採用ブランディングとは?費用相場や具体的な進め方を徹底解説

人材獲得競争が激化し、求職者の情報収集チャネルが多様化する現代において、従来の採用手法だけでは適切な人材の確保が困難になっています。そこで注目されているのが「採用ブランディング」です。
本記事では、採用ブランディングの定義から費用相場、実施するメリット・デメリット、具体的な進め方などを網羅的にご紹介します。これから採用ブランディングを行う場合は、ぜひ参考にしてみてください。
また、人事ZINEでは「新卒採用ブランディングの教科書」をご用意しています。採用ブランディングの全体像や実施例について紹介しているので、ぜひあわせてチェックしてみてください。

目次
採用ブランディングとは

採用ブランディングとは、採用したい人材に選ばれるため、自社をブランディングすることです。具体的には、企業文化や価値観、職場環境をアピールしつつ、自社の採用ターゲット人材を引きつけます。
採用ブランディングをよく理解するには「採用広報」との違いを確認するのが重要です。採用広報とは、特定の求人に対して適切な人材を引きつけることで、短期的な求人広告などにフォーカスします。つまり企業というよりも、その「求人」を重視して人を集めるための取り組みです。
一方の採用ブランディングは、求人ではなく企業自体にフォーカスし、企業としての魅力を長期的に築くための戦略です。
採用ブランディングと採用マーケティングの違い

採用ブランディングと採用マーケティングの違いは、以下のとおりです。
採用ブランディング | 幅広い層に対して、企業の魅力や価値観を伝える活動 |
---|---|
採用マーケティング | ターゲット層に対して、応募数の増加や質の向上を目指す活動 |
採用ブランディングと採用マーケティングは、人材獲得という共通の目標を持ちながらも、対象とする層と時間軸、主な活動内容に明確な違いがあります。
採用ブランディングは、企業の魅力や価値観、働く環境を長期的な視点で構築し、潜在層を含む幅広い層に浸透させる活動です。企業の「らしさ」を明確にし、共感を呼ぶことで、入社意欲の高い人材が集まる土壌を作ります。
一方、採用マーケティングは、より具体的な求職者や応募者をターゲットとし、短期的な効果を期待する活動です。ターゲット層に合わせた情報発信やアプローチ手法を駆使し、応募数の増加や質の向上を目指します。
採用ブランディングが企業の魅力を「伝える」ことに重点を置くのに対し、採用マーケティングは「どのように候補者を集め、応募につなげるか」という戦略的な実行に重きを置きます。採用活動においては、この両輪をバランス良く展開することが、効果的な人材獲得に不可欠と言えるでしょう。
採用マーケティングについては、以下の記事で詳しく解説しています。具体的な手法や事例を紹介しているので、ぜひあわせてチェックしてみてください。
採用ブランディングの目的

採用ブランディングの目的は「自社が求める人材の獲得」です。採用の現場においては、企業が求めている人物像と、実際に採用した人が一致しない「ミスマッチ」が問題になることがあります。採用ブランディングは、このミスマッチを防ぐ点でも大きく役立つでしょう。
さらに採用活動の初期段階から内定に至るまで、採用したい人材に対して、採用ブランディングで設定した一貫したメッセージを伝えると、自社の特徴や魅力を知ってもらえます。
採用ブランディングの必要性が高まっている背景

なぜ採用ブランディングが必要とされているのでしょうか?新卒採用に限定すると大きく3つのポイントが挙げられます。
- 売り手市場で人材獲得競争が激化しているため
- 求職者との接点が多様化しているため
- ソフト面・口コミを重視する求職者が増えているため
順番にチェックしていきましょう。
売り手市場で人材獲得競争が激化しているため
採用ブランディングの必要性が高まっている背景には、売り手市場で人材獲得競争が激化しているという事情があります。リクルートワークス研究所「ワークス大卒求人倍率調査(2024年卒)」によれば、2024年卒の大卒求人倍率は1.71倍です。一時期は1.5倍近くになりましたが、昨今では中小企業の採用意欲も回復していると見られています。
いずれにせよ、求職者ひとりに対してひとつ以上の求人が存在する状態です。とくにDX人材など、特定のスキルセットを持つ人材は限られており、これらの人材を確保するための競争は熾烈です。そのため企業は、採用ブランディングによって自社の認知度・イメージアップなどを図り、採用しやすくする必要があります。
求職者との接点が多様化しているため
採用ブランディングが必要とされる背景のひとつに、求職者との接点の多様化が挙げられます。
求職者との接点を持つ手段は、従来はナビサイトや求人広告が主流でしたが、現在は多様なチャネルを通じて接点を持てるようになりました。新卒採用だけでなく、中途採用においても、求職者との接触点は広がっています。
求職者と接点を持つには、たとえば以下のような手段があります。
- 就職サイト主催の合同説明会・セミナー
- 大学や業界団体主催の合同説明会・セミナー
- プロフェッショナル向けコミュニティサイト
- 個別の企業サイト
- 就職・転職情報サイト
- 個別の企業SNS・社員SNS
- OB・OG訪問
- 業界関連のネットワーキングイベント
- インターンシップ
- 業務委託・プロジェクトベースの仕事
- リクルーター
- ヘッドハンター
- ダイレクトリクルーティングなどのオファー型就活サイト
- 転職エージェント
- キャリアイベント など
新卒と中途採用の両方で求職者との接点の多様化が進んでいる中、リソースを無闇に費やすのは賢明ではありません。採用したい人材を特定し、適切なチャネルで自社の魅力を一貫して発信するために、採用ブランディングが注目されているのです。
ソフト面・口コミを重視する求職者が増えているため
新卒の学生や中途採用の求職者は、企業選びにおいて社風や企業理念などのソフト面を重視する傾向があります。
【候補者が重視する企業情報】
- 社風
- 社員の雰囲気
- 企業理念
- 組織文化
- ブランド力
自社のブランドイメージを高め、他社との差別化を図れば、求職者の入社意欲の向上につながります。実際、企業理念などのソフト面に共感して入社した人材は、企業に定着しやすいという特徴があります。
求職者は、口コミや業界の評判を通じて企業の情報を収集することも少なくありません。とくに中途採用の場合、業界のネットワークや同僚による口コミ・意見が重要な情報源です。こういった状況の中で、ブランド力を高める必要性は高いと言えます。
採用ブランディングの費用相場

採用ブランディングを外部に委託する場合、費用相場は一般的に100万円から300万円程度と幅広いです。この費用には、企業の現状分析・採用戦略の策定・ターゲット設定・ブランディングコンセプトの構築・広報の方向性決定といった戦略設計が含まれています。
ただし、採用サイトや動画コンテンツの制作・SNS運用・広告運用などの具体的な施策は別途費用が発生するのが一般的です。より魅力的な採用メッセージの開発や、企業の「らしさ」を言語化し具現化する質の高いブランディングには、それ相応の費用と時間が見込まれます。
自社の採用課題や求めるレベルに合わせて、依頼範囲を明確にし、予算を考慮しながら適切なプランを選択することが重要です。
採用ブランディングを行うメリット

採用ブランディングには、大きく6つのメリットがあります。
- 企業規模に関係なく効果が得られる
- マッチ度が高い候補者を集めやすくなる
- 従来の手法とは違った層との接点ができる
- 採用コストの削減になる
- 採用競争に巻き込まれにくくなる
- 既存社員のモチベーションが上がる
それでは順に紹介します。
企業規模に関係なく効果が得られる
採用ブランディングのメリットは、ブランディング自体のコストが発生しないため、企業規模にかかわらず実践できる点です。採用ブランディングは「自社の魅力をどう引き出し、メッセージ化して、求める人材とのコミュニケーションを取るか」に焦点を当てています。
もちろん、採用ブランディングにかかわる広告出稿や採用サイトの制作などにはコストがかかるため、企業規模によっては採用予算の影響を受けることもあります。しかし自社の魅力を伝える基本的な取り組み自体は、企業規模に関係なく実施可能です。
マッチ度が高い候補者を集めやすくなる
マッチ度が高い候補者を集めやすくなるのも、採用ブランディングのメリットです。企業がターゲットとする人材に合わせた一貫したメッセージを設定・発信すれば、自社について事前によく理解してもらいやすくなり、結果としてマッチ度の高い人材が集まりやすくなります。
自社に合った人材を採用しやすくなると、入社後のパフォーマンスにも期待できます。採用現場で問題となりがちな採用ミスマッチの防止になり、早期離職防止・人材の定着率アップにもつながるでしょう。
従来の手法とは違った層との接点ができる
従来の手法とは違った層との接点ができるのも、採用ブランディングを行うメリットです。従来の求人広告などの手法は、積極的に転職を考えている顕在層にフォーカスしています。
一方で採用ブランディングは、ソーシャルメディア・イベント・ワークショップ・コンテンツマーケティングなど、さまざまなチャネルを活用してメッセージを発信します。これにより「現在は転職を積極的に考えていないが、将来的に興味を持つ可能性がある」といった潜在層にもリーチが可能です。
母集団の数・質両面が向上することで、採用活動の効果改善が見込めるでしょう。
採用コストの削減になる
採用コストの削減になるのも、採用ブランディングを行う重要なメリットです。理由は、採用したい人材に一貫したメッセージを送るため、自社にとって採用したい人材とズレがありそうな人材や採用の見込みの薄い人材に費やす採用コストを削減できるためです。
たとえば、数多くの企業から人気がある人材でも、自社への志望度が低く採用が現実的に望みにくいケースであれば、つなぎ留めのためにより多くのコミュニケーションコストが発生してしまいます。
採用したい人材を明確に絞り込み、対象者に一貫性のあるメッセージを発信することで、結果的に採用コストを抑えやすいでしょう。
以下の記事では、採用コストの削減方法を12選紹介しています。ぜひ、あわせてご確認ください。
採用競争に巻き込まれにくくなる
採用競合企業との競争に巻き込まれにくくなるのも、採用ブランディングを行うメリットです。
採用ブランディングを行ううえでは、自社の魅力を見つめ直して、採用したい人材に向けて、よりその人材へ響くようなメッセージを伝えることになります。その結果、必然的に他社とのメッセージが異なり、当然自社の見え方も変わってくるのです。
自社だけが持っている魅力でアピールでき、雇用条件や企業規模・知名度などでの競争に巻き込まれにくくなります。採用ブランディングは、こうした人材確保の競争が激しい時代を勝ち抜くために重要な取り組みです。
既存社員のモチベーションが上がる
採用ブランディングで「魅力的な会社」と世間から認識されると、既存社員のモチベーションも上がりやすくなります。企業が採用ブランディングで発信する内容は、社内のメンバーとも共有されるため、既存の社員も自社の魅力を再確認・再発見する機会となります。
上記のプロセスを通じて、社員は自社のビジョンやミッションに対する誇りを深め、日々の業務に対するモチベーションの向上が期待できるでしょう。組織全体としての一貫性と結束を強化し、企業文化を豊かにするきっかけにもなります。

採用ミスマッチが減少する
採用ブランディングは、以下の情報を明確に発信する機会になります。
- 企業理念
- 価値観
- カルチャー
- 働く環境
- キャリアパス
求職者が、入社前に企業のリアルな情報を理解できるため、入社後のギャップを減らせるでしょう。自身の価値観やキャリアプランとの適合性を慎重に判断できるため、待遇だけでなく企業理念や業務内容に共感した人材が集まりやすくなります。
その結果、入社後のエンゲージメントが高まり、早期離職のリスクを低減し、採用ミスマッチの減少につながるのです。情報の透明性を高めることが、よりよいマッチングを実現する鍵となります。
採用ミスマッチについては、以下の記事で詳しく解説しています。原因や対策について紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
採用活動の安定性が高まる
採用ブランディングは、一時的な採用活動に留まらず、長期的な視点で企業の魅力を認知できます。確立された採用ブランドは、求職者からの安定的な関心と応募を生み出し、景気変動や競合の影響を受けにくい強固な基盤を築きやすくなります。時間をかけて構築されたブランドイメージは、容易には揺るがないでしょう。
「働きがいのある会社」として認知される企業のように、一貫したコンセプトに基づいた採用活動を継続することで、高い求人倍率を維持し、少ない応募数に苦慮する状況からの脱却も可能です。このように採用ブランディングは、外部環境に左右されない、持続可能な採用体制の確立に貢献することもあります。
企業の認知度が上がる
認知度が低い中小企業にとって、採用ブランディングは企業そのものの存在を広く知らせる有効な手段です。従来の求人広告だけに頼るのではなく、自社の魅力を明確に言語化し、SNS・ブログ・採用サイトなど多様なメディアを通じて継続的に発信することで、幅広い層に情報を届けて認知度を高められます。
認知度が向上することで、求人を出した際の応募数の増加が期待できるだけでなく、企業イメージの浸透を通じて、将来的な人材獲得にもつながる可能性があります。
採用担当者が自社の魅力を伝えやすくなる
採用ブランディングによって自社の魅力が明確に言語化され、採用担当者間で共有されることで、採用活動における情報伝達の質と一貫性が向上するでしょう。これまで個々の担当者の経験や感覚に頼りがちだった自社のアピールが、誰が行っても一定以上のレベルで求職者に届けられるようになります。
その結果、担当者は自信を持って自社の強みや働く魅力を効果的に語ることができ、求職者の共感や入社意欲を高めやすくなります。組織全体で魅力が統一的に伝わることで、採用活動全体の底上げにつながるでしょう。
採用ブランディングを行うデメリット

採用ブランディングには、メリットだけでなく、以下2つのようなデメリットもあります。
- 効果が出るまでに時間がかかる
- 社内全体で取り組む必要がある
効果が出るまでに時間がかかる
採用ブランディングは、種をまき、育てるように、すぐに目に見える成果を期待するのは難しいです。その効果を実感できるようになるまでには、一般的に2~3年程度の時間が必要とされています。
この期間中は、計画を実行し、効果検証と改善策を実行するというPDCAサイクルを継続的に回し続ける必要があります。そのため、短期的な成果を求めるのではなく、長期的な視点に立ち、根気強く情報発信や活動を続ける覚悟が求められるでしょう。
どのような媒体を活用するにしても、継続的な運用を見据えた計画が不可欠となる点は、採用ブランディングのデメリットと言えます。
社内全体で取り組む必要がある
採用ブランディングを成功させるためには、企業が外部に発信する魅力と、従業員が実際に体験する社内の状況との間に一貫性が必要です。そのため、採用活動を人事部門や経営層だけで進めるのではなく、従業員全体を巻き込んだ全社的な取り組みとするべきでしょう。
情報発信の内容を社内で共有し、その認識を組織全体で一致させ、日々の行動に反映させることが求められます。全従業員の協力体制を構築し、足並みを揃える必要がある点は、採用ブランディングのデメリットのひとつです。
採用ブランディングの成功事例

ここでは、採用ブランディングを実践した企業の事例を3つ紹介します。
- 事例1.株式会社一休
- 事例2.金属技研株式会社
- 事例3.株式会社メルカリ
新卒採用の成功事例について知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
事例1.株式会社一休
採用ブランディングによる課題が解決した事例の1つ目に、株式会社一休の事例が挙げられます。株式会社一休の採用ブランディングをまとめると、下表のとおりです。
課題 |
候補者が自社に抱くイメージと実際の姿にギャップがある →候補者は自社にラグジュアリーなイメージを持っているが、自社の実情は泥くさい努力が必要なベンチャー気質。候補者と採用人材像のミスマッチに悩まされた。 |
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採用ブランディング |
NewsPicksで一休CEOや20代若手社員などのインタビュー記事を掲載し、CEOによるワークショップ型イベントを開催 →自社の求める人材が読んでいそうなメディアにインタビュー記事を掲載し自社の魅力を発信。CEO本人と会えるワークショップを開催することで一休のカルチャーを伝えることができた。 |
参考:「欲しい人材を獲得」を叶えた採用ブランディングの秘訣とは
事例2.金属技研株式会社
採用ブランディングによる課題が解決した事例の2つ目に、金属技研株式会社の事例が挙げられます。金属技研株式会社の採用ブランディングをまとめると、下表のとおりです。
課題 |
物理・理工・化学学生を採用したい →世界最先端の高い研究開発力と先進技術を持つ中小企業として、航空、宇宙開発、自動車等のさまざまな分野で世界最高クラスの独自性を発揮している企業。金属の可能性や限界に挑戦し続けるエンジニアを目指す好奇心旺盛な人材が欲しい。 |
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採用ブランディング |
好奇心旺盛な理系学生の目を引くため、合説会場にて就活生の目に留まりやすいメッセージを設計 →「難問をクリアせよ」という挑戦的なキャッチフレーズが表記された案内パンフレットを掲げて呼びかけることで、より採用したい人材に関心を引けるようになった。 |
参考:採用ブランディングの薦め-03【徹底解説②|採用パンフレット事例】
事例3.株式会社メルカリ
採用ブランディングによる課題が解決した事例の3つ目に、株式会社メルカリの事例が挙げられます。株式会社メルカリの採用ブランディングをまとめると、下表のとおりです。
課題 |
「採用に強いメルカリ」から、「個人の成長を加速するメルカリ」への移行 →入社後のミスマッチを防ぎ、組織の透明性を増すため、社外と社内の情報やイメージの格差をなくしたい。 |
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採用ブランディング |
「People Branding」チームによるコンテンツプラットフォーム「mercan」の活用を実施 →「mercan」で、1000本以上の記事を公開。「mercan」を通じて提供される情報は、候補者によって事前に読まれ、面接時に企業や事業の説明を省略できるほどの効果をもたらした。強力なカルチャーフィットとチーム力を維持するためにも役立っている。 |
参考:創刊から2年半で1000本の記事を発信。メルカリの採用と情報流通を促進させるメディア活用法
採用ブランディングの進め方・8つの手順

採用したい人材を獲得するために、採用ブランディングを実践する手順を踏みましょう。
- 手順1.現状分析をして事業課題を明確にする
- 手順2.採用ターゲットの人物像・ペルソナを設定する
- 手順3.採用コンセプトを決定する
- 手順4.発信するメッセージを具体化する
- 手順5.発信方法を計画する
- 手順6.自社の社員と採用ブランディングの情報をシェアする
- 手順7.施策を実装する
- 手順8.効果検証を行う
手順1.現状分析をして事業課題を明確にする
まずは現状分析をして事業課題を明確にします。具体的な採用の目的を設定する前に、事業の現状と課題を把握することが重要です。目標設定時には、漠然としたり具体性に欠けたりする目的)を避け、事業課題に直結する目的を明確にします。
目的を考える際は、次の4つの質問を考慮して言語化するのが効果的です。
- 自社の事業戦略における課題は?(理想と現実のギャップは?)
- 採用を通じて事業と組織に与えたい影響は?
- 採用活動のあるべき姿は何か?
- 上記を実現するために、どのような人を何人採用するか?
採用目的を設定していくことと並行して、現状理解のために口コミサイトをチェックするのもよいでしょう。

手順2.採用ターゲットの人物像・ペルソナを設定する
次に、採用ターゲットの人物像・ペルソナを設定します。ペルソナが持っている「社会人としてどうありたいか?」といった欲求や「どのようなことに楽しさややりがいを感じるか?」といった感情などを言語化するのが重要です。仕事だけではなく、プライベートを加味した生き方そのものにアプローチすると、より効果的な設定ができるようになります。
人物像・ペルソナを考える際は、次の3つの質問を考慮して言語化してみましょう。
- 欲求・感情を具体的にイメージできているか?
- 自分だけでなく他の社員から見ても違和感がないか?
- ペルソナが入社後に活躍できていそうか?
ペルソナについて詳しく知りたい場合は、以下の記事も参照してください。

手順3.採用コンセプトを決定する
採用ブランディングにおける「コンセプト」とは、自社の採用活動全体の核となる考え方を、スローガンやキャッチコピーといった具体的な形に表現することです。策定にあたっては、自社の強みや独自性、そしてターゲットとする人材の特性を深く分析し、その両者を結びつけるメッセージを考案します。
企業の理念やミッションは、採用コンセプトの根幹となる「ここで働くことの意義」を示すため、立ち返るべき重要な要素です。ただし「自社の魅力が伝わるか」「ターゲットに響くか」「シンプルでわかりやすいか」といった視点から、柔軟に検討することが求められます。
採用コンセプトは、その後のビジュアル表現や情報発信の内容を決定する羅針盤となるため、慎重かつ丁寧に作り込みましょう。
手順4.発信するメッセージを具体化する
人物像・ペルソナを設定したら、その対象に発信するメッセージを具体化します。具体化は「伝えることの抽出」「メッセージにして一文に集約」の2つが重要です。伝えることの抽出に関しては、以下の3つの軸で考えるとよいでしょう。
- 会社:社のビジョン・経営者の思想、業務内容の社会的意義・独自性
- 仕事:仕事の特徴、仕事の内容
- 環境:社風、社内制度、先輩・同僚
抽出された情報は、ただ単に箇条書きなどで羅列するのではなく、ペルソナに刺さるメッセージとしてまとめます。キャッチコピーのように一文に集約すると、採用媒体、コンテンツなどを選定する際に一貫して活用しやすくなるでしょう。
手順5.発信方法を計画する
次に、具体化したメッセージの発信方法を計画します。伝えたいメッセージをどのように発信するかを検討して、利用するチャネルを選びましょう。採用ブランディングで重要とされているのは、採用サイトとSNSの2つです。
とくに採用ブランディングの要となるのは採用サイトで「企業理念」「仕事のおもしろさ」など、深い情報を届けられます。採用サイトとSNSを軸に、自社なりの発信方法を計画しましょう。
詳しくは、後章「採用ブランディングで活用したいチャネル・手法」で解説します。
手順6.自社の社員と採用ブランディングの情報をシェアする
採用ブランディングは、求職者に向けた「アウターブランディング」だけでなく、自社社員に向けた「インナーブランディング」も重要です。
情報をシェアする際、資料をメールで送るだけでは不十分です。可能なら研修を設け、レクチャーしましょう。たとえばグループワークは、与えられたテーマを自分のこととして考えられるため、より内容が頭に残りやすくなります。
手順7.施策を実装する
ここまでの準備ができたら、採用コンセプトや具体的なメッセージの発信を行います。まずは企業の魅力を効果的に伝えるため、社内外の関係者と連携し、社員インタビューやオフィス紹介などのコンテンツを制作するといいでしょう。これにより、企業のリアルな姿を伝え、共感を醸成できます。
既存の採用データを分析し、採用サイトの改善やSNSを活用した情報発信など、多様なチャネルを通じて潜在層にアプローチするのも有効です。重要なのは、企業の価値観や文化を候補者に深く理解してもらい、長期的な関係を築くことです。
手順8.効果検証を行う
採用ブランディングの取り組みが、期待通りの成果を上げているかを確認するためには、効果検証が不可欠です。まず、応募者数の増減・ウェブサイトへのアクセス数の変化・内定承諾率の向上といった定量的な指標を測定します。
たとえば、特定の広報活動前後での数値を比較することで、直接的な効果を評価できます。加えて、企業イメージや評判といった定性的な側面も重要です。SNSでの言及数や共有数、フォロワー数の推移などを分析し、企業に対する関心度や好意度の変化を把握しましょう。
また、候補者へのアンケートやヒアリングを通じて、応募理由や印象に残った情報などを収集するのも有効です。これらの多角的なデータに基づき、採用ブランディング戦略の有効性を検証し、改善につなげていきましょう。
採用ブランディングで活用したいチャネル・手法

採用ブランディングで活用したいチャネル・手法としては、以下の5つがあります。
- 採用サイト
- SNS
- 企業説明会・セミナー
- その他のリアルイベント
- 採用動画
それぞれのチャネル・手法を詳しく解説します。
採用サイト
採用ブランディングの要となる採用サイトで自社の魅力を発信していきます。採用サイトでは「企業理念」「仕事のおもしろさ」などの観点で自由に深い情報を届けることが可能です。候補者の趣味趣向は変化することがあるので、見た目のデザインや表現方法はアップデートする必要があります。
SNS
採用サイトに加え、SNSも活用しましょう。とくに最近の大学生のような若い世代は、SNSから情報を収集する傾向にあります。SNSは双方向のやり取りなので、ブランドイメージを高める発言を心がけましょう。更新が滞るなど、上手に使いこなせないと、せっかく高まった自社への関心が低くなる可能性もあるため、運用方法には注意が必要です。
企業説明会・セミナー
採用サイトとSNSで情報を発信したら、企業説明会で候補者の志望度を高めましょう。志望順位を上げることで、応募者数が増えて内定辞退率も下がることが期待できます。
セミナーで伝えたいポイントは以下です。
- 競合他社との違い
- 製品やサービス
- 社員による「1日のスケジュール」「仕事のやりがい」
- 社長や人事担当者による「採用活動をする理由」「求める人材像」
候補者の「この会社で働きたい」という意識が高まるのは、セミナーや企業説明会です。飾りすぎず、ブランドイメージに沿った「自社の強み」のような魅力を伝えましょう。
また、合同企業説明会では数多くの企業ブースの中に埋もれてしまわないように、自社の個性を出して、候補者の目を引くことも大切です。企業の統一カラーなどがあれば、会場のコンセプトカラーとして活用しましょう。
「自分らしく働く」といった採用ブランディングのキャッチコピーも、全面に打ち出します。セミナーで選考への動機を形成することは、自社の志望順位を上げてもらうことにつながるでしょう。
その他のリアルイベント
インターンシップやミートアップなどのリアルイベントは、自社の社風やビジョンを肌で感じてもらえて、採用ブランド力の向上につながります。直接交流を重ねることで信頼関係を築き、企業のファンを増やすことも可能です。
さらに、企業説明会のような選考を前提としたイベントだけでなく、業界セミナーやワークショップのように気軽に参加できるイベントを企画すれば、潜在層と接点を持つこともできます。
採用動画
近年の傾向としては、PR動画を制作し、動画メディアで配信する企業も増えています。動画では、文章での表現が難しい会社の雰囲気や働く社員の表情なども伝えられるため、より共感や親近感を引き出したい時に効果的です。
採用ブランディングを成功させるためのポイント

採用ブランディングを成功させるためには、以下3つのポイントを押さえておくといいでしょう。
- 継続的な情報発信をする
- 定期的な振り返りと改善を繰り返す
- 全社的にリソースを確保する
継続的な情報発信をする
採用ブランディングは、一度戦略を立てて終わりではなく、そのコンセプトに基づいた情報を継続的に発信し続けることで、初めてその効果を発揮します。情報発信が途絶えてしまうと、候補者の記憶から薄れたり、誤った認識を持たれたりする可能性があります。
企業のウェブサイト・ブログ・SNSなどを活用し、経営者の考えや社員の働く様子をリアルタイムに伝え続けることで、常に情報収集を行っているターゲット層にアプローチが可能です。繰り返し接触することで親近感や関心が高まるため、継続的な情報発信は、候補者の記憶に残り、魅力的な存在として認識されやすくなるでしょう。
定期的な振り返りと改善を繰り返す
実施後の効果検証と、それに基づいた定期的な改善は不可欠です。アンケートやインタビューを通じて、応募者の属性・応募理由・選考過程での印象・内定承諾の決め手などを定量的・定性的に分析し、採用活動の成果を評価しましょう。
もし、応募数や質の低下、選考辞退の増加といった兆候が見られた場合は、採用ブランディングの方向性や情報発信の内容がターゲットに合致していない可能性があります。競合他社の動向や社会の変化も考慮しながら、自社のポジショニングを見直し、メッセージや施策を柔軟に修正していくことが重要です。
定期的な振り返りと改善のサイクルを回すことで、常に最適な採用ブランドを維持し、求める人材からの共感と応募につなげられるでしょう。
全社的にリソースを確保する
採用ブランディングを成功させるためには、戦略の一貫性と、それを継続的に実行するためのリソース確保も必要です。とくに、社内の人材のみで取り組む場合は、各担当者の業務調整を行い、月単位で必要な工数を具体的に把握しておくべきでしょう。
中長期的な目標に基づき、実施したい施策を事前に検討しておくことで、必要な人員や予算といったリソースを計画的に準備しやすくなります。採用ブランディングは、継続的な活動によってその効果が最大化されるため、全社的に必要なリソースをしっかりと確保することが重要です。
まとめ

採用ブランディングは、激化する人材獲得競争を勝ち抜き、自社が求める人材を確保するための強力な戦略です。短期的な施策に終わらず、企業の魅力や価値観を言語化し、多角的なチャネルで継続的に発信することで、企業の認知度向上・ミスマッチの減少・採用活動の安定化につながります。
効果が出るまでには時間がかかり、全社的な取り組みが求められるという側面もありますが、継続的な情報発信と改善を繰り返すことで、強固な採用ブランドを確立できます。本記事の内容を参考に、ぜひ貴社ならではの採用ブランディングを実践し、持続的な人材獲得の基盤を築いていきましょう。
人事ZINEでは「新卒採用ブランディングの教科書」をご用意しています。採用ブランディングの全体像や実施例について紹介しているので、ぜひあわせてチェックしてみてください。
