インターンシップから採用につなげる方法とは?コツや注意点も解説
従来、インターンシップと採用活動の関係についてはさまざまな議論がありましたが、2022年6月に、ある要件のもとインターンシップで得た学生情報を採用活動に利用してもよいという三省合意が示され、採用活動にも変化が迫られています。インターンシップを求める人材の採用につなげるには、その制度の中身やメリット・注意点を理解しておくことが重要です。
本記事では、2022年の三省合意の影響を踏まえて、企業がインターンシップを通じて採用に取り組むメリットやコツ、注意点を紹介していきます。
また、新卒採用における効果的なインターンシップの設計・実施にお役立ていただける資料をご用意しました。設計における考え方から、具体的な実施方法まで、情報をたっぷり詰め込んでいます。ぜひダウンロードして、自社のインターンシップ設計にご活用ください。
目次
インターンシップについて採用担当者が押さえておきたいポイント
企業が学生と接点を持ち相互理解を深める手段として、インターンシップの重要性はますます高まっています。インターンシップをめぐっては、ルール変更や市場環境の変化といった多くの動きがあり、採用担当者は最新の情報をキャッチアップし、自社のインターンシップの運営に反映させる必要があります。ここでは、採用担当者が押さえておくべきインターンシップに関する重要なポイントを解説します。
2025年卒からインターンシップ情報を採用に使用可能に
2022年6月、経済産業省・文部科学省・厚生労働省は、「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」を改正し、2025年卒の学生より、一定の要件を満たしたインターンシップにおいては取得した学生情報を広報活動・採用選考活動に活用してもよいということになりました。
これまでの「基本的考え方」では、企業がインターンで得た学生情報は広報活動や採用選考活動には使えないとの見解が示されていましたが、「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」では、一定の基準に準拠するインターンシップで得られた学生情報については、その情報を採用活動開始後に活用可能とすることで合意に至りました。
インターンシップの4種類
三省合意した「基本的考え方」によると、インターンシップは、以下の4つの類型に整理されています。
- タイプ1:オープン・カンパニー
- タイプ2:キャリア教育
- タイプ3:汎用型能力・専門活用型インターンシップ
- タイプ4:高度専門型インターンシップ(試行)
取得した学生情報を採用活動に利用するのが可能となるのは「汎用型能力・専門活用型インターンシップ」(タイプ3)です。ただし一定の要件を満たす必要があり、「就業体験要件」や「実施期間要件」などが挙げられています。具体的な要件については後章「学生情報を採用に使用できるタイプを理解する」で紹介します。
採用活動のさらなる早期化・競争の激化が想定
企業がインターンシップを通じて得た学生情報を採用活動に活用できるようになったことで、インターンシップを積極的に行い、早期に学生情報を取得しようとする動きが広がる可能性もあります。自社が求める人材を目標人数採用するには、質の高い情報を、他の企業に先駆けて得ておくのが有利なのは間違いありません。慢性的な人手不足の状況にあって、同じように考える企業はインターンシップを含めた採用準備活動・採用活動を早期に実施しようとし、人材の獲得競争がより激化する可能性が考えられます。
求める人材を着実に採用するには、企業はより効率的かつ効果的な採用活動を行うための新たな戦略を考える必要が出てくるでしょう。
企業が採用に向けてインターンシップに取り組むメリット
企業がインターンシップを通じて採用活動を展開することには、さまざまなメリットがあります。ここでは主な5つのメリットを紹介します。
採用競争において優位性を発揮できる
インターンシップが採用競争においてもたらすメリットの1つとして、早期のタレント発掘が挙げられます。現代の採用活動は早期化しており、企業と学生の接点を早く持つことが重要です。早期にインターンシップを行うことで、採用プロセスの初期段階から優良な人材プールを形成することが可能になるのです。
次に、競合との差別化が挙げられます。同業他社が同様のインターンシップを実施していたとしても、早期に学生との接触を図ることで、優位性を確保できる可能性もあります。
採用コスト削減と新人研修期間の短縮が期待できる
インターンシップは採用コスト削減と新人研修期間の短縮という2つのメリットももたらします。
採用コスト削減については、インターンシップを活用することで、自社が求める学生を早期に発掘することが可能となり、本格的な採用プロセスの手間やコストが削減できる可能性があるのです。具体的には、一次面接や書類選考といった初期段階の採用プロセスの規模を抑えられる場合もあり、採用にかかる時間と費用を節約できます。
新人研修期間の短縮については、インターンシップ経験者であればすでに業務内容を一定程度理解しているため、正式に入社した際の研修期間が短縮されます。これにより、新入社員がより早く実務に参加し、生産性を発揮することが可能となります。さらに効果を高めるためには、インターンシップ期間中に業務に関連した研修や実践的なプロジェクトを実施することが有効です。
採用ブランディングにつなげられる
インターンシップは、企業の採用ブランディングにも貢献します。企業の仕事環境や文化、価値観に直接触れ、インターン生にリアルな印象を持ってもらうことが可能です。
加えて、インターンシップは企業が採用ターゲットに直接アピールする最適な機会となります。自社のビジョンや価値を伝えることで志望度を引き上げられる可能性もあり、成功したインターンシップの事例を広報活動で利用すれば、さらに広範囲に企業の魅力を広めることが可能です。
採用ブランディングを強化するには、インターンシップの体験を最大限引き出す取り組みが効果的でしょう。例えば、インターン生が実際のプロジェクトに参加したり、社員と直接交流する機会を設けたりといった方法が考えられます。
学生と長期的な関係を築ける
インターンシップは、企業とインターン生との長期的な関係を築くための重要な手段でもあります。インターンシップをきっかけに長期的な関係を維持して信頼関係を深め、結果として採用成功につながることも期待できます。
インターンシップを通して学生のスキル・適性を確認できる
インターンシップはインターン生のスキルや適性を確認できる重要な機会です。企業側はインターン生が実務に取り組む様子を直接観察することで、その能力や適性を詳細かつ具体的に把握できます。面接や履歴書だけでは捉えきれない、実務における能力の活用方法や応用力を把握することもできるでしょう。学生自身にとっても、自分のスキル・適性を探る機会となり、企業やその仕事との相性を確認できます。
企業がインターンシップを通して採用につなげるコツ
インターンシップは、学生に教育機会を提供するとともに、採用活動のパフォーマンスを高める効果が期待できるものです。ただし、その成功のためには、企業側が適切なプログラムを設計・実施する必要があります。以下では、企業がインターンシップを通じて採用につなげるための具体的なコツを紹介します。
インターン生に魅力を感じてもらえるプログラムを用意する
企業がインターンシップを採用につなげるには、自社で働くことや関連する職種への興味を喚起するプログラムが不可欠です。このようなプログラムを提供することで、インターン生自身が仕事や企業文化の魅力に気づいてもらいやすくなるとともに、入社を本格的に検討してもらえる可能性もあります。
具体的には、なるべく実務を体験する機会を設けたり、インターン生が企業の業務や文化を深く理解する機会を提供したりすることが有効です。
インターン生と社員とのコミュニケーションを促す
インターン生と社員が積極的にコミュニケーションを取り合う環境を作ることで、インターン生が企業文化や社員とのつながりを深め、その結果企業への帰属意識が高まり将来的には入社につながる可能性が高まります。
具体的な施策としては、業務中だけでなくランチタイムや業務終了後の懇親会など、インターン生と社員が気軽に交流できる場を設けることが有効です。
インターン生の実力や成長を評価・フィードバックする
インターン生の業務遂行能力や成長を評価し、適切なフィードバックを提供し、インターン生が自己のスキルや適性を明確に理解し、さらにはその改善や発展の道筋をつかむ機会を提供します。また、企業側もインターン生の能力や適性を具体的に評価し、採用の判断材料とすることがポイントです。
具体的な施策としては、定期的な進捗報告や最終プレゼンテーションを通じて、インターン生の成長を評価し、改善点や次のステップについて具体的なアドバイスを提供することが考えられます。
インターン生に対する適切なサポート体制の整備
インターンシップの効果を高めるには、インターン生が安心して業務に取り組むことができる環境を提供することが重要です。具体的には、業務の進め方、企業の文化やルールなど、初めて経験する事柄に対するガイダンスなどが挙げられます。
ここで重要となるのはメンターシップです。メンターやアテンダーといったサポート役を設け、インターン生が遭遇する可能性のある問題を解決するための支援を行います。これにより、インターン生は不明点や困難をすぐに解消し、業務に集中することが可能になります。
インターンシップ終了後の適切な時期・条件でオファーする
インターンシップ終了後のオファーにおいて重要なのはタイミングと透明性です。一般的に、企業はインターンシップが終わった後のなるべく早い時期にオファーを行うのが推奨されます。インターンシップ期間中の経験や学習が新鮮なうちに、その結果を基にしたオファーを提供することで、インターン生はより明確に自己の将来を見つめることができます。
具体的には、インターンシップ終了後1週間以内にフィードバックとともに採用オファーを出すことが考えられます。その際、オファーの条件や将来のキャリアパスについて明確に説明し、そのうえでインターン生に検討を促します。この時、インターン生ごとに希望や担当者による評価も参考にしつつ、選考フローや入社後の配属先・職種といった条件を決めることも重要です。
なお、インターンシップを通じて取得した学生情報を活用できるのは「採用活動開始以降」なので、まだ採用活動が始まっていない場合、このルールを考慮する必要があります。
企業が採用目的でインターンシップに取り組む際の注意点
企業が採用に向けてインターンシップを実施する際には、学生情報の活用、法令の遵守、労働環境の整備、および採用フローの確立など、さまざまな点に注意を払う必要があります。
学生情報を採用に使用できるタイプを理解する
2025年卒より、インターンシップで取得した学生情報を採用活動に活用できることになりましたが、対象となるのは試行中の「高度専門型インターンシップ」(タイプ4)を除いて「汎用型能力・専門活用型インターンシップ」(タイプ3)のみで、さらに以下のように5つの要件を満たす必要があります。
就業体験要件 |
|
---|---|
指導要件 |
|
実施期間要件 |
|
実施時期要件 |
|
情報開示要件 |
|
また、取得した学生情報の採用活動への活用は「採用活動開始以降」に限定されることや、無給が基本となりつつも実態によっては有給となるなどの注意点もあります。インターンシップの企画段階から、要件をよく確認することが求められます。
参照:厚生労働省「インターンシップを始めとする学生のキャリア形成支援に係る取組の推進に当たっての基本的考え方」
法令を確認し契約内容を明示する
企業がインターンシップを通じて採用を行う際には、法令の確認と契約内容の明示が不可欠です。労働基準法や最低賃金法などにもとづいた条件を提供し、労働時間や待遇などを適切に設定する必要があります。
法令に違反した場合、法的問題の発生や企業のブランドイメージの低下に陥る可能性があります。また、明確な契約内容の提示がないと、インターン生の混乱にもつながりかねません。事前に勤務方法・報酬といった条件に関する詳細情報を提供し、契約内容を明確にすることが重要です。
インターン生の労働環境と受け入れ体制の整備
インターン生の働く時間や休憩時間を適切に設定し、安心して働ける労働環境を整えることが必要です。
インターン生は未経験の業務に取り組むことが多く、学ぶべき新しいスキルや知識が山積みです。そのようななかで適切な労働環境や受け入れ体制が整備されていないと、インターン生がストレスを感じたり、成果を出すことが困難になったりする可能性があります。
具体的には、先述のようにメンター・指導担当者を配置し、インターン生が困った時に相談できる体制を作ることが重要です。また、定期的にフィードバックを行い、インターン生の業務の進捗や学習の進行度を確認し、適切なサポートを提供することも欠かせません。
終了後フォロー体制も含めた採用フローの確立
インターンシップ終了後のフォローや採用フローの確立も重要なポイントです。具体的には、インターンシップ終了後も定期的なメールによる連絡や、オンラインでのフォローアップミーティングを行い、学生との継続的なコミュニケーションを維持します。これにより、学生が企業に対する関心を持ち続け、入社意欲が高まる効果が期待できます。
また、採用フローを明確にすることは、学生が自身のキャリアパスを理解し、企業に対する信頼感を深めるために重要です。具体的には、インターンシップ終了後に採用選考の流れ、時期、必要な資格等を明示することで、学生は自身の今後のアクションを計画しやすくなります。
まとめ
インターンシップを採用活動に活用することで、早期の情報収集、採用競争力の向上、マッチングの精度向上など、さまざまなメリットが見込めます。
しかし、インターンシップを採用活動に活用する際には、新たなルール・動向を確認したり、適切なサポート体制を整備したりするなどの注意点もあります。採用担当者は、これらを踏まえて「自社が求める人材」を採用するための長期的な戦略を練るのがポイントです。
最後に、本記事では紹介しきれなかったインターンシップ設計・実施のポイントはこちらの資料で詳しく解説しています。ダウンロードして自社のインターンシップの開催にお役立ていただければ幸いです。