衛生要因」の改善を優先し、次ステップとして優秀な社員の意欲を高める「動機付け要因」に取り組むことが効果的です。
二要因理論の詳しい説明は、「リテンションマネジメントとは?事例や自社に適した進め方を解説!」をご確認ください。
従業員満足度を高めるには、魅力ある職場づくりをすることが求められますが、厚生労働省では「従業員の視点に立った取り組み」が必要と整理しています。
次に、従業員の視点から、どのような課題があるか、二要因理論の分類も含めて表にしていますので、参考にしてください。
従業員満足度が企業に及ぼす影響
従業員満足度が高まれば、顧客満足度も向上し、企業業績に好影響を与えるこが期待できます。ここでは、従業員満足度が企業に及ぼす影響を説明します。
雇用管理改善の取組の影響
厚生労働省の調査結果によると、「雇用管理改善の取組は、従業員の意欲・生産性向上や、業績向上・人材確保につながる」との分析結果を示しています。
ただし、企業としては「従業員満足度」と「顧客満足度」の両方を重視するのが重要であり、どちらか一方を重視している企業と比較して、両方を重視する企業の業績が高い結果が出ています。
また、雇用管理改善に継続的に取り組むことが大事であり、取り組み期間が短い企業と比較して、取り組み期間が長い企業が業績や生産性の向上、人事目標の達成度合いが高い結果となっています。
このように、従業員満足度を高めるための雇用管理改善の取り組みは、企業業績に好影響を与えますが、顧客満足度と従業員満足度の双方を重視することがポイントです。
(厚生労働省「今後の雇用政策の実施に向けた現状分析に関する調査研究事業報告書」)より参考
従業員満足度が高い企業の好事例
ここでは、従業員満足度が高い企業はどのような取り組みをしているのか、厚生労働省が公開している「人材確保に「効く」事例集」を用いて事例を解説します。
配置・配属に関する取組
この事例は、若年層の早期職防止のため、同年代の同僚と交流できる機会を作り出した事例です。
【課題内容】
特に若者は、採用された職場にいろいろと相談できる同年代の同僚がいるかどうかが、職場定着の鍵となる場合が多い。
【対応策内容】
同年代の同僚と交流できる機会を作り出す。具体的には、同年代の同僚がいる部署に配置できる場合は、できるだけそのようにする。もしそれが困難な場合は、試用期間・研修期間中だけでもそのように配置するか、研修やレクリエーションなどで同じグループにするなどで交流機会を作り出す。法人内に複数の小規模事業所がある場合は、初任研修を同年代合同で行う。
【結果】
早期離職者が少なくなった。
この事例の対応としては、新人をなるべく同年代と同じ部署に配置するか、困難な場合は研修等で同年代と交流できる機会を作り出すことで、同年代の同僚同士で相談できるコミュニティの場を設けています。
同年代の同僚同士で相談できる場を設けることで、悩みを一人で抱えることなく、早期離職の防止を図ることができます。
少人数の職場の場合は、同年代の同僚がいないというケースもあると思いますが、そのような場合は同年代に拘わらず、若者が悩みなどを相談しやすい環境を醸成することがポイントです。
評価・処遇に関する取組
この事例は、専門職のスキルが高い者にポストを与えることで、従業員が将来展望を持てるキャリアパスを設けた事例です。
【課題内容】
社内に上級ポストがないため、専門職としてスキルが上がっても、地位を上げる、昇進させるなどの処遇の向上ができない。
【対応策内容】
専門職の処遇として、「主任」のポストを新設する。
【結果】
「主任」のポストを新設した。自薦・他薦を問わず対象者を募集し、5名を新規に「主任」として任命した。主任を参加メンバーとする会議を毎月1回開催し、事業所内の改善点を検討したところ、主任同士での意見交換が積極的に行われるようになった。
この事例の対応としては、上位ポストはマネジメントを担う管理職がない場合、専門職の者がマネージャーではなくスペシャリストとして、上位ポストを目指すことができるポストを新設しています。
スペシャリストがマネージャーになることによって、パフォーマンスが極端に落ちるといったことは良くありますが、長期にスペシャリストとして活躍できるキャリアパスを設けることで、従業員と企業の双方にとって、パフォーマンスを最大化することが期待できます。
少人数の職場の場合は、同年代の同僚がいないというケースもあると思いますが、そのような場合は同年代に拘わらず、若者が悩みなどを相談しやすい環境を醸成することがポイントです。
教育訓練・能力開発に関する取組
この事例は、教育役を育成しOJTを適切に行うための仕組みを作ることで、定着しやすい新人教育体制を整えた事例です。
【課題内容】
新人の教育役が適切なOJTを行わないと早期離職に繋がる。
【対応策内容】
採用直後の者は、新しい仕事にも慣れておらず、誰かに教えてもらう必要があるが、その教育の仕組みが整っておらず、「見よう見まねで自然に覚えろ」「わからないことがあったら聞け」という姿勢の場合がある。そのため採用者は「仕事を覚えられない」「期待されていない」「受入れられていない」と感じて早期離職に繋がっている。
このため、新人の教育役を育成した上で、丁寧なOJTを行わせる。
【結果】
新人の教育役に対して、どのように教育するかを管理者がよく指導して、教育役として育成することが大切。その上で、その教育役に採用者に対する丁寧なOJTを行わせる。
OJTの状況は教育役に任せっきりにせず、管理者が点検する。
この事例の対応としては、教育役の育成をするなど教育の仕組みを整えていますが、とくに、新人が放置されることがないように、教える風土を醸成することがポイントです。
教える風土を醸成することによって、親身に教育を受けた新人が先輩社員となり、次の新人を積極的に教育するという好循環が生まれます。教育役に対しては、単に指導方法を教育するだけではなく、新人を教育することの重要性を理解してもらうことが肝要です。
従業員満足度の指標とアンケート調査
自社の従業員満足度を高めるためには、どのような指標を図るか、どのように調査していくかが重要です。ここでは、従業員満足度に関する指標とアンケート調査の実施方法を説明します。
従業員満足度の指標
従業員満足度に関する指標は、従業員満足度と従業員エンゲージメントの2つがあります。次にそれぞれ説明します。
従業員満足度(ES:Employee Satisfaction)
従業員満足度は、従業員が職場環境や働きがい、人間関係などにどの程度満足しているかを示す指標です。
具体的には、働きやすい職場環境や休日など福利厚生、コミュニケーションがとりやすい人間関係など働く環境の満足度合いです。
従業員エンゲージメント(eNPS:employee Net Promoter Score)
従業員エンゲージメントは、従業員が組織に対してどの程度愛着などがあるかを示す指標で、従業員ロイヤリティともいいます。
具体的には、組織が向かう方向に従業員が共感し、従業員が組織にどれだけ貢献したいかの度合いといえます。
なお、eNPSから「e」を抜いたNPS(Net Promoter Score)は、企業に対する愛着や信頼の度合いを数値化したものであり、顧客ロイヤリティを指します。
従業員満足度と従業員エンゲージメントの両者の違いは、従業員満足度は「満足度」の指標であり、従業員エンゲージメントは「貢献度」の指標であることです。従業員満足度が高くても、必ずしも組織に貢献するとは限らないことに注意が必要です。
従業員エンゲージメントを詳しく知りたい方は、「従業員エンゲージメントとは?重要性と測定方法について紹介」を参照してください。
従業員満足度のアンケート調査方法
従業員満足度をアンケート調査するには、「仮説の設定」「調査項目の設定」「調査方法の決定と実施」「振り返り」の手順が必要です。
ここでは、従業員満足度のアンケート調査方法を説明します。
【STEP1】仮説の設定
従業員満足度向上のため、社員定着率の推移などの数値項目から自社の課題を抽出し、仮説を立てます。
例えば「若年層の離職率増加」に対しては、「若年層が相談できる環境がない」「先輩社員が忙しく放置されている」「教育体制が整っていない」のように設定します。
【STEP2】調査項目の設定
仮説が正しいかの「検証項目」と施策の方向性を確認する「施策項目」に大別して項目設定します。
例えば「若年層が相談できる環境がない」の仮説の検証項目は、「あなたの周りには相談できる人はいますか」、施策項目は「若年層の社員に先輩をつけ、仕事に関する相談や支援を行うメンター制度の導入は有効と感じるか」などです。
なお、メンター制度を詳しく知りたい方は、「メンター制度のメリット・デメリットは?デメリットを防ぐ実践方法」をご参考ください。
【STEP3】調査方法の設定と実施
調査の頻度、調査ツールなどの調査方法を決定します。
調査の頻度は、半年か1年程度の長期スパンで行うセンサス、1週間か1カ月程度の短期スパンで行うパルスがありますが、従業員満足度を図るには、短期スパンで行う必要はありませんので、センサスによる1年に一回程度の実施が適当です。
調査ツールは、収集や集計を効率化するため、クラウドツールを利用することが望ましいと思いますが、自社の環境に合わせて検討してください。
自社で環境を整備する場合は、無料でアンケートの作成や回収、分析ができるGoogleフォームを活用することが考えられます。また、従業員満足度を計測するクラウドサービスも様々提供されていますので、より効率的に行いたい、高度な分析をしたいといった場合は、無料で始められるハイジ(組織サーベイツール)などもありますので、参考にしてください。
また、アンケート集計例を「リテンションマネジメントとは?事例や自社に適した進め方を解説!」で紹介していますので、合わせてご確認ください。
【STEP4】振り返り
調査の結果、仮説が正しかったか、施策の方向性などの調査結果を分析します。
仮説が正しくない結果であれば、他の仮設を立て次の調査につなげる、あるいは、調査項目で自由項目欄を設け、課題を記入させることも有効です。施策の方向性については、分析結果から望ましい施策を検討し、施策の実施につなげます。
従業員満足度の調査の留意点
従業員満足度の調査の目的をしっかりと定めておくことが成功の鍵となります。
従業員満足度の調査を行うことが目的となってしまうことも少なくありませんが、しっかりと目的を定めて「調査」「分析」「振り返り」「施策の実施」のPDCAサイクルを回していくことで、従業員満足度向上につなげていくのです。
このPDCAサイクルを回していくには、従業員に進んで調査に協力してもらえるようにすることが必要です。調査項目を多くしすぎない、適宜、調査結果をフィードバックする、しっかり施策につなげていくなどを行うことで、従業員の不満がでないようにしてく体制を執ることがポイントとなります。
自社の従業員満足度調査を実施し、従業員満足度を向上させて社員の定着を図りましょう!
従業員満足度の定義や企業に及ぼす影響とともに、従業員満足度が高い企業の好事例、従業員満足度に関する指標や調査方法について解説しました。
少子高齢化の進展により人材不足が深刻化していくなか、従業員満足度を向上することで社員の定着を図ることは人事にとって重要課題です。
自社における衛生要因と動機付け要因のそれぞれの課題を抽出し、従業員満足度調査のPDCAサイクルをしっかりと回して施策につなげるとともに、従業員満足度調査を行う目的やフィードバックを適切に行うことで従業員から理解を得ることが成功の鍵です。
ぜひ、本記事を参考に、従業員満足度に関する理解を深めて、従業員満足度向上に取り組みましょう!