マネジメント能力の5つの要素とは?資格と実務での活かし方を解説
「管理職社員のマネジメント能力を高めたい…」
「資格の取得を勧めたいけど、どのような資格が適しているのかわからない…」
と考えている人事担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
組織やチームを束ねて最大の成果を生み出すためには、マネジメントが不可欠です。マネジメント能力という言葉がよく使われますが、実際に業務でマネジメントを遂行するためには、さまざま能力や知識、スキルが必要です。
マネジメント能力を高めることを目的として社員に対して資格取得を勧める場合には、どのような資格がよいのでしょうか。
そこでこの記事では次のポイントを解説します。
- マネジメントに必要な能力について
- 職種ごとのマネジメントに関する資格の種類
- 資格を業務に活かすためのポイント
「いきなり管理職社員に適した資格を勧めるのは難しい」と感じるかもしれませんが、マネジメント能力に関する資格を知るだけならハードルは高くありません。まずはこの記事でマネジメント能力に関する資格や資格を業務に活かすためのポイントについて、おさえましょう。
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目次
マネジメント能力とは?
企業が組織として成果を上げるために、管理職やリーダーにはマネジメント能力が必要と言われています。しかし、マネジメントとはそもそもどのようなものなのでしょうか。
マネジメントの定義
マネジメントとは英語を直訳すると、「管理」や「経営」の意味です。ただし、企業においては、「経営管理」や「組織運営」の意味で使われます。
アメリカの経済学者であるドラッカーは、マネジメントを「組織に成果を上げさせるための道具、機能、機関」と定義しています。また、マネジメントを遂行する人を「マネージャー」と呼び、企業では経営管理や事業の責任者が該当します。
マネジメントで行う仕事と役割
ドラッカーのマネジメント論ではマネジメントの主な仕事について、次のように解説しています。
- 目標の設定
- 組織すること
- 動機づけを行うこと
- 評価すること
そして、マネジメントに求められる役割については、「組織が果たすべきミッションを把握し達成する」「組織で働く人たちが自己実現できる場を与える」「社会貢献する」との考え方を示しています。
マネジメントに必要な能力
マネジメントを行うには多様な能力が必要です。主に求められる能力としては、次のようなものがあります。
- リーダーシップ
- 現状分析力
- 問題解決力
- コミュニケーションスキル
- テクニカルスキル
これらの能力は、日々の業務を通して培われるだけでなく、各人の自己研鑽やジョブローテーションなどの取り組みでも養われます。
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マネジメント能力を構成する5つの要素
ここでは、マネジメント能力を構成する5つの要素について見ていきます。「マネジメント能力をどうやって高めたらよいのか?」と漠然と考えても分かりにくいものですが、要素を分けて考えると、能力を高めるための道筋が見えてくるでしょう。
リーダーシップ
リーダーシップとは、統率力、指導力などを含めた「組織を導く力」です。
マネジメント能力と似たような意味ですが、リーダーシップは主に「人に関わる力」を指すのに対して、マネジメントは人材だけでなく資材なども含めた全体的なリソースの管理に関わる点が異なります。
チームの方向性を示してメンバーをまとめるリーダーシップがあると、組織はその力を最大限発揮できます。また指導力のあるリーダーのもとでは部下も力を発揮しやすく、大きな結果を出せるでしょう。
現状分析力
現状分析力とは、現状を把握して課題や問題点を洗い出す力です。目標の達成や進捗管理、トラブルの解決に向けて正しい判断を行う上で、欠かせない能力といえます。
現状を正しく把握する力を高めるために、日頃から周りをよく観察する癖をつけましょう。また、分析力を養うにはロジカルシンキング(論理的思考)のスキルも重要です。
問題解決力
チームの課題や問題点を論理的に分析できても、そのままにしていては前に進めません。現状分析によって洗い出した問題を、実際に解決する力が問題解決力です。
問題解決に必要な要素を集め、それをもとにメンバーに的確な指示をするという意味では、リーダーシップに近い能力といえるかもしれません。また、問題解決の道筋を適切に組み立てるためには、ロジカルシンキングのスキルも必要になります。
コミュニケーションスキル
前出のマネジメント能力を遺憾なく発揮するための基礎となるのが、コミュニケーションスキルです。例えば、どれだけリーダーの現状分析力が高く、問題解決の方法を見出せたとしても、それをほかの人に伝える力がなければ意味がないでしょう。
またコミュニケーションにおいては、「話す」力だけでなく「聞く」力も重要になります。問題点を素早く把握するのにも、チームメンバーの力を引き出すのにも、まずは人の話を正しく聞くことが出発点となるからです。
テクニカルスキル
テクニカルスキルとは、業務を遂行するために必要な技術や知識のことです。
組織や人を動かすためのマネジメント能力と、テクニカルスキルは別のものと思われるかもしれません。しかし実際の現場では、部下に仕事のやり方を説明したり、トラブル時に自分が業務に当たったりするなど、テクニカルスキルが求められる場面は少なくありません。
マネジメントする立場の方も、テクニカルスキルは身につけておくのが望ましいでしょう。
マネジメント能力に関する資格
次にマネジメントに関する資格を取得する効果や、おすすめの資格を紹介していきます。
これからマネジメントのスキルや知識を身につけたい方や、自分のマネジメント能力を確かめて証明したい方はぜひ参考にしてみてください。
マネジメント資格取得の効果
マネジメントの資格を取得する効果として、「資格を取得するために勉強や努力をする学びの効果」があげられます。そして、資格取得によって身についたマネジメントの知識やスキルは、マネジメントの実務に活かすことが可能です。
また、資格を保有していることが知識や能力、技能を示すシグナルとなり、他の社員や取引先などから優秀な人と認められる効果も期待できるでしょう。
続いて、マネジメントに関する資格について紹介していきます。
マネジメント力を身につけるのにおすすめの資格
●経営層の役員や次世代の経営者を目指す上級管理者向け
◆中小企業診断士
企業の経営層である役員や経営層をサポートする中間管理者層は、マーケティングや人材マネジメント、財務会計、リスクマネジメント、法律など、幅広い知識を身につける必要があります。
中小企業診断士は、このような経営についての幅広い知識が求められる国家資格です。
試験内容
中小企業診断士の資格を取得するには、まず「経済学・経済政策」「財務・会計」「企業経営理論」「運営管理」など、7科目からなる一次試験に合格しなければなりません。
一次試験に合格すると、筆記試験と口述試験の二次試験を受験します。そして、二次試験の合格後に15日以上の実務補習を受けるか、診断実務に従事すると、中小企業診断士として登録されます。
また一次試験合格後に、中小企業基盤整備機構などが実施する養成課程を修了する方法もあります。
受験資格
学歴や年齢、職務経験に関係なく誰でも受験できます。
ただし、経済学博士、不動産鑑定士、公認会計士など特定の資格を持っている場合、一次試験の科目が一部免除されます。
得ることができる能力【目標を設定する能力】【組織を作る能力】
中小企業診断士の資格では、マネジメントだけでなくり経営についての幅広い知識が求められますが、1次試験の科目である「企業経営理論」の内容には、経営計画と経営管理の内容があり、自社の取り巻く環境や資源を分析して、企業の経営目標やビジョンの立て方を学びます。
また、組織論では経営組織や人的組織の運営や管理の原則などを学んでいきます。
◆経営学検定試験(マネジメント検定)上級
経営学検定試験(マネジメント検定)は、経営に関する基礎的知識や専門的知識、その応用能力としての経営管理能力や問題解決能力が一定水準に達していることを認定する検定試験です。
試験のレベルは初級・中級・上級に分かれています。
上級は経営幹部や上級管理者が対象で、ビジネス構想力と戦略策定の知識が問われます。
試験内容
上級では、経営に関する高度の専門的知識と、実践的な経営能力が判定されます。経営学専攻の大学院生レベルの専門的な知識と、経営幹部として期待される実践的な経営能力が判定されます。
受験資格
受験資格は特にありません。個人受験申し込みと団体受験申し込みがあり、企業で10名以上の受験者がいる場合、指定された会場ではなく、特設会場として受験できます。
得ることができる能力【組織を作る能力】【メンバーを動機づけする能力】
経営学検定試験(マネジメント検定)の上級では、マネジメントプランの作成と作成したプランのプレゼンテーションが科目にあります。
その中で、マネジメントして組織を作り、組織のメンバーを動機付けする方法を学ぶことができます。
●新任管理職や管理職を目指すリーダー社員向け
◆経営学検定試験(マネジメント検定)中級
経営学検定試験(マネジメント検定)の中級は、中堅社員からマネージャーを対象にしており、経営とマネジメントの体系的な知識が必要です。
試験内容
経営に関する専門的知識や、経営課題を解決するための分析能力が判定されます。内容はビジネスパーソンが身につけておくべき経営学に関する知識や問題解決能力です。
受験資格
上級同様に、受験資格は特にありません。
得ることができる能力【組織を作る能力】【評価判定能力】
経営学検定試験(マネジメント検定)の中級では、組織デザインとマネジメントについて学ぶため組織の作り方について知ることができます。また人事制度と能力開発では人的な評価を、業績評価と経営分析では経営財務的な評価の仕方を学ぶことができます。
◆ビジネスマネジャー検定
ビジネスマネジャー検定は、東京商工会議所が主催する民間資格です。管理職に必要な「チームとして成果を出す」ためのマネジメントに関する総合的な知識を学べます。
試験内容
「マネージャーの役割と心構え」「人と組織のマネジメント」「業務のマネジメント」などの基礎知識と、それを応用する力が問われます。
試験に出題される範囲は、基本的に公式テキストに記載された内容です。また、最近の時事問題などから出題されることもあります。マークシート方式による選択制で、100点満点中70点以上で合格です。
受験資格
学歴・年齢・性別・国籍による制限はなく、誰でも受験できます。
得ることができる能力【メンバーを動機づけする能力】【評価判定能力】
ビジネスマネジャー検定では、メンバーに対して動機づけを行うために必要な、部下とのコミュニケーションやモチベーションを高める方法を学びます。また人事考課や部下を評価する際のポイントなども学ぶことができます。
◆PMP(Project Management Professional)
PMPはプロジェクトマネジメントの専門家であることを証明する資格です。
プロジェクトマネジメントとは、プロジェクトの立ち上げから目的達成まで一貫して管理することを意味します。PMPはプロジェクト管理のためのスケジュール調整や品質管理、人材やコストなどを管理するスキルを持つ人材であることを証明する資格です。
試験内容
試験は「人」「プロセス」「ビジネス環境」の範囲から出題されます。試験は200問の選択問題で、そのうち採点対象とならない予備問題が25問含まれます。
試験は英語で実施されますが、日本語でも受験可能です。受験後すぐに結果がわかり、カテゴリー別の正解率が表示されます。そのため、自分に不足している知識を把握できます。なお、有効期限以内に3回目まで受験可能です。
●新人や若手社員向け
◆経営学検定試験(マネジメント検定)初級
経営学検定試験(マネジメント検定)の初級は、新人や若手社員が対象で、経営学の基礎知識が問われます。
試験内容
経営学に関する初歩的、かつ基礎的な知識があるかどうかが判定されます。内容は短期大学卒業生や4年制大学の2~3年生で習得しておくべき経営学に関する基礎知識のレベルです。
受験資格
上級・中級同様に、受験資格は特にありません。
得ることができる能力【基礎知識】
経営学検定試験(マネジメント検定)の初級では、マネジメントについての初歩的な知識を学ぶため、受験することで特に得ることができる能力はありませんが、中級・上級を目指すことで得るマネジメント能力の基礎を作ることができます。
マネジメント能力を高める方法
資格の取得や日々の業務以外でも、マネジメント能力を磨く方法はあります。マネジメント能力をさらに高めるためのポイントをご紹介します。
マネジメントされる側の立場で考える癖をつける
どのような組織やチームでも、構成メンバーの個性や能力、考え方はさまざまです。その人たちに対して、一様に同じアプローチを行っていてもマネジメントはうまくいきません。
組織をマネジメントする人は、常にマネジメントされる側の人たちの立場で考える癖をつけ、人それぞれに適切な対応を行えるのが理想です。そうすれば、より早く目標達成や問題解決に導けるでしょう。
コーチングスキルをつける
コーチングスキルとは、メンバーが持つ力を引き出し、目標達成をサポートするスキルです。適切なコーチングによって個々のメンバーの能力を最大限に引き出し、組織のパフォーマンスを高めるのもマネジメントの一環といえます。
コーチングスキルは、高いコミュニケーションスキルがあって成り立つものです。普段からポジティブなコミュニケーションを重ね、相手を認め、可能性や行動力を引き出す姿勢を大切にしましょう。
マネジメント能力に関する資格を業務に活かすためのポイント
ここまで、マネジメントに必要な能力やマネジメント力を身につけるのにおすすめの資格について、紹介してきました。
とはいえ、マネジメント能力を高めるために、社員に資格の取得へ取り組んでもらうよう働きかけるには、どうしたらいいのでしょうか。
そこで次は資格を業務に活かすためのポイントについて、解説していきます。
ポイント1|自社でのマネジメントに必要な知識を明確にする
自社でマネジメントを行うために必要とされる知識やスキルを社員に対して、明確に提示しましょう。
それにより現在マネジメントを行っている人や、マネジメントする立場を目指している人にも、今の自分に不足している知識を自覚することができます。
また、どの知識を実際のマネジメント業務に活かせられるのかを把握でき、スキルを実際の業務に落とし込むことが容易となるはずです。
ポイント2|資格手当などインセンティブの設定や評価を行う
マネジメントに必要な資格であれば、資格保有者に対して資格手当や合格報奨金などのインセンティブを設定する方法も有効です。
資格を取得するためには、業務外の時間で勉強して、さらには受験の費用もかかります。その分を報酬として支払うことで、社員の負担を減らすことが可能です。
さらに、資格を取得し社内に利益をもたらしている社員に対して評価を行いましょう。
それにより、社員の資格取得や資格の活用に対するモチベーションの向上にもつながるでしょう。また、該当社員が自発的に考えて、業務への取り入れを行うようになる効果も期待できます。
ポイント3|資格を持っていることを社外の人にも知らせる
名刺に取得した資格を記載したり、自社のホームページなどで資格を保有していることを公表したりすることで、社内だけでなく、取引先など社外の人にも知らせることも有効です。
本人に資格を持っていることを意識させて、資格の名に恥じない仕事をしようという意識を持たせられるでしょう。
さらに、対外的な評価の向上は仕事をすすめる上で効果的に働くでしょう。
まとめ
この記事ではマネジメント能力を構成する要素や、マネジメント能力を高める資格、実務で生かすためのポイントについてご紹介しました。
人事担当としては、マネジメント能力を正しく理解し、社員が資格にチャレンジしたいと思えるような環境や仕組みを作ることが大切です。
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