新卒採用ノウハウまとめ|フロー別に基礎知識を解説【新任人事必見】
初めて新卒採用の責任者を任されたものの、「何から始めればよいのか」「どのようにすれば採用が成功するのか」「どのようなフローで進めればよいのか」などについて、お悩みをお持ちの方も多いかと思います。
なかには初めて新卒採用を実施することになったものの、自社に参考にできる実績データがなく、ノウハウが分からないという企業の方もいるのではないでしょうか。
特に2023年度卒の就活からは、新卒採用に関するスケジュールについて、政府主導のルールに変更となる点もあり、不安を感じるかもしれません。
この記事では、新卒採用の全体的な流れや、フェーズごとのノウハウ、新卒採用に用いたい手法などについて解説していきます。
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目次
新卒採用について知っておくべき基礎知識
採用ノウハウの前に、新卒採用のフローや例年のスケジュールについて見ていきましょう。
ただし、スケジュールは今後変更の可能性があるのと同時に、中小・中堅企業や外資系企業については以下のような就職ルールの制約を受けることはないため、あくまでも目安と考えてください。
新卒採用の通常フロー
新卒採用の基本的なフローは以下の項目が挙げられます。採用担当者は学生への広報活動よりも前段階から作業を進める必要があります。
- 現状分析
- 採用設計・スケジュール策定
- 採用ターゲットの選定
- 広報活動・母集団形成
- 選考・評価方法の設定
- 面接・評価
- 内定通知・入社前フォロー
ノウハウを取り入れる際は、まずはそれぞれのフェーズでの課題を洗い出します。そして課題を発見した場合に、どのようなノウハウを取り入れるかを考えます。
また、自社の過去の採用状況などを分析し、全体の課題を割り出します。そして、その課題解決のためのノウハウは、どのフェーズに取り入れればよいかを整理して実行すると、効果的な改善が図れます。
新卒採用の一般的なスケジュール
各企業の新卒採用のスケジュールはどのようになっているのか2022年度卒を例に見ていきましょう。
- 広報活動開始:卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降
- 採用選考活動開始:卒業・修了年度の6月1日以降
- 正式な内定日:卒業・修了年度の10月1日以降
なお、上記は経団連が従来策定していた「採用選考に関する指針」に沿うものですが、経団連では2018年に以降の方針を定めないとし、政府の主導へと移り変わるという発表がありました。ただし、急な変更は混乱を招くため2022年度卒まではそれまでのルールが踏襲されます。
気になるのは2023年度卒からの政府主導による新ルールの適用です。現時点では大きな変更がないともいわれていますが、今後、注視しておく必要があります。
【フロー別】新卒採用に役立つノウハウ
ここからは、採用担当者として新卒採用に必要なノウハウを具体的に見ていきます。フェーズごとのポイントを押さえることで、全ての作業がスムーズになります。
1.現状分析
採用活動の第一歩として必要なことは自社の状況と過去の採用実績に関する精査、分析です。
現状分析での課題は、就活生へアピールし、より多くの就活生に応募してもらうという成果につなげるような道筋を立てることにあります。「強み・弱み」「自社のブランド力」「ビジネスの展望」「ライバルなどの外的脅威」などを分析し、採用の広報活動を通して就活生にアピールするストロングポイントを決定しましょう。
ここでのノウハウとしては、事業計画や人員構成、自社の弱み・強み、将来性などの自社の状況をまとめることです。過去の採用実績を分析し、全体のスケジュールや説明会などのタイミングが適正だったかを見直すことも欠かせません。採用には多くの社員、経営者の協力も必要であることから、他の業務があるなかで円滑に進められたかどうかも振り返ります。
2.採用ターゲットの選定
自社の状況を分析しながら、採用のターゲットとする人物像を割り出していきます。
ここでの課題は、ターゲットを絞ることでミスマッチを防ぎ、さらには苦労して確保した新入社員の早期退職も回避することです。
そこで、企業全体の人員の過不足と、部署ごとの欲しい人材を精査することで、本当に欲しい人物像を導き出します。その際、チェックしたい項目は以下の通りです。
- 配属する部署(人材が足りていない部署)
- 任せたい業務
- どのような人材が欲しいのか
- 持っている知識のレベル
- 何人欲しいのか
表を作成し、各部署の責任者にヒアリングのうえ、項目ごとに確認を行ってみましょう。
また、要員計画も重要です。欲しい人材が多くても、人件費とのバランスで採用できる人数は限られます。自社全体の人員構成を整理し、必要な人材に優先順位を付け、要員計画を立てます。
3.採用設計・スケジュール策定
「採用したい新卒人材の要件と人数」をもとに、採用活動の予算、人員、スケジュール、採用の手法などについて細部を詰めていきます。
この段階では、セミナーや説明会の開催、各地の就活イベントへの参加の有無、各メディアへの掲載の有無、パンフレットなどの制作、インターネット戦略など、具体的に行う採用活動の方法を決定していくことになりますが、「限られたヒト・モノ・カネなどのリソースを、いかに上手く配分するか」が大きな課題です。
採用活動には経費がかかります。広告費、出張費、ツール・設備のレンタル・購入費などの出費を想定し、あらかじめ予算を確保しておくことが大切です。また、早い段階で説明会や面接などに必要な人員も確保します。
4.選考・評価方法の設定
就活生のなかからより自社に合う人材を確保するには、選考基準と評価方法を設定しておくことが必要です。
採用担当者や面接官の感覚で採用することがないように、ペルソナを明確化して適正な基準を設定するのが課題となります。
そのためには、まず、学歴、性格、趣味、資格、価値観、見た目の印象など、企業としてどのような人材を求めているか細かく設定します。そのうえで、就活生の条件や資質に優先度を付け、さらに「当てはまる」「やや当てはまる」などの段階的な評価を設定し、各項目をスコア化することで評価の定量化が可能になります。
面接時用に「面接評価シート」のような書類を作成すると、誰が面接官を担当したとしても評価しやすく、評価結果がぶれにくくなります。
5.母集団形成
次が母集団の形成です。「自社に興味、関心を持つ学生の母集団をいかに形成し集めるか」が、このプロセスにおける重要なポイントといえます。
大きい母集団を作らなければ、人材の選択肢が狭まるのは確かです。しかし、自社が求めていない人物像とマッチしていない学生が集まっても意味がありません。母集団形成の際は、「自社が求める人材を多く集めること」という課題を念頭に置く必要があります。
母集団を形成するためにはさまざまな手段が考えられますが、目的の学生の多いチャネルを選び、最適なリソース配分をするのが重要です。学生を集めるチャネルとしては就職サイト、合同企業説明会などのイベントへの出展、大学での説明会やワークショップ、そしてSNSを活用した展開が考えられます。
6.面接・評価
面接では、「自社が求める人材像に合致しているかどうか」を確かめることを大前提として、そのための質問内容や面接フローを確立し、面接担当者に周知徹底します。
面接官によって質問が異なると、面接結果にぶれが生じやすくなります。そこで、「選考・評価方法の設定」でも紹介した通り、面接や評価段階では社内で統一基準を設定・周知することが課題です。
まず、「面接時に必ず聞くべき基本的な質問」を設定しておくとよいでしょう。質問に関しては、さまざまな手法が考えられます。例えば、「何をしたか」だけを聞くのではなく、動機や行っている間の心理、行動の結果を問いかけることで、その成果が「再現性」があるかどうかを知ることもできます。
ただし、注意しなくてはいけない点は、面接時に詰問調や一方的な質問攻めは避け、紳士的対応を徹底させることです。詰問調がすぎると、パワハラをするようなブラック企業という印象を与えます。
またプライベートな質問も、一歩間違えばセクハラにつながることがあるので注意が必要です。
7.内定通知・入社前フォロー
内定通知から入社までの期間は、自社へのエンゲージメントを高めて、入社後にスムーズに研修に移行して、現場で活躍できるように準備をさせる時期です。
この段階では、そのフォローのための体制を検討することが主な課題となります。
内定者フォローでは、内定者の状況を把握し、必要に応じたフォローを適宜行います。採用担当者が定期的もしくは不定期でコンタクトを取り、近況を聞いたり、質問に応じたりするだけでも、他社への流出を防ぎやすくなります。
また、内定通知から定期連絡まで、具体的なスケジュールや入社後の研修内容などを伝えておくことも大切です。先々のスケジュールが分かっていると「入社前の不安を取り除く」効果も期待できるでしょう。
新卒採用で知っておきたいその他のノウハウ
ここまで新卒採用のノウハウについて解説してきましたが、他にも活用を検討すべき手法はいくつかあります。
以下では、新卒採用でより優れた人材を集めための手法について解説していきます。売り手市場といわれているなか、できる限りの手法を取り入れたいところです。自社の業務、人員などを考慮しながら戦略を立ててください。
オンライン対応
コロナ禍以降、就活においてもオンライン化が加速しました。企業側にとっては「スケジュール調整がしやすい」「遠方の学生にアプローチできる」「交通費の支給コストなどを抑えられる」などのメリットがあります。
一方、学生にとっても「より多くの会社の企業説明会に参加しやすい」「遠方の企業でも受けやすい」「対面に比べるとリラックスして話せる」などの点がメリットです。
経団連「2021年度入社対象 新卒採用活動に関するアンケート結果」によると、オンライン面接について、9割超の企業が実施しており、未導入なら検討する価値があります。
ただし、オンラインでの面接は、就活生が会社の雰囲気を知らないまま選考が進んでしまうので、社内の動画を流すなどして雰囲気を伝える工夫が必要になります。
参考:http://www.keidanren.or.jp/policy/2020/080.pdf
ダイレクトソーシング
ダイレクトソーシングとは、ナビサイトのような受け身の方法と異なり、ソーシャルメディアや人材バンク、逆求人サービスなどから欲しい人材を探し、直接アプローチする手法を指します。
ナビサイトなどでは人気が大企業に集中しやすいという傾向がありますが、中小企業やスタートアップ企業、ビジネスの主軸がBtoBであるため学生からの知名度が低い企業にとっては、直接やりとりして、自社の魅力や熱を伝えられるというメリットがあります。
株式会社リクルート 就職みらい研究所の「就職白書2021」でも「情報提供やコミュニケーションとして、実施予定のもの」として「スカウト・逆求人型サービス」が16.1%の回答を集めていました。
参考:https://shushokumirai.recruit.co.jp/wp-content/uploads/2021/04/hakusyo2021_01-48_up.pdf
インターンシップ
インターンシップは、学生と企業側の相互理解の場となり、採用のミスマッチを防ぐ効果があるとされています。インターンシップを採用の足掛かりとして活用している企業も増加傾向です。
インターンシップの種類は以下4パターンとなります。
- 早期選考型
- 本選考優遇型
- リクルーター型
- ジョブ内定型
早期選考型は、インターン参加者のみの面接を行い、早期に内定を出す方法、本選考優遇型は、インターンでの成績優秀者に対して、本選考で優先的に内定を出す方法です。リクルーター型とはリクルーターもしくはメンターが担当として付き、選考のフォローを行います。ジョブ内定型とは、本選考のフローとしてインターンを組み込んだタイプで、就活生は内定を得るためにインターン生としての参加が必要です。
通年採用
帰国子女を大学が9月スタートで受け入れる関係もあり、3月1日の解禁から一斉に始まる通常の採用以外に、通年採用を行う企業が増えています。
通年採用はその名の通り、1年を通じて採用を行うというものです。「必要な人材を最適な時期に採用できる」「早期に就職活動をはじめた学生に出会える」「じっくりと候補者を見極められる」といったメリットがあります。
一般社団法人 日本経済団体連合会「2021年度入社対象 新卒採用活動に関するアンケート結果」によると、通年採用を「実施している」「実施予定」「検討している」としている企業の合計は6割近くにも上っています。
参考:http://www.keidanren.or.jp/policy/2020/080.pdf
ジョブ型採用
専門人材を採用したい場合に効果的なのがジョブ型採用です。従来はさまざまな部署を経験させて育成していく「メンバーシップ型」が主流でしたが、ジョブ型採用では仕事や職務を限定して採用します。
「システム・デジタル・IT」、「研究・開発」、「営業」、「経理・財務」、「法務・知財」などのスペシャリスト志向の学生にアピールでき、職種・職務とのミスマッチが起きにくく、人材の定着も期待できます。
経団連「2021年度入社対象 新卒採用活動に関するアンケート結果」によると、ジョブ型採用を「実施している」「今後行いたい」とする企業は約4割です。
リクルーター
リクルーターとなった社員が就活生に接触して採用活動を行う制度です。会社の窓口となって学生をサポートし、優秀な人材が他社に流れることを防ぎます。
ただし、就活生個々に対応を行うためリクルーターとなれる社員数が不足することがあります。そこで、人員に余裕がある場合に検討するのがおすすめです。
リファラル採用
リファラル採用とは、社員が人材を紹介するというものです。社員が紹介するため会社によりマッチした人材を採用できる可能性が高く、さらには採用コストの削減も可能です。
今までは中途採用で頻繁に行われてきた手法ですが、最近は新卒採用でも取り入れている会社が増えています。
まとめ
今回は新卒採用におけるノウハウについて解説しました。
まずは、新卒採用の通常フローやスケジュールを確認したうえで、現状分析や採用ターゲットの設定など、フェーズごとのノウハウを押さえながら着実にこなすことが大切です。
そのうえで、オンライン対応や通年採用、ジョブ型採用など、自社に合った手法を取り入れながら、採用活動を行ってみてください。