人事必見!新卒採用した試用期間中に解雇は可能か?ポイントと注意事項を解説

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企業が新卒社員を採用する際に、採用試験だけでは能力や適性を判断することが難しいと嘆く担当者も多いのではないでしょうか。そのため、一定期間を試用期間として勤務した上で、正式に雇用契約を結ぶのが一般的です。

それでは、試用期間中に「該当社員のスキルでは業務の遂行が困難である」、「該当社員がイメージしていた業務と全く異なっていた」などミスマッチと判断される場合には、解雇できるのでしょうか。

そこでこの記事では、

  • 試用社員を解雇できる理由や解雇の手続き
  • 解雇する際のポイントや注意点

を解説します。

2025年卒の市場を分析!これからの新卒採用戦術
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試用期間とは?

試用期間とは?

試用期間とは企業が社員を採用する際に、実際に勤務を交えて能力や適性を評価する期間です。試用期間の勤務に大きな問題がなければ、正式な雇用契約を結ぶことになります。

試用期間中は、「解約権留保付労働契約」とみなされるのが一般的です。これは雇用のミスマッチにより業務の遂行が困難であると判断される場合に、試用期間中であればそれだけの理由で、企業は留保している労働契約を解約する権利を有しているという契約です。

一般的な試用期間の設定期間

多くの企業では、試用期間を2カ月~4カ月の範囲で設定しています。試用期間の長さについて、労働基準法をはじめとする法律では規定されていません。

しかし、過去には試用期間があまりに長すぎるため民法の公序良俗に違反するという判例があります。(昭和59年 名古屋地裁 ブラザー工業事件)

この判例の試用期間は、入社後6カ月の見習い社員期間、その後6カ月~12カ月の試用期間を設けていました。

国家公務員や地方公務員では、試用期間は6カ月とされています。そのため、民間企業においても、長くても6カ月以内に設定するとよいでしょう。

なお、新卒採用と中途採用では試用期間の目的が多少異なります。新卒採用では、そもそも能力が不足していて当然ですので、試用期間は新入社員教育の期間も兼ねています。

一方、中途採用では従業員としての適性と能力を評価することが必要です。中途採用者の場合、配属を予定している職務に必要な経験や能力があると判断した上で採用しています。そのため、試用期間を廃止したり短縮したりするケースもあります。しかし、雇用のミスマッチを防ぐためには中途採用でも、試用期間を設けて本採用を判断した方がよいでしょう。

試用期間中の解雇手続き

試用期間中の解雇手続き

試用期間中は本採用後と比べると、広い範囲の理由で解雇ができます。しかし、解雇するには正当な理由が必要です。また、試用期間中であっても、試用期間が始まってから14日を超えて雇用した場合には、解雇予告が必要となります。

試用期間中の解雇理由

試用期間中とはいえ、すべてのケースで本採用を見送って解雇できるわけではありません。解雇には客観的にみて相当の理由が必要です。そのような理由がなく解雇した場合には、不当解雇であると訴えられる可能性もあります。

一般的には以下のような理由で、本採用の見送りや解雇が決定される場合が多いようです。

・業務を遂行するための能力が不足している

中途採用者は即戦力として期待されて採用しています。また、新卒採用者の場合はそもそも能力が不足して当然です。しかし、会社が期待していた能力やスキルとあまりにもかけ離れている場合には、解雇の理由となるでしょう。

・無断欠勤や遅刻を繰り返す

無断欠勤や遅刻が多い場合など、「自己管理ができていない」「社会人としての最低限守るべきルールが守れていない」ようなケースも解雇の理由として考えられます。

・上司の指示に従わないなど勤務態度が著しく悪い

上司の指示に従わなかったり、反抗的な態度をとったりするなど、他の社員との協調性に欠けると、職場の雰囲気を壊して周囲に迷惑をかけます。このようなケースでも、極端な場合には解雇の理由となります。

・履歴書や職務経歴書に虚偽の記載があり経歴詐称であった

特に中途採用では応募者の経験や能力、資格などに期待して採用しています。履歴書や職務経歴書に書かれている内容に虚偽がある場合には、会社が求めているスキルを有していない可能性があるため、解雇が認められやすくなります。

就業規則に記載された解雇事由

従業員を解雇するためには、その理由が就業規則に記載された解雇事由であることが必要です。そもそも、試用期間の定めが就業規則にはっきりと記載されていないケースもあります。まずは自社の就業規則に、試用期間における社員の取扱いや、解雇となる場合の事由が書かれているか確認しましょう。

試用期間中に解雇する際の注意点

上記のような理由により、試用期間中に解雇する場合でも、解雇を予告するまでは会社側が指導方法を改善するなど、客観的視点での判断が求められます。

・業務を遂行するための能力が不足しているため解雇する際の注意点

業務を遂行するための能力が不足しているようなケースでは、必要なスキルが身につくような教育の機会を設けることが必要です。

さらに、該当能力を必要としない部署への配属を検討するなど、考えられる手段を講じましょう。このような対策を行っても試用社員を解雇するしかないという状況で初めて、解雇が認められます。

・無断欠勤や遅刻を繰り返すため解雇する際の注意点

無断欠勤や遅刻を繰り返す試用社員を解雇する場合でも、本人に注意や指導をした上で「これ以上の無断欠勤や遅刻があれば、試用期間中に解雇せざるを得ない」と、通告する必要があります。

・上司の指示に従わないなど勤務態度が著しく悪いため解雇する際の注意点

上記の無断欠勤や遅刻と同様に、会社から本人への注意や指導が求められます。それでも勤務態度が改められないときには、事前に通告した上で解雇の判断をしましょう。

・履歴書や職務経歴書に虚偽の記載があり経歴詐称であったため解雇する際の注意点

履歴書や職務経歴書に虚偽の記載があった場合には、その虚偽記載の事実を本人に確認しましょう。就業規則に履歴書や職務経歴書の虚偽記載が解雇事由として記載されていたとしても、裁判では懲戒解雇は妥当ではないと判断されるケースがあります。

裁判になった場合には以下3点が重視されます。

  • 採否の判断に、重大な影響を及ぼす内容の経歴詐称であったか
  • 社内の秩序を維持することを困難にさせる可能性があるかどうか
  • 本人に期待する労働力の評価を誤らせる程度であったか

解雇予告について

試用期間中であっても、解雇するには解雇予告が必要です。この場合は労働基準法第20条により、30日前の解雇予告、もしくは30日分以上の平均賃金の支払いが必要です。

ただし、試用期間開始から14日以内に解雇する場合は、「解雇予告をすることなく解雇ができる」と労働基準法第21条に規定されています。

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試用期間を延長する際の注意点

試用期間を延長する際の注意点

試用期間の終了間際まで、本採用とするか、または本採用を見送って解雇とするか迷うケースもあるはずです。このような場合、試用社員の様子をもう少しみるために試用期間を延長する際には、次の2点に注意しましょう。

  • 試用期間を延長する可能性がある場合には、就業規則にその旨を記載しておく
  • 試用期間を延長する場合には、文書で本人の同意を得る

試用期間で解雇は可能だが、客観的な理由と会社の努力が必要

試用期間は新規に採用した社員が自社にマッチして能力を発揮できるかを判断する期間です。しかし、お互いにミスマッチだったとしても会社から一方的に解雇できるわけではありません。

解雇するためには客観的視点でのふさわしい理由と、解雇を通告するまでの指導や注意といった会社側の努力が必要です。これらが認められなければ、解雇した本人から訴えられて、裁判となった場合には、不当解雇と判断される可能性もあります。

上述のことに気をつけることはもちろんですが、何よりもお互いにミスマッチが起こらないよう、採用時の要件定義をしっかりおこなったり、採用過程で見極められるような体制を確立していきましょう。

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人事ZINE 編集部

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