新卒採用の準備において、会社説明会に使用するスライド資料(パワーポイント)に時間がかかってしまったり、そもそもどうやって作成したらよいかお悩みの人事の方も多いのではないでしょうか。
ただでさえ忙しくなる採用活動においては、こうした資料づくりに時間をかけるよりも、学生一人一人とのコミュニケーションなど重要な業務にリソースを使いたいはずです。
ここでは、新卒採用のための会社説明会スライド資料の作り方についてご紹介します。また、最後には“埋めるだけ”で完成するパワーポイントテンプレートもご紹介します。
目次
新卒採用の会社説明会では、学生が理解し「持ち帰る」ことができるスライド資料が重要
新卒採用では、まだ社会に出ていない学生に、応募先として検討してもらうこと、つまり、認知させ、魅力づけすることが重要になります。学生は就活当初、BtoCの大手企業や一部の人気企業しか知らない状態から始まります。就活を始めて、個別会社説明会や合同説明会イベントなどに参加することで、知らなかった会社を知っていきます。
会社説明会は選考の入り口であり、ここで学生を魅力づけできなければ、まず応募してもらうことができないという非常に重要な機会です。
説明会で配布する資料は、以下を満たしている必要があります。
- 学生が読む気になる、その場ですぐ理解できる資料
- 学生があとで家に帰ってからも内容を思い出せる資料
- 学生が「この会社の選考に応募しよう」と志望度を高める資料
つまり、「その場で理解しやすく」「持ち帰って思い出しやすい」ことが必須になります。
その場で理解しやすく、持ち帰って思い出しやすい説明会資料のポイント
では、「その場で理解しやすく」「持ち帰って思い出しやすい」資料をどうやって作るのか?
そのポイントを簡単にご紹介します。
ストーリー立てて伝える
個別の事実は、ただ並べ立てるよりもストーリーに沿って説明するほうが、理解しやすくなります。
会社説明会でも同じことで、
企業理念・ミッション(創業の歴史) → 中長期目標 → 短期目標 → 現在の状況 → 業界全体 → 自社(立ち位置) → 各部門の仕事 → 各ポジションの仕事 → 個人(社員インタビューや座談会など)
このように、マクロからミクロに向かう流れで説明すると、「なぜこの会社なのか」「なぜこの業界なのか」といった魅力が伝わりやすくなります。
図や写真を用いる

学生は、「社会人として働いている自分」をなかなかイメージしづらいものです。BtoBなどの職種は特にそうですが、図や写真を用いて、ビジネスの流れや、実際の業務のシーンなどを視覚的にわかりやすく伝えることが効果的になります。
「営業職」と一言に言っても、会社によって商材もスタイルも異なりますし、学生には学生の間で植えつけられた職種ごとのイメージを強く持っているケースもあります(例:営業はノルマがきつくて根性がないと続かない仕事だ など)。
可能であれば、実際の現場や、働く社員の生き生きとした表情などの写真を資料に入れましょう。文字ばかりで無機質になってしまう印象を和らげる効果もあります。
書式やデザインにメリハリをつける
強調したい魅力は、大きな文字で、色や書式なども変えて視覚的に訴えるデザインにしましょう。また一方で、補足的に伝えておきたいことに関しては小さい文字にするなど、「絶対に読むべき箇所」と「あとで読んでおけば良い箇所」を明確に分けて見せることも重要です。
強調するところは、通常の文字の大きさに対して2倍くらいのフォントサイズにしても良いと思います。また、モノクロ印刷で配布するのであれば、文字色だけでは強調できない可能性が高いため、太字にする・下線を引く・枠で囲むなども有効です。
プレゼン担当者が口頭で説明することが全て書かれている
説明会でプレゼン担当者が口頭で伝える内容が、スライド資料にも書かれていること。最も重要なポイントはここだと思います。
最近の流行のスライド資料は、文字数も限りなく少なく、著作権フリー画像などを多用して、ベンチャー企業のプレゼン資料のようなおしゃれなスタイルが多いように思いますが、新卒採用の会社説明会資料としては次のようなリスクがあると考えています。
- よほど熱心に聞きメモまで取ってくれるような、最初から志望度の高い学生にしか届かない
- 学生が家に帰ったあと、その会社が具体的にどう良かったのか思い出せない
- 学生が他社の説明会も並行して受ける中で、内容を忘れてしまう
会社説明会での資料は、企業のWEBサイトやナビ媒体に書かれている内容よりも濃く、企業分析において非常に重要な情報源になります。この資料の内容が薄いと、熱心に聞いていなかった学生はどうしても説明会自体の内容を忘れていき、志望度が下がってしまいかねません。
説明会が良いものだったことを思い出してもらうためのツールとして、口頭で説明することが全て書かれていることは必須だと思います。
学生が自分でメモをするための余白が取られている
「口頭で説明することが全て書かれている」ことは前提とした上で、さらに学生がそれを聞きながら自分が感じたこと、疑問、特に印象に残った部分などをメモするための余白があると良いでしょう。
良くない説明会資料の例
反対に、あまり良くない会社説明会資料のポイントもご紹介します。
コスト削減のために「白黒印刷」や「縮小印刷」
白黒(モノクロ)や小さすぎるサイズ(A4用紙1ページにスライド4枚以上)で印刷すると、せっかくわかりやすく作った資料が見づらいだけでなく、他社と比較された際に見劣りしてしまうこともあります。
文字が小さくて読めない
スクリーンに投影した際に後列の学生からは文字が読めない、印刷したら文字がつぶれるなどは好ましくありません。
アニメーションが多い
パワーポイント等のアニメーションは学生世代には古い・安っぽい印象を与えてしまったり、ファイルが重くなるため説明会当日のネット環境で動かないなどのトラブルにもつながる可能性があります。
デザインが古い・安っぽい
何年も前から使っている様式や、古い画像データ(画素数が少なく画質が粗い)などを使っていると、古い・安っぽいなどの印象を与えてしまうため避けましょう。
ページや情報量が多すぎる・少なすぎる
多すぎると学生に読んでもらえない、少なすぎても理解が深まらない・記憶に残らない資料となってしまいます。
学生にとって会社説明会は入り口。資料は「選考を受けるかどうかの判断材料」
会社説明会は、学生にとって企業を知る最初の「入り口」です。説明会は、良くも悪くもあくまで「第一印象」であり、説明会の内容だけで入社までを決心する学生はそう多くありません。
まずは「悪くなかったから、エントリーしてみよう」と思ってもらえれば十分とも言えます。社風や仕事の詳細は、今後の選考の中でも十分に伝えられます。
説明会では、完璧なプレゼンや大企業並みの手厚いおもてなしを無理に用意できなくても、「この会社はいまいちだったな」と思われてしまうことがないよう、学生側の最低限のハードル(いわば足切り)に引っかからないクオリティを目指すことを心がければ良いかと思います。
その上で、自社のことをまだ何も知らない学生にも、正しく魅力や実態(強みも弱みも)を知ってもらうように努めましょう。
説明会の最終的な目的は選考ではなく、「入り口」でのミスマッチ防止のためのスクリーニングにあります。参加者の中から、自社が必要とする人材(マッチングして活躍する人材)をなるべく多く選考に進ませることと、自社が必要としない人材を遠ざける(自然と選考から離脱させる)ことを意識して、ターゲット学生に訴求する資料を作成しましょう。
新卒採用の会社説明会スライド資料のラクな作り方

それでは、説明会資料の具体的な作り方をご説明していきます。
まず、学生が企業について知りたいことで、かつ、企業が会社説明会の段階で伝えられる内容というのはそう多くありません。説明会資料は何十ページにもわたる超大作である必要はなく、ポイントさえ抑えていれば簡単なもので良いと思います。
※ただし重要なのは、どの内容においても「これは自社の採用ターゲット学生が魅力に思う内容・書き方になっているか?」「ミスマッチな人材を惹きつけてしまわないか?」というメッセージングの観点でチェックすることです。
会社説明会スライド資料に必ず記載するべき項目一覧
必ず記載しておいたほうが良い項目について、マクロからミクロになるようストーリー立てて説明しやすいよう並べてみました。
特に最近の学生世代では、自身の市場価値を高めるための「成長できる環境」や、社会貢献・自己実現などの「やりがい」を仕事に求める傾向がありますので、そういった学生の価値観も意識しつつ作成することをお勧めします(関連記事:【2022年卒】新卒採用市場の動向・変化を考察)。
(1)紹介(会社概要) |
・社名
・設立年月日 ・ 創業者名 ・ 事業内容 ・ 拠点数 ・ 所在地 ・ 従業員数 ・ 組織図 ・ 所属グループ名 ・ 上場市場 など |
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(2)企業理念(MVV) |
・企業理念、MVV(ミッション、ビジョン、バリュー) ・ 社会や業界における解決するべき課題(なぜその事業をやるのか) ・ 創業ストーリー、沿革(誰がどういう経緯で立ち上げ、今に至るか) |
(3)事業内容 |
・どの業種(業界)に属しているか ・ 業界内でのポジション(先駆者か新興か、シェア率など) ・ 誰のどのような課題を解決する仕事か ・ どのようなビジネスモデルで収益を上げるのか ・ 代表的な商品(サービス) ・ 自社の競争優位性・独自性・強み/弱み ・ ・今後の方針 |
(4)仕事内容 |
・どのような職種があるのか ・ 仕事内容(例:実際の社員に聞いた一日の流れ) ・ 仕事のやりがい ・ 研修体制、身に付くスキル ・ キャリアパスの例 |
(5)募集要項 |
・職種ごとの採用予定人数 ・ 求める人物像 ・ 勤務(所定労働時間・曜日、年間休日数、会社独自の休暇制度、平均残業時間、勤務地など) ・ 初任給、福利厚生 ・ 今後の選考フローとスケジュール |
(6)よくある質問への回答 |
《社員データ》 《働き方》 《社風》 |
以上のような流れで、
- なぜこの事業をやっているか
- なぜ自社がやることに価値があるか
- そのためにどういう人材を採用したいか
このように、学生にストーリー立ててアピールできる資料を作成しましょう。
【テンプレート配布】会社説明会スライド資料のダウンロードはこちら
埋めるだけで完成するスライド資料のテンプレート(パワーポイントファイル)を用意していますので、よろしければ参考にご活用ください。

採用活動で時間をかけるべきは、資料作成ではなく学生とのコミュニケーション。
新卒採用においては、ミスマッチや内定辞退を防ぐためにも学生と密にコミュニケーションをとり相互理解を深めることが、採用担当者の重要な業務です。
資料作成に時間を取られすぎてしまうのはとてももったいないことだと思いますので、なるべく簡単に最低限の内容で作ってしまって、一人一人の学生とのコミュニケーションに時間を使いましょう。