育児休業の期間とは?育休中の社会保険料の免除方法と注意点について
育児休業制度は男女問わず利用できるもの。しかし、会社で取得実績がなく、初めて社員から育休申請を受けたという人事担当者も少なくありません。
育休申請の処理手続きを適切に行うためには、育休制度に関する法的な基礎知識や、期間延長に関する条件を知っておく必要があります。
そこで、今回は「育児休業制度」の概要や取得方法、育休の期間、延長できる条件などについて紹介します。育休期間の社会保険料免除や、育休制度に関する法改正の可能性についても確認していきましょう。
目次
育児休業の期間は対象者の条件や男女によって異なる
育児休業は対象者の条件によって休業できる期間が異なります。思わぬトラブルを起こさないためにも、制度の内容をしっかり理解しておきましょう。
顧問社労士がいる場合は、事前に取得可能な期間を相談することがおすすめです。
育児休業の対象となる4つの条件
育児休業の対象となるためには、以下4つの条件を満たす必要があります。
1.1歳に満たない子供を養育する男女労働者であること
取得対象者における子供の年齢は1歳未満であること。(保育所に入所できないなど一定の場合は最長2歳まで)
法律上の親子関係があれば実子・養子は問いません。
2. 日雇い労働者ではないこと
日雇い労働者は育休の対象から除外されます。
3.労使協定で定められた一定の労働者ではないこと
週の労働日数が2日以下の労働者は、労使協定を結んだ場合に取得対象者となります。
4.有期労働者の場合、以下2つのどちらかに該当すること
- 同じ事業主に1年以上雇用されている
- 子供が1歳6カ月になる日までに労働契約(更新がある場合は更新後の契約)期間が終了しない
なお、企業が育休制度を実施する場合には、就業規則に育休制度に関する規定を記載しなければいけません。
労働基準法で定められている記載項目は以下の4つです。
- 付与要件
- 取得に必要な手続き
- 育休期間
- 育休期間中における賃金の支払いについて
常時10人以上の労働者を雇用している場合は、就業規則の作成・変更時に労働基準監督署へ届け出る必要があります。
育児休業の期間は子が1歳になる前日まで
育児休業の期間は基本的に「子供が1歳になる前日まで」となります。ただし、男性労働者と子供を出産した女性労働者の育休開始日は違うので注意が必要です。
- 男性労働者の育休期間
「出産日」から「子供が1歳になる前日」まで
- 子供を出産した女性労働者の育休期間
「産休終了日」から「子供が1歳になる前日」まで
ただし、有期契約社員も前述の対象条件を満たしていれば同様の休業期間が認められます。
育児休業の期間延長ができる条件とは
育児休業は以下2つのケースでどちらかに該当する場合のみ、期間を延長できます。
- 保育所への入所を希望しているが入所できない
- 主に子育てを行う予定だった配偶者が離婚や病気で対応できなくなった
延長される期間は「子供が1歳6カ月になるまで」です。なお、再延長を申請すれば、最長で子供が2歳になるまで期間を延長できます。
また、有期契約労働者も延長申請が可能です。「子供が1歳になった日の翌日から1歳6カ月になるまで」の期間は、申し出時点において、改めて取得対象者であるかどうかは問いません。
ただし、有期契約労働者が「子供が2歳になるまでの育児休業」を延長取得する場合は、以下2つの条件を満たしている必要があります。
- 同じ事業主に引き続き1年以上雇用されていること
- 子供が2歳になる日までに労働契約(更新がある場合は更新後の契約)期間が終了しないこと
育児休業の期間に関する特例について
夫婦で育休を取得する場合は、子供が1歳2カ月になるまで育児休業が取得できる「パパママ育休プラス」を利用できます。
「パパママ育休プラス」の対象となる条件は以下のとおりです。
- 配偶者が子供の1歳の誕生日以前までに先に育休を取得していること
- 子供が1歳の誕生日を迎えるまでに育児休業を取得しようとする本人が育休を開始すること
- 育児休業を取得しようとする本人の開始予定日が、配偶者が取得した育児休業の初日以降であること
休業期間の上限は1年間となります。夫婦共に1年2カ月休業できるわけではなく、子供が1歳2カ月になるまで、1年間分の休業日数を夫婦で振り分けるというイメージです。
育児休業の期間で異なる申請期限
育児休業の申請期限は、以下のように育児休業の期間によって異なります。
- 子供が1歳になるまでの育児休業
休業を希望する1カ月前までが申請期限です。
- 子供が1歳6カ月までの育児休業
育児休業開始予定日の2週間前が申請期限です。
- 子供が2歳までの育児休業
育児休業開始予定日の2週間前が申請期限です。
万が一期限後に申請された場合、事業主は一定の範囲で休業開始日を指定することが可能です。
ただし、これらはあくまでも「最低基準」なので、申請期限を過ぎたら育休が取得できないわけではありません。また、期限後の申請に事業主が応じても、法律上特に問題はありません。
なお、申請者が期間を定めて雇用される有期労働者の場合、労働契約期間の終了日まで休業し、契約更新後の初日を育児休業開始予定日とする際には、1カ月前までに申請がなくても申し出どおり育児休業を開始できます。
育休中の社会保険料免除に関する手続き
産休および育休の申し出があった場合は、労働者だけではなく、事業主も社会保険料の免除対象となります。対象者から申請があった場合には、忘れずに手続きを行いましょう。
社会保険料の免除期間
社会保険料が免除される期間は「育児休業を開始した日から育休終了の前月(終了日が末日の場合は当月)まで」です。上限は「子供が3歳になるまで」と定められています。
社会保険料の免除手続きの方法と注意点
社会保険料は自動的に免除となるわけではありません。そのため、人事担当者は免除制度の仕組みを理解して、的確に手続きを進める必要があります。
手続きに必要な書類と、書類の届け出先は以下のとおりです。
- 書類:育児休業等取得者申出書
- 届出先:日本年金機構
事業主は必ず育児休業期間中に、「育児休業等取得者申出書」を日本年金機構に提出してください。被保険者が途中で復職する場合には、「育児休業等取得者終了届」の届け出も必要です。
出産育児一時金や出産手当金の申請は「全国健康保険協会(協会けんぽ)」で行うため、申請書の提出先を間違えるケースも少なくありません。きちんと確認したうえで、書類を提出しましょう。
保険料が免除されても年金支給額に影響はしない
社会保険料の免除期間中は、被保険者資格が失われることはありません。なぜなら、育児休業前の標準報酬月額がそのまま適用されるため、被保険者期間の全体における月額平均も下がらないからです。
つまり、「育休を取ったから将来の年金が減る」ことはありません。育児休業しなかった場合と何も変わらないので、安心して育休期間を過ごせます。
育児休業の取得制度がさらに改正される方向へ
男性労働者の育児参加を促すため、パートナーの出産直後に育休を取得しやすくする制度の創設を厚生労働省が検討し始めています。
休業前手取り賃金の80%前後を保証している「育休給付金」を100%まで引き上げる計画や、申請手続きの簡略化など、男性労働者の育休取得率向上を目指す方針です。
この指針を受け、今後は取得条件や給付金、休業期間などを含めた育休制度の改革が加速する可能性も考えられます。
人事担当者は「知らない間に手続きの方法や育休期間が変わっていた」ということがないよう、日々の情報収集に努めていきましょう。
育児休業の期間や条件を整理して社内で共有しよう
今回の記事では、人事担当者が覚えておきたい育児休業制度の概要や手続きなどについてお伝えしました。
育児休業の期間は対象者の属性や条件によって異なります。手続き上の誤りなどを起こさないために、理解しやすいような形式にまとめておくとよいでしょう。さらに、まとめた内容を社内で共有することで、申請や処理手続きもスムーズに行えます。
育休期間中の社会保険免除は事業主にも適用されるので、申請手続きを忘れないようにしてください。