採用フレームワーク「TMP設計」の活用で戦略的な採用を!
- 自社にあった採用手法がわかっていない
- 他の企業と同じことをしているのに採用ができていない
- 入社後の活躍ができていない
などなど、採用には漠然とした悩みはつきものですよね。
採用戦略を立てる暇なくイベントの準備にばかり時間を取られたり、採用数の目標に追われたり……
よくメディアに取り上げられるような変わった採用手法を取り入れることもできないし、新しいサービスを使おうと思ってもなかなか変えられない。そんな人事の方々を新卒採用アドバイザーとして数多く見てきました。
今回は、どの会社でも取り入れられる採用フレームワーク『TMP設計』を紹介します。TMP設計を実践することで、自社に合った採用ができます。
TMP設計は、とても簡単に且つ採用効率を飛躍的に向上させる採用フレームワークですので、是非自社の採用活動にお役立ていただけると幸いです。
株式会社i-plug
新卒採用アドバイザー 小野 悠
株式会社リクルートキャリアで3年半、中途採用アドバイザーとして勤務。その後はファーストキャリアの重要性を感じ、2018年4月に株式会社i-plugに入社。関西圏を中心に介護やIT業界まで幅広い企業300社以上に対して、新卒採用の支援を行う。YouTubeチャンネル「新卒採用アカデミー」の立ち上げを行い、ネットを通じて採用担当者の方向けにお役立ち情報を発信中。
目次
採用フレームワークとは?なぜ今、人事担当者に採用フレームワークが必要なのか?
そもそもフレームワークとは「枠組み」や「骨組み」などといった意味で、課題の明確化や解決手法の検討など、戦略立案の際に使われています。この戦略立案にも使われるフレームワークを疎かにした「なんとなくの採用」ではマッチングの質低下を引き起こしやすくなります。
理由は、採用チャネルが大量にある今、自社にあった採用を見つける必要がある一方で、実際にはフレームワークなしでも「なんとなく採用」が成立してしまうこともあります。
私はこれまで数百社の採用支援をしてきましたが、戦略立案でもある採用フレームワークを疎かにしている企業がほとんどです。
採用フレームワークを正確にできていれば、採用に苦戦することは、大幅に軽減されると言っても過言ではありません。加えて採用フレームワークの適応範囲は、大手企業から中小企業まで、さらには業界も創業年数も問わず、全ての企業で活用することが可能です。
「なんとなくの採用」によるマッチングの質低下を防ぐためにも、今の採用環境では、採用フレームワークは必要なのです。
採用フレームワーク『TMP設計』とは?
採用におけるフレームワークを、『TMP設計』と読んでいます。TMPは、「Targetting、Messaging、Processing」の頭文字を取ったものです。
- Targeting:自社に合った採用ターゲットの設定
- Messaging:ターゲットに対して打ち出す内容の作成
- Processing:Messagingを体感してもらう採用プロセスの設計
要するに、「採用のターゲットを明確化し、そこに向けた自社の魅力を打ち出し、選考の中で体感してもらおう!」という非常にシンプルな内容です。
資料【採用したい学生のペルソナ設計フレームワーク】をダウンロードする
人事ZINEでは、採用したい学生のペルソナ設計フレームワークを解説した資料を準備しております。本記事と併せて、こちらの資料も合わせて実務でご活用ください。
【実践】TMP設計の具体的な手順
TMP設計を行うには3つの手順があります。
- Targetting:適切な採用ターゲットの設定
- Messaging:ターゲットに刺さるメッセージ・ストーリーの作成
- Processing:最適な採用プロセスの設計
それでは順に紹介していきます。
Targetting:適切な採用ターゲットの設定
TMP設計において最も大事なのがこのTargettingの部分です。ここがズレてしまうと、全てがズレてしまうからです。
Targettingの事例や意識すべきポイント紹介する前に、良くないTargettingの事例を紹介します。
- ①学歴の高い学生
- ②コミュニケーション能力の高い学生
- ③理系を専攻している学生
- ④体育会系の学生
……どうですか?自社の採用要件にもこれらを入れてしまっていませんか?これらが何故良くないのかは下記の通りです。
- ①学歴の高い学生(地頭の良い学生)
- 学歴が求める水準でなければ、適性検査でマッチしていても採用ができないのか。学力が発揮されるシーンはいつなのか。その大学で培われる何の能力が欲しいのか。
- ②コミュニケーション能力の高い学生
- コミュニケーション能力の定義は?誰ととるコミュニケーションなのかがわからない。目上の人とのコミュニケーションなのか、同年代とフランクに会話ができる力なのか、子供と仲良くなれる雰囲気なのかがわからない。
- ③理系を専攻している学生
- 学生の7割以上を占める文系学生には本当にマッチする学生がいないのか。例えばプログラマなら、プログラミングが趣味の学生はダメなのか。
- ④体育会系の学生
- 具体的にどういったスポーツをしてきた学生か。個人スポーツなのか集団スポーツなのか。集団スポーツならどういうポジションが望ましいのか。
では、これらを、それぞれ一事例に当てはめてTargettingを精錬させてみましょう。
- ①学歴の高い学生
- 技術者向けの営業職であるため、数字を用いた提案や論理的な考え方ができる学生。細かい分析業務なども伴うので、大学時代に数学系の授業を専攻し単位取得していることが望ましい。
- ②コミュニケーション能力の高い学生
- 高級品を扱うジュエリー販売なので、富裕層や目上の人とのコミュニケーションがそつなくできる学生。例えばホテルや高級飲食店でなどバイトをしていた方であれば尚良い。
- ③理系を専攻している学生
- 機械系の学部であれば望ましいが、入社後研修で補えるため必須ではない。メインは生産ラインのメンテナンス業務なので、文系であってもバイクいじりをしていた学生や現時点で自動車整備士などに興味を持っている学生。
- ④体育会系の学生
- クレームが多い職種なので、少々理不尽なことがあっても組織の一員としてあるべき判断と行動ができる方が望ましい。考えるよりもまず行動!自己と組織の成長の為とにかく足を動かし、成果を出すことにコミットしてくれる学生。
ここまででポイントを整理します。
【Goodポイント】出来るだけ詳細な設定することで『本当に採用したい人物像』を作る。
【Badポイント】人物像の抽象度が高すぎるとミスマッチに繋がる。
その他にも一般的でないところで少し変わったところだと、
- マクドナルドでアッセンブリのスペシャリスト資格を獲得している学生
- SNSのアカウントを複数作っており、どのアカウントもフォロワーが多い学生
- おじいちゃんっ子、あばあちゃんっ子として育ってきた、年配者に愛を注げる学生
などが、Targettingに含まれることも。Targettingにおいてビッグワードは厳禁です!
弊社YouTubeチャンネルでも、求める人物像の定め方に関する動画を公開しています。新卒オファー型就活サービス「OfferBox」を運営する株式会社i-plugのノウハウをもとに、くわしく解説していますので、ぜひご覧ください。
Messaging:ターゲットに刺さるメッセージ・ストーリーの作成
採用したい学生像が固まれば、次はその学生に刺さる自社の魅力を考えましょう。大事なのは、『ターゲットに刺さる魅力』であることです。
例えば、「4.体育会系の学生」に対して、「弊社の仕事はプラットフォーム型ビジネスのため、顧客に訪問することはほとんどありません!」と打ち出しても、魅力には感じられません。
「弊社の製品をよりよく知ってもらうためにお客様と信頼関係を築くことが重要なお仕事です。」と書くと、魅力に感じるかもしれません。
要するに、MessagingはTargettingと連動していなければいけません。
採用担当の方と企業の魅力の打ち出し方についてお話を伺っている中で、「うちは中小だから魅力なんてないんだよね・・・。」という話になることもしばしばあります。
果たして本当にそうでしょうか?会社があり、そこで働く人が一人でもいる以上、魅力は必ず存在します。
ターゲットに刺さるのに必要な6つの企業の魅力
企業の魅力は、次の6つに分けられると言われています。
①目標の魅力
組織が何を目標とし目指しているのかを知り、その目標に対して共感し、魅力を感じているかどうか。
②仕事の魅力
自分が好きでやりたいと思い、やりがいを感じる仕事、活動ができているのかどうか。
③風土の魅力
組織のメンバーや風土に魅力を感じ、組織の文化や風土が自分にあっていると感じられるかどうか。
④待遇の魅力
納得のいく給与や休日休暇、福利厚生が得られるなど、自分自身にとって魅力的な権利が得られているか。
⑤上司の魅力
所属することになるであろう上司に対して「この上司と一緒に働きたい」と思ってもらえるかどうか。
⑥職場の魅力
一緒に仕事をすることになるかもしれないメンバーに対して、「この職場で一緒に働きたい」と思ってもらえるかどうか。
6つの魅力の中から、自社が打ち出すべき魅力を見つけ、打ち出していくことでよりターゲット学生からの応募が得やすくなります。
その他には、
- 社員に自社の魅力についてヒアリングをしてみる
- 過去の入社学生の意思決定ポイントを洗い出す
なども有効です。
YouTube動画でも、効果的なスカウトメッセージの作り方についてくわしく解説しています。
Processing:最適な採用プロセスの設計
ここまでで、
- 採用したい学生像が明確になっている
- その学生に対して応募喚起できるメッセージが整っている
という、TMP設計のステップを踏んでいます。これから行うのはProcessing:採用プロセスの設計です。
Step① 魅力を伝えるには何が必要か?
Messagingで打ち出した魅力を、選考の中で感じてもらえなければ、結局学生は他の企業に内定承諾してしまいます。
魅力が一貫しない一例として、「うちの社員はとても仲が良くて一体感があるんです!」と言われて会社に足を運んでみたら一方的に面接された・・・。なんてことは学生にとってはあるあるです。
TMP設計は、一貫していることが何よりも大事です。
TMP設計として一貫するためにも、Messagingでまとめた6つの魅力に対してどんな内容がProcessingで有効かをまとめました。
以上のようにTMP設計全体として、一貫性を意識して組み合わせていきましょう。
Step②その要素を組み込んだフローを考える
企業の採用活動を取り上げるメディアでは、一封変わった選考をしている事例が目立ちがちですが、一風変わったProcessingが必ずしも必要ではありません。
一風変わったProcessingは、『一風変わった会社』が『一風変わった学生』を採用するのに有効なProcessingだということです。
対して一風変わった選考が目立つ一方で、今もなお、会社説明会→人事面接→役員面接→内定という形式的なProcessingを踏襲しているだけの企業が多いことに驚きます。
もちろん企業毎の様々な事情がある中で、なかなかProcessingを変更することは大変だろうと思います。しかし、採用を行う本来の目的に立ち返ると、人事や役員だけで完結するProcessingで果たして学生に魅力は伝わるのでしょうか。
採用は、人事だけの仕事ではありません。現場を巻き込んだProcessingは必須と言えるでしょう。
TMPの活用事例の紹介
TMP設計を活用した事例を紹介します。
事例紹介する企業の課題は、内定承諾率が10%台と非常に低いこと。採用を根本から見直しTMP設計した結果、今まで使ったことのない採用媒体を使うことになり、採用の歩留まりが飛躍的に向上したというものです。
詳しくはこちらの記事をご参考ください。
最後に
今回は、どの会社でも取り入れられる採用フレームワーク『TMP設計』を紹介しました。
- Targetting:適切な採用ターゲットの設定
- Messaging:ターゲットに刺さるメッセージ・ストーリーの作成
- Processing:最適な採用プロセスの設計
TMP設計では上記の流れで一貫性を持って取り組むことが重要でした。TMP設計の適応企業は、大手〜中小まで全ての会社に適応が可能です。
新卒採用の成功は、既存社員のモチベーションアップにも繋がります。超売り手市場と言われている昨今だからこそ、しっかりとTMP設計を意識して採用を行いましょう!