ダイレクトソーシングとは?6つのデメリットと克服方法、採用のコツを解説
高スキル人材が不足している現状に対処し、知名度の壁を乗り越える方法の1つとしてダイレクトソーシングが注目されています。
ダイレクトソーシングの導入を検討するにあたり、そのデメリットを把握しておきましょう。通常の採用手法と比較したメリットと、デメリットを回避して効果を高めるコツも解説します。
また、これからの新卒採用においてダイレクトリクルーティングを検討していきたい方向けに「はじめてのダイレクトリクルーティング」という資料も用意しました。こちらもダウンロードしていただき、本記事とあわせて検討の材料としてご活用ください。
目次
ダイレクトソーシングについて採用担当者が知るべき基礎知識
ダイレクトソーシングの基本として、その意味(定義)と、注目される背景を見ていきましょう。
ダイレクトソーシングの意味
ダイレクトソーシングとは、企業側から求職者に対して直接アプローチする採用手法のことです。
求人サイトなどを通じて、求職者の方から企業にエントリーする一般的な採用手法とは異なります。優秀な人材がエントリーしてくるのを待つのではなく、企業側から自社の条件に合致する人材を探しにいく手法です。
SNSや、就活生が自分のプロフィールを掲載できる逆求人サイトなどを利用して、自社の希望する条件に合った人材を探します。
似た用語にダイレクトリクルーティングがありますが、こちらはアプローチ・オファーだけでなくその後の選考フェーズまでを含めた人事フロー全体を指す言葉です。とはいえ、両者は同じ意味で使われることもあります。
ダイレクトソーシングが注目される背景
ダイレクトソーシングは、高スキル人材の争奪戦が激化していることから注目されています。
IT・通信系や製造系などで必要な高スキル人材は供給不足の状況にあり、従来のような待ちの姿勢では、人材を獲得しにくい状態です。その結果、「優秀な人材を他社に取られる前に主体的にアプローチしなければ」という危機感が高まり、ダイレクトソーシングが注目されています。
特に大手企業と比べて知名度が劣る中小・スタートアップ企業や、学生からの認知度が低いBtoB企業でも優秀な人材との接点を作りやすいという点で、注目を集めている手法です。
ダイレクトソーシングの6つのデメリット
ダイレクトソーシングの導入を検討するにあたり、まずはデメリットを把握しておきましょう。主な6つの点を解説します。
1.候補者探しを行う必要がある
企業側から人材を探しにいく手間がかかることが、ダイレクトソーシングのデメリットの1つです。
待っているだけでも求人ページが閲覧され、何らかの進展が期待できる従来の方式とは異なり、こちらから動かないと何も進展しません。オファーをせず、人材を検索するだけでも時間が取られます。
募集サイトなどに求人を掲載する際にかかる費用は減りますが、その分、自社の人事担当者の手間と人件費がかかるという点は把握しておきましょう。
2.オファーの工数がかかる
探し出した候補者に対して、個別にオファーする工数もかかります。
どのようなメッセージを送り、関心を引くためにどのような訴求をするか、候補者ごとに個別に考える必要があるためです。
定型文を掲載して一括で募集できる従来型の方法と比べて、1人あたりに多くの時間をかける必要があります。
3.採用ノウハウが必要
ダイレクトソーシングで自社が求める人材を採用するには、求職者と交渉するノウハウが必要です。
従来型の方法では、企業側からの交渉はほとんど必要ないことが多くあります。募集サイトに応募する人は「転職したい」「仕事が欲しい」「方向性をある程度定めて就職活動している」というニーズが強いためです。
一方、ダイレクトソーシングの場合は、「就職先として自社業界は検討していない人」や「転職ニーズを感じていない人」といった潜在層にもオファーします。ニーズを引き出し、採用につなげる工夫が求められる手法です。
4.優秀な人材の争奪戦が発生する
自社にとって魅力的な人材は、競合他社から見ても同じように欲しい人材であることが多いため、争奪戦が発生しやすいという点にも注意が必要です。
買い手市場だとしても優秀な人材はそう多くはないため、必然的に競争が激しくなります。
自社が欲しい人材に対して他社よりも早くオファーするスピード感や、興味を引くノウハウが求められるということです。
5.大量採用には向かない
ダイレクトソーシングでは1人あたりに手間と時間をかける必要があるため、短期間に大量採用するのが難しいというデメリットもあります。
緊急で大人数の人材を必要とする状況には向いていない手法です。
緊急性がなく、長期間にわたって採用をかけることができる状況なら、最終目標とする採用人数が大きいとしてもダイレクトソーシングを活用できます。
6.選考で不採用としにくい
ダイレクトソーシングでは自社側から声をかける以上、選考で不採用にしづらくなる点も考慮しましょう。
声をかけた人材と面談した結果、自社に合わないと感じても、「こちらから声をかけた以上、不採用にするのも失礼か」などと考えてしまうためです。
声をかける人材を慎重に選び、誤解を招かないオファーのかけ方をするなど、トラブルを防ぐ採用フローを構築する必要があります。
ダイレクトソーシングを検討する際に知っておきたい実際のメリット
デメリットをふまえ、ダイレクトソーシングを利用する実際のメリットを知っておきましょう。主に3つの点が挙げられます。
待っていては会えない層にも会える
「待つアプローチ」では自社に応募してくる見込みのない人材に会えることが、ダイレクトソーシングのメリットです。
知名度で大企業に劣る場合、自社が求める優秀な人材が応募してくる可能性が低くなります。
ダイレクトソーシングを活用し、こちらから自社の求める要件を満たす人材に働きかけることは、知名度のハンディキャップを乗り越えるために役立つのです。
条件を満たす人材を狙い撃ちできる
希望する条件に合った人材だけに絞り込んでアプローチできるというメリットもあります。
従来の方式は多くの応募者を集められますが、条件に合わない人材も広く集まってしまうことがデメリットです。求人広告に費用をかけても、条件に会う人材が1人も応募してこないということもあるでしょう。
ダイレクトソーシングで利用する逆求人サイトなどでは、登録している人材のプロフィールを検索し、条件を満たす人材を絞り込めるようになっています。
サービスによっては学生が受ける適性検査と、自社の求める人材像をマッチングする機能もあり、理想の人材だけにピンポイントでのオファーが可能です。
「採用が成立して初めて費用が発生する」というサービスも多いため、無駄な費用を抑えられます。
採用ナレッジが蓄積できる
採用のノウハウをナレッジとして自社に蓄積できるというメリットもあります。
ダイレクトソーシングは社内の担当者のスキルに依存する面が大きいからこそ、そのノウハウが蓄積されるというメリットにつながるのです。
ナレッジによって人事業務の効率化ができ、他社にはできないアプローチによる差別化もできるようになります。
ダイレクトソーシングは継続的に取り組むことで、メリットが大きくなるのです。
ダイレクトソーシングのデメリットを克服して優秀な人材を採用する方法
ダイレクトソーシングを導入する具体的な方法を解説します。既に解説したデメリットを克服し、効果的に導入する方法を確認しましょう。
求める人材が登録しているサービスを選ぶ
まずは自社が求める人材が利用しているダイレクトソーシングのサービスを選ぶことが重要です。
ダイレクトソーシングができるサービスはいくつかあり、それぞれコンセプトや規模が異なります。「新卒」「理系人材」「博士号人材」など、特定の要件を満たす求職者に特化したサービスもあり、登録人数もさまざまです。
求める人材が多く登録しているサービスを選びましょう。
運用フローを整理する
ダイレクトソーシングを実施する際は、運用手順を定めておくことが大切です。
社内に経験者がいない場合、採用のナレッジをゼロから作っていく必要があるため、試行錯誤の手間や時間がかかってしまう可能性があります。
そこで、「求職者の絞り込み条件のパターン化」「オファーする人材の基準設定」「オファーから選考までのやりとりのマニュアル化」など、運用フローを細かく整えておくことで、人材フィルタリングの精度アップや工数削減などが実現しやすくなります。
必要なサポートを受ける
ダイレクトソーシングのサポートやナレッジを提供するサービスを利用するという方法もあります。既に構築された採用ナレッジを共有したり、ノウハウの構築をサポートしたりなどのサービスを提供する会社を利用するという方法です。
人材のデータベースから、希望する条件に合った候補者を紹介するタイプのサービスもあります。サポートサービスを有効活用することで、社内で人材を確保するよりコストを抑えられるケースもあるでしょう。
ダイレクトソーシングを導入すべき企業の特徴
ダイレクトソーシングの導入をおすすめしたい企業には、いくつか特徴があります。ここでは主な3つのポイントを紹介します。
自ら人材を見つけ直接アプローチしたい企業
専門性が高い業種や、ニッチなサービスを提供している企業の場合、一般的な求人広告ではなかなか自社に合った人材に出会えません。また、自社が求める人材が求人情報を見る保証はなく、仮に目に入ったとしても応募してくれるとは限りません。
その点、ダイレクトソーシングであれば、企業側から適性があると思われる人材を見つけ出してアプローチができます。
従来の採用手法でなかなか結果が出ない企業
求人広告やナビサイトなどの一般的な採用方法では結果が出ず悩んでいるようでしたら、ダイレクトソーシングを試してみる価値はあります。
人材採用のノウハウを蓄積して採用力を高めたい企業
能動的に人材を探すダイレクトソーシングでは、人材確保のためのノウハウ、経験などを自社内に蓄積でき、今後のリクルーティングに役立てられます。
ダイレクトソーシングで発生する費用
費用は活用するサービスやツールによって異なりますが、求人広告や人材会社からの紹介に比べると、少なくすむ場合が多くなっています。
ダイレクトソーシングに取り組むにあたってSNSを介するのであれば、特に費用はかかりません。SNSは多くの場合、登録もダイレクトメッセージ機能も無料となっています。
一方、人材データベースなどを利用する場合は、月々のシステム利用料として数十万円程度、成功報酬として数十万円が相場となっており、エージェントやナビサイトと比べてコストを抑えることは可能です。
社員などに人材を紹介してもらう場合は、紹介報酬を用意したほうがよいでしょう。
ダイレクトソーシングの成功事例
ダイレクトソーシングの成功事例について、それぞれ、「採用における課題」「ダイレクトソーシングを導入した理由」「成果」の観点から見ていきます。
株式会社フォーエス
株式会社フォーエスは業務システムやスマートフォンのアプリの受託開発などを行っていますが、ITエンジニアは売り手市場のため、なかなか十分な人材が確保できないでいました。
応募の条件を緩めても目標人数の確保が難しいことから、ダイレクトソーシングサービスを活用し、これまで応募にはいたらなかった潜在層にアプローチを開始したのです。
始める前は、マンパワーがかかり採用担当者の仕事が多くなると懸念していましたが、慣れるとスカウトまでの判断も早くなり、効率的に人材を確保できるようになりました。
S&J株式会社
情報セキュリティソリューションサービスを、開発・導入から運用までワンストップで手掛けているS&J株式会社。業務の専門性や特殊性もあり、適した人材を見つけるのが難しいという状態でした。
求人広告を使っても思うようには人材が集まらず、人材確保の効率を上げるためにダイレクトソーシングを開始しました。結果、条件を満たす人材に出会え、2ヶ月で5名を採用できたのに加え、人材マーケットを把握できたという成果もあったといいます。
まとめ
ダイレクトソーシングは、人手不足の時代を勝ち抜くために重要な採用手法です。
社内でゼロからノウハウを作らなくても、ダイレクトソーシングをサポートするサービスを利用することで、スムーズに導入できます。
自社に合ったサービスを選び、ダイレクトソーシングを効果的に導入しましょう。