【記載例つき】ジョブディスクリプションとは?メリットや他社事例、作成方法を解説
2020年頃から人事制度において、ジョブ型雇用が注目されています。これは、企業が職務内容などを記述したジョブディスクリプション(職務記述書)に基づいて人材を採用する制度です。
自社の人事制度をジョブ型雇用にした場合、採用担当者はどのようなジョブディスクリプションを作成するのが適切なのでしょうか。ジョブディスクリプション導入の目的やメリット、記述内容などについて解説していきます。
また人事ZINEでは、自社でジョブ型採用を推進したいと考えている採用担当者の方向けに、資料「【新卒×ジョブ型】準備から内定者フォローまで解説」をご用意しています。ジョブ型採用を成功させる上で重要なポイントをフェーズ別にわかりやすくまとめています。無料でダウンロードして、自社の採用にお役立てください。
目次
ジョブディスクリプションとは?
まず、ジョブディスクリプションの意味や目的、日本の企業における導入状況について解説します。
ジョブディスクリプションの意味
ジョブディスクリプション(Job Description)は日本語では「職務記述書」と訳されます。社員の職務内容や責任の範囲、ポジション、求められるスキル、技能、資格などを記したものです。
ジョブディスクリプションは、特定の業務に専任する人材を採用する「ジョブ型雇用」において用いられます。そのため、業務を特定せず企業のメンバーとして採用する「メンバーシップ型雇用」が主流の日本企業では、これまであまり活用されませんでした。
しかし、ジョブ型雇用を採用する企業が増えたのに伴い、注目をされるようになってきています。
ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用については下で解説します。
ジョブディスクリプションの目的
ジョブディスクリプションを作成する目的は、主に以下の2点です。
1.ジョブ型雇用においてジョブの定義を明確にするため
ジョブの定義を明確にすることで、社員が自らの職務範囲を明確に理解して、効率良く仕事に取り組めます。
2.人事評価を適切にするため
ジョブディスクリプションに業務の達成目標や評価基準を記せば、常に適切な人事評価をしやすくなります。社員にとっても最初から基準が提示されているので、納得して評価が受け入れられます。
ただし、ジョブディスクリプションがあることで、自分がやるべき業務の範囲を過度に狭めてしまう副作用も懸念されるので、導入には注意が必要です。
ジョブディスクリプションの導入状況
日本経済団体連合会(経団連)の調査「2020年人事・労務に関するトップ・マネジメント調査結果」では、約4分の1にあたる25.2%の企業がジョブ型雇用を「導入中」または「導入予定・検討中」と回答しています。
導入理由として「専門性を持つ社員の重要性が高まったため」「仕事・役割・貢献を適正に処遇へ反映するため」というものが多く、特に技術職や専門職に対して導入しているケースが多いようです。
一方で、ジョブ型雇用を取り入れている企業のうち、ジョブディスクリプションを全社員に適用している企業は22.2%、管理職のみを対象に導入している企業は33.3%と、浸透しきっていない現状も明らかになっています。
ただし、2020年からジョブ型雇用の導入を開始したという企業も多く、今後、ジョブディスクリプションの採用も進んでいくと考えられます。
ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違い
ジョブディスクリプションの適用は、ジョブ型雇用を実施していることが前提となります。日本ではジョブ型雇用ではなくメンバーシップ型雇用が中心だったと上述しましたが、ここでは改めてジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違いを押さえておきましょう。
ジョブ型雇用は特定の業務に専任する人材を採用するのに対し、メンバーシップ型雇用では業務内容を特定せず、その企業に所属する人員として採用します。
個人主義、実力主義の色合いが強いのがジョブ型雇用で、会社への帰属意識が強まりやすいのがメンバーシップ型雇用といわれています。
ジョブディスクリプションを導入するメリット
ジョブ型雇用とセットとなるジョブディスクリプションですが、導入するメリットについて解説します。
公平な評価ができる
ジョブディスクリプションは業務の内容だけでなく、企業によっては期待値や査定基準が明記されているため、これをもとにして公平な人事評価が可能です。
人事評価担当者の個人的な主観といった属人性を排除しやすく、会社組織として一貫性のある評価を行いやすくなります。
採用要件が明確になる
ジョブディスクリプションによって社員の採用要件が明確になるため、採用担当者は適材適所の採用ができます。
求職者にとっても、自らに求められる職務内容やレベルなどが事前に分かり、入社後のイメージがつかめるため、「こんなはずじゃなかった」というミスマッチを防げます。
専門職人材を育成しやすい
ジョブディスクリプションでは職務の枠を明確にしています。
もともと、職務に適した社員を採用するうえ、上司もジョブディスクリプションに沿った仕事を任せることになるため、専門職としての人材育成が容易です。
ジョブディスクリプションを導入するデメリット
ジョブディスクリプションはメリットが多い一方、デメリットもあります。理解したうえで導入しましょう。
ゼネラリストが育ちにくい
ジョブ型雇用ではジョブディスクリプションに明記された仕事に特化した人材を採用・育成するため、優秀なスペシャリストは確保できます。しかし、限られた範囲の業務だけに専念させるため、全社的な視点を持つゼネラリストや将来の幹部が育ちにくいというデメリットがあります。
そこで、全社員にジョブディスクリプションを採用するのではなく、メンバーシップ型雇用と併用するのも1つの方法です。
人事異動がしにくい
ジョブディスクリプションから採用された社員は特定の職務のために入社するため、他の部署に欠員ができても人事異動をさせにくいという問題があります。スペシャリストとして育成した結果、所属部署が廃止になった場合に、任せられる職務がなくなってしまうケースも多いようです。
社会や会社の状況が変わった時に、ジョブ型雇用の社員に対して柔軟な対処ができないというリスクは、採用担当者は念頭に置いた方がよいでしょう。
ジョブディスクリプションの作成方法
自社に合ったジョブディスクリプションをどのように作成していけばよいのか、3ステップに分けて解説します。
1.対象職務のヒアリング
まずは募集をかけたい部署の職務に関する情報を収集しましょう。配属予定の現場でヒアリングをするのもポイントです。
ヒアリングの対象は、上司や同僚など、できるだけ広範囲にします。さまざまな視点を入れて客観性を高めれば、より信頼のおけるジョブディスクリプションを作成できるでしょう。
現場が担当してもらいたいと思っている職務の内容、職務等級、責任の範囲、達成してほしい目標などを聞き出し、そこから必要なスキルを割り出していきます。
2.職務範囲の検討
ヒアリングなどで集めた情報を精査し、ポストごとに職務内容や責任の範囲を決定していきます。人事担当者や現場のマネージャーを中心に行うとよいでしょう。
職務内容については「なぜ必要なのか」「どのように行うのか」を明確にするとともに、優先順位の設定も必要です。
3.ジョブディスクリプションの文書化
決定事項を文書化してジョブディスクリプションとしてまとめます。
オンライン上でジョブディスクリプションのフォーマット、サンプルが手に入るので、それを自社に合うようにアレンジするのがおすすめです。一般的にはA4サイズで1枚にまとめて作成します。
できあがったら、当該部署のマネージャーなどに見てもらい、必要に応じて推敲しましょう。
なお、書面には「会社全体の事業方針や経営情報の変化によって、業務の内容が変更する可能性がある」という一文を付けるのを忘れないでください。
ジョブディスクリプションに記載する項目
ジョブディスクリプションに記載する項目には、主に以下のものがあります。
- 職務等級、職種、配属部署名
- 具体的な職務内容、職務の目的
- 人事評価基準
- 職務内容の比重
- 組織との関わり方・指揮命令系統、直属の上司・部下の数
- 責任・権限の範囲
- 業務に必要とされる知識、スキル、資格、学歴
- 雇用形態、勤務地
- 勤務時間、時間外手当支給の有無、待遇・福利厚生
職務等級は「1級」「2級」など級で表すほか、「初級」「エキスパート」のような表現でもかまいません。職務内容は具体的かつ明確に記載します。なぜその職務をするのか、目的を記載するのもよいでしょう。人事評価基準は、可能な限り数値化して、明確にするのがポイントです。職務内容の比重については、複数ある職務のうちの優先順位が分かるようにします。
組織に関する事項について書かれていると、読む人は業務フローをイメージしやすくなります。等級による責任・権限の範囲があれば明記します。社員に求める能力・スキルも記載しましょう。支社や営業所などが複数ある場合は、勤務地を明記しておきます。勤務条件や待遇・福利厚生面も、求人票に書いてある内容ですが、改めて明記しておくとよいでしょう。
こうした記載項目は、企業の実情に合わせて決めるのが大切です。
ジョブディスクリプションの記載例・サンプル
ジョブディスクリプションの記載例を紹介します。
部署 | 営業部〇〇グループ |
---|---|
職種 | 営業職 |
職務等級 | リーダー補佐 |
雇用形態 | 正社員 |
業務内容詳細 | ・新築マンション、中古・新築戸建ての販売、見込み客の獲得 ・建築・リノベーション担当者とともに顧客へプラン、インテリアの提案 ・契約書の作成 ・営業内容を会社にフィードバック、顧客の反応をもとにした新規企画の提案 |
上記職務の比重 | 5:2:2:1 |
期待される役割 | ・個人の営業目標の達成 ・営業部全体の目標達成への貢献 ・新人社員への教育、指導 ・将来管理職となるためのスキルの習得 |
評価の基準となる目標、評価機関 | 受注売上目標:8,000万円(2022年前期) ※前期評価時期:4月~9月(10月に評価) |
昇格、降格の基準 | 達成率150%以上2等級昇格、達成率100%以上1等級昇格、達成率75%以上現状維持、達成率75%未満0.5等級降格 |
給与・報酬・待遇 | 給与は当社規定に当てはめ、等級ごとに決定。 賞与、各種手当あり。 |
職務に必要な資格 | 普通自動車免許。 |
あればよい資格 | 宅地建物取引士(入社後に取得のための制度あり)。 |
その他 | ビジネスの状況などに合わせ変更の可能性あり。 |
ジョブディスクリプションを導入・運用する際の注意点
ジョブディスクリプションはただ作成すればよいというわけではなく、導入・運用するにあたっていくつかの注意点があります。
実務内容と一致させる
記載する内容は、実務内容と必ず一致している必要があります。そうしなければ、社員は何をすればよいか分からず、上司も何を任せればよいのか分からない状態になります。せっかく採用した人材も、入職後の職務にジョブディスクリプションとの違いを感じ、早期離職につながりかねません。
ジョブディスクリプションは作成の段階で、その内容を現場によく確認してもらいましょう。
人事評価と一体化させる
公平な人事評価は社員のモチベーションに関わります。ジョブディスクリプションには評価基準を明確にし、また人事評価はジョブディスクリプションと連動させるように注意しましょう。
評価基準はできるだけ分かりやすく、単純明快にすることも大切です。営業職のように個人成績を数値で測定しやすい職種なら、評価の基準も数値化して表すことが効果的かもしれません。
常に見直しと改善を行う
ジョブディスクリプションは一度作成したからといって終わりとせず、継続的に見直しと改善を行いましょう。
流動的な事業環境に合わせ、企業の事業方針にも変化が必要です。部署の構成や職務内容なども変わっていく可能性があり、同じジョブディスクリプションを使い続けていると現状と合わなくなっていきます。
ジョブディスクリプションを活用している日本企業の事例
ジョブ型雇用を導入し、ジョブディスクリプションによって職務を規定している企業の事例を2つ紹介します。
日立製作所
日立製作所では10年ほど前から、時代に合わせてさまざまな人事プラットフォームを構築してきましたが、その1つがジョブ型雇用への転換です。グローバル企業として、職務の見える化を推進する「ジョブ型人財マネジメント」への転換を2020年から強化しています。
当初は管理職のみに実施されてきましたが、2022年からは国内2万人の一般社員も対象としています。ジョブディスクリプションで求めている内容は社外にも公表し、専門性のある人材を登用しています。
富士通
社員が高い生産性を発揮し、イノベーションを創出し続けるため「Work Life Shift」と名付けた取り組みを行っています。その一環として、国内グループの幹部社員に対して、ジョブ型人事を導入しました。社員それぞれの職責を明確にするとともに、職責に合わせた報酬を設定しています。
幹部社員のみで始まった試みですが、2022年4月21日からは、一般社員約4万5,000人に対しても導入しています。
そして、新たな制度に合わせて、スキル向上に向けた教育の拡充などにも取り組んでいる模様です。
新卒採用におけるジョブディスクリプションの活用状況
先述の通り、経団連の調査によると約4分の1にあたる25.2%の企業がジョブ型雇用を「導入中」または「導入予定・検討中」という状況で、ジョブディスクリプションを新卒採用で導入している企業はまだ多くありません。ただし、経団連がジョブ型雇用を推奨していることもあり、今後は増えていくと予想されます。
人材要件を明確に設定するジョブ型雇用の採用活動においては、ダイレクトリクルーティングの採用が効果的です。ダイレクトリクルーティングであれば、ジョブディスクリプションの要件にマッチするターゲット層にピンポイントでアプローチできます。
欲しい人材のペルソナ設計を明確にしてジョブディスクリプションを作成すれば、採用・選考がスムーズになり、求める人材を獲得しやすくなるでしょう。
まとめ
ジョブディスクリプションは、特定の仕事に対して専門性の高い人材を採用・育成するのに適した「ジョブ型雇用」で必要となる職務記述書です。
職務内容や責任の範囲、人事評価の基準などが書かれているので、社員は自分が会社ですべきことを理解して働けます。また上司も公正な人事評価が可能です。すでにジョブディスクリプションを取り入れている企業もあるので、ぜひ参考にしてみてください。
ジョブ型雇用への移行やジョブディスクリプション活用にあたっては、人材採用の方針を再考することも重要です。
職務内容が明確な場合の人材採用で有効な手法がダイレクトリクルーティングで、なかでもOfferBoxがおすすめです。
OfferBoxは新卒採用に特化したダイレクトリクルーティングサービスです。スカウト型就活サービスとして多くの就活生から支持を集めており、学生の3人に1人が利用しています。
登録している約18.5万人の学生のなかから自社が求める条件に合う人材を絞り込み、ピンポイントで直接オファーを送ることができます。OfferBoxは新卒採用に特化したダイレクトリクルーティングサービスです。
毎年、あらゆるフェーズで就活に取り組む多くの学生が利用しています。適性検査(eF-1G)とAIを用いた充実した検索機能も特徴です。導入・運用にあたっては専任のカスタマーサクセス担当者が伴走し、採用課題の整理や学生のターゲット設定のサポートまで実施します。
ジョブ型採用に必要な準備や選考・フォローで注意すべきポイントを知りたいという採用担当者の方は、こちらの資料もダウンロードしてご活用ください。