【新卒採用】学内セミナーの企業側メリットを活かし確実に成功させる秘訣【人事経験者に聞く】
大学や専門学校で行なう「学校内でおこなう企業説明会」を学内セミナーといいます。
「学内セミナーを開くと、自社で企業説明会を行うよりも自社の求めている人材に出会える確率が高いのではないか?」と開催を検討されている採用担当者は多いのではないでしょうか。
- 学内セミナーを行なうことのメリット・デメリットは?
- 自社で説明会をするのと何が違うのか?
- 大学・学校ごとの違いはあるのか?
- 採用担当者の学内セミナーでの振る舞い方・必要な資質は?
- 学内セミナーで「母集団形成」をするために大切なことは?
今回は、上記のような「学内セミナー」に関する疑問を、新卒採用業務を経験されていた網野さんにお答えいただきます。
株式会社i-plug
網野 紗弓
新卒で、教育関連の企業に採用担当として勤務。その後データ分析専門企業での人事担当を経て、2020年3月株式会社i-plugに入社。
現在は、総務チームにて法務関連業務及び、全社の業務効率向上のための施策について幅広く担当。
目次
なんといっても学内セミナーのメリットは「学生が気軽に参加できること」
編集部
網野さん
例えば、採用人気の高い大学とそうでない大学がありますよね?人気のない俗に「下位校」と呼ばれる大学の学生は、応募をする企業を尻込みして控えめにしがちなんです。学内セミナーを行うことで、そのような学生に「自分の大学はこの会社の採用対象大学なんだ」と伝えられます。
また、保育士や建築士など専門的な職種志望の学生の場合だと、学内セミナーを行うことで、「この会社は自分の希望職種を募集している」というメッセージをはっきりと伝えることができます。
これは少し感情的なことになるのですが、「わざわざ自分の学校に来て採用活動をやってくれる」という特別感を学生に持ってもらえることもメリットですね。セミナーの資料に「○○大学向け学内セミナー」というタイトルをつけて、レア感を演出するのもいいかもしれません。
編集部
網野さん
そのような申し込み方法になると、どうしても「認知度の壁」が立ちはだかり、学生からの認知度が高い会社に応募が集まりがちです。そうなってくると母集団形成が不利になってくる会社も出てきます。
また、自社での説明会は、「申し込みをしてその会社まで出向くという行為をする」と決断をするというハードルがある時点で、ある程度の志望度がある学生しか集まらない傾向があります。
学内セミナーだと、「自分の大学でやるみたいだし、ちょっとお話を聞いてみようか」というスタンスの学生も来てもらいやすくなります。自社の説明会ではリーチができなかったであろう、他業種や他業界志望の学生にもアプローチができることが大きな違いですね。
網野さん
セミナー内でその社員に学生時代の思い出を話してもらうことで、学生に自分が会社で働く姿を具体的にイメージしてもらい、会社説明の解像度を上げることが可能です。
編集部
網野さん
また、その学校の卒業生がアサインできない場合は、上記の「学生に自社を身近に感じていただく」という状態が作りにくいので、少し効果が弱くなってしまいますね。
学内セミナーの代表的な3つのスタイル:目的・条件に応じて使い分ける「現場力」
編集部
網野さん
- 500人以上入る大教室などを借りて、1社単独で30分~1時間ほどで実施する
- ホールの中で何社か集まって学内で合同説明会をやる
- ゼミや研究室などのつながりで教授にお願いして、授業の中で時間をもらってやる
網野さん
例えば、ゼミや研究室の授業時間を使わせてもらい実施する場合は、すでに学部や学科、研究室の枠である程度学生の資質が絞れているので、その分野に関連した専門職の採用をしている場合や、専門職ではなくても過去その学科やゼミを卒業している社員が活躍している確率が高い場合には非常に有効なスタイルになります。
編集部
網野さん
- 「応募への気持ちのハードルが下がる」
- 「特別感を感じやすい」
- 「実際につながりがある先輩の解像度の高い会社説明で、会社の実像がイメージしやすい」
網野さん
また、昨今の学生は企業の情報収集源として「口コミ」を非常に参考にする、というところもあり、企業から一方的に与えられた情報(サイトの広報やナビの勤務条件など)だけの材料では応募をするかどうかの判断はなかなかしない傾向があります。
学内セミナーで発生した、その企業で働いている先輩のリアルな声や印象が学生同士で口コミになり、それが良い情報として伝播すれば学内セミナーは効果的に機能している、と言えますね。
編集部
網野さん
そのような学校には、逆説的に欲しい学生もたくさんいるので、何とか学内セミナーができるように苦心していました。
例えば、大学経由では学内セミナーを受け入れてくれない学校でも、自社の社員で学内のゼミの出身者がいる場合や親しい教授がいる場合には、その繋がりを使って授業やゼミの時間を少しいただいてやる、という方法を現場的にはよくとりますね。
上述したように、出身者に自社の社員がいることや、建築士など募集職種に関連する専門分野のゼミの場合はターゲットがあらかじめ絞られていることで、合同や大規模の学内セミナーを開くよりも非常に確度の高い人材にアプローチできるという長所もあるので、現場的には、人気の学校でもその手法でリーチしていくことが多いですね。
学内セミナーを成功させるために必要な採用担当の行動・資質は?
編集部
網野さん
そこから少しずつ顔を売っていくようにします。そうすると、合同学内セミナーに誘っていただけることもありますので、地味ですが王道の方法です。
つぎに、ゼミや研究室などの卒業生を連れていって、教授に直接売り込んで、チラシを置かせていただくのも有効です。
やはり教え子が入った会社は教授にとってもイメージしやすいですし、教え子がその会社で活躍しているようであれば教授としても安心して他の学生を推薦できますので、非常に合理的な方法と言えますね。
また、今でも学校内とのつながりが強い社員(先生と今でも仲が良いとか、大きなサークルに入っていて影響力があったとか)に細かくヒアリングして当日の集客にも生かしていく場合もあります。
編集部
網野さん
つぎに、人事だけではなく、その学校の出身社員は連れていけるなら連れていったほうがいいです。近い存在である人が社員として活躍していたら、入社後のことがイメージしやすいのが理由です。
また、将来自社で活躍を見込めそうな学生に対して強く魅力付けしたい場合、若手のアサインだけでは少し物足りないかもしれません。その場合、7~8年目の主任クラスをアサインできたら盤石といえます。
社歴を重ねてある程度の経験をした社員が登壇して「入社した後に出世・活躍したい」という志を持った学生にも響く具体的な仕事のやりがいや会社のミッションなどのお話をしてもらうことも大切です。
学内セミナーの開催に適切な時期は?学生の温度感をリアルに把握することの重要性
編集部
網野さん
なので、学校によって学生が動き出す時期も違うので、地方の学校が東京や大阪のスケジュールで考えて早めに接触しすぎても、全然学生の中で就活のムードが盛り上がっていなくて集客できないときもあるんですよ。
「この季節、この月」というよりも、「その学校の大多数の学生が就職に対して前向きになっている」タイミングが学内セミナーを開くのに適切なタイミングですね。
そこで大切になってくるのが、現場の情報収集です。キャリアセンターに顔を出して「最近の学生の動きはどうですか?」と聞いてみて、学生が動き出す時期や合同学内セミナーが開催される時期をヒアリングしたり、社員の学校の後輩に「周りの就活ムードどんな感じ?」と聞いてみたりすることによって、その学校のリアルな「温度感」を感じながら、適切なタイミングを計っていきます。
編集部
網野さん
このような認知度の高い会社でセミナーの参加母数が多い場合には、学生層を絞る目的で学内セミナーを活用することができますが、セミナーの参加母数が少なく、最終的に5人程にしかアプローチできないような場合だと、学内セミナーの費用対効果が下がってきますので、参加人数・アプローチ可能人数のできるだけ正確な事前見積りは成功のために必要だと思います。
最後に:学内セミナーでの「母集団形成」に向けて採用人事にとって大切な「人海戦術」
今回は、新卒採用業務を経験されていた網野さんに、採用の母集団形成にとても大切な、「学内セミナー」についてお話しいただきました。
上述のように、学内セミナーは、対象をしっかりと絞り戦略をもってきっちりと行えば一定の採用が見込まれる層に対してのアプローチになるため、大きく採用戦略から外れる人材にアプローチをしなくていい、というメリットがあります。
ただ、採用人事としての目的は学内セミナーの先の「採用をすること」です。学内セミナーでアプローチした学生に対して、採用により近いポイントでクロージングすることが大切です。
そのためには、きちんと学生の情報を収集する口をもって学内セミナーに臨むようにしましょう。QRコードや、ナビサイトのエントリー画面など、接触した学生と、引き続き関係性を継続できるような工夫が必要です。
最後はアナログな人海戦術で地道に学生の情報を集める必要がある、という意識を持ちながら、学内セミナーを企画し、成功をおさめましょう。