【業界別】新卒採用の課題・成功方法とは?学生の業界イメージも紹介
コロナ禍の影響から日常生活も様変わりし、人々の価値観も激変した近年。
それは就活生も例外ではなく、仕事・業界に対するイメージも大きく変わってきています。ターゲットとなる人材を確保するためにも、学生が自社業界にどのようなプラスイメージ、マイナスイメージを持っているかを分析、把握することが重要です。
今回は、業界別に学生の業界に抱くイメージと、それに伴う課題や成功ポイントも紹介します。
目次
企業が新卒採用で自社業界を意識することの重要性
学生が自社業界にどのようなイメージを抱いているかをご存知でしょうか。
特に新卒採用においては、自社業界がどのような印象を持たれているかを把握しておくことが重要です。その重要性について解説していきます。
学生の興味関心の獲得
学生の興味関心を得るためには、自社業界のイメージや現状、立ち位置なども把握し、学生に伝えられるように準備しておかなければなりません。
学生は、「建設業=肉体労働」「広告業界=残業が多い」など、業界に関して何かしらの固定的で偏ったイメージを持っていることがあります。学生はネットの情報やニュースなどで情報を得ており、イメージ通りであるケースもありますが、実際には正しくない情報を鵜呑みにしていることもあるものです。
学生は自社業界に対しどのような印象を持っているかを正確に把握することで、認識の相違を防ぎ自社業界、ひいては自社に興味を持ってもらうための対策も立てやすくなるでしょう。
入社後のミスマッチの解消
入社後のミスマッチを解消するためにも、業界イメージの把握は重要です。
学生が業界に対して、好ましいイメージを持ってくれていることは採用担当者としては嬉しい点ではありますが、逆に業界に対して過度な期待を持っている危険性も否めません。その場合、入社した後に「こんなに大変だと思わなかった」などギャップを感じてしまい、早期退職につながるリスクが発生してしまいます。
そのリスクを解消するためにも、あらかじめ学生が自社業界に抱いているイメージを把握し、そのうえで自社業界で働くメリット・デメリットや、自社業界・自社内で活躍できる要件を明示しておくことで、誤解を招くことなく自社を訴求できます。
学生が業界に対して抱いているイメージと近年の動向
学生が就職先を決定するうえで、重要視しているのが会社のビジネスモデル、働き方、将来性です。これらが魅力的な業界は学生から好印象を持たれており、新卒採用において母集団形成の観点からも大きな武器となります。一方、良いイメージを持たれていない業界の企業は訴求方法を工夫しなければなりません。
実際に、学生が好印象を持っているのはどの業界なのでしょうか。
ビジネスモデル:商社・コンサル・IT系が好印象
マイナビ「2022年卒大学生 業界イメージ調査 <業界別>」によると、学生がビジネスモデルにプラスイメージを持っている業界は以下の通りでした。
- 1位.総合商社:9.7%
- 2位.コンサルティング・調査:9.2%
- 3位.専門商社:8.6%
- 4位.クレジット・信販・リース:7.5%
- 5位.ソフトウエア・情報処理・ネット関連:6.6%
1〜4位は前年も上位にランクインしている業界で、学生にとってビジネスモデルに期待が持てる業種であることが明らかです。そのほか、ビジネスモデルのプラスイメージで5位に台頭してきたのがIT系。コロナ禍の影響により、授業や採用選考のオンライン化が進み、ITの有用性を身をもって知った学生が、IT系業界のビジネスモデルに好印象を持つようになったことが背景にあるようです。
参考:サポネット「マイナビ2022年卒大学生 業界イメージ調査 <業界別>」(https://saponet.mynavi.jp/news/news_file/file/s-column-508_0003.pdf)
働き方:金融・素材・官公庁系がプラスの印象
マイナビが実施した同アンケート調査によると、学生が働き方に良いイメージを持っている業界は以下の通りでした。
- 1位.官公庁・公社・団体:12.5%
- 2位.銀行・証券:8.5%
- 3位.クレジット・信販・リース:5.5%
- 4位.生保・損保:5.1%
- 5位.繊維・化学・ゴム・ガラス・セラミック:4.7%
圧倒的に働き方で好印象を持たれているのが官公庁系です。残業が少なく、休日・休暇・労働時間が安定している印象を持たれている傾向にあります。官公庁系に次いで金融業界、素材業界という結果です。オンとオフを分けたいという学生も多く、「残業時間が少ない」「休日がしっかり取れる」というイメージがある業界に対しては好印象を持ちやすくなるようです。
将来性:IT・通信・機械系がプラスイメージ
マイナビが実施した「2022年卒大学生 業界イメージ調査 <業界別>」によると、学生が将来性にプラスイメージを持っている業界は以下の通りでした。
- 1位.ソフトウエア・情報処理・ネット関連:26.6%
- 2位.通信業界:18.7%
- 3位.精密・医療機器:13.8%
- 4位.電子・電気機器:11.8%
- 5位.介護・福祉サービス業界:10.9%
圧倒的にプラスイメージを抱いているのがIT業界です。各業界におけるデジタル化・AI化が進み、コロナ禍の影響から技術力の高さも実感しています。そのような背景から、IT業界に対して将来性があると期待を抱いている学生も少なくありません。また、介護・福祉サービスが5位にラインクイン。高齢化の影響によりそのニーズが年々高まっていることから、将来性を期待されているようです。
【業界別】新卒採用の課題と成功ポイント
ここからは、業種別に学生の動向とイメージとともに、新卒採用の課題と成功のポイントを解説します。自社業界に学生どのようなイメージを持っているかをしっかり把握し、採用戦略の参考にしてください。
商社・流通・小売
主に以下のような業種・業態が挙げられます。
- 総合商社
- 専門商社
- 百貨店・スーパー・コンビニ
- 専門店
学生動向・イメージについては、総合商社、専門商社とも、「エントリーした」「企業の個別セミナーに参加した」という学生は増加傾向にあり、業界イメージが「良い方向に変わった」という学生も増加しました。
一方、学生から「スキルが身に付くのか」「御用聞き」「離職率が高い」「体育会系」などの声もあり、これらのイメージを払拭することが課題として残ります。
課題を念頭に具体的なキャリアパスや働き方を示すとともに、基本的に学生の認知が高く「グローバル」「給与・待遇」「実力主義・能力主義」「人の役に立つ」といった項目でプラスのイメージを持つ学生が多いため、新卒採用ではこれらのポイントを具体的に訴求することが成功の鍵となりそうです。
広告・出版・マスコミ
該当するのは主に以下の業種・業態です。
- 広告・芸能
- 放送・新聞・出版
学生動向・イメージについては、業界全体で「就職先として検討した」「エントリーした」という学生が増加傾向にあるなか、理系学生からのエントリーが全体的に減少しました。業界イメージは全体的に変わっておらず、「残業が多い」というマイナスイメージが残ります。
「残業が多い」「ブラックなイメージ」を持たれている傾向にあるため、これらのイメージを払拭していくことが課題となりそうです。
成功ポイントとしては、「世間への影響力」「広告・出版・マスコミでしかできない仕事の魅力」でプラスイメージを持つ学生が多いため、働き方を明確に伝えたのち、残業時間に見合うようなやりがいを中心に訴求するのが1つの手となるでしょう。
インフラ
インフラとしては次のような業種・業態が挙げられます。
- 電力・ガス・エネルギー
- 鉄道・航空
- 陸運・海運・物流
電気系、物流系の業界は「インターンシップへの参加」「就職先として検討した」「エントリーした」など全体的にアクションが増加傾向。交通業界については、「企業の個別セミナーに参加した」学生は増加したものの、全体的に減少しました。ただし、根強く「人の役に立つ」「社会貢献・環境への取り組み」「社会全体へ影響」など社会貢献度の高い業種として認識されている点は変わりません。
「女性の活躍ができにくい」「労働時間が不安定」など働き方に関してのマイナスイメージを持たれている傾向にあり、イメージを払拭することが課題です。
成功ポイントとしては、女性のキャリアパスや働き方を明確に示し、女性のロールモデルがいれば紹介したいところ。「将来性」「変革性」に期待を寄せている学生もいるため、会社としてのビジョンや変革なども明確に示すのが成功の鍵です。
サービス
サービス業界に属するのは、主に以下のような業種・業態です。
- 人材サービス(派遣・紹介)
- エステ・理美容・フィットネス
- 教育
- 冠婚葬祭
- 介護・福祉サービス
サービス業界は全体的に「企業の個別セミナーに参加した」学生が増加傾向で、なかでも介護・福祉サービス業界は「インターンへの参加」「エントリー」などが増加しました。
「給与・待遇」「職場環境」に関するマイナスイメージがあり、景気に左右されるのではと不安に思っている学生が多いため、そのイメージを払拭することが課題です。
成功ポイントとしては、昇給や賞与、福利厚生などについても明示し、職場の雰囲気や人間関係などについても明確に伝えることが挙げられます。「社会への影響」「仕事の魅力」をプラスに捉えている学生も多いため、社会貢献度も踏まえ仕事内容とキャリアパスを説明するのもよいでしょう。
食品・フード
主に以下のような業種・業態を指します。
- 食品・農林・水産
- 給食・フードサービス
学生動向としては、いずれも「企業の個別セミナーに参加した」数は増加したものの、「インターンシップに参加した」「エントリーした」数が減少傾向です。「人の役に立つ」「安定している」というイメージを持っている学生が多く、「女性の活躍」に期待を寄せる声もありました。
コロナ禍などを理由に「将来性」に不安を感じている学生が増加。コロナ禍で先行きが不透明ななか会社の経営状態に安心してもらうのが課題といえそうです。
課題を念頭に入れ、コロナ対策や今後の見通しなどをしっかり説明したいところ。「給与・待遇」で不満を持つ意見も散見されたため、会社の今後に合わせ、キャリアパスなども明確に伝えておくのがポイントとなるでしょう。
旅行・エンタメ
主に以下のような業種・業態が該当します。
- ホテル・旅行
- アミューズメント・レジャー
「企業の個別セミナーに参加した」学生は増加傾向にあるものの、「インターンシップに参加した」「エントリーした」数は減少しました。「明るい・楽しい」「グローバル」という印象を持つ学生も多い一方で、コロナ禍における経営状態を不安視する意見が多く見られます。
コロナ禍の影響をダイレクトに受けている業界であることから「安定性」「将来性」にマイナスイメージを持たれている傾向にあり、不安を払拭するのが課題です。
学生に対しては、コロナ禍においての経営計画など、アフターコロナに向けた施策などがあれば明示しましょう。「ホスピタリティを磨ける」という意見もあり、「仕事のやりがい」「職場環境」などを分かりやすく訴求することが成功のポイントです。
IT・通信
次の業種・業態が挙げられます。
- ソフトウエア・情報処理・ネット関連
- 通信
IT系、通信系ともに「インターンシップに参加した」「エントリーした」「応募企業として検討した」数が増加傾向でした。「将来性」「変革性」などプラスイメージを持つ学生が多く、業界イメージが「良い方向に変わった」と回答した学生も増加傾向です。
「女性の活躍」「定着率」「仕事の魅力」「給与・待遇」にマイナスイメージを持っている傾向にあるため、イメージを払拭するのが課題となります。
労働環境に関する不安を払拭するために、仕事内容、職場環境については細かく解説しましょう。仕事がどのような発展につながるかを紐付けることで、「将来性」「変革性」への期待も同時に高められます。女性の活躍に対するイメージがないため、女性管理職やロールモデルを紹介するとイメージも変わりやすいでしょう。
金融・不動産・リサーチ
主に以下のような業種・業態が挙げられます。
- コンサルティング・調査
- 銀行・証券
- クレジット・信販・リース
- 生保・損保
- 不動産
学生動向・イメージについては、金融業界、不動産業界、リサーチ業界ともに、「就職先として検討した」「エントリーした」数が伸びている傾向です。「安定」「給与・待遇」などの項目でプラスイメージを持っている学生が多く、キャッシュレス化、AI普及で「将来性」に期待する声もあります。
一方、「職場の人間関係」「明るさ・楽しさ」にマイナスイメージがあるため、職場環境に関するイメージを払拭するのが課題です。
成功ポイントとしては、「仕事内容」に合わせて「学生に期待していること」を明示することでしょう。また、どのような人が働いているかが分かるような情報を提供することで、「職場の人間関係」「明るさ・楽しさ」へのイメージアップを図るのも重要です。
製造・機械・素材
以下のように幅広い業種・業態を含みます。
- 自動車・輸送用機器
- 精密・医療機器
- 機械・プラント
- 電子・電気機器
- 鉄鋼・金属・鉱業
- 繊維・化学・ゴム・ガラス・セラミック
電子系業界、素材系業界以外は、「企業の個別セミナーに参加した」数が増加しましたが、インターンシップの参加数やエントリー数はほぼ横ばいでした。電子系業界、素材系業界以外は「インターンシップへの参加」「エントリーした」などの数が全体的に増加傾向にあり、「技術力・商品企画力」「安定性」にプラスイメージを持つ学生が多いのが特徴です。
「給与・待遇」「休日・休暇・労働時間」にマイナスイメージを持つ傾向にあり、職場環境についてイメージを払拭するのが課題といえます。
「イメージと違った」という意見が多いため、仕事内容とキャリアパス、業界としての展望なども細かく説明することで、業界イメージの相違をなくすのが成功のポイントになるでしょう。
まとめ
今回は学生の業界イメージと動向、新卒採用の課題と成功のポイントについて紹介しました。
情報収集が簡単にできる時代、情報1つで業界や会社のイメージが大きく左右されます。自社業界にどのようなイメージを抱いているかを理解できれば、切り口を変えて訴求していくことも可能になります。
まずは、自社業界のイメージをしっかりと分析し、自社にマッチした人材確保に向けた採用計画を立てましょう。