日本マイクロソフト・ソフトバンクと考える。学生に選ばれるための新卒採用戦略とは?

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変化の時代や従来の手法にとらわれず、先を見据えた新卒採用を行う日本マイクロソフトとソフトバンク。

2022年6月14日に開催されたオンラインイベント「HR Offer Day 2022」では、2社の新卒採用担当者をお招きし、学生に選ばれるための採用戦略、インターンシップの取り組み、オファーの活用方法などについてディスカッションしていただきました。その内容の一部をレポートします。

登壇者プロフィール

岩渕 美菜子氏(日本マイクロソフト株式会社 University Recruiting リクルーター)

英国の大学を卒業した後、英国発の人材紹介会社にて営業、その後シンガポール拠点にて約3年間営業・人事の経験を積む。日本帰国後は大手ベンチャー企業で海外・国内の管理職からクリエイターまで幅広い採用に従事。

2016年に日本マイクロソフトに入社し、エンジニアや技術営業、カスタマーサクセス事業部などの中途採用リクルーターを経験し、2021年2月より新卒採用チームに異動。2回産休と育休を経験。

渡邊 祐紀氏(ソフトバンク株式会社 コーポレート統括 人事本部 採用・人材開発統括部 人材採用部 採用推進課 課長)

2012年ソフトバンク新卒入社。法人営業、HRBPを経験後に新卒採用へ異動。マネージャーとして採用戦略立案、イベント企画、選考、内定者フォローなど新卒採用全般を担当。

モデレーター

直木 英訓(株式会社i-plug 取締役COO)

1981年石川県生まれ。2004年立命館大学政策科学部卒業。
2016年グロービス経営大学院大学経営研究科経営専攻修了(MBA)。新卒で株式会社インテリジェンス(現パーソルグループ)に入社。アルバイト・パート事業で営業と企画のマネジメントを務めた後、新卒紹介事業の責任者に就任。
2014年i-plugの取締役に就任し東京オフィスの立ち上げに従事。現在は営業、マーケティングを統括。

日本マイクロソフトの新卒採用計画と手法

24ヵ月の長い選考活動でマッチ度を高める

直木

マイクロソフトの新卒採用について教えてください。

岩渕氏

現在のマイクロソフトは中途採用だけではなく、新卒採用にも力を入れています。私たちの新卒採用における特徴の一つが、早い段階から学生にアプローチしていることです。学生の方々が入社する2年前、つまり24ヵ月前から採用スケジュールを組んでいます。

直木

選考活動を長く行う背景として、どのような考えをお持ちなのでしょうか。

岩渕氏

できる限り長い期間をかけることで、マッチ度を高めていきたいという考えがあります。やはり2、3回の面接だけでは、お互いに見えていない部分やわからない部分があると思います。選考の期間やアプローチのタイミングを早くして、学生さんのことを知っていきながら、学生さんにもしっかり選んでいただきたいというのが我々のスタンスです。

直木

そうなるとインターンシップから始まる学生さんも多いと思います。インターンシップは何人程度の規模、どのくらいの期間で受け入れを行っているのでしょうか。

岩渕氏

毎年受入れ人数には変動がありますが、インターンシップは50名程度の規模で行っています。期間は約2ヵ月間で、長期就業型になっています。

選考から内定者フォローまでを年間で設計

直木

選考フローはどのように設計・運営されているのでしょうか。

岩渕氏

インターンシップや正社員の選考については、その学年の採用をする3、4ヵ月前から年間のスケジュールを立てています。また、私たちは内定者フォローのことを「Keep Warm Strategy」と呼んでいるのですが、これも年間のスケジュールを立てるのと同時に、どのタッチポイントで内定者の方々をフォローアップしていくと効果的かを考えています。

具体的には、内定者の方々に勉強会やイベントを企画していただいて、実際に実行までしていただくというプランを立てています。また、内定のうちから会社への理解を深めていただくために、ゲストスピーカーを呼んでのイベントも企画しています。

社員が採用に携わることで生まれた協力体制

直木

「Keep Warm Activity」のようなプログラムを行う場合、人事や採用の方のみでは対応しきれないところがあると思います。社内ではどのような協力体制をとっているのでしょうか。

岩渕氏

採用チームもそれほど大きいわけではないので、営業部門や技術部門の力を借りながら進めています。私が入社した6年ほど前までは、採用担当者が人を採ってくるというスタンスの方が多かったと感じています。しかし、採用チームが「全社員一人ひとりがリクルーターだ」という啓蒙活動を始めて、社員それぞれが採用の過程で携わることができるようにしていった結果、現在のように協力する文化が生まれていったように思います。

ソフトバンクの新卒採用計画と手法

直木

ソフトバンクでも、内定者フォローについて取り組んでいることはありますか?

渡邊氏

我々も選考は早めに行っていて、フォローも長期間行っています。入ってきていただいたルートごとに仮説を立てて、どの時点でどのような情報を伝えたらいいかということを設計して、月に1回、長くとも2ヵ月に1回程度は、イベントなどで内定者との接点を持つようにしています。

直木

学生との接点が早期化すると、その後の内定者フォローを含め、業務が増えてしまう問題があると思います。どのような社内体制で取り組んでいるのでしょうか。

渡邊氏

内定者フォローについては、やはり採用チームだけではできないので、現場で楽しんでフォローを行っていただける方にお願いしています。会社から評価やインセンティブを与えるというよりも、自分から手を挙げていただけるような、やる気のある方に協力していただいてます。

配属確約できるインターンプログラム

直木

ソフトバンクのインターンシップについて詳しくお聞かせください。

渡邊氏

我々が用意しているインターンプログラムの一つに「JOB-MATCHインターン」というものがあります。最低で2週間、最長で4週間ほど、実際の現場で就労体験をしていただくというものです。このプログラムの最大の特徴は、現場側と学生側が両想いになれば配属確約ができるという点です。

配属確約の仕組みを設計した背景には、学生とのマッチ度を高めたいという狙いがあります。面接官が30分で「自分の部署に合いそうだ」と判断することは難しく、2〜4週間のインターンを行う中でマッチするかどうかを見極められたほうが、お互いにハッピーになるという考えです。

全社を巻き込んだインターンになるので、プログラムの設計はさまざまな部署にお願いしています。学生からは第3希望の部署まで提出していただきますが、「どの学生にどのポジションに行ってもらうか」という配置も非常に難しいですね。

インターンシップ参加学生のリアクションは?

直木

実際にインターンをすることによって、企業理解や仕事理解が深まっているという感覚はありますか?

岩渕氏

あると思います。サマーインターンが終わった学生からは必ずサーベイフィードバックをいただいているのですが、いい意味で見えなかった一面が見えるようです。現場の方とメッセンジャーやLINEで繋がって、その後も裏で具体的な話を続けていることもあります。

渡邊氏

そうですね。学生たちは「お昼ご飯は何を食べているのか?」「何%くらいの人が出社しているのか?」といったような粒度のことを知りたがっていると感じます。説明会だけでそのような情報を知ることは難しいので、インターンに来ていただいたほうが早いと感じます。

直木

インターン経由での採用への繋がりやすさ、という観点ではいかがでしょうか。

渡邊氏

具体的な数字は出せませんが、やはりミスマッチなく選考を受けていただけますし、面接もしっかりと通ります。また、インターン経由で入った方は離職率が一番低かったというデータもあります。

岩渕氏

弊社も数は言えませんが、仕事の内容だけでなく、会社のカルチャーやビジョンについても腹落ちした上で選考に臨んでいただけますから、最終選考も突破しやすい印象があります。

インターン期間後のニーズとオファー型メディアについて

直木

元々「OfferBox」はインターンシップの動員に使っていただくことがあったのですが、現在はインターン終了後の補填的な使用が増加してきたような印象があります。企業の皆様から見て、オファー型メディアのニーズはどのようなところにあると思われますか?

渡邊氏

母集団形成は早期化していますから、インターン終了後の時期にもニーズがあると思います。
また、職種別採用をする企業が増えているなかで、職種別採用とオファー型は非常に相性がいいかもしれません。弊社で言うと、ネットワークエンジニアのような多くの学生さんが志望している領域ではない職種や、データサイエンティストのような技術力の高い職種は、オファー型で進めていったほうがいいと思っています。

岩渕氏

マイクロソフトの中では、技術職のキャリアについて見えにくい部分があると感じています。技術職に対してのスカウティングという点において、オファー型を活用させていただいています。

人事・採用担当者として意識していること

学生はリアルな情報提供を求めている

直木

採用活動を進めていて、具体的なキャリアイメージが大事だと思われる局面はありますか?

岩渕氏

弊社を受けてくださる学生の場合、キャリアイメージを明確に持っていることが多いです。弊社は社内異動も多く、ビジネスも多岐にわたるので、会社の中でさまざまなキャリアを歩むことができるということを面談中にお伝えするようにしています。

渡邊氏

弊社では、入社から5年ほど経ったタイミングで、新規事業やグループ会社に行くというキャリアはよくあります。「いつか事業を立ち上げたい」という学生さんがいる場合、そういったキャリアチェンジを経験した人の話を求められることが多いので、イベントなどで登壇いただいたりしています。

一方で、長い間職種を変える事なく活躍している社員もいます。肌感覚としては、いろいろなキャリアのパターンがあることを学生に見せることによって、満足度が高まるのではないかと思っています。

自社でのキャリアイメージを持たせるには

直木

自社でのキャリアイメージを持ってもらうために、力を入れて取り組んでいることはありますか?

渡邊氏

イベントや採用担当のパワーのみで多くのキャリアイメージを持ってもらうことは、なかなか難しいと感じています。そのため弊社の場合はオウンドメディア化して、さまざまな社員の記事や動画を展開することに力を入れています。

岩渕氏

私は、社員一人ひとりが発信していくことが重要だと思っています。「ビジネスの人たちはどのようなことを行っていて、どのようなことに面白味を感じているのか」というところを発信できれば、学生もキャリアイメージがつくのではないかと思っています。

採用担当者がやるべきことも変化していく?

直木

一昔前の採用担当者は「いかに母集団を形成するのか」ということに試行錯誤されていたイメージがありますが、今後は採用担当者の力の置きどころも変わっていくのでしょうか。

渡邊氏

ここ3年間の学生は、明らかに配属を気にされる方が増えましたね。昔であれば「どんな仕事でも頑張ります」という学生さんが多かった気がしますが、現代の学生さんはやりたいことが最初から明確になっていて、それがどれだけ叶うのか、ということを聞いてくる方が多い印象です。

岩渕氏

そうですね。その間のマッチングをどのように図っていくかが、採用担当者の肝だと思っています。我々のグローバル採用戦略では、「どれだけマッチ度を上げていくか」ということを重要視していますから、「どれだけの人数を集めたのか」ということはそれほど重要ではないのです。10人集めてきて1人にオファーを出すよりも、4人集めてきて1人にオファーを出すほうが効率がいいですし、マッチ度が高いということにもなります。

そのため弊社では、採用担当者がビジネスを理解して、学生にどのようなニーズがあるのかをきちんと理解できていること。その観点を重要視しています。

まとめ

マイクロソフトとソフトバンクの新卒採用戦略。インターンシップや内定者フォローなどさまざまな戦略の中で、よりマッチ度を高めていきたいという狙いや、社内の協力体制を築いて全社で採用に取り組んでいることが共通していると感じました。

また、お2人の話から、これからの採用競争は個人の学生に寄り添いながらキャリアを考え、会社の中でのキャリアイメージをどこまで持ってもらうのかが肝になりそうです。

ほかにもお2人には、以下のような質問にもお答えいただきました。

  • インターン期以外に取り組んでいることは?
  • 間違った企業イメージの払拭方法は?
  • エンジニア採用において取り組んでいることは?
人事ZINE 編集部

人事ZINE 編集部

人事・採用担当者の悩みに寄り添うメディア「人事ZINE」の編集部です。 新卒採用オファー型サイト「OfferBox(オファーボックス)」を提供する株式会社i-plugが運営しています。