OJT研修では何をする?よくある課題と対策、効果を高めるポイントを解説

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自社のOJT研修に課題を感じ、どうすれば効果的なOJTに取り組めるのか悩んでいる採用担当者も多いでしょう。

独立行政法人 労働政策研究・研修機構の調査によると「従業員で約65%」「企業で約80%」がOJTに課題があると回答しています。OJTを効果的に行うには、課題を把握して適切な対策を実施することが重要です。

本記事ではOJT研修とは何か、OFF-JTとの違いやよくある課題などを紹介したうえで、OJT研修の具体的な進め方や問題解決のポイントを解説します。

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OJT研修は現場で行う実践研修

OJT研修は現場で行う実践研修

OJT(On-the-Job Training:オン・ザ・ジョブ・トレーニング)研修とは、実践研修のことです。実践を通して知識やスキルの習得を目指します。新入社員のOJT研修においては、上司や先輩社員がトレーナーとなり、実際に業務を行う現場またはそれに近い環境で行われるのが一般的です。

OJT研修を実施する目的

新入社員のOJT研修は、実務を早期に身に付け即戦力化することや、モチベーションを高めることが目的です。

実践に近い環境で行われるOJT研修は、業務への理解度や進め方、イレギュラーへの対応力など、さまざまな知識やスキルを得られます。即戦力化以外にも入社したての社員が感じる、何をすべきかわからないという不安を取り除く効果も期待できるでしょう。

また新入社員は、はじめて職場という環境に身を置くため人間関係にも不安を感じるものです。OJT研修で、職場の上司や先輩社員がトレーナーになれば、コミュニケーションを密に取ることになるため、人間関係の不安も取り除くことも期待できます。

このように新入社員のOJT研修には即戦力化や不安を取り除きモチベーションを高めるといった目的があります。しかし実際には、この目的を達成できず課題を抱える企業も少なくありません。

OJT研修の目的や研修の進め方は、下記の記事もあわせてご覧ください。

ここでは、OJT研修とは何かをわかりやすく説明するため「OJT研修とOFF-JTの違い」「OJT研修の目的」などを解説します。

OFF-JT研修(座学)との違い

OJTとOFF-JTは、研修を受けさせる環境と目的に相違点があります。OFF-JT(Off-The-Job Training:オフ・ザ・ジョブ・トレーニング)とは、一般的には座学研修のことを指します。実際に業務を行う現場を離れて、講師の話を聞くスタイルの研修です。

OFF-JTは社内研修だけではなく、外部機関の研修や講演会、セミナーなども含まれます。OFF-JTはインプット中心なので、初歩的な知識を得ることが主な目的となります。OJT研修はより実践に近い環境で行われため、ある程度の知識をインプットしてから受けなければ効果は期待できません。

OJT研修のトレンド

近年のOJTにおいてトレンドとなっている研修方法を紹介します。

リモート対応のOJT研修

新型コロナウイルス感染症の流行によりリモートワークが普及したことで、OJT研修もリモートで実施する企業が増えています。オンライン会議システムやチャットツールなどを利用し、通常のOJTと同様にリアルタイムでコミュニケーションを取りながら実施する形式が一般的です。

とはいえ、リモートでは相手の状況を直接確認できないため、認識の相違が発生しやすいといった、リモートならではの問題も発生しています。新入社員が理解できているかこまめに確認をとり、フェーズごとに成果物を提出してもらうなど、認識のすり合わせを丁寧に行う工夫が必要です。

効果的なチームビルディングを行うポイントを知りたい人事の方は、こちらの資料もご覧ください。リモート環境で実践できる方法もあわせて紹介しています。

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中堅社員を対象とするOJD研修

新入社員ではなく、中堅社員を対象とした「OJD(On the Job Development)」と呼ばれる研修も注目を集めています。

独り立ちを目標に入社から1年間を目安として実施されるOJT研修と異なり、OJD研修はリーダーや管理職の育成を目的とするものです。そのため、対象となる社員一人ひとりの特性やキャリアに合わせて中長期的な能力開発を行います。具体的には、自社の経営目標に基づいてマネジメントスキルや経営スキルの開発・育成などを実施します。

OJT研修のメリット

OJT研修を取り入れる代表的なメリットとしては、次のものが挙げられます。

  • 社員の特性に合わせた教育ができる
  • 実践的なスキルや知識が早期に身に付く
  • 教える側のスキルアップにもなる
  • 業務上必要な人間関係を構築できる
  • 外部講師を招くOFF-JT研修よりも教育コストを抑えられる

詳しいメリットは、こちらの記事でも紹介していますので、合わせてご覧ください。

OJT研修のデメリット

反対に、OJT研修には以下のようなデメリットがあることも留意しておくべきです。

  • 教える社員のスキルによって効果にバラツキがある
  • OJTだけでは知識面の習得ができず、体系的な教育が難しい
  • トレーナーとなる社員の時間的・精神的負担が大きい
  • 現場任せにすると新入社員が放置される可能性がある

OJT研修のよくある課題と解決方法

OJT研修のよくある5つの課題

OJT研修で効果を感じられなかったり、運用面がスムーズに行かなかったりするなどの課題を抱えていませんか。OJT研修でよくある課題は、以下の通りです。

  1. 研修を担当するトレーナーが不足している
  2. 体系的な知識が身に付かない
  3. OJT研修の体制構築が難しい
  4. トレーナーからのフィードバックが少ない
  5. 新入社員が受け身すぎる

新入社員のOJT研修の目的を達成するには、課題を把握したうえで計画し進める必要があります。ここでは、①〜⑤それぞれの課題について解説するのでしっかりと把握しておきましょう。

研修を担当するトレーナーが不足している

OJT研修を担当するトレーナーが不足していることや、ほかの仕事を抱えて新入社員のOJTをケアできないなど人員不足の課題があります。研修業務を人事が兼任しているケースも多く、十分な対応時間を確保しきれない場合も多いでしょう。

人手不足が続くと、トレーナーが何を指導しているのか把握できなかったり、トレーナーが感じている研修の問題点などを管理しきれなかったりするのも問題になります。

  • 人員不足で研修担当者はトレーナー任せ
  • トレーナーはOJTに時間を避けない
  • OJT研修を受ける新入社員が放置されやすい環境にある

こうした環境が悪循環となり、次のような課題も併発するケースがあります。

トレーナーの育成が難しい

人員不足の影響により、トレーナーの育成が難しいという課題もあるでしょう。または人員はいるけれど、トレーナーに達するまでの社内育成ができる環境がないことや、トレーナーになれる器の人材がいないという課題も多いです。このような環境で新入社員時期にOJT研修を受けた社員が先輩となったときに、トレーナーを任せられる立場となっても上手く立ち回りできない可能性が高いです。

OJT研修では新入社員の理解度や効果も重要ですが、研修の精度を高めるには教育する側の育成も無視できません。研修の進行具合や、トレーナーが抱える通常業務をサポートする環境がないなど、トレーナー個人に任せきりにしてはOJT研修は上手くいかないのです。

②体系的な知識が身に付かない

OJT研修だけでは、体系的な知識が身に付きづらいという課題もあります。特に、座学研修をせずいきなりOJT研修から入ってしまうと、実務に必要な基礎知識がない状態でのスタートとなるため、社員の成長が鈍化するリスクがあります。

企業理念や部署が向かうべき方向性も理解しないまま、実務を中心にした研修を行うのは効果的ではありません。バランス良くOFF-JT研修を取り入れ、体系的なカリキュラムを作成することが重要です。

③OJT研修の体制構築が難しい

OJT研修を導入する際は、研修の体制構築が難しいという課題もあります。OJT体制が構築されていないと、トレーナーへの教育を行わず任せきりにしてしまったり、トレーナーが忙しく新入社員を放置したりするトラブルが起きやすくなります。

研修体制が整い、各人の役割が明確であれば、トラブルがあったときにフォローし合うことが可能です。しかし、実態としては、細かな役割分担や体制構築を行ってからOJT研修を進めていない企業も少なくないでしょう。

④トレーナーからのフィードバックが少ない

OJT研修を実施中に、トレーナーから研修受講者へのフィードバックが少ないこともよくある課題です。フィードバックが物足りなくなるのは、前述した研修の体制構築ができていない点が原因の一つと言えます。

トレーナー本人が研修内容や目的を理解しておらず、適切にフィードバックできていない場合も多いでしょう。また、比較的年次の浅い現場社員がトレーナーを務めることで、自分自身の実務との両立がうまくできず、十分にフィードバック時間を確保できないケースもあります。

トレーナーがスキル不足であれば、研修対象者に適切な教育機会を与えることは不可能です。OJT研修は実践上で失敗を繰り返しながら、適度なタイミングでフィードバックを行い、トレーナーと二人三脚で進めていく必要があります。フィードバックの質、量ともに、OJT研修のネックになりやすいと理解しましょう。

⑤新入社員が受け身すぎる

OJT研修を受ける新入社員自体が、受け身になりがちという課題も多く見られます。リクルートマネジメントソリューションズが2020年に調査したデータによると、昨今の新入社員は受け身タイプが多いようです。

例えば「仕事をするうえで何を重視しているのか」の問に対し、「競争」と回答した新入社員はわずか3%でした。昨今の新入社員には、同期入社よりも早く仕事を覚えてNo,1になる、というような傾向はありません。

ほかにも新入社員が「職場に求めること」という問いには、「お互いに助け合う」「お互いに個性を尊重したい」という回答が多い傾向にあります。こういった新入社員の性格や価値観の傾向をつかんでおくことで、OJT研修の対策に活かすことが可能です。

昨今の新入社員は、競争よりも調和を好み、やや受け身と見えやすい価値観を持っている点を押さえておく必要があるでしょう。

参考:リクルートマネジメントソリューションズ『2020年 新入社員意識調査

OJT研修の基本的な進め方

課題を意識してOJT研修の計画を立てる

OJT研修は具体的にどのように進めていけば良いのでしょうか。前章で挙げた5つの課題を踏まえて、次のポイントを押さえながら進めていく必要があります。

  • 育成計画の策定
  • 業務の量と質の選定
  • 業務遂行
  • 内省支援

各手順について、一つずつ解説します。

育成計画の策定

OJT研修をスムーズに進めるには、まず始めに育成計画の策定が重要です。育成計画を作る際は、前章で紹介したよくある課題の「②体系的な知識が身に付かない」「③OJTの体制構築が難しい」を意識して、課題に応じた対策を盛り込むようにしましょう。

例として、育成計画の策定で決めるべき項目を記載するので、参考にしてみてください。

  • OJTを通じて新入社員にどのようになってもらいたいのか目標を設定
  • 目標を達成するために必要な知識やスキル、経験は何か具体的に洗い出す
  • 目標に到達のためには「どの業務を、どのように、どの程度の量」で実践させるか
  • 実務をOJT研修で経験する中で、つまずきやすいポイント
  • 研修対象者がつまずいたときに、どういったフィードバックを与えるか
  • 研修の体制…各メンバーの役割、対応内容、トラブル時の初期対応方法 
  • OJT研修の振り返り方、振り返るべき項目の設定

業務の量と質の選定

OJT研修の全体像を計画したら、具体的な研修内容の業務量や質を選定していきます。ざっくりと「テレアポを1日行わせる」と決めるのではなく、1日の流れや、業務の数量、どのレベル(質)で実施させるのか具体的に決めるのが大切です。

業務の量や質が対応できるレベルでない場合、新入社員はモチベーションが低下したり途中で諦めてしまったりすることもあります。無理に大きな目標を設定せず、新入社員に合わせた業務量などの設定を行うよう意識してください。

また、業務量やOJT研修で行う業務の質を決める際は、よくある課題の「①人員不足」を考え、無理ない設定をしましょう。人手不足で、専任のトレーナーがいなかったり、一人のトレーナーが複数名の研修対象者をケアしなければならなかったりする場合は、業務に優先順位をつけて正しい量と質を見極めていくことがポイントです。

OJT研修の内容を決める段階で、明らかに人手不足が顕著であれば、外部の研修会社を頼る方法も必ず検討にいれましょう。

業務遂行

OJT研修の計画、研修で行う業務内容や研修量、質が決まったら、いよいよ本格的な業務遂行に進みます。業務遂行する際は、まずトレーナーがお手本として実際の業務の様子を見せます。業務の概要や意義を説明し、トレーナーが業務を行っているところを観察させた後に、新入社員にも手足を動かして実践させていきます。

業務遂行のシーンでは、よくある課題の「④トレーナーからのフィードバックが少ない」や、「⑤新入社員が受身すぎる」を意識することが大切です。トレーナーは複数のタスクを抱えている場合が多いため、あらかじめフィードバックの回数や頻度、フィードバック方法を決めておくのもおすすめです。また、新入社員が完全に受け身にならないよう、OJT研修の最中に意見を求めるなど、工夫をこらすようにしましょう。

内省支援

OJT研修の最後の段階は、内省支援の実施です。内省支援とは、OJT研修で得た内容を研修対象者が自ら客観的に振り返り、今後の業務に活かしていけるか落とし込む作業です。

研修を通して行った業務を振り返り、自分自身の業務がうまくいったかどうか確認させ、それらの理由や原因を本人に考えてもらいましょう。ただ実務をこなすだけではなく、自分の行った業務を概念化させることで、同じ業務を再び行う際に成功率が高まったり、類似の業務への適用力が養われたりすることが期待できます。

さらにトレーナーへの内省支援も忘れてはいけません。OJT研修を通じて、トレーナーが成功や失敗から何を学んだのかを振り返ることで、よりOJT研修の質が高まっていきます。なお、よくある課題の「④トレーナーからのフィードバックが少ない」を、トレーナーの振り返り項目に入れておけば、対策もしやすいでしょう。

OJT導入時のよくある注意点や、導入チェックリストは次の記事で解説しています。

OJTの課題解決で意識したいこと

OJTの課題解決で意識したいこと

最後に、OJT研修の課題解決をするために意識したい、「意図的・計画的・継続的」の3つの視点について解説します。この3要素はOJT研修の大原則と言われているため、研修計画の作成や研修中などに定期的に振り返り、この3要素から実態がずれていないか確かめるようにしましょう。

1.意図的:トレーナー・トレーニーの目標共有

どのような目的でOJT研修を実施するのか、トレーナーとトレーニーが明確に共有することが大切です。目的を共有することで研修の品質を保つだけでなく、双方の意識を高めることにつながります。

会社側としては、ただ「教えておいてね」と丸投げしてしまうと、これが業務の一環であるとトレーナーに伝わらず、新入社員の放置につながる可能性があるためです。教育をトレーナー任せにせず、大事な任務なのだと認識させるためにも、最初に目標を共有しましょう。

2.計画的:育成計画に基づいたOJT研修

場当たり的に実務経験を積ませても、単に作業手順を覚えるだけで体系的な技能習得にはつながりません。「何を、どこまで、いつまでに習得するのか」という育成計画を立て、それに沿って研修を進める方が効率的に必要なスキルや知識を習得できます。

また、計画がないと振り返りや改善も行えません。独り立ちに必要なステップをこなせているのか、本当に成長できているのか正確に把握するためにも、最初に計画を立てることが重要です。

3.継続的:反復的・段階的に進めていること

計画を一定期間実行したら、振り返りを行い、改善施策を考える時間を取ります。部署のマネージャーとトレーナー、トレーニーの三者で計画の進捗や目標達成度を確認し、改善施策を話し合って計画を修正するフェーズを、あらかじめ計画に入れ込んでおくとよいでしょう。

このようなPDCAサイクルを繰り返すと、OJT研修の精度をより高め、次年度からの育成スピードを早められます。

まとめ

OJT研修のよくある課題と対策法

OJT研修の効果を高めるには、達成したい目標やクリアすべき課題を整理し、対策を練る必要があります。はじめに明確な研修計画を立て、ある程度実行したら振り返りと改善を実施すると、新入社員だけでなくトレーナーも共に成長できる制度となるでしょう。

また、昨今の新入社員は「受け身傾向」にあるという点も理解したうえで研修内容を検討すると、より効果が高まります。競争よりも調和を大事にする若者の価値観を知っておくと、制度設計に活かせるかもしれません。

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人事ZINE 編集部

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