離職率が高い会社が打つべき施策とは?テレワーク効果で改善は可能?

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人事担当者にとって、会社から課せられる課題の中で頭が痛いものの1つは、離職率の改善です。しかし、企業が考える離職理由と、離職者が離職を決断した理由が乖離していたのでは、離職を防ぐための有効な対策を講じることはできません。

そこで、まず統計資料から離職理由の整理を行い、離職率が高い状況を改善するための一般的な施策や、若年層対策を考えます。

また、テレワークの導入により、社員同士が顔を合わせる機会が減るなど、就業環境が変化しています。就業環境の変化は新たな離職者増加につながりかねません。そこで、テレワーク導入による社員の働く意欲の変化と対策を検証します。テレワーク導入による離職防止の効果についても解説しますので、離職率の高さに悩む人事担当の方は、ぜひ参考にしてください。

何故人は辞めるのか

何故人は辞めるのか

離職率を下げるために施策を考える前に、まず、離職理由を客観的に把握する必要があります。一般的な離職理由(女性や新卒を含む)を、厚生労働省のデータを用いて検証します。また、自社独自の離職理由を検証する施策を紹介します。

人が退職を決断する理由を整理してみよう

始めに、一般的な離職理由を検討します。平成30年の雇用動向調査によれば、常用労働者の離職率は平均14.6%で、ここ10年間はほぼ横ばいで推移しています。この平均離職率は、正社員、パートタイム勤務者にかかわらず離職者全体の数値です。なお、この統計で使われている用語「常用労働者」とは、期間を定めずに雇われている者、または1か月以上の期間を定めて雇われている者のいずれか指します。

次に、男女の離職率を比較すると、女性の離職率は男性より4.6%高くなっています。一因として、女性の就業者のうち、雇用形態が安定していない非正規の職員である割合が高いことが挙げられます。

年齢別に離職率をみると、やはり高いのは若年層です。19歳以下は男女とも30%を、20~24歳以下は25%を超えています。

離職理由を見てみると、男女、年齢層にかかわらず、労働条件及び給料に対する不満を理由とする離職が目立ちます。以上の結果から、労働環境の改善、雇用形態の安定化、若年層へのサポートなどの離職を防ぐための施策が不可欠であることがわかります。

労働環境の改善と雇用形態の安定化は、企業の経営状況や規模によっては、実施することが困難な場合に、定期的な面談を実施して離職の予兆を見逃さないようにするなど、費用を掛けなくてもできることを工夫しましょう。

若年層へのサポート策として、メンター制度の活用も有効です。同世代が少ない部署に若年層が配属された場合など、仕事への不安や上司への不満が離職につながらないようにするためには、若年層が気軽に相談できる相手を確保してあげる必要があります。公私ともに相談者となるメンター制度の導入は、若年層の離職を防ぐ施策の1つとなるでしょう。

▼ 参考
平成30年雇用動向調査結果の概要 厚生労働省
毎月勤労統計調査で使用されている主な用語の説明 厚生労働省
働く女性の状況 厚生労働省

人生のイベントが最大の離職タイミング

離職理由の中で、忘れてはならないのがライフイベントによる離職です。平成30年に厚生労働省が実施した雇用動向調査によれば、女性が「結婚、出産、育児、介護、看護」といった人生のイベントに絡む理由で離職する率は5.1%で、男性の約3倍となっています。

平成30年の内閣府の調査によれば、女性が第1子出産を機に離職する割合は約47%です。以前よりは減ったものの、いまだ第1子出産時に離職する女性が多いことがわかります。第1子の妊娠・出産を機に仕事をやめた理由として最も割合が高かったのが「子育てをしながら仕事を続けるのは大変だったから」です。

また、介護を理由とする離職者の男女比も女性の方が多くなっています。平成29年の調査によれば、介護を理由とする離職者の約8割が女性です。女性が出産や介護を機に離職せず働き続けられるようにするためには、育児・介護休業を利用しやすい体制・社風にあるかどうか、見直す必要があるでしょう。

▼ 参考
「第1子出産前後の女性の継続就業率」及び出産・育児と女性の就業状況について
平成29年就業構造基本調査

新卒社員の早期離職を防ぐインターンシップ

大手人材会社であるアデコ株式会社が実施した「新卒入社3年以内離職の理由に関する調査」によると、新入社員が離職理由として第1位にあげているのは「自分の希望と業務内容とのミスマッチ」です。

前述した一般的な離職理由の上位は、職場環境や雇用条件に対する不満なので、離職理由の1位が「自分の希望と業務内容のミスマッチ」というのは、新卒入社の特有の傾向といえます。

新卒社員の早期離職率が高い企業においては、インターンシップの積極的活用により、新卒社員の希望と業務内容のミスマッチを防ぐなどの施策が必要です。しかし、インターンシップで自社の魅力をPRすることに重きを置き過ぎたり、入社後に実際に従事すべき業務とかけ離れた業務しか学生が体験できなければ、インターンシップの意義が薄れてしまいます。新卒社員が早期に離職してしまう理由は、「自分の希望と業務内容のミスマッチ」だからです。

学生が自己の職業適性や将来設計についてイメージでき、受け入れ先企業に対する理解が深まるインターンシップとすれば、新卒社員と企業のミスマッチを減らす有効な施策となります。そのためにも自社での活躍及び定着が見込める人材の要件を策定すべきです。

人材要件には勤務条件や能力、経験、志向性や人柄などがあります。とくに志向性や人柄については注意が必要です。企業が求める志向性や人柄に沿わない学生を採用してしまうと、能力が高い学生であっても、企業と学生のミスマッチが生じて早期離職につながる可能性が高くなってしまいます。なお、インターンシップ推進にあたっての基本的な考え方は、厚生労働省が指針を示していますので、参考にしてください。

▼ 参考
新卒入社3年以内離職の理由に関する調査 アデコグループ
第5回 今後の若年者雇用に関する研究会事務局説明資料 厚生労働省

退職アンケートで離職理由を分析

一般的な離職理由に加えて、女性や新卒社員の離職を防ぐ施策を検討しました。加えて、自社独自の離職理由を探る方法についても紹介します。

離職した社員から本当の離職理由を聞き出せれば、離職を防ぐ効果的な手だてを構築することができます。そこで活用したいのが退職アンケートです。退職アンケートは、退職希望者にオンラインでヒアリングするため、退職希望者が回答しやすい方法です。ただし、退職アンケートを実施してしまうと慰留がしづらい、退職アンケートツール導入の負担などのマイナス面もあります。

ウィズコロナでやってくる新しい時代に備えよう  

ウィズコロナでやってくる新しい時代に備えよう  

新型コロナウィルスが流行し、テレワークの導入など、労働者の就業環境が大きく変化しました。テレワーク導入が労働者に与えた具体的な影響につき、リクルートの調査をもとに考えます。

退職予備軍が増加?コロナ禍で今、何が起こっているのか

リクルートの調査実施時点(2020年9月)において、調査対象者の48.1%が、週の労働時間の50%以上の割合でテレワーク勤務しています。その時点でテレワーク実施者に、テレワーク実施前後の働くモチベーションについて行ったアンケートの結果を見てみましょう。

「非常に高い」「やや高い」と回答した人の合計は、テレワーク実施前は、回答者全体の26.6%でした。テレワーク実施後も25.9%であり、テレワーク実施前の数値と大きな差はありません。しかし、働くモチベーションについて「非常に低い」「低い」と回答した人の合計の割合は、テレワーク実施前後で大きな開きがあります。テレワーク実施前は14.1%だったのに対し、テレワーク実施後は、22.5%となってしまいました。

テレワーク実施後に、働くモチベーションが下がった人が多かった一因として、テレワークでは仕事の全体像やチーム全体の働き方が分かりづらいという点をあげることができます。とくに、テレワーク実施後に、チームでの仕事が減った人は、働くモチベーションについて「非常に低い」「低い」と回答した人の合計の割合が、テレワーク実施前は13.9%、実施後は28.4%と、14.5%も増えています。

テレワークにおけるコミュニケーションツール

テレワークによる働くモチベーションの低下は、離職に結び付きかねません。今後も、既にテレワークを実施している企業だけでなく、一旦テレワークを縮小・廃止した企業も、暫くテレワークを実施・拡大を決断する場合もあるでしょう。そのような状況を見越して、テレワークでコミュケーションの取り方や仕事の進め方に不安を感じないよう、企業としてどんな施策を構築できるかを考える必要があります。

テレワークにおいても社員同士の雑談が重要視されています。普段、顔を見て雑談をしていれば、それぞれの進捗状況や体調、メンタル面など細やかに気付けても、1日に雑談0分のテレワークを続けていると、互いに本音を吐きづらい状況になってしまうためです。

テレワーク下の雑談確保策として、定番なところでは、オンラインランチ会やオンライン飲み会があります、また、テレワーク施策に積極的な企業では、社員全員を対象としたテキストチャットの雑談専用チャンネルを設け、各社員が自由に家族のことなどを書き込めるようにして、社員間のコミュニケーション促進をはかっています。

コロナ禍のテレワークを逆手に取る

コロナ禍のテレワークを逆手に取る

最後に、「テレワーク実施の効果」について考えます。

テレワークの効果と離職防止

 テレワーク実施の効果は次の5つです。

  • 社員のワークライフ・バランスの向上
  • コスト削減・節電
  • 業務生産性の向上
  • 事業継続性の確保
  • 新規雇用・離職防止

注目すべきは離職防止効果です。先述したとおり、ライフイベントをきっかけとして離職する女性が多く、仕事に慣れてきた女性社員の離職は企業の損失でもあります。また、介護を理由とする離職も多くなっています。テレワークは、第一子を出産後の女性の離職に加えて、介護を理由とする離職を防ぐ施策として効果を期待できるでしょう。

テレワーク総合ポータルサイト 効果・効用 厚生労働省

 テレワークと新規採用

テレワークを実施することにより、採用に良い影響を及ぼすこともあります。それは、優秀な女子学生と地方在住の人材の確保です。最近の女子学生は、結婚後も働き続けやすい企業を選ぶ傾向にあります。

結婚や出産・子育てと仕事の両立をしやすい在宅勤務制度を導入している企業は、女子学生に人気です。また、テレワーク導入により地方在住者を雇用することも可能になります。社員間の円滑なコミュニケーション促進に積極的に取り組めば、地方在住の社員が孤立する心配もありません。

このように、テレワークは見方を変えれば、新たな人材確保の強力なツールにもなるのです。

コロナ禍で離職率を下げるための視点 

コロナ禍で離職率を下げるための視点 

はじめに、男女別、年齢別の離職理由や離職率、新卒社員の離職理由を確認し、企業が打つべき施策につき見てきました。ライフイベントを契機として離職する女性が多く、育児休暇、介護休暇を取得しやすい社風かどうか、改めて見直すべき企業もあるでしょう。

自社の社員が離職した理由が明確でない企業であれば、独自の離職理由を丁寧に検証する必要があります そして、コロナ禍において進んだテレワークについて考えました。

テレワークであっても、社員間のコミュニケーションが非常に大切です。テレワークを導入したものの、社員の孤立感を解消する施策を構築しないまま過ぎてしまうと、優秀な人材を失いかねません。

 一方でテレワークは、強力な離職防止策になることもわかりました。テレワークには、子育てや介護と仕事を両立したい社員がキャリアを捨てず、企業も人材を失わずにすむというメリットがあります。

困難な時代において離職率を下げる施策を考えなければならないと思うと、気が重くなってしまいますが効果的な対策を模索してみてください。

人事ZINE 編集部

人事ZINE 編集部

人事・採用担当者の悩みに寄り添うメディア「人事ZINE」の編集部です。 人事・採用に関する役に立つ情報や手法を発信します。 就活生の3人に1人が利用する新卒採用オファー型サイト「OfferBox(オファーボックス)」を提供する株式会社i-plugが運営しています。