ダイレクトリクルーティング(ダイレクトソーシング)とは?基礎知識と導入手順

最近、人事向けのメディアやセミナー、口コミなどで「ダイレクトリクルーティング」という採用手法をよく聞くようになったという方も多いかと思います。この「ダイレクトリクルーティング」とはどういう手法なのか、徹底的に分かりやすく解説します。

「ダイレクトリクルーティング」とは?

「ダイレクトリクルーティング」は、企業が求める人材を直接スカウトする採用手法です。

具体的には、

  1. 求職者が登録しているデータベース上で求める人材を探す
  2. その人にスカウトメールなどを送り、自社の選考を受けてほしいと伝える
  3. 求職者がスカウト(選考への参加)を承諾する
  4. 選考や面談の上、採用合否を決める

という流れになります。

ダイレクトリクルーティングの流れ

ダイレクトリクルーティングの一般的な流れ

日本では従来、ナビサイト(求人広告媒体)や人材紹介エージェントなどの「第三者」を通して求職者にアプローチする手法が一般的でした。しかし、職種によっては求める人材の採用が難しかったことから、この「第三者」を通さずに求職者と直接コンタクトを取る「ダイレクトリクルーティングが注目されるようになりました。

従来の日本的な採用手法における課題への解決策として急速に普及しているため、人事向けのセミナーやメディアなどでもよく取り上げられています。

「ダイレクトリクルーティング」が解決する従来の採用の課題

従来の採用手法は、インターネットとともに広まったWeb上の求人広告媒体「リクナビ」などのナビサイトの利用が一般的でした。

求人広告のメリットとしてはより多くの人に広報ができるということや、掲載して待っていれば応募が来て、その応募者が自社の採用基準に合致するかを選考すれば良いというものがあります。一方、こうしたナビサイトによる採用には、職種によっては次のような課題もあります。

ナビサイトでは応募してくる人材をコントロールできない

ナビサイトによる採用の場合、本当に求める人材が応募してきてくれるかどうかを企業側がコントロールすることは困難でした。

応募が集まるかどうかは、求職者が自社の求人を見て応募するか、さらに言えばそもそも求人を見てもらえるかどうかに左右されてしまうからです。昨今では非常に多くの求人広告が掲載され、その数が2万件以上とも言われる中、求職者一人が目を通せる求人数には限度があります。

認知されるには企業のブランド力が必要となり、学生が日ごろ目にすることのないBtoB企業や、地方企業、スタートアップ企業が不利だという状況が続いてきました。また、現在は多くの企業でIoTやIT、ロボット技術により業務が様変わりしているにもかかわらず、以前のイメージから、学生の認識と実際の業務に差があり、思った通りの人材が集まらないというジレンマもあります。

また、ワンクリックで気軽に応募できることから、応募過多・選考中の歩留まりなど「本気度の低い応募者」を集めてしまうという点も考えておく必要があります。

「来たがっている人材」ではなく「来てほしい人材」を採用するために

「来たがっている人材」ではなく「来てほしい人材」を採用するために

「ダイレクトリクルーティング」では本当に必要な人材だけをスカウトするため、ナビサイトなどで生じる「応募者層をコントロールできない」という課題がとてもシンプルに解決できます

ナビサイトで採用できる人材は、簡単に言えば「自社に来たがっている人材」です。一方「ダイレクトリクルーティング」では、「来たがっている人材」だけではなく、「来て欲しい人材」を集めやすくなります。

しかも、このように選考前から双方が「良いな」と“両想い”である対等な関係は、マッチング度の高さにも非常に影響します。採用活動の効率化だけでなく、入社後の早期離職を防止するためにも、応募者層をコントロールすることは重要です。

「ダイレクトリクルーティング」の定義について

「ダイレクトリクルーティング」という言葉には定義が曖昧な部分や、違う意味合いで使用されるケースがあります。今回は、最も一般的とされる「企業が求職者に直接アプローチできる採用手法」としての「ダイレクトリクルーティング」をご紹介します。

なお、矢野経済研究所による市場調査においても「ダイレクトリクルーティング」の定義としては「Webサイトで提供される(中略)スカウト型・逆求人型のダイレクトリクルーティングサービス」を対象としており、次のものは「ダイレクトリクルーティング」からは除外するとしています。


「ダイレクトリクルーティング」としないもの:

  • 逆求人型・スカウトイベント
  • スカウトを目的としないソーシャルリクルーティングサービス
  • 就職情報サイト(ナビサイト)に搭載されるスカウトメール機能

「2020年版 新卒採用支援市場の現状と展望」より)


また「ダイレクトリクルーティング」は和製英語とされ、アメリカなどではさらに広義の「ダイレクトソーシング」という言葉が使われています。

ダイレクトソーシングには、

  • リファラルリクルーティング(社員の紹介による採用)
  • ソーシャルリクルーティング(SNS上での採用)
  • アルムナイ(退職した元社員を呼び戻す採用)

なども含まれる場合があり、日本でも最近これらへの注目が高まっています。

「ダイレクトリクルーティング」を導入してみたいと思ったら

「ダイレクトリクルーティング」を導入してみたいと思ったら

「ダイレクトリクルーティング」は、採用において非常に重要な手法として注目が高まっています。これまでナビサイトや人材紹介などでの採用を行ってきた企業でも、離職率改善や人材開発、組織活性化などの観点から、ぜひ取り入れたいと思う人事担当者の方も多くいらっしゃることでしょう。

「ダイレクトリクルーティング」を始めてみたいと思ったら、まず何から考えれば良いのかをお伝えします。

「ダイレクトリクルーティング」に向いている企業・向いていない企業

いくら「ダイレクトリクルーティング」が優れた注目の採用手法だからと言って、自社でも成果が上がるかどうかは疑問だと思う方もいらっしゃるかもしれません。「ダイレクトリクルーティング」で成果が上がる会社、上がりにくい会社の特徴を簡単にお伝えします。

業種や規模を問わず成果が上がっているのが「ダイレクトリクルーティング」

スカウト型と聞いて、「人気企業や大手じゃないと結局来てくれないんじゃないの?」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、上述のようにむしろナビサイトよりも業種や規模、知名度などの先入観による影響を受けにくいのが「ダイレクトリクルーティング」と言えます。

「ダイレクトリクルーティング」では、ナビサイトと異なり求職者が業種や規模によってフィルタをかけて企業を探すわけではありません。

求職者は受け取ったスカウトの“内容”に応じて、選考に参加するかどうかを決めることになります。自社のどのような仕事・ポジションにおいてその人材が活躍できそうだと考えてスカウトしたのか、背景や熱意をしっかりと伝えることで、選考に呼び込める可能性が十分にあります。

事実、人気の高い大手企業のみならず、まだ知名度の低いベンチャー企業や、地方の老舗中小企業など幅広い業種・規模・エリアの企業が「ダイレクトリクルーティング」を導入しています。

また求職者側も「自分が活躍できる企業」と効率的に出会うために、「ダイレクトリクルーティング」を積極的に利用するようになっています。

未来志向で戦略的に人事を行える会社は「ダイレクトリクルーティング」に向いている

「ダイレクトリクルーティング」を導入するには、これまでの採用手法で生じていた問題点と向き合い、これからの採用・人事について未来志向で考える必要があります。

「ダイレクトリクルーティング」は、自社が本当に必要な人材を理解(定義)した上で使用することで、活躍人材の獲得や組織活性化などの本質的な効果に繋がるからです。

もちろん本来は、必要な人材の要件定義はナビサイトによる採用においても必須のものです。しかし、ナビサイトではインターネットの特性からそれなりの数の応募者を得られることもあって、「人材要件定義」をしなくてもとりあえずの「採用」(採用計画にある“人数”を入社させること)ができてしまいます。

採用の他にも、人事制度の設計など全ての人事業務においてこの「人材要件定義」(人事ポリシー、人材ポリシーなどとも呼ばれます)は非常に重要です。

このように経営戦略上の重要な指針として、未来志向でこれからの自社に必要な人材の要件定義ができる会社は「ダイレクトリクルーティング」導入によりさらに良い採用ができるでしょう。

人事や採用に一貫性がない会社は「ダイレクトリクルーティング」に向いていない

反対に、人事や採用に一貫性がない会社、つまり「人材要件定義」(人事ポリシー、人材ポリシー)がない会社では、「ダイレクトリクルーティング」をうまく使いこなすことが難しくなるでしょう。

例えば、自社が採用したい人材について漠然と「コミュニケーション能力の高い人材」や「主体性のある人材」などとしか定義されていない場合、マッチングする人材を探すことが難しいだけでなく、その資質が本当に自社で活躍する資質なのかどうかが検証されていない可能性が高いからです。

そういった会社では、以下のように「人材要件定義」を考えた上で「ダイレクトリクルーティング」を開始されることをお勧めします(職種や部署によって異なる場合はそれぞれで定義します)。


「人材要件定義」の考え方の例:

  • 自社に必要な能力・資質を具体的に細かく定義するとどのような要素があるか
  • その各要素は、実際にどの仕事でどんなふうに活躍できるか
  • その能力・資質を持っている人材にどのように自社をアピールすれば採用できるか

なお、適性検査の販売会社や「ダイレクトリクルーティング」のサービス内でもこのような「人材要件定義」のコンサルティングをしてくれる場合がありますので、「ダイレクトリクルーティング」の導入と同時に「人材要件定義」をしてしまうのも非常にお勧めです。

「ダイレクトリクルーティング」のメリット・デメリット

自社にマッチする人材を採用するのに効果的であると注目される「ダイレクトリクルーティング」ですが、一般的には下記のような特性があるとされています。

  • 自社が求める人材を効率的に確保できる
  • 採用単価を抑えることができる
  • 主体的で意欲の高い求職者に出会える可能性が高い
  • 自社を志望していない潜在層の求職者に対してもアプローチできる
  • 採用担当者の業務負担が従来よりも増える場合がある

採用単価については「ダイレクトリクルーティング」のほうが高額になることがあります。また、採用担当者の業務負担も「ダイレクトリクルーティング」によって増えるケースと減るケースがあります。

ただし、どちらにしても「ダイレクトリクルーティング」は採用の「質」(自社に必要な人材とのマッチング)をゴールにした採用手法ですので、自社が求める人材を獲得するためには多少のコストと手間もかける覚悟が必要になるかもしれません。

メリットの多い「ダイレクトリクルーティング」ですが、実際に導入した現場の人事担当者の声を聞いている採用アドバイザーへのインタビュー記事(下記)もぜひご覧ください。

「ダイレクトリクルーティングは本当にメリットだらけ?新卒採用アドバイザーが答えるホントのところ」

中途採用における「ダイレクトリクルーティング」

中途採用市場では、テレビCMで一気に認知が広まった即戦力採用向けの「ビズリーチ」を始め、ベンチャー企業の利用が多くWeb系職種・若手人材が多い「Wantedly(ウォンテッドリー)」、アメリカ発で世界最大規模の「LinkedIn(リンクトイン)」など、国内外で多くの「ダイレクトリクルーティング」サービスがあります。

中途採用では特定の仕事内容・ポジションにおける即戦力を採用したい場合が多いため、現在のスキルや経験を予め確認した上で選考に呼び込めるということで「ダイレクトリクルーティング」が重宝されています。

また中途採用(転職市場)においては、求職者が現職に在籍しながら転職活動を行うケースも増えており、ナビサイトから積極的に応募するまではしない、潜在的な転職希望者も多いと言われています。そうした在職中の転職希望者にもアプローチできることからも、中途採用には「ダイレクトリクルーティング」が活用できます。

新卒採用における「ダイレクトリクルーティング」

新卒採用市場においても「ダイレクトリクルーティング」が急速に普及してきています。代表的なサービスでは、パイオニアであり利用学生数・企業数とも最大規模の「OfferBox(オファーボックス)」、理系学部に特化した「LabBase(ラボベース)」、大学1年生から登録できる「dodaキャンパス(デューダキャンパス)」などがあります。

新卒採用では中途採用と異なり、社会人経験のない学生を募集・選考する必要があるため、より一層丁寧にその人材の活躍可能性を見極めなければなりません。業種や職種などに対する学生の“先入観”によって応募が偏りやすいこともあり、企業側はナビサイトだけで本当に求める人材にアプローチすることが困難です。

採用単価も一人あたり平均50万円以上と高額になっており(「売り手市場の新卒採用単価を解説!」参照)、コスト削減や業務効率化のために「ダイレクトリクルーティング」のみでの新卒採用に踏み切る企業も増えています。

実際、新卒向け「ダイレクトリクルーティング」の市場はここ数年で大幅に成長しており、利用学生・利用企業・新規参入サービスも急激に増加しています。学生の「ナビ離れ」が指摘される中、今後もこの成長は続くでしょう。

ダイレクトリクルーティング導入の手順

ダイレクトリクルーティング導入の手順

テクノロジーの進化によって世の中の流れは「マス」から「個」への最適化へと向かっています(参考:新産業構造ビジョン中間整理、経済産業省、平成28年4月27日)。ダイレクトリクルーティングにおいてもこの流れを汲んでおり、就職ナビを活用したマスへのコミュニケーションのままダイレクトリクルーティングを活用しても上手くいきません。

皆さんが採用したいと思うようなターゲットの学生は、まさに今、個へ最適化されたサービスに日常の中で触れ、慣れ親しんでいます。個への最適化に慣れた学生の興味関心を高め、貴社に「入社したい」と思ってもらうためには、とことん学生の立場になって考え、手間を惜しまず丁寧なコミュニケーションを重ねることが求められます。

この手間を面倒だと思うことは即ち従来の採用ブランド力や資金力が物を言う土俵で戦い続けることを選択するということとなります。貴社にとってなぜダイレクトリクルーティングの導入が必要なのか、目的は何か、そういった点をしっかり考え、導入することが大切です。ここではダイレクトリクルーティングの導入を検討している方々に、導入前、導入中、導入後といったフェーズに分けて解説していきます。

導入前

ダイレクトリクルーティングは、求職者にピンポイントで働きかけるという特性上、人材要件を明確にすることが成功へのカギです。要件を定義する際は、スキル・経験といった技術面と、人柄や価値観といった人物像に分けるとスムーズです。さらに、それぞれを「必須条件」「理想条件」など階層化することで、採用の際の基準がぶれずに済みます。

また、人材を見つけるための媒体や窓口を検討することも大切です。ダイレクトリクルーティングに使える媒体・窓口としては、「Wantedly」や「OfferBox」のようなダイレクトリクルーティングに特化した逆求人・スカウト型求人サービスがさまざまにあるほか、SNSの活用(ソーシャルリクルーティング)や社員からの紹介(リファラル採用)という手もあります。それぞれのメディア・窓口によってアプローチしやすい人材は変わるため、事前に研究しておくことが必要です。

さらに、ダイレクトリクルーティングを実施するにあたって、体制を構築して、予算・人員を確保。組織あるいは担当者として実行する基盤を整備しておくようにしましょう。

導入中

実施にあたっては求職者の検索方法や、オファーのメールの文面など採用までの業務フローや、マニュアルも定めておき、それに沿って作業を進めます。ダイレクトリクルーティングは個人対個人で行うことが多いため、採用担当グループおよび経営陣や現場と話し合いの上で決定したマニュアルや採用方針を設けておくことが、失敗を避けるポイントとなります。

また、後に効果を検証することを前提に、可能な限り数値目標や課題について記録を残しておくようにしましょう。正確な検証が行えると、次回からの採用に関する業務がスムーズになります。

導入後

ダイレクトリクルーティングを導入した該当採用年度の採用計画が終了したら、振り返りを行うことが大切です。

ダイレクトリクルーティングを導入して実施してみた結果の分析として、スカウトメールの開封率、返信率、選考率、採用人数、予算実績など、具体的な項目ごとに検証し、データをストックしていくことで、今後の人材登用の参考にすることが可能です。また、ライバル社の動向も可能な限り研究し、自社の方法と比較検証したいところです。

とは言え、「採用した社員が定着するのか」「会社にとって本当に有益な補強であったのか」「次回からも同じ手法が役立つのか」など、すぐに結果が出るとは限らないことも多いため、長期的に見ていくことも大切です。

ダイレクトリクルーティングの精度を磨く方法

5年後、10年後、新卒採用市場はどうなっているでしょうか。

少なからず今の時点で言えることは、予定調和ではなく不確実性の高い状況になっているということです。そのような不確実性の高い状況下であっても、人事採用担当のみなさんは企業の持続的成長のために常に必要な人材を確実に採用し続けることが求められるでしょう。

既に、一部の企業では数年先を想定して、就職ナビをはじめとする従来の採用手法やツールに頼らずとも必要な人材を確実に採用できる採用手法の確立に取り組みはじめています。

今後の新卒採用市場における競争優位性を生むのは、独自の採用手法の確立、ナレッジの蓄積、採用戦闘力の強化となってくるでしょう。そういったものは一朝一夕でできるものではありません。小さくてもいいのでまずは始めてみることをお勧めします。

おわりに

「ダイレクトリクルーティング」がどんな採用手法であるか、なぜこれほど急速に普及しているのかをご紹介しました。

自社の採用・人事の質を高めたいとお考えの方で「ダイレクトリクルーティング」に少しでもご興味をお持ちいただけましたら、具体的な活用事例・ノウハウをご紹介している下記の記事などもご参考にしてください。

「ダイレクトリクルーティングの効果を検証|「内定承諾率16%⇒83%」に改善した地方銀行の活用事例」

人事ZINEでは、他にも「ダイレクトリクルーティング」に関する記事を多数公開しておりますので、ぜひご覧ください。

米田 彩香

米田 彩香

新卒で入社した前職の老舗中小企業にて人事・採用を5年間担当。紋切り型の就活スタイルに疑問を持ち、OfferBoxの理念に共感したため2019年3月に株式会社i-plug入社、インサイドセールスチームに所属。夢は子供が独立したあとに学生街で食堂を開くこと。