【初めての採用ブランディング】目的・メリットから具体的な実施方法まで紹介

「採用したい学生になかなか出会えない」という気持ちを抱えつつも、日々の業務が忙しく、なかなか採用の全体像を見直せない、というお悩みをお持ちの採用担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか?
自社の魅力を伝えて採用したい人材を獲得するために「採用ブランディング」という考え方が普及しつつあります。学生との接点が多様化し、学生側が企業の口コミを集めることも容易になった昨今、自社の魅力を適切に発信する「採用ブランディング」はますます重要になってきました。
本記事では、これから採用ブランディングを始めたいと考えている担当者の方向けに、採用ブランディングが注目される背景を踏まえ、その手順やポイントをご紹介します。
この記事を読んで、採用ブランディングのメリットを押さえた上で方法を理解し、御社の採用で実践していただければ幸いです。
また、採用ブランディングにおいては、採用したい人物像をできるだけ具体化することが重要です。
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目次
採用ブランディングの定義と目的

採用ブランディングという言葉の定義と目的について解説します。
採用ブランディングとは自社のブランド化
一般的には採用ブランディングとは採用したい人材に出会い選ばれるため、自社をブランド化することをさします。自社の魅力を伝える一貫したメッセージを通じて、学生の就職希望者とコミュニケーションをとります。
目的は自社とマッチする人材の獲得
採用活動の初期段階から内定に至るまで、採用したい学生に採用ブランディングで設定した一貫したメッセージを伝えると、他社にはない自社の特徴や魅力を知ってもらえます。
繰り返しになりますが、企業が採用ブランディングを行う主な目的は、自社が求める人材の獲得です。「ブランディング」と言う言葉自体は一般的に認知されていると思いますが、なぜ今『採用』に活用するか、これ以降に背景を紹介します。
【背景】なぜ、今採用ブランディングが必要なのか?

なぜ採用ブランディングが必要とされているのでしょうか?新卒採用に限定すると大きく3つのポイントが挙げられます。
- 自社とマッチする人材獲得のため
- 学生との接点の多様化のため
- 学生はソフト面や口コミを重視するため
では順に紹介します。
自社とマッチする人材獲得のため
コロナ禍の影響で売り手市場から、企業が「優秀な人材を厳選する」という流れにかわってきていますが、依然として求人数に対して民間企業就職希望者数のほうが少ない状況です。
2020年6月の調査によると2021年卒の民間企業就職希望者数は447,100人で求人数総数は683,000人でした。求人倍率は1.53倍で、10年ぶりに0.3ポイント以上下落しています。2020年2月の調査結果は求人倍率1.72倍で新型コロナウイルスの影響から企業が採用数を絞ったこともうかがえました。それでも求人総数は60万人台をキープしました。
労働人口の減少にともない、自社とマッチする人材の獲得はさらに困難になることが予想されます。そのため、自社が必要な人材に狙いを定めて、自社の魅力を効率よく伝える戦略が必要です。待っていても会えない学生に向けて積極的に自社の企業情報を届けましょう。
学生との接点の多様化のため
採用ブランディングが必要とされる背景の2つ目に、学生との接点の多様化が挙げられます。
学生との接点を持つ手段は、従来はナビサイト主軸でしたが、現在は学生との接点を持つチャネルは数多く増えました。同時に採用担当者のマンパワーだけでは、従来のナビサイト主軸の時代と比較して現実的に広範囲では対応しきれなくなってきました。
例えば、学生と接点を持つ手段として、以下があります。
- 就職サイト主催の合同説明会・セミナー
- 大学主催の合同説明会・セミナー
- 学生同士のコミュニティサイト
- 個別の企業サイト
- 就職情報サイト
- 個別の企業SNS・社員SNS
- OB・OG訪問
- インターンシップ
- リクルーター
- ダイレクトリクルーティングなどのオファー型就活サイト
- etc…
学生と接点の多様化、買い手市場に移行しつつもまだまだ学生優位の採用市場とみられる背景があります。採用したい人材を設定した上で、自社の魅力を一貫したメッセージで発信する方法が見直され、採用ブランディングが注目されているのです。
学生はソフト面や口コミを重視するため
新卒の学生はソフト面を重視して企業を選ぶ傾向があります。
【新卒の学生が重視する企業情報】
- 社風
- 社員の雰囲気
- 企業理念
- 組織文化
- ブランド力
新卒の学生は、社風や企業理念などのソフト面が重要です。自社のブランドイメージを高めて、他社と差別化することが新卒学生の入社意欲を高めることにつながります。企業理念などのソフト面に共感して入社した人材は、企業に定着しやすいという特徴もあります。
学生は、口コミなどで企業のソフト面の情報を収集しています。友だちや先輩とのつながりが深い学生の信頼を得るために口コミの影響力は無視できません。
以降、採用ブランディングを行う上でのメリットを改めて整理して紹介します。
背景を踏まえて、もう一度採用ブランディングのメリットを見てみる

採用ブランディングには、大きく7つのメリットが挙げられます。
- 採用ブランディング自体にコストがかからず企業規模に関係なくできる
- マッチング度が高い候補者を集められる
- 採用コストを抑えられやすい
- 採用競合企業との獲得競争に巻き込まれにくい
- 応募者数が上がる
- 人材が定着しやすくなる
- 既存社員のモチベーションが上がる
それでは順に紹介します。
企業規模に関係なくできる
まずメリット1つ目に、採用ブランディング自体にコストがかからず、そのため企業規模(大企業だから採用予算がたくさんある、など)に関係なく実践できることが挙げられます。
理由は、採用ブランディングは、自社の魅力をいかに引き出してメッセージ化につなげ、採用したい人材とコミュニケーションとるかが重要であり、直接的にコストがかかるものではないからです。
ですので、大手企業 = 採用予算がある→ 採用ブランディングができる訳ではなく、どの企業規模でも採用ブランディング自体は行うことは可能でしょう。
一般的に「採用ブランディングって、コストかかるんでしょ?」と言われる所以は、採用ブランディングをする上で、メディアに広告を出稿したり、自社の採用サイトを新たに制作するなどアウトプットにコストがかかる場合もあるからです。
採用ブランディングを行う上で、制作会社に採用サイトや動画などを発注したり、広告を出稿すれば、企業規模による採用予算の影響も出てくるでしょう。
しかしながら、自社の魅力を学生に伝えること自体は基本的に企業規模に関係なく実践できます。
マッチング度が高い候補者を集められる
メリット2つ目に、マッチング度が高い候補者を集められる点が挙げられます。
理由は、採用ブランディングでは、企業が採用したい人材と出会うために、その人材に『刺さる』ような一貫したメッセージを設定して届けます。
ですので、メッセージの具体度にもよるのですが、よりターゲットを絞ったメッセージにした場合、より採用したいマッチング度の高い母集団を必然的に形成しやすいでしょう(一方で、あまりターゲットを狭くし過ぎたメッセージにすると、候補者が集まりにくい場合もあります。ですので、自社にとって採用したい人材へのメッセージがどの程度であれば有効か、試行錯誤が必要になってきます。)。
メッセージの一例として、配電盤事業などニッチな業界でどうしても学生に知ってもらいにくい企業の場合、『ものづくりの企業』という既存のメッセージよりも、『街の灯を作る企業』です、など社会的な意義に結びつけて、高い技術とやりがいのある企業であることをアピールすることで、関心が高い採用したい人材にアプローチすることもできます(もちろん、そのメッセージの方が自社で採用したい人材に魅力を伝えれるだろうという仮定に基づきます)。
採用したい人材に『刺さる』ような一貫したメッセージを設定して候補者に届けることで、よりマッチング度が高い候補者を集められるでしょう。
採用コストを抑えられやすい
メリット3つ目に、採用コストを抑えられやすい点が挙げられます。
理由は、採用したい人材に一貫したメッセージを送るため、自社にとって採用したい人材とズレがありそうな学生に費やす採用コストを削減できるからです。
広告出稿など可視化しやすいコストだけではなく、例えば単に数多くの企業から人気がある高学歴で優秀なエリート学生でも、自社への志望度が低く採用が現実的に望みにくい学生などがエントリーしてしまうと、その後の採用担当者と学生にコミュニケーションコストなどが発生してしまいます(学生と連絡1つすることにとっても厳密にはコストが発生します)。
ですので、採用したい人材を明確にして、一貫性のあるメッセージを発信することで、結果的に採用コストを抑えられやすいでしょう。
採用競合企業との競争に巻き込まれにくい
メリット4つ目に、採用競合企業との競争に巻き込まれにくい点が挙げられます。
理由は、採用ブランディングを行う上で、自社の魅力を見つめ直して、採用したい人材に向けて、よりその人材へ響くようなメッセージを伝えるので、必然的に他社とのメッセージが異なり、当然自社の見え方も変わってくるでしょう。
自社の魅力を見つめ直し、採用したい人材に向けてメッセージを発信することで、必然的に採用競合企業との競争に巻き込まれにくくなります。
応募者数が上がる
メリット5つ目に、応募者数がアップする可能性が挙げられます。
理由は、自社の魅力を改めて整理していくと、より採用したい人材が明確になり、メッセージの打ち出し方が効果的になります。そうすると今まで届かなかった採用したい人材にアプローチできることが考えられます。
地方企業の一例を挙げると、地方企業が挑戦的な学生を採用したい場合は、「〇〇県から世界を狙う」のような意味を込めてブランディングを行い、挑戦的な学生の応募数をアップさせる施策を打つこともできるでしょう。
採用ブランディングを行うことで、今まで届かなかった層にアプローチでき、結果として応募者数アップにもつながりやすくなります。
人材が定着しやすくなる
採用ブランディングとは、自社のファンを増やす取り組みでもあります。自社の文化に共感する学生を採用することで、職場定着率が上がります。結果、退職者を減らすことにつながります。
既存社員のモチベーションが上がる
採用ブランディングで「魅力的な会社」と世間から認識されると、既存社員のモチベーションも上がります。既存社員は企業理念などを改めて振り返り、自社で働いていることにプライドをもちやすくなります。

採用ブランディングの事例3つ

ここでは、採用ブランディングを実践した企業の事例を3つ紹介します。事例で紹介する企業の悩みは以下になります。
- 採用したい人物像と候補者集団のギャップがある
- 挑戦し続ける好奇心旺盛な理系学生を採用したい
- 不祥事からイメージを改善させたい
では、順に紹介します。
事例① 悩み:採用したい人物像と母集団のギャップがある
採用ブランディングによる課題が解決した事例の1つ目に、株式会社一休の事例が挙げられます。株式会社一休の採用ブランディングについては以下の表で確認できます。
悩み | 学生が自社に抱くイメージと実際の姿にギャップがある →学生は自社にラグジュアリーなイメージを持っているが、自社の実情は泥くさい努力が必要なベンチャー気質。応募者と採用人材像のミスマッチに悩まされた。 |
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採用ブランディング | NewsPicksで一休CEOや20代若手社員などのインタビュー記事を掲載し、CEOによるワークショップ型イベントを開催 →自社の求める人材が読んでいそうなメディアにインタビュー記事を掲載し自社の魅力を発信。CEO本人と会えるワークショップを開催することで一休のカルチャーを伝えることができた |
参考: 「欲しい人材を獲得」を叶えた採用ブランディングの秘訣とは
事例② 悩み:好奇心旺盛な理系学生を採用したい
採用ブランディングによる課題が解決した事例の2つ目に、金属技研株式会社の事例が挙げられます。金属技研株式会社の採用ブランディングについては以下の表で確認できます。
悩み | 物理・理工・化学学生を採用したい →世界最先端の高い研究開発力と先進技術を持つ中小企業として、航空、宇宙開発、自動車等の様々な分野で世界最高クラスの独自性を発揮している企業。金属の可能性や限界に挑戦し続けるエンジニアを目指す好奇心旺盛な人材が欲しい。 |
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採用ブランディング | 好奇心旺盛な理系学生の目を引くため、合説会場にて就活生の目に留まりやすいメッセージを設計。 →「難問をクリアせよ」という挑戦的なキャッチフレーズが表記された案内パンフレットを掲げて呼びかけることで、より採用したい人材に関心を引けるようになった。 |
参考: 採用ブランディングの薦め-03 【徹底解説②|採用パンフレット事例】
事例③ 悩み:不祥事からイメージを改善させたい
採用ブランディングによる課題解決の3つ目の事例は日本マクドナルドです。日本マクドナルドの採用ブランディングについて紹介します。
悩み | イメージアップをはかり、能動的に動く学生を採用したい →日本マクドナルドは、2014、2015年に不祥事を起こし、企業イメージが以前より低下した。企業イメージを回復させて能動的に働ける学生を採用したい。 |
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採用ブランディング | 自社の中途採用ページにアイコンとなる社員のインタビューを掲載。 →インタビュー内容は「独自の教育施設の紹介」や「ダイバーシティ&インクルージョン」、「食の安全」などで、キャリアアップができる世界的大企業というイメージをアピール。「クルー体験会」を行いアルバイト定着率をアップさせたことも職場環境のイメージアップにつながった。 |
採用ブランディングの手順を解説

採用したい人材を獲得するために、採用ブランディングを実践する手順を踏みましょう。
- まずは現状理解!既存の事業課題から目的を定める
- 「誰に」「どんな形でメッセージを」伝えるか考える
- 採用サイトとSNSで情報を発信
- 企業説明会で志望順位を上げてもらう
- 自社の社員とも採用ブランディング情報をシェア
では順に紹介します。
手順①:まずは現状理解!既存の事業課題から目的を定める
採用ブランディングを実践する手順の1つ目に、まずは自社の事業課題に目を向ける必要があります。自社の事業課題を把握し、現状理解してから、採用を行う『目的』を設定することから始めましょう。
目的を設定する上で留意する点は、「なんなく…」「一般的に優秀な…」「とりあえずたくさん…」などがあります。自社の事業課題から直接的に抽出されたとは言いがたい目的、目標を設定している場合、一歩踏み留まったほうがいいかもしれません。
例えば、「学歴は一定レベルあったほうが良いので、一般的に優秀な学歴が高い人を採用したい。今年もMarchレベルの大学群からとりあえず10名ぐらい採用しよう!」という明確でない目標設定では、事業課題にとって必要な人材と接点を持ち、目標採用人数に達成することは難しいでしょう。
以上の留意点を踏まえて、事業課題から採用目的を設定するための言語化することが大事です。以下4つの『問い』から採用目的を設定してみましょう。
- 自社の事業戦略における課題は?(理想と現実のギャップは?)
- 採用を通じて事業と組織に与えたい影響は?
- 採用活動のあるべき姿は何か?
- 上記を実現するために、どのような学生を何人採用するか?
まずは既存の事業課題に目を向け、事業課題を把握して、採用の『目的』を設定しましょう。

現状理解のために口コミサイトをチェック
採用目的を設定していくことと並行して、自社が現在、就活生から見てどのような会社だと思われているかを事前に知っておく事も重要です。
理由は、採用ブランディングを実施するにあたり、『既存の採用ブランド』が実は採用において良い影響を与えているとは限らないからです。
例えば、企業の口コミサイトなどで書かれている情報にはネガティブなものも含まれます(退職者などのレビューが含まれるため)。
ネガティブな採用ブランドが形成されたままになってしまうと、採用の妨げになる可能性が高いです。とりわけ選考が進んでいて企業への関心が高い学生は、同時に不安が高まり、口コミサイトなどのネガティブな要素から不安が増幅され、離脱してしまうかもしれません。
ですので、口コミサイトに書かれた企業レビューを意識しつつ(そのコメントが事実かどうかに関わらず)、採用したい人材にとってその不安を解消するまでは行かなくとも、少なくとも不安を和らげることを意識しましょう。
ですので、不安を和らげるためにも、自社の魅力を打ち出す必要が出てきます。たとえば、「残業が多い理由は会社の事業が拡大しているから」「1人当たりの業務量が多い理由は信頼して仕事を任せてもらえるから」「残業代はもちろん出る」などです。
手順②:「誰に」「どんな形でメッセージを」伝えるか考える
採用ブランディングを実践する手順の2つ目に、手順1つ目で設定した採用目的を元に、誰にどんなメッセージを発信するか設定します。具体的には以下の手順を踏みます。
- 誰に:ペルソナを設定
- どんな形でメッセージを:ペルソナに響く一貫したメッセージを設定
それでは順に紹介していきます。
誰に:欲求をイメージしてペルソナを設定
採用したい人物像として、ペルソナを作成します。ペルソナを構成する上で外せない要件を定義するのに加えて、採用ブランディングを行う上で重要なポイントは、ペルソナが持っている欲求や感情(就職してどうありたいか? など、ペルソナ自身が会社や働くことに求めていること)を言語化することが大切です。
ペルソナの欲求や感情的なことを言語化した一例として、
- 〇〇(役職、職種など)になりたい!
- 〇〇が好き!
- 〇〇したい!
- 〇〇が大事!
などが挙げられます。
仕事だけではなく、プライベートを加味した生き方そのものにアプローチすると、そのペルソナが何を大切にするか、働いていく上でのモチベーションは何なのかを仮定することができるでしょう。
以下3つの『問い』からペルソナを設定してみましょう。
- 感情がきちんとイメージできているか?
- 「こういう人、いるいる! 確かにうちの会社に来て欲しいよね!」と自分だけじゃなく他の社員からみて違和感がないか、同意をとれているか?
- ペルソナががきちんと入社後に活躍できてそうか?
ペルソナ理解を深めて、よりペルソナに刺さるメッセージを作成するためにも、ペルソナの欲求や感情的な側面を知っていきましょう。
架空の人物を1人作り出して、イメージを膨らませていくのもおすすめです。ヒューマンスキルや人物像を具体的に描いていきましょう。社内の活躍社員をモデルにするなど、自社が欲しい人材をより具体的に想像しましょう。

どんな形でメッセージを:ペルソナに響くメッセージを一文に
ペルソナに刺さるメッセージを作成するにあたり、以下2つのポイントが重要です。
まず1つ目は、『伝えることを抽出』しましょう。
自社で採用したい人物像であるペルソナの欲求や感情に対して、他社と差別化をはかるためにもペルソナが求める自社の魅力が詰まった情報を提供することが重要です。
例えば、メッセージを設定するにあたって、『会社』『仕事』『環境』の3軸で魅力が詰まった情報を抽出する方法があります。
伝えたい情報 | |
---|---|
会社 | ・会社のビジョン、経営者の思想 ・業務内容の社会的意義、独自性 |
仕事 | ・仕事の特徴 ・仕事の内容 |
環境 | ・社風 ・社内制度 ・先輩 / 同僚 |
『会社』『仕事』『環境』の3軸を参考に、ペルソナの欲求や感情に対して、必要な自社の情報を提供します。そのために、自社が提供できる情報の中でペルソナにとって何が必要なのか伝えることを抽出しましょう。
そして次に、抽出した伝えることを『メッセージにして一文に集約』しましょう。
留意点として、ただ単に抽出された情報を箇条書きなどで羅列するだけでは、ペルソナに刺さるメッセージにはなりにくいです。ですので、ペルソナが『グッとくる』ようなメッセージが必要です。
例えば、メインメッセージとして『キャッチコピー』のように一文に集約すると、採用媒体、コンテンツなどを選定する際に一貫してペルソナに刺さりやすくなるでしょう。
『伝えることを抽出』→『メッセージを一文に集約』することで、そのメッセージを軸に、採用媒体やコンテンツの設計(手段としてどのような視覚表現、アウトプットを行えばいいか)など具体かつ一貫性がとれた施策が可能になります。
手順③:「採用サイト」「SNS」で情報を発信
ペルソナが設定できたら、採用サイトとSNSで情報発信させましょう。採用サイトとSNSを充実させることについて解説します。
採用ブランディングで1番大切なのは採用サイト
採用ブランディングの要となる採用サイトで自社の魅力を発信していきます。採用サイトで「企業理念」「仕事のおもしろさ」など深い情報を届けることができます。毎年、学生の趣味趣向は変化するので、見た目のデザインや表現方法はアップデートする必要があります。
採用サイトにつながる動線も用意しておきましょう。前述したマクドナルドは、まだ採用サイトへの誘導率は高くないもののクーポン利用の多いアプリに採用のバナーを貼り動線を作っています。
採用サイトに加え、SNSも活用します。最近の大学生は、SNSから情報を収集する傾向にあります。SNSは双方向のやり取りなので、ブランドイメージを高める発言を心がけましょう。更新が滞るなど上手に使いこなせないとせっかく高まった自社への関心が低くなる可能性もあります。
手順④:自社の社員と採用ブランディングの情報をシェア
セミナーなどの前に、企業の上層部や社員と採用ブランディングと企業イメージの情報を共有します。
研修を設けて情報を周知するのも可
これまで紹介した採用ブランディングは学生や求職者に向けた「アウターブランディング」です。自社社員に向けた「インナーブランディング」も大切です。採用ブランディングを成功するためには、全社員が一丸となる必要があるからです。社員が自社の存在意義やどんな会社なのかを正確に理解することで、経営理念と社員の行動に一貫性も出ます。
採用ブランディングの情報は資料をメールで送るだけでは意識下に残りません。可能なら研修を設け、レクチャーしましょう。より記憶に残る方法は「グループワーク」です。グループワークは、与えられたテーマを自分ごととして考えることができるのでより理解を深めることができます。会社の研修でよく用いられている取り組みです。
手順⑤:企業説明会で志望順位を上げてもらう
採用サイトとSNSで情報を発信したら、企業説明会で学生の志望度を高めましょう。志望順位を上げることで応募者数が増え内定辞退率も下がります。
セミナーで自社の強みをアピール
セミナーで伝えたいポイントは以下です。
- 競合他社との違い
- 製品やサービスの紹介
- 社員による「1日のスケジュール」「仕事のやりがい」などの紹介
- 社長や人事担当者による「採用活動をする理由」「求める人材像」の紹介
学生の「この会社で働きたい」という意識が高まるのはセミナーや企業説明会です。飾りすぎず、ブランドイメージに沿った「自社の強み」などの魅力を伝えましょう。
また合同説明会など数多くの企業ブースの中に埋もれてしまわないように、自社の個性を出して、学生の目を引くことも大切です。企業の統一カラーなどがあれば、会場のコンセプトカラーとして活用しましょう。「自分らしく働く」など採用ブランディングのキャッチコピーなども全面に打ち出します。セミナーで選考への動機を形成することは、自社の志望順位を上げてもらうことにつながります。
採用ブランディングで活用したい発信手段
採用ブランディングで活用される代表的な発信手段といえば、採用サイトやSNSが思い浮かぶかと思いますが、他にも様々なチャネルが活用できます。
例えば、インターンシップやミートアップなどのリアルイベントは、自社の社風やビジョンを肌で感じてもらうことができ、採用ブランド力の向上につながります。直接交流を重ねることで信頼関係を築き、企業のファンを増やすことも可能です。さらに、会社説明会など選考を前提としたイベントだけでなく、業界セミナーやワークショップなど、より気軽に参加できるイベントを企画すれば、潜在層と接点を持つこともできます。
近年の傾向としては、PR動画を制作し、動画メディアで配信する企業も増えています。動画では、文章での表現が難しい会社の雰囲気や働く社員の表情なども伝えられるため、より共感や親近感を引き出したいときに効果的です。
様々な発信手段がありますが、重要なのは各チャネルの特性を理解し、目的に適した方法を選ぶことです。ターゲット像や採用コンセプトを明確にし、最も効果的な方法を選出するようにしましょう。
採用ブランディングの注意点

採用ブランディングの注意点を紹介します。
- ブランディングが浸透するまでに時間がかかる
- 長期的な情報発信は手間がかかる
ブランディングが浸透するまでに時間がかかる
採用ブランディングが浸透し、結果が出るまでに時間がかかります。少なくとも2、3年はかかると考えておきましょう。「このやり方はうまくいった」「これは欲しい人材層に響かなかった」とやり方を見直して改善を重ねていく必要があるからです。長期戦を覚悟したプランニングを用意しなくてはいけません。
長期的な情報発信は手間がかかる
採用ブランディングは「一度採用サイトを作ったら終わり」、「SNSで情報発信したら終わり」というものではありません。継続して情報を発信する必要があります。古い情報が載っているサイトはイメージが良くないので、一度やり始めたら走り続けるエネルギーが必要です。SNSを使う場合は「いいね」などの好感触が得られるツイートを継続的に発信するよう心がけましょう。
採用ブランドは消費者向けブランドとは考え方が異なることに注意が必要
採用ブランディングを行う注意点としては、消費者ブランディングとはコミュニケーションしたい対象の性質が異なる場合、採用ブランディングが本来の効果を発揮しない可能性があるでしょう。
理由は、そもそも『誰に届けたいか』が異なる場合、自社の魅力の見せ方、伝え方などのメッセージが異なる場合があるからです。
例えば、企業認知が高い製菓メーカーの一例に挙げると、消費者向けのイメージだけだと、実際の働くイメージのミスマッチつながるかもしれません。
実際に採用したい人材は、消費者向けブランドの製菓メーカーからイメージし辛い、泥臭かったりシビアな数字を追いかける営業の仕事であったりする場合があるでしょう。またその場合、消費者と採用ブランディングメッセージがかけ離れている場合があるのかもしれません。
採用ブランディングは、消費者ブランディングとコミュニケーションしたい対象の性質が異なる場合、注意する必要があるでしょう。
最後に
今回は、新卒採用を主軸に採用ブランディングをこれから始める採用担当者の方へ、採用ブランディングが注目される背景、どういう考え方で、どのように動けばいいかを紹介しました。
採用ブランディングが注目される背景として、現在もまだ学生優位の採用市場であり、より採用したい人材に向けて自社の魅力を伝える必要があります。
そして採用ブランディングを実践する手順として、①既存の事業課題から目的を定める ②「誰に」「どんな形でメッセージを」伝えるか設定する ことが重要です。
特別にコストがかかる訳ではなく、手順自体も難しいものではありませんので、失敗を恐れずに、ぜひ採用ブランディングを実践してみてください!
