生産性向上の方法とは?指標を用いた分析手法、成功事例3選を紹介

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社内での人材不足などにより、生産性向上について気になっている人事担当者も多いのではないでしょうか?

生産性を高めるためには、生産性向上の正しい意味と目的を理解して、企業が取り入れられる現実的な対策を知っておくことが大切です。

そこで今回は、生産性向上の正確な意味や、自社の生産性を分析する方法、生産性向上のための施策などについて詳しく紹介します。

生産性向上とは

「生産性」とは、「労働力(投入資源)」に対する「成果(生産量)」の比率のことを指し、ものを生産する際に投入資源がどれほど効率的に使われたのかを示します。

生産性を求める計算式は「生み出された成果÷投入資源」です。この計算式で求められる数値が大きいほど「生産性が高い」と判断されます。

たとえば、100人の労働者(投入資源)が10時間かけて1000個の商品(生み出された成果)を作った場合、労働者1人当たりの生産性は「1」です。

労働者の数や労働時間は変わらず1300個の商品を作れるようになれば生産性が「1.3」になるため、「生産性が高くなった」と判断できます。

さらに、同様の労働時間で労働者の数を80人に減らして1000個の商品を作れた場合も、生産性が「12.5」と上がるため「生産性が高くなった」と判断されます。

このように生産性向上は、成果量の増減と投入資源の増減のバランスで実現します。

業務効率化との違い

業務効率化とは、効率が悪いと考えられる業務を効率的に行うための「改善に向けた取り組み」を指します。

つまり、業務の効率化は「生産性向上のための手段の1つ」と考えてもいいでしょう。

生産性を分析する方法

生産性を向上させる前に、自社の現状がどのくらいの生産性なのかを把握する必要があります。

生産性を分析する方法は大きく3つです。

部署間で違う方法で採用していると評価が合わなくなるため、分析方法は社内で統一するようにしましょう。

付加価値労働生産性

付加価値労働生産性とは、「付加価値額」で生産性を算出する方法です。

ここで使われている「付加価値額」とは、売上高から、原材料費や外部加工費などの外部から購入した際にかかる費用と、減価償却費を差し引いたものを指します。(参照:公益財団法人日本生産性本部)

付加価値労働生産性を求める計算式は以下の通りです。

・付加価値労働生産性=付加価値額÷労働量

たとえば、2人の労働者が4時間で40,000円を売り上げ、商品の原材料に24,000円かかっていたとします。

この場合の付加価値額は、「40,000円(売上高)-24,000円(外部から購入した際にかかる費用)」で求められ、付加価値額は16,000円になります。

労働量は、「2人(労働者数)×4時間(1人あたりの労働時間)」となるので「8時間」です。

つまり、このケースでの付加価値労働生産性は、「16,000円(付加価値額)÷8時間(労働量)=2,000円」となります。

物的労働生産性

「1人の労働者における1時間あたりの生産量」で生産性を算出する方法です。計算式は以下となります。

・物的労働生産性=生産量÷労働量

たとえば、労働者3人が2時間で18個の商品を生産した場合、労働量は「3人(労働者数)×2時間(労働時間)」で「6時間」となります。

つまり、物的労働生産性は、「18個(生産量)÷6時間(労働量)=3個/時間」となり、労働者1人が1時間かけて生み出した生産量が求められます。

全要素生産性(TFP)

全要素生産性は、上記の方法で用いた生産性と労働量のみでなく、付加価値・物・サービスを生み作り出すため必要な労働力・資本・原材料・設備など、それらすべてを網羅して生産性を算出します。

なお、全要素生産性は資本の変化を考慮した算出ができるため、「技術進歩率」とも呼ばれます。

生産性向上のための施策

ここからは、すぐにでも実行できる生産性向上の施策を4つご紹介します。

業務内容の可視化

個人が抱えている業務を可視化して優先順位を決めましょう。重要度の低い業務の撤廃や見直しも重要です。

個々の労働者が「何をするべきか」「何をしているのか」を正確に把握できなければ、生産性は高まりません。

コア業務への投資

業務は主に、成果を直接生み出す「コア業務」と、主業務のサポートが主になる「ノンコア業務」に分けられます。

たとえば、営業・商談などといった成果を直接生み出し、顧客との交渉などが必要になるような業務を「コア業務」、メールの送信やデータの抽出といったルーチンワークなど直接成果を生み出さない「ノンコア業務」といいます。

生産性向上の目的は「少ない投入資源で成果を最大限にすること」なので、投資資源はコア業務に集中させましょう。

メールの送信やデータの抽出を自動化できるツールの導入も、ひとつの方法です。

個人単位でのスキルアップ

限られた時間内で最大限のパフォーマンスを発揮するためには、個人単位でのスキルアップも欠かせません。

要点を端的に伝えるための「コミュニケーションスキル」や、特殊な技術や業務がこなせる「専門スキル」など、生産性向上に繋がるスキルはさまざまありますが、その中から自社に適したスキルを見極めて集中的に高めていくことが大切です。

スキルアップは個人に委ねるのではなく、企業側で社内研修や学習機会を提供して、積極的に進めるようにしましょう。

労働者のモチベーション維持

過度な管理を行ったり、必要以上に業務を削り過ぎたりすると、労働者のモチベーションの低下を招きます。

モチベーションの低下は生産性向上を妨げる要因になるので注意が必要です。

生産性向上に役立つとは思われないようなことでも、結果的には生産性向上に結び付くこともあるため、労働環境や定量化された評価制度などを取り入れて労働者のモチベーションの維持を図りましょう。

生産性向上の成功事例

ここからは生産性向上の成功事例を紹介します。事例を参考にして、自社に採用できるアイデアやヒントを見つけてみてください。

京都府 京の宿 綿善旅館

創業187年の老舗旅館「綿善旅館」では、客室係とフロントのコミュニケーションにタブレットとLINEを導入して、業務連絡の簡略化を実現しています。

導入以前は階段を使ってフロントと客室を往復していた客室係の移動時間が短縮できたため、年間で146時間の労働時間削減に成功しました。

また、従業員の保有スキルを可視化するための「スキルマップ」を作成し、繁忙時の人手不足に対応する「応援体制」の構築も行っています。

これにより、特定の従業員にだけ集中していた業務が分散され、年間310時間の労働時間を削減しています。

居酒屋「秋田乃瀧」

秋田市内の「秋田乃瀧」は、個人経営の居酒屋です。

注文票のデータ分析により、半数以上の顧客が「県外からの非常連客」と判明したため、郷土料理を主力とするメニュー構成に変更。

その結果、顧客1人当あたりのフード注文単価が23%上昇しました。

データから改善点を見出して生産性向上に繋げた好例といえるでしょう。

株式会社KMユナイテッド

「株式会社KMユナイテッド」は、従業員33名の塗装会社です。

水性塗料と先端機器を導入して作業効率を約3倍アップさせ、休日や夜間出勤の減少に成功しています。

また、従業員のモチベーションを維持するため、全正社員に週休2日制と短時間勤務可能な制度を導入しています。

まとめ

今回は生産性向上の正確な意味や生産性の分析方法、業務効率化との違いなどに触れながら、生産性向上のための施策と成功事例を紹介しました。

生産性向上を無計画に進めても成果は得られず、企業の成長には繋がりません。まずは現状の自社の生産性を分析した上で、「生産性が高い」と判断できる定義を社内で共有し、労働者ひとりひとりが自覚を持って行動することが大切です。

生産性向上は短期間で実現するものではありません。

まずは、業務を可視化して無駄な作業を撤廃したり、社員研修を取り入れて社員の技術力を向上させるなど、すぐにはじめられる方法を取り入れ改善を目指しましょう。

人事ZINE 編集部

人事ZINE 編集部

人事・採用担当者の悩みに寄り添うメディア「人事ZINE」の編集部です。 人事・採用に関する役に立つ情報や手法を発信します。 就活生の3人に1人が利用する新卒採用オファー型サイト「OfferBox(オファーボックス)」を提供する株式会社i-plugが運営しています。