変形労働時間制のメリットとデメリット|残業代や休日の考え方とは?

変形労働時間制は、労働時間を月単位や週単位で調整できる労働時間制度です。

時期によって仕事量に違いが出る業種にはメリットの多い制度ですが、法律で規定された労働時間を超えれば残業代を支給しなければいけません。そのため、残業代の計算方法を理解していないと、給与の支給額を誤る可能性があります。

今回は、変形労働時間制の導入方法や残業代の考え方、勤怠管理などについて詳しくご紹介します。

変形労働時間制とは?

「変形労働時間制」とは、労働時間を月単位や週単位で調できる労働時間制度です。

労働時間には、1日8時間・1週40時間と定められている「法定労働時間」と、法定労働時間内で企業が独自に定める「所定労働時間」があります。この労働時間を超えた場合には、残業代の支給が必要です。

しかし、変形労働時間制を導入すれば、月単位や週単位の労働時間さえ調整できていれば、勤務時間が増えても残業時間の取り扱いは不要になります。

上表のように、一般的な労働時間制度では、1週目と2週目が法律で定められている「週40時間」を超えてしまうため残業代が発生します。一方、変動労働時間制では、3週目と4周目の労働時間を30時間に「調整」できるため、トータルでの残業代は発生しません。

変形労働時間制のメリットとデメリット

業務量に合わせて月単位、週単位で労働時間を調整できるため、企業側にとっては「残業代の節約になる」というメリットがあります。多忙による従業員の過労や体調不良防止にも役立つでしょう。

その一方で、変形労働時間制を導入するためには、「労使協定の締結」や「就業規則の整備」といった手続きに時間がかかるなどのデメリットがあります。また、制度導入後も、運用状況確認しながら複雑な残業時間の計算をする必要が生じます。

期間ごとの運用方法の違い

変形労働時間制の運用方法を「月単位」と「週単位」別に見ていきましょう。

月単位で導入する場合

月単位で変形労働時間制を導入する場合は、月ごとに週の労働時間を調整できます。ただし、一定期間内の平均労働時間は「週40時間以下」でなければいけません。

そのため、月単位で変形労働時間制を導入する場合は、労働時間に下表のような上限があります。

月単位での残業時間計算方法

月単位の変形労働時間制では、以下3つの基準に基づいて算定した合計時間が残業時間になります。

・日ごと
所定労働時間が8時間を超える場合は、「所定労働時間を超えた時間」が残業時間です。所定労働時間が8時間以内の場合は、「8時間を超えて働いた時間」が残業時間になります。

※水曜日:所定労働時間が8時間以内なので、8時間を超えて働いた1時間が残業時間になります。
※木曜日:所定労働時間を超えていますが、8時間以内なので残業時間にはなりません。

・週ごと
所定労働時間が40時間を超える場合は、「所定労働時間を超えた時間」が残業時間になります。所定労働時間が40時間以内の場合は、「40時間を超えて働いた時間」が残業時間です。

※第1週:所定労働時間が40時間以内なので、40時間を超えて働いた5時間が残業時間になります。

ここで算出された残業時間時間の10時間から、日ごとの残業時間時間を差し引いた分が週ごとの残業時間時間となります。

・月ごと
実際に働いた時間が「期間の日数÷7×40時間」を超えた分が残業時間としてみなされます。この時間を超えた分から日ごと、週ごとの残業時間時間を差し引いた分が、月ごとの残業時間時間です。

残業時間計算の特例

1か月単位で変形労働時間制を導入する場合、特例によって法定労働時間が40時間ではなく44時間となるケースがあります。

特例が適用されるケースは、以下の事業で常時10人未満の労働者を使用する場合です。

  1. 病者又は虚弱者の治療、看護その他保健衛生の事業
  2. 旅館、料理店、飲食店、接客業又は娯楽場の事業

この特例が適用されるケースでは、40時間を44時間に置きかえて残業時間を考えます。

また、大企業では1か月あたりの残業時間が60時間を超えた場合、超えた分の残業代は割増率1.5倍、深夜労働に該当する場合は1.75倍となります。

週単位で導入する場合

週単位の変形労働時間制は、短いスパンの中で労働時間を調整しながら、トータルでの労働時間短縮を目指します。比較的小規模企業向けの制度といえるでしょう。

そのため、週単位での変形労働時間制を導入できるのは、以下の条件を満たした事業所だけです。

  • 従業員数30人未満
  • 小売業、旅館、飲食店
  • 1日の労働時間上限が10時間以内で1週40時間以内

就業規則に各日の労働時間を定める必要はありませんが、原則として前の週までに書面で従業員に定めた労働時間を伝える必要があります。

週単位での残業時間計算方法

週単位の変形労働時間制では、「日ごと」と「週ごと」の基準に基づいて算定した合計時間が残業時間になります。

・日ごと
所定労働時間が8時間を超える場合は、「所定労働時間を超えた時間」が残業時間です。所定労働時間が8時間以内の場合は、「8時間を超えて働いた時間」が残業時間になります。

・週ごと(設定期間全体)
法定労働時間の40時間を超えた時間が残業時間です。ただし、日ごとで残業時間となる部分は除きます。

シフト制との違い

事前に勤務時間を定める変形労働時間制はシフト制と似ていますが、残業時間の考え方が違います。

変形労働時間制の場合、事前に勤務時間を決めておけば、1日に8時間以上勤務しても残業代は不要です。一方、シフト制では法定労働時間を超える勤務時間の設定ができないため、1日の上限は8時間となります。8時間を超えれば残業代の支払いが必要です。

変形労働時間制の導入方法

ここからは、変形労働時間制の導入方法を、4つのステップに分けてご紹介します。

1.勤務実績を調べて労働時間を決める

変形労働時間制の導入で、もっとも重要なのは勤務時間の設定です。そのため、まずは従業員の勤務実績から「残業が多い時期」と「残業がほとんどない時期」を調べ、適切な労働時間の配分を検討します。

2.就業規則を定めて労使協定を結ぶ

時間の配分を決めたら、変形労働時間制を導入する前に就業規則を整備します。変形労働時間制の対象者や労働時間、対象期間などに関する項目を盛り込みながら、現状の就業規則を変更して整備しましょう。

3.社内への周知

就業規則整備後は、労働者と合意したうえで労使協定を締結し、変形労働時間制を導入します。新たな就業規則と締結した労使協定は労働基準監督署への届け出が必要なので、忘れないようにしてください。

社内への周知は、以下3つのいずれかの方法で行います。

  • 社内の見やすい場所に掲示する
  • 書面で各従業員に交付する
  • 磁気テープや磁気ディスク、または、これらに準ずるものに記録して、作業場など、労働者が閲覧できる機器を設置する。

重要なのは、従業員が「いつでも、誰でも」閲覧できるようにすることです。

4.運用状況の確認

変形労働時間制は導入したら終わりではありません。導入後も、適切な運用や労働時間管理が行われているかどうかを定期的に確認します。残業代の支払い金額を間違えないように気を配る必要もあるでしょう。

近年では、変形労働時間制に対応している勤怠管理ソフトも少なくないので、正確な給与計算を行うために各種ソフトの導入も検討してみてください。

まとめ

今回は、変形労働時間制のメリットやデメリット、導入方法などについてご紹介しました。業務量に応じた労働時間の配分ができる変形労働時間制は、業種によっては多くのメリットがあるため、導入を検討する価値はあります。

 ただし、期間ごとに運用方法や残業時間の考え方が異なるので、導入前に正しい知識を得ておくことが大切です。導入に失敗しないためにも、社内への周知方法や導入後の運用状況の確認も忘れないようにしましょう。

 事前に変形労働時間制の運用や活用に関して検討する時間を設けたうえで、スムーズな導入と運用の成功を目指してください。

人事ZINE 編集部

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